あいつらバカなことやってるよな、と鼻水と涙と汚いことこの上ない夜中。客人が来た。レミリアだった。帰そうと魔法を展開したが、グングニルとかいうノーレッジの受け売りで破壊される。更には面倒なこともされる。ちゃんとした生活を送っているのかという確認らしい。こいつと争った場合手加減されても勝てる気はしないので争うつもりはない。が、穣子と静葉の部屋の前には立たせてもらう。…この部屋は神がいる部屋だ。というのは建前で、レミリアがあの二人に巻き込まれて花粉症になったらどうも出来ないためだ。
「…そこ、うるさいけど」
「病で寝てる奴の部屋だ」
「赦しを乞う声が聞こえるけど」
「花粉症だな」
「えぇ…?」
見せる見せないで苦戦していたところ、背中から引き戸が開く音。今出てきたらダメだろうと言いたくて振り向いたところ、純孤。しかも少し涙目と鼻水。…頭と肩を落とし、閉じ込めようとするも抵抗され、それならさっさと入れと勧める。…なんでこいつ静葉達の部屋から出てきたんだ…?瞬間移動の能力は確かヘカーティアの能力なんだろ?違ったかな。というかこいつも花粉症になるのか。俺は無理やり抑えてるからわからん。大体なんで急に来るんだ。
「私はレミリア。この男の近況を見にきたの。」
「私は純孤。正和は私の息子だ。第一子だ。お前にやったつもりはない」
「そうね、正和もそのつもりよ。何年育ててあげたのか数えて欲しいくらいに。」
「待て。訂正するところがいくつかある。俺は純孤から生まれていない。俺はレミリアに教養云々は教えられてない。飯もやる事も門番に教わった」
「だそうだが」
「え、貴女まだそれで威張るの?」
二人の言動に手を突っ込みたくなるが、無視。静葉にちり紙の補充を言われ、ゴミ袋も変える。なんで春に喧嘩売ったんだこいつ。疑問は尽きないが、それ以上にこいつら今年が初めてじゃないような口ぶりだったな。…完全に自業自得だな、見捨てるか。扉を閉め、二人に向き直ると何か言いたげに俺に目線を送ってきた。…コタツはしまうべきだという訴えだろうか?それともこいつ頭がおかしいぞと互いに訴えているのだろうか。それならレミリアに同意するし、純孤にも同意する。お前ら頭おかしいぞ。
「正和はどっちが親だと思ってるのよ」
「穣子」
「誰?」
「奥の部屋で寝てる神ね。私たち二人での話!」
「帰ってくれないか」
変えるつもりのない二人は、俺に視線を送りながらみかんを頬張っていた。俺の昼飯を取るな。しかしどっちを親だと思うか、だったか。頭がおかしいこの質問に、首を傾げるまでもなく答えることはできる。どちらでもない、だ。選べと言われようが知らん。純孤はそもそも知り合って日が浅い。レミリアからは何も教わってない。門番の方が親としては見れる。あいつにつけられた傷はまだ残っているが、それは後にデカめの傷で返したので良い。つまり、お前ら親じゃないじゃん。ということだ。
「…何だよ」
「別に、恩知らずだなって」
「正和、お母さんと呼んで?」
「は?」
「母さん、帰れ」
「は?」
「何だお前もか?まさか咲夜にそう呼ばせてるんじゃないだろうな。そうなれば本気で紅魔館の屋根を剥がしに行くぞ」
「やってないわよ殺意高いわね」
そういうわけではないらしい。純孤を母と呼んで変えるように促す。しかし帰らない。…レミリアにドヤ顔を披露している。馬鹿だなこいつら。そう思ってこいつらを見ていると、一時期咲夜が意地を張っていたことを思い出す。いや、あれは恥じらいだったのかな。ひとりでできるもん!と言ってできた時のドヤ顔。可愛かったなぁ。もう見ることはないだろうな。今は鉄仮面だからなぁ。
「正和、お肉は食べてないの?」
「保存が効かないからな。取ったら干してなんとか三日で食い切ってる。今はないな」
「…野菜はこんなに」
「肉はたまにしか食べないのよね?」
「お前今何観た?」
純孤の後ろに隠れる。ちょっと、私生活の盗視はちょっと。母さん助けてと言わんばかりに純孤の後ろに移動すると、純孤の背中から九つの尾が見えた。はぇ、俺の魂の親、前世の親は九尾だったの?あ、でも触れないから違うっぽい。良かった。いやどうでも良いか。そんなに意味はないか。俺は二人を放って、夜中で嫌な月光が照る外に出る。永琳に花粉症の薬を使って貰えば、恐らくあの二人の花粉症はさっさと鎮まるだろう。…穣子が回復しなきゃ飯が食えないからな。春の妖精許さん。
「だからって急に出てこないでください」
「しゃーないだろ、今の俺の家に純孤出たんだから」
「へぇ…え!?」
「何だ、知ってるのか」
「私あの人に気に入られたとか言われて少しノイローゼになったんですよ」
「メンタル雑魚だな」
「目、見ますか?」
見た途端に平衡感覚を失った。ぐあんぐあん、なんか立つのむずかしい。膝を丁寧に折り曲げ、座る。この状態では魔法陣も狙って出せない。次に、四肢の感覚も消える。地面に座ってるはずなのに、心臓の跳ねる感覚しか伝わってこない。感覚神経が発する信号の強度を魔法で爆発的に増やす。体が少し思い通りに動かない程度の信号、ちょっと歩くのが不便くらいの強さで、鈴仙の頭を掴む。この強さをいつもの強化魔法でさらに強くして、鈴仙に送る。うわ失神した。
「…そんなスナック感覚でウチの看護師壊さないでくれる?」
「花粉症とこいつの能力を恨め。俺、今ちょっと感覚危ういから。」
「でしょうね。で、花粉症でしょ?すぐに作るから、待ってて」
なんかこれで終わると厄介じゃなくなる気がした。よって次回。