人間「ぴぎゃっ」
「今日はなんの用事だ」
「一人でぼーっとしたくてな。萃香に聞いたらここが良いんだと」
「本当に知り合いなんだな…」
そう。そこは泣く子と犯罪者と日陰者が怖がる場所、星熊勇儀の家だった。ついでにその近くに悟り妖怪の住処もあった。なんだかね。そう思ってくつろいでいると、萃香の言った通りにはならず何かと客が来る。あと、なんかたまにだけど変な声が聞こえる。聞けば怨霊がいるらしい。まあ元々地獄らしいから、そんなものは居て当たり前か。客人のうるささに耐えれないので、悟り妖怪が持つ温泉に入らせてもらうことにした。悟り妖怪の方はちゃんと恐れられており、温泉には誰も来ないとかなんとか。
「…一人でいたいだけだから、一緒に入ってくるな」
「酷い言い草ですね。ここを貸してるのは私ですが?」
「ん、そうだな」
「ちなみにこの後ペットが来ます」
「あがるわ」
「出ない方が良いですよ。もう脱衣所にいますから。」
「混浴しかないのかここは?」
「元々は。今では家族しか入らないので、もう無くしました」
家族入れよ。そのせいで俺は今嫌な扱いを受けてるんだぞ。悟り妖怪の宣言通り、二人のペットが入ってきた。猫と鴉。性別は雌。湯の中を移動し、何も見えない壁に向かって目を瞑る。考えたいことがあったのに、これでは考えることすらできない。ため息をひとつ。特に深い意味はない。ただ、死ぬならいつ頃が最適かを考えたい。というのも、レミリアの言っていた急激な老いに関して少し心当たりがあるのを思い出した。面倒な心当たり。魔法関連である。…自分で死期を選べるのは良いけど。
「お手伝い、しますよ」
「俺の考えを見てるなら、その選択が間違いであることもわかっているはずだろ」
「というわけで、その心当たりを聞かせてもらっても?周りの怨霊が聞きたがっていますよ」
「…あのな。こればっかりはおいそれと話すわけにはいかん。」
だからこっちで話す。俺の体の中には魔法を学んだ時に有り余る魔力で武器を作ってみようと遊んでみたところ、フランドールのレーヴァテインを真似して作ってみた剣が刺さっている。マージで未だにやらかしたなと考えている。俺だって好きで刺したわけじゃない。ノーレッジは多分分かってることだが、心臓に刺した剣がなかなかに強い。我ながら大した剣で、この剣に俺の意志を込めることができる。俺が死んだ時に咲夜に継承させるものはこの剣だ。
「その剣がどうして心臓に?」
「んー…忘れた。刺したってのは分かるんだけど、作る時にやりすぎてなぁ。ノーレッジが言うにはフランドールが暴れた結果より酷いとかなんとか。」
「なるほど…バルムンクと言うのですね」
「よく当てたな。あんな剣、今は作るんじゃなかったと思ってんだよな」
「貴方も大変ですね」
「お兄さん、のぼせた?」
「誰だお前」
「前会ったじゃん!」
猫が水面を叩くことで、俺の目に水飛沫が。ちょっとイラッとしたので感覚信号で痺れ殺す。悟り妖怪はすでに出ていた。躾しろお前。鴉の方は何故か人型を止めて身震いで水を飛ばしている。つまり、完全な被害者はこの猫だけだ。悟り妖怪の手を引きもう電流はないことを示し、話を戻す。バルムンクを刺してからかなり経った今、こいつ次第で俺は死にかける。普通に痛いから。星熊勇儀の衝撃が長く残った理由にこいつがあるかもしれないな。つい最近まで忘れてた。永琳も何も言わなかったしな。
「体内を知るのは一人だけ、と言うことですか」
「…今手元に新しく作ってみるわ」
「待ってください。それ、安全ですか?」
「知らん」
「今、勇儀さんを呼ぶのでそれまで待っていてくださいね!」
その間にあがる。いつもの服を着て、魔法で膜も作る。…かなり久しぶりに出すことになる。もしかしたら、心臓から抜き出てくることもあり得るな。新しく作った方が良いのか悪いのか…最悪、永琳のそばでやった方が良いかもしれない。地霊殿の客室で悟り妖怪を待つ。と、なんだか少し気分が良いのだか悪いのだかわからない星熊勇儀が現れた。眉間に皺を寄せているが、足取りはどこか軽い。…酒を飲んでもなお威厳を示そうと頑張っているのなら、今すぐ回れ右して水を飲んでほしい。つーか帰れ。
「よし、私の力で抑えてやるから、出せほら」
「140センチくらいの剣だからな。割と長いから、ちょっと離れろよ」
「はいよ」
魔法で生成する。割と魔力食うな…魔法陣は覚えてるし、作った時の感覚も思い出せるけど…なんでこれで刺さってたこと忘れてんだろ。分かんねえな。剣の形とかも大体は覚えてる。もっと強めに魔力込めるか。出来るかな。出来ないかな。というか、どうやって手探りであんな剣作れたんだろ。わけわかんね。と、悩んでいたところ出来た。やっぱデカいな。扱い方なんかは、多分レミリアの方が知ってるだろう。想像していたような荒事は起きず。じゃあなんでノーレッジが二度とすんなって言ったのか。
「…あれ、そんなものなんですね」
「お〜…デカいな。ちょっと良いか?」
「作っただけで疲れた。どうぞご自由に」
「珍しい。」
「それじゃあ遠慮なく…いだっ!?」
触れようとした時、何か光った。俺が作ったけどさぁ、効果とかあったんだ。もしかしたら、これ使ったらレミリアに…無理だな。素の力でかなり差をつけられている。元々、あいつに力で勝ってるのに勝てない理由は能力もあるのだが、素早さだ。俺は完全に力だけは強い人間。門番よりは強いし、レミリアとの力勝負なら負けることはない。ただ、走ったり飛んだりは無理だ。勝てない。門番にも劣る。動体視力は追いつくが、体が追いつかない。今度、挑んでみようかな。
「良いじゃないですか。見たところ、貴方の力なら振り回すのにそんなに負担はないでしょう」
「まあな。あいつのグングニルぐらいならなんとか出来るだろ。俺が持っても…」
「いっ…痛っ…ふーっ…殴って良い?」
「笑顔で聞くな。」
バルムンク…ジークフリートさんの剣。龍殺しとかにも使われたガチガチの魔剣。同一視されてるものにグラムだったりノートゥンクがある。グラムがグングニルと同じ神話なので選んだ。
ちなみに、グングニルはグラムをへし折った武器。