俺は(妹の幸せを願う)お兄ちゃんだぞ   作:覚め

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Q.どうして太ももに穴が空いてるのに動けるの?
A.神経の発する電気信号を弱くしているからです。今、奴は全身鈍い男です。



お兄ちゃんと死にかけの体

痛え痛えと喚く。展開した魔法陣が全て壊されている。レミリアの奴が壊しまくっている。ただでさえフランドールの素早さに対応するだけで精一杯なのに、魔法陣を全部壊されては肉弾戦しかない。バルムンクを作ってもすぐにフランドールが砕く。砕かれた破片はレミリアが丁寧に破壊する為、破片で攻撃することもできない。そろそろ痛覚を誤魔化すのが無理になって来た。咲夜のために頑張っているというのに。何故こうも部外者が。なんなら人外が邪魔をするのか。一緒にいた年数を数えても三十年を超えないんだぞ。

 

「っぁ」

 

「フラン、抑えて」

 

「無理」

 

顔面を掴まれてどこかにぶっ飛ぶ。レミリアは来ていないようだ。その勢いのままどこかに着地。精一杯の大綱をしてみたが、ほぼ無傷のフランドールと俺ではかなりの差があった。何をしてもほぼ効かないと言いたげな顔で対応される。その内腕も掴まれ、足も抑えられた。ならば魔法、と思うが使えない。魔力の枯渇か、はたまた魔法を打ち消す類の魔法をフランドールが使ったか。完全に抑えつけられ、行動が何もできない。思わず咲夜に助けてと言いたくなる状況だ。…なのだが、フランドールが動かない。

 

「…何だよ」

 

「私ならもっと上手く抑えられたのに。どうしてあいつ(レミリア)は自分でやったのかって考えただけ。じゃ、眷属にして良い?」

 

「ダメに決まってんだろ」

 

とは言ってもこの状況。何も出来ない。フランドールはかなり余力を残しているようで、しかも俺の言葉を聞く気はない。口が近付く。…そういえば、眷属にする時ってどうするんだ?吸血することは知ってるが、よくよく考えたらそれだけではないだろう。だったら咲夜も俺も血を食われているからとうの昔に眷属だ。…そんなこと考えてる場合じゃないな。レミリアに刺していない長い方のバルムンクをこちらに引き寄せる。…来ない。そうこうしているうちにフランドールの顔は俺の胸元に沈んだ。心臓部のバルムンクを使うべきか?いやあれは咲夜のものだ。使いたくはない。

 

「ねえ」

 

「何」

 

「私、正和のこと好きだよ」

 

「…俺の血はそんなに美味かったか」

 

「そうじゃなくて、私は正和のことが異性として好きなのよ」

 

「…ありえないことを言うな。気持ちの悪い悍ましいことを抜かすな。人と人外がそのような仲になることはない。」

 

今の言葉を吐いて、フランドールの力が緩む。足を脱出させ、無理やり蹴飛ばす。気持ちの悪い奴だ。そんなことよりも、レミリアだろう。あいつはフランドールが今見せた弱みなんてあるわけがない。魔法はまだ使えない。久しぶりに走ろうにも、片足が使えない。仕方なく、腕の力で行くことにした。実際、もう足の出血はどうにもならない。そろそろ死ぬと思ったのだが、全然死なない。レミリアかフランドールが仕込んだのか、それともノーレッジか。あの話し合いだけでか。頭イカれてんのか。

 

「…フランを振ったのね」

 

「何でだよ」

 

「運命を見始めたことには気づいてたでしょ。今更それはなしよ」

 

「お前ら自分勝手すぎるぞ。少しは社会性を持てよ」

 

「貴方に言われたくないわ。私の妹にあんな言葉を投げかけておいて」

 

「聞いてねえだろ。あの後フランドールが泣きでもしたか」

 

「正解。よくわかってるじゃない」

 

魔法はまだ使えない。門番を馬鹿に出来ない。魔法が取られたら、俺は門番にだって負ける。魔法があったから何とかなった場面があったのに、土壇場で魔法が使えないなんて何と言うことか。絶体絶命の中にいながらも、命だけは助かるこのような状況。まあ今のこいつの前では魔法なんて何も意味がない。全部壊されて終わりだ。そのくせあいつは速いし強いし。卑怯だろう。こちらも色々とやってやりたいが、もちろんそんなことができるならこの状況でも希望があるわけだな。無理か。

 

「何でお前らはそんなに拘るんだ。人外なのに」

 

「正和、それは貴方が紅魔館に来たからよ」

 

「来るもの拒まず、去るもの追わずだろ」

 

「我が紅魔館ではそうはならない。気に入らない者は追わないだけよ」

 

「そのせいで迷惑を被っている」

 

「そう。で、失血死までの時間稼ぎ、まだある?」

 

「なんで分かるんだよ」

 

「気に入らない?そうでしょうね。誰も見透かされることが好きな人間なんていないもの。」

 

分かっているならさっさと黙って欲しい。出血は止まらないのに何故か死なない。魔法が使えないから自爆もできない。もしやヘカーティアが死にでもしたか?…いや、ないな。あの化け物がそう簡単に死ぬわけがない。と言うか、あいつ殺せるのか?いやそうじゃない。太ももの話も魔法の話もどうでも良い。後回しにしていたが、問題が出来た。魔法が使えないのに、何で俺は太ももの痛みを感じていないのか。俺の脳みそがエラーを吐いているのかもしれない。若しくは、その魔法だけは使えているか。

 

「…さて、そろそろ眷属にしましょうか」

 

「断る」

 

「断られてもねぇ」

 

木を掴んで上に飛ぶ。確かめたいことがある。俺が腕力で飛べる限界まで飛んで大の字で地面に落ちれば出血を伴う怪我から骨を折るまでの幅広い怪我はするだろう。これで怪我しないほど体を鍛えた覚えはない。が、そもそもの飛び上がっている最中でその作戦を止められた。レミリアに捕まった。よくよく考えれば今は曇天。森の中だろうが雲の下だろうがあいつは同じ。その上で空も飛べる。速い。無理なことは少し考えれば分かっていた。脳みそがエラーを吐いているのかもしれない。最終手段を取るしかない。心臓に刺したバルムンクを操って抜き出す。

 

「手のかかる子ね」

 

「何でそれが分かるんだよ…」

 

「心臓から剣が出てきたら誰でも驚く。初見ならね。」




出てきて振られるだけのフランドール、可哀想。
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