…面倒。なんで星熊勇儀みたいに地雷を踏んだわけでもないのに襲われなければならないのか。理不尽。目の前にいる、白いちんちくりんがその理不尽な証拠だ。しかも割と強い。片手間で撃退できるような実力ではないためしっかりと敵対しなければならないのがおかしい。…そもそも、何なんだこいつは。変な格好しやがって。馬鹿にしてんのか?空間移動で適当にあしらうが、なぜかすぐに近くに出てきて襲いかかってくる。面倒だからやめてほしい。俺は咲夜以外に襲われたくないんだ。星熊勇儀に文句を言えよ。
「…」
「ぜぇ…ぜぇ…」
「何で俺を襲ってくるんだ。俺はさっさと帰って寝たいだけの健全な人間だぞ」
「お、お主!仏に下ったであろう!?」
「…もう良いや帰る」
話すのも馬鹿らしい。逃げさせてもらう。秋姉妹神社に降り立ち、豊郷耳とか言うカスがいないことを確認する。近頃は人里が物騒で、何だか煩いところもあるらしい。そのせいで、人前によく立つ穣子でさえ俺が同伴でなければ怖いと言うのだ。物騒な世の中だ。宗教やってる奴らには一刻も早く治めてもらいたい。人里に行った後に穣子が少し鬱になっているのだ。鬱、と言うよりもどちらかといえば病む、なのかもしれない。鈴仙が言っていた。月の都では病むと言って、鬱に近い状態を指すのだとか。…言葉が多様なのは良いことなのだろう、か?
「ふぅ…」
「最近はみんな殺伐としてて、私たちへの信仰が薄れている気がするわ」
「姉さん、そのせいで少し小さくなったもんね」
「穣子もでしょ!」
「…ま、消えることはないだろ。少なくともお前ら…秋を喜ぶ奴はいるわけだし」
「まーちゃん!ありがとう!」
「出来れば紅葉メインでお願いしたいわ!」
「霧雨と巫女達のことだ」
二人を押し退ける。すると、来客に気が付いた。人里が殺伐としてから、霊夢や早苗、他宗教どもがこの機に乗じて信仰を得ようと策略している。そのため蚊帳の外となる霧雨がたまに来るのだ。咲夜も来る。来客は誰かと戸を開くと、そこには先ほどのちんちくりん。殴り殺してやろうかと思っても抑える。流石にしつこい。しかし、よく見てみればちんちくりんの後ろには霧雨魔理沙がいた。…こいつら、相当暇なんだな。人里も居づらいだろうし。気持ちはわかるが。
「布都の奴が何してんだと思ってな」
「仏に下った男が神社を…?」
「姉さん、とうとうまーちゃんも私たち捨てるみたいよ」
「えへへ、そうなったらもう存在が危ういわね。これから春夏冬の三季ね」
二人を見て引いている魔理沙に弁明。こいつらに元気を与える方法なんてものは、やはり里の治安を良くすることのみだろう。が、そこで宗教がごたついて全然治安が良くならない。なんなら里の馬鹿どもが信仰する宗教で睨み合いをしたりしなかったり。考えることが違うだけで排他的になる人間にふさわしい治安だとは思うが、その余波でこの神社が暗くなることは避けたい。静葉なんかもう信仰が足りないせいで死にかけてるからな。アホらしい。
「守矢と統合すれば良いだろ」
「そのつもりがないってな。後普通にこの出来のいい神社を手放すつもりがない。」
「布都!ここにいましたか!」
「太子様!?」
「うわ、神子」
「…ちっ」
「あ、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
「久しいね。布都が迷惑をかけていないだろうか?」
…霧雨の顔を見る。今出てきた豊郷耳に目を奪われているように見えるその目が気に食わない。が、そんな諸々に対する毒よりも早く吐き出すべき毒がある。不法侵入についてだ。そもそもこいつ、どっから現れた。…気持ちが悪い。問い詰めたところ、この女は空間を出入りすることでどこにでも入れたり出れたりするらしい。なるほど、同じようなことができるちんちくりんはそれを使って爆速で帰ってきてたわけか。躾がなってない。空間移動で二人共々人里行きだ。
「まーちゃんがそこまで露骨に嫌うなんて」
「珍しー」
「お前ってそんな奴だったか?」
「…あの態度が気に食わない。あの女が気に食わない。理由付けは出来ないが、とにかく嫌いだ。一目見て関わりたくないと思った」
「過激派だな」
「風邪かしら…」
「そういうことか」
後ろを振り向く。どうやらこの女、戻ってきたらしい。空間移動でどこかに消してやろうと目論むも、魔法陣が変な音を立てて割れた。…この女、星熊勇儀と同等はあるのか?萃香でさえ魔法でどこかに送れたのに。あまりにも気持ちの悪い女だ。しかも、どうしてか分からないが割れることがわかっていたようだった。魔法陣をデカくし、再挑戦。今度は送れた。が、そこまで遠くには飛ばせなかった。この女、多分質量とかが重い。俺の魔力量では人里まで飛ばせない。しかしそうなると萃香はどうして遠くに飛ばせたのか気になるな。
「まったく。人の話は聞いた方が良いと思うよ」
「そんなに神子が嫌いなのか?」
「傲慢すぎるからな。」
「私としては最適な振る舞いだ」
「…問題は、力で言えば面倒な扱いを受ける地位にいることだ。」
「何を言ってるのかわからないな。私が上位層のはずだが?」
「まーちゃん、ストップ」
「やりすぎじゃない?」
「…まあ、私からしてもだよなぁ」
これはまずい傾向。察知したのでさっさと魔理沙と神子を戦わせることにした。ノリが良く、何故か両者同意した。魔法で神社を包み、被害を被る確率を極力減らし、これで良し。こうして俺は安眠を手に入れた。治安が荒れに荒れた人里での一々の行動に、とてもとても精神を削っていたのでかなり疲れが溜まっている。静葉に伝えておき、布団を敷いて寝る準備をする。願わくば、魔理沙とカスの戦いに巻き込まれませんように。
「可愛い寝顔〜」
「魔法が消えた時以外入ってくるな」
「は〜い」
豊郷耳視点の正和
何こいつ警戒心だけ高い…
正和視点の豊郷耳
何こいつ変に意識高い…