イシュトヴァーンよ永遠なれ   作:デブレツェン

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どうもデブレツェンです。1日2回俺は出します(大嘘)

続きが思ったより早くできてしまったので。短めですが、元々その予定でした。

それでは、十五話 ロウリアへのシンフォニアです。どうぞ。






第十五話 ロウリアへのシンフォニア

 

ここはアルタラスという国。ここでは、軍事訓練を行っていた。

「……アルタラス王国の兵士は強いのですね。」

ヴィクトルがポツリと呟く。ターラは答えるように、少しだけこくりと頷いた。その額に汗が浮かぶ。中庭とは違う、ぼうぼうの緑の中に兵士たちが数十。そんな、エメラルドのような緑の中で、弓を引かなくてはいけないなんて。ここも、じきあんな風にぶっ飛ばされる。何だったか、そうだ。魔道砲によって。

「……先ほどの貴国との海戦、拝見しておりました。しかし、やはり我が国の風神の矢は通用がしなさそうです。」

そこにあったのは、木のバリスタ。試しに撃ってもらうと、なるほど。爆発もするし、こっちのバリスタより幾分ましな射程だ。顎に手を当てて考えるソンバトヘイとヴィクトル。確かに、このバリスタじゃあいくら多少の射程を誇ったって、あの海賊船には通用しない。と、なると使えるのは何かないか。

「あ、そうだ。」

ヴィクトルが、まるで何かを見つけた子犬のように走り始める。この、無用の長物の使い方が、見つかったのだ。

「これを、歩兵に向けてうってはどうでしょう?船には通用せずとも、陸ならば全然使えます。」

「た、確かに。それは盲点であった。歩兵ならば、これを防ぐ術はなかろうに……」

ターラは、しょぼんと気の毒そうな顔をする。それは、敵への同情か。はたまた、主力兵器をこんな風に使うことへの情けなさか。何れにせよ、この国王は優柔なのだなとヴィクトルは解釈した。

「そうそう、我が国の兵士たちだけでなく、我が国の兵器も少しですがご用意しましょう。」

これは、実は本当にあるもので、ヤーノシュが兼ねてより準備をしていた。クワトイネのように、拳銃を渡すがいいと思った者もあった。だがしかし。それでは、他国への技術流出が怖い。まして相手は列強国。種子島と海賊船で、ぶいぶい言わせているだけとは言えども、鹵獲されるのはまずい。どうすべきか。考えた末にたどり着いたのが、この兵器の輸出。まあ、そんなことを言い出せばプラセンタNも地面に不発弾が残るのだが。

「それと、我が国のコンパウンドボウを、今回に限り1000本供与します。この拳銃は、20本。プラセンタNは、1発です。ただし、現場で我が国の自走砲が発射します。」

聞き慣れない単語に戸惑うターラ。しかし、ヴィクトルは続けた。

「それと、この大砲というか、銃も生産次第お渡ししましょう。」

その、綺麗な白い紙には設計図が示されている。ターラはその紙の制度にまず驚いたが、メインはそこじゃない。そこに描かれた、銃砲。それこそが「ダブル・ヘイク」。直訳すると、「二脚銃」である。そう、この兵器こそ適任だと抜擢された兵器だ。だって、古くて、単純な構造で、似たようなものを適当に量産できる。それならばと、国中の職人や工場が作ってくれている訳だ。まあ、それより自国の兵器を作れよと言いたい話だが。特筆すべきは、この兵器、今回に限り軍需産業に携わっていない中小企業でも作れることになったのだ。これは、非常に不味いのではないかとも言われたし、実際そうだと思う。ただし、厳しい精査があるし何より民兵と武装警察が跋扈する今、わざわざこんなマスケットで暴れない、という結論に至った。それに、アルタラスには申し訳ないけどこいつはびっくりするほど取り回しが悪い。考えてみて頂きたい。自転車ほどの大きさと重さのものを、銃を撃たれる戦場であちこち向けることができるだろうか。

兎に角、国内で流出しても問題はなく、技術的にも大丈夫。その辺のバランスが良好だったからという根拠でこの兵器は選ばれたのだ。

「おお!これが、銃ですか!しかもパーパルディアのより大きい!」

「その分、取り回しは悪いですがとても深刻なダメージが与えられるでしょう。」

実際、ソフトボールくらいの鉄球が高速で飛んでくると考えれば脅威でしかない。そういう意味でもこの兵器は適当だった。

「なるほど……これは、早急に準備を進めます。」

訓練は、まだ続く。このパーパルディアという悪魔がいる限り。

 

 

 

 

夜が明けたロウリアの首都、ジン・ハーク。以前のような、勢いも、活気も、心地よい灯りももうない。ただ、昨日の流星のせいか煙がぷすぷすと燻るだけだった。こんな、鉄壁だと思っていた街。それは、こうも簡単に崩されるだなんて。必死に泳ぐみたいに、ハークは街を泳ぐ。どうしてか。ただ、歩いているだけなのに、物凄く疲れる。いつだかの子供も。兵士も魔獣も竜も。みんなみんなみんな、こうやって死んでいった。黒炭だけになった街を見て、膝を折るハーク。負けた。負けてしまった。こんな街で、どうやって戦えというのか。ハークにとってそれは、木の棒で魔王に挑ませてくるような理不尽に感ぜられたのだ。

「……こんなことが、許されていいのか?」

ハークはその場に居竦まるしかない。だって、どうしようもない敵を相手にしているから。焼け野原になったジン・ハークに青空が広がる。屋根も何もないから当然の摂理だ。ハークが立ちあがろうとしたその時。彼方から、ばらばらというあの音が聞こえてくる。そして、黒い影が見えてきた。ああ、もうだめなんだ。

「……くそ……もはやこれまでか……」

生唾を飲み覚悟を決めるハーク。そして、その場で大人しく座っているのだった。数年をかけて、成し遂げようとした悲願は、ある国家の介入で終わった。もし、亜人に味方していれば。もし、ここに戦争が無ければ。そんな反実仮想だけが、ハークの頭に浮かぶのだった。

「レーチェル大臣!あれを!」

「……噂以上にひでえな……」

レーチェルは、銃をぐっと握りしめた。手に、無駄な力が入る。それでも。それでも今日こそは、自分の望んだ兵士たちになれるんだ。エルも、その事を理解したのか。風の中、それに負けないほど力強く話し出す。

「諸君。今日のコロナ中隊は、殺戮が任務ではない。救助だ!降伏を迫り、抵抗すれば撃てばいい。しかし、残りは誰でも!糸目をつけずに助けろ!」

「サーイエッサー!」

ヘリコプターが降り立つと、周囲に砂がぶわっと巻き起こった。目の前には、崩れた家ばかり。いや、家と言われては絶対に信じないと思う。レーチェルも、エルも、こんなのはだたの色付きの石クズにしか見えなかった。そのまま、銃を両手に進む一同。呻き声を聞きつつも、その方角へ走り出す。

「ひ、ひい……ど、どうかこの子だけは……!」

「大丈夫ですよ、何もしません。救助に来たのです。」

その後ろからは、何やら変な棒を持った兵士や犬を連れたのがぞろぞろ出てくる。彼らが、この場所の「戦後処理」をしてくれるのだ。無論、助ける状況では助けてくれるが。その親子はまるで、死んだ家族に会ったみたいに、泣き崩れる。ここまで、良く耐えたものだとエルは思った。

「さあ、此方へ!」

「大丈夫ですか?お怪我は?」

「もう大丈夫だぜお嬢さん。」

続々と運び込まれる人々を見て、驚くハーク。これは何だ。まさか、怪我人をも奴隷にするのか?足手纏いになるだけなのに。

「……ハーク・ロウリア34世ですね。久しぶりです。キシュ・レーチェルと言ったら分かるでしょうか?」

そこに居たのは、いつだか追い返した外交官。もうだめだ殺される、そう思った時だった。

「……さて、ではこうしましょう。貴方は王を続ければいい。しかしその条件、お分かりですね?まあ、ここまで搾取しておいて黙っているとは思えませんが。何れにせよ少し来て頂きましょう。我らが祖国、ハンガリーに。」

ハークに数人の兵士たちがマークする。でも、ハークは嫌な気はしなかった。寧ろ、あの宣戦布告をした時とはベクトルの違う、とても清々しい気分に飲まれたのだ。

「………わかった。余は投降する。今後、兵士たちの抵抗に合えばそう伝えてくれ、」

「ご協力、感謝します。」

レーチェルの顔は笑っていない。しかし、こんな日は2度と来ないと笑わずにはいられなかった。空には、やっぱり青い空が広がっている。

 

 

 

 

 

「そうか、やああっっっと降伏してくれたかロウリアは。」

「はいなのです。」

もう2度と手に入らないメルローを、グラスにそっと注ぐ。華奢なグラスがきらりと輝いた。

「どうだね一杯?誰だっけお前、そうだ翠星石。」

「本当の名前はもう敢えて隠しておくです。」

翠星石が諦めたようにソファーにどかっと腰掛けた。いや、そこ俺たちのソファーだよ。おいそれ俺たちのワインだよ。何勝手にでーんと座って飲んでやがると言いたい。でも、そんな心はそいつのぎろっという睨みにかき消されてしまった。気のせいだろうか。何だか、所作とか性格まで似てきてる気がする。それはもちろん良くない事という意味で、だ。

「名前考えるのが面倒くさいだけだろ。」

「げっメタい!何でバレてるですか?」

「見え見えなんだよアホが。」

そのまま、甘くて渋いワインを口に流すヤーノシュ。新しい戦いなんて、知る由もない国民たち。そう言えば、国民にはどうやって報道してるんだろう。確か、戦場カメラマンを使ったんだったか。

「テレビつけてくれよ。」

「はいはい。」

また勝手にポテトチップスを齧りながら、(暫定)翠星石がリモコンをぽちぽち弄る。すると、さっきまで黒く、

ヤーノシュを映していた液晶に映像が流れる。

「ああちゃんと報道してるじゃん。転移って。」

しかし、ヤーノシュが釘付けになったのはそこじゃない。いや、最初ヤーノシュは別にあまり気にしていなかった。その時、翠星石が勝手に食っていた菓子を取りこぼす。行儀の悪い、子供みたいに。

「おい、何してんだ。」

だが無反応の(仮称)翠星石。その見据える先は、テレビ。

「一体テレビに何が………ゑ?」

思わず、まるでゴルゴンと目があったみたいに固まる2人。だって、全然信じられなかったんだ。テレビの言っていることが、どうしても。

「ガソリン、こんな高えの?」

ロウリアに勝って浮かれた一行。しかし、そこにまるで氷壁のように打ち付ける現実が、目の前にあるのだった。外では、相変わらず青いドナウ川が、流れている。

 

 

 




如何でしたか?

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次回あたりから、パーパルディアが出てきます。まだ、戦うとは限りませんのでご了承くださいませ。

次回も楽しみに!

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