穣子、静葉とともに春を迎えた俺は、春という存在に対して抵抗している他二人を宥めていた。春だというのに何故こんなことをしているのだろう。疑問が尽きないばかりである。実際恨むべきはこいつらの生態なのだろうが、そんなことは知らん。俺が気にすることではない。うるさい二人を宥めるのも飽きていた頃、天狗が突撃して来た。なにごとだ。自らを大天狗と名乗るそいつは、前に寄越した狐が怯えて帰って来たことに腹を立ててるらしい。…狐?そんなやついたか?
「記憶にないわね…」
「大体、ここを訪ねる人も少なくはないし」
「そもそも誰だよお前」
「…たまの休みに態々部下を労いに来たというのに…典、本当にこいつらか?」
「はい!いじめられました!」
「…二人とも、知り合い?」
「知らん」
「あ、去年のみかんまだ余ってるね。持ってくる」
…誰も覚えていない。よって、普通に帰れ。邪魔。日常の邪魔。帰れ。普通に。穣子が持って来たみかんを適当に頬張る。…少し腐ってるな。食感が崩れている。まあ去年のみかんなんてそんなもので。まだ寒さが少し残る春、だというのに元気な天狗と狐が来た。めんどくせー。みかんと一緒に飲み込んで捨ててしまいたい気分だ。だというのも、穣子が収穫して来たとか言って美味しい野菜を持って来てくれたのだ。大天狗に構う時間はない。うせろ。
「お前は人間だな?」
「んぁ。」
「人間が妖怪の山の領土に入るとどうなるか、教えてやる」
「…へー。教えて欲しいな、是非とも。なあ、萃香」
「ひぇぁっ」
「私が出した許可にケチつけるなんて、偉くなったなぁ龍〜?」
というわけで萃香を連れて来た。会うのは少し久しぶり、だろうか。無論適当に見繕ったわけじゃない。こちらに来るのを事前に感知していたためである。めんどくさそうだけどこの神社に来る気配はないと思っていたが、大天狗なんぞが来たので呼ばせてもらった。殴り合いだの弾幕ごっこだので話を付けてもいいが、食前の運動としてはいささか動きすぎる。個人的に好かない。口な加えたみかんを呑み込む。そんな俺をみて穣子がウンウンとうなづく。この神も大概変人だな。
「いやぁ、あの、私達天狗としてもそう言ったことは報告と言いますか…」
「大天狗が?なんで確認する必要があるんだ?ん?下っ端のお前が。なぁ。」
「それは、その…」
「飯綱丸様…?」
「狐、お前は後で電流の刑だ」
「ひいっ!?」
「正和、今やってやれ」
逃げる狐を捉え、感覚信号最大強化。変な声とぶちぶちとした音を出して、そこで狐は動かなくなった。とは言っても一瞬しか流していないわけだが。というか、流し過ぎると失禁するんだよな、動物達って。漏らしてないことを確認。白い服だと確認しやすいな。それ用の服かコレ。そこらへんに転がす。静葉と穣子に何やってんのという目で見られるが、仕方ない。だって星熊勇儀の一件でこいつもトラウマになりかけてるし。というか連れてこれたの本当にびっくりしてる。思ってなかったし。
「…さて。天狗も追い出したし、報酬あるんだよね?」
「チッ」
「なに、酒がどうこうじゃないよ。私も神から奪うつもりないし。そこで…正和、ちょっと体貸しな」
いまいちこいつの口調が掴めないまま、俺は秋姉妹神社から離れた妖怪の山本山?とかいう場所にいる。寒い。標高が高過ぎるのだ。魔法陣を構えるつもりもない。というか、格好からして寒過ぎる。季節は春ということで、俺の着ている妖精みたいな服は薄い長袖なのだ。その時期にここは寒過ぎる。これだけ手が悴むと、魔法陣を掌の先とかで設定出来ない。普通に死ぬ。ブレッブレ。まあまず狙いは定まらない。故に、身体があったまるのを先に待たねばならないわけだ。
「始めっ!」
「っ」
腕を掴まれて顎に蹴りを喰らう。…星熊勇儀のガチギレパンチとは、涙が出るかゲロが出るかの違いがあるな。無論、どの道ゲロを吐くことにはなるが。掴まれた腕を離され、二回目と言わんばかりに足を突き出される。特大の反射の魔法陣を展開、その蹴りを丸ごと返す。そう、萃香には反射魔法が効いた。本気じゃないのかもわからないが、使えるなら使ったほうがいい。
「こういうのはいいじゃん?」
「このっ」
今度は腰を入れた正拳突き。ダメ元で特大の空間移動、出口を萃香の真横に設定する。拳が出てくる時、魔法陣同士が干渉する可能性があるが、まあ…多分、なんとかなってくれるだろう。結果としてはうまくいった。が、上手くいかなかった。空間移動した拳が萃香を殴ったものの、干渉しあった魔法陣が何をとち狂ったのか、出口が俺の目の前に現れた。つまり、俺は結局ぶん殴られたのである。一回萃香を通って減速はしても、痛い。
「…痛いよぅ…」
「今のみたいな奴、何回出来る!?」
「もう無理。でもそれより面白いことなら後一回」
「なんだそれ?」
萃香の腕を空間移動に通す。腕の辺りまで通したところで、空間移動を閉じる。
「腕はもらった」
「片腕だけじゃん」
無論、残った腕で殴られた。それでもかろうじて防ぎはしたのだが、まあどう考えても骨折れてるよなみたいな惨状に。お手上げとも言えないお手上げで降参を示す。疲れた。眠い。帰りたい。普通に痛い。後で永琳に見てもらわなきゃ…後は、咲夜にバレないようにするか。咲夜にこんな情けないところ見せられない。流石にな。とは言えここは天狗の総本山。噂が広がらないのは無理だろう。…星熊勇儀とかを呼び出すべきだったな。
「お前、絶対手加減しただろ」
「本気出すと華扇と紫に怒られるからな」
「…いまさら子供ぶるのはやめたほうがいいぞ。虚しくなるし恥ずかしい」
「言われなきゃそうなってないよ…」
重要事項。
正和はパチュリーよりも弱い。