冬休みには、投稿頻度もだいぶ上がると考えられます。今回から戦後処理に入ります。ついに、ニコラウスさんが来ますね。皆さん、クリスマスは如何お過ごしになりますか?ニコラウスさんが来てくれるように振る舞いましょう。ちなみに今日、貰えました。靴に入ってましたチョコレート!やったああああ!
さて、第十六話 戦後処理です。短めでごめんなさい。
第十六話 戦後処理
ハンガリーでは、アルタラスから帰ってきたヴィクトルが早速ご発狂されていた。
「やったぜえええええ!この塩漬け地獄から解放じゃあああ!」
歓喜しているヴィクトル。でも、申し訳ないがこの現実を伝えねば。それだけじゃない。勝った勝ったって浮かれてるが、条約はどうするんだ。そこも、ちゃんと彼の仕事だ。でも、今のヴィクトルはもはや船酔いから解放されただけで十分だったのである。
「あのう、悪いがいろいろお話が御座いますの……」
苦笑いしながら、そう話しかけるヤーノシュ。本当に、申し訳なさそうに。
「……実は、石油高騰が止まんないの…」
「ああ、実はあるんだなあこれが。それも飛び切り美味い話だ。」
勝ち誇ったように笑うヴィクトル。この石油問題も、船も。一体どうやって解決するのか。とびきり美味いってどういうことだろう。
「ロウリアにはまだあるだろう、あれが」
「焦ったい。」
ヤーノシュが、ちょっと苛々し始めたのか。指を机にかつかつと叩きつけ始める。
「ほら、こんなに文明レベルが離れてる相手に、ゴリ押し上陸できるほどの……」
あっと閃いた発明家のように、ヤーノシュが指をぴんと立てた。
「そうだ2000隻以上の大艦隊!あれを、戦後賠償で頂けばいいんだ!そして、民間軍事会社もしくは輸送会社を建てる。そいつらに石油を運ばせれば……」
「ああ。そういうこと。まあ、半分僕らの傀儡にするつもりだけど。」
ヴィクトルは、思い通りに行った子供みたいに機嫌が良さそうな顔を続ける。続いてワインボトルの中の、ボトルシップを眺めた。気でできたその船に、きらりと輝くガラス。そのガラスを、子供をそっと撫でるみたいに擦るヴィクトル。ドナウ川の綺麗な外からは、陽の光が美しくさしていた。色とりどりな、ステンドグラスを介して。
「つまりだな、その会社で運輸業と傭兵やって、儲けの一部をいただくと。中々にゲスいことを考えるじゃないか君も。」
「お互い様だよ。ま、中身が何なのかはちゃんと伝えるさ。」
当然、そのつもりは本当にある。だってよく考えてみてほしい。得体の知れないドラム缶を、ただ危険物だと言われてもだ。具体的にどういう風に危険で、どうして扱うのが正解なのか。何故そんなやわな扱いをせねばならんのか。ちゃんと説明しないといけない。なぜならきっと、日々沢山の作業に追われる港湾労働者だ。効率化を求めるのが自然だし、そういう「無駄」っぽく見える工程は省きたくなるだろう。
「まあ、先述の金と、傭兵については小遣い程度さ。自分たちの指示で動く警察は、なまら便利だからね。」
そう言いながら、またさっきみたいに満面の笑みを浮かべる。ヤーノシュもそれに合わせるように笑う。それだけ見れば、本当に酒なんて飲まない人たちの会話のようで。そんなことに、ソンバトヘイももう笑うしか無かった。
「さてさて、それでロウリア軍はどうする。粗方わかるが」
「いや、きっと我々が口煩く言わなくても軍縮に向かうだろうさ。」
普通に考えて、あの量の軍を維持できる訳がない。国益の為にも、輸出か新造艦の的だろう。とにかく、何某かの処分がなされるはず。そこで我々が貰おうという訳だ。
「そうだ。もし、ダブルヘイクが余ったら商船の武装化っていう体で売りつけても……」
「そうでなくとも、外貨を手に入れるチャンスではある。ロウリアの武器は、売りに売りまくろう。奴さんにもそれがいいだろう。」
だがソンバトヘイは、少し残念そうに肩を落とす。こんな美味い話ないだろうに。どうしてだろうか。
「……はあ…こんな風に楽に外貨を取れりゃあよかったよな。前の世界でも……」
「気にしちゃダメですよ。ソンバトヘイ閣下はまのさばが買えなくて喚いてるだけです。」
「げっ翠星石(仮称)いつの間にッ!ていうかなぜそれを!」
翠星石(仮称)は、あほくさい問題を対処するみたいに肩を窄めた。本当、事務的に。
「まあまあ、兎に角!転移で失ったものは大きい。だけど、得るものもまた、大きいんじゃないか?」
ヴィクトルはカラフルなステンドグラスにかけられた、赤いカーテンをジャっと開く。眩しい光が、ぴかっとドナウの上から刺してきた。
「何だったかな。虎穴に入らずんば虎児を得ず、だったかい?」
「ちょっと違う気がするですけど、まあいいです。この世界も悪くないですね。」
へへっと頷き、鼻をかく(暫定)翠星石。だがまあ、その通りでこれからは金儲けの兆しも差してきているのだ。色々な意味で、パーパルディアとやり合っている暇なんざ一刻もない。
「それにしても、ちょっと面白いものだったな。あの、シャークンとかいう奴の反応。これから国王陛下も来るんだろう?」
ヤーノシュが、ワイングラスを傾けながら言った。ヴィクトルも喉が渇いたので、感化されたみたいにワインをつぎ始める。これもまた、もう2度と手に入らないメルロー。きっと、こういう事なのだろう。異世界転移というのは。きらきらと美しく照り映える、その赤色のワイン。それを、くるくると回しながらヴィクトルは言った。
「ああ。修羅場は回避したい。何せ、方針が違ったらしいから。兎に角、あの2人の反応が本当に楽しみだよ。というか、シャークンはもう見せたが。ここにきた時の反応見たかソンバトヘイ。」
びくっと驚くソンバトヘイ。よく見るといろいろおかしい。先ほど石油高騰について移したテレビなぜかスーパーマリオが移っているし、いつの間にかそれを始めてるし。そのことを勘づかれたのに今更気付いたのか、ソンバトヘイはバツが悪そうな顔をした。ヴィクトルは呆れたように目をぐるりと回す。ここまで来て落ち着いた表情にすんと戻せるのが、本当にすごい。
「ああ。まさに、あれかにもあらずと言った様子だったな。」
「へいへいそうだな。」
肩を窄めて首を振るも、悪びれる様子はないソンバトヘイ。
「……ま、これからも頑張りましょうよみなさん。それじゃ乾杯。」
「乾杯」
いじけるソンバトヘイ。呆れる一同。こんな何気ない日常が、政治であってはならないな、と思うヴィクトル。別に、悪い気はしないが。そうしてこのまるで小さくされた場所に、かちんと渇いた音が響き渡った。
「ていうか、未だ条約締結してないけどなあ……」
「あ、おいそう言えばブーツの中見たか?」
「やっぱだめだよこいつら。」
12月6日、とても寒くて心地よい風の吹く日だった。
晴れ晴れした水色の空に、エメラルドグリーンの平原。そこに、風がびゅっと吹きつけた。いや、吹き付けたんじゃない。作られた、そんな透明な風。その風はダウンウォッシュと言うらしい。ばらばらと、大きな音がする中、草花その風にぶわっと舞上げられて騒いていた。
「……ここが、ハンガリーか?」
「はい。こここそが、我らが祖国。」
「………」
黙ってすたすた歩き始めるハーク。その背中は、罪人というより責任と言えた気がするエル。こうやって、お縄に括り付けているエルという立場でも、そう感ぜられたのだ。だから、きっと国民にはもっと良く映るだろう。エルはそう思い、少しだけ顔を緩めてしまった。
「……それにしても、シャークンは無事だろうか。」
「ご安心ください。貴国の捕虜は、誰1人として殺しておりません。」
「そうか。我はどうなる?」
「無論ロウリアの代表として、条約にサインして頂きましょう。」
レーチェルがエルの代わりに割り込んで言って見せた。ところで、このハーク・ロウリア34世はもう抵抗する気はさらさらない。ただ、心配なのが諸侯の反乱。ここまでの侵略や圧迫も含めれば、自分だけでなく国内も危篤に晒されるだろう。だから、別に降伏する気は全然あるのである。ただ、それを良いことに起きるだろう何か内乱を鎮める羽目になるのはごめんだ。だがしかし、それ以上に驚いたのが殺す気も罰する気もない事である。前者なら、まだわからないでもないが、どうして罰せぬというのか。そんなハークの心を見え透かしたように、レーチェルが続ける。
「と、言うのも貴方には王であって頂く方が都合がいい。無論もし抵抗するならば、諸侯と協力する心持ちではありましたが。」
「……では何故我をここまでして守る?」
「象徴は居るべきですから。勿論、あのメチャクチャ作戦の真相も公開する予定ですよ。」
というと、あのあながちなる作戦も全て、見透かされていたのか。車は颯爽と走り出す。まるで、本当に風のように。
「……そうか、全てわかってるのだな。」
「ええ。何もせずにここまで荒廃した国を見捨てて頂く訳には参りませんのでね。ロウリアの復興も我々も望んでおりますので。その復興をできる政治屋は幾らいても構いませんのでねえ。」
レーチェルが振り返ると、ハークの恐れた顔が目に映った。この広い平原を、延々と走る黒い車。道という道の中、この国の豊かさが、毛虫が這い上がる如くまざまざとハークに伝わってきたのだ。
「ああ、そうだったのか……あれは、旧式の飛行機械か?」
「ええ。この空港には、こうやって旧式の飛行機を飾ってある博物館があります。帰りに、ご覧になられますか?」
「いや、結構だ。」
もうお腹いっぱいだから。そう言わんばかりにハークは頭をかく。その様子に、エルは思わず吹き出してしまった。
「その、条約の内容については、」
「ええ勿論。大雑把にであれば。」
レーチェルは少し咳払いをする。外では、高速で移動する田畑の道。ハークにとってそれは、憂鬱の鏡合わせでもあるし、そうでないものでもあった。
「条約の内容ですが……まず、完全にロウリア軍との戦闘を中止。クワトイネとクイラ、ハンガリーに対して賠償金と謝罪をする事。我が国からの技術、武器供与。ロウリアの連邦化。及び、同盟の樹立。軍縮といった所だろうな。」
腕を組みながら、話すレーチェル。ハークは、一気にこの条約を聞いていたが、あまりに何と言うか。生優しいと言うとちょっと悪いかもしれないが。兎に角、ある種生ぬるさを感じるほど、敗戦国に見合わない条件と思った。
「ど、どうして武器の供与を?」
「そりゃあ、いきなり戦争相手と停戦して同盟したら、スポンサーが黙っていないでしょうからねえ。」
今日はもう何度驚いてしまったんだろうか。パーパルディアについても知られている。当然、我が国の情報網を舐めないでくれとレーチェルに言われた。
「……やはり、何から何まで全て読まれていたのか……だが、どうする。連邦化をすれば諸国はどうにかなるやも知れん。だが権力を失った我の王位を、諸侯が狙うやも知れん。」
「ええ。ですから、我々が新しいスポンサーという訳です。クーデター相手が居るとして貴方ほど話の通じる人とも分かりません。」
なるほど確かにパーパルディアだけで無く、反乱分子にとっても国家4カ国の連合は厄介であろう。
「……わかった。宮殿までは、どの程度かかる?」
「もう少しですよ、もう少し。」
ざわめく街中を走る黒い車。その景色は懐かしくて、そしてどこか違う、ハンガリーの景色だった。
ここはパーパルディア皇国の首都、エストシラント。道を進んでみるとその中に、一風変わった白い建物がいる。その名前は、第三外務局。なんというか、技術力や国力を誇示したいのか。石畳の道と、本当にかつての欧州みたいな綺麗な建築。そして、煌びやかな装飾と高そうな骨董品。
そんな者たちに囲まれて、ある職員は書類を書いていた。ぱちぱちと、暖炉の薪が赤く燃える。この、寒いけどどこか暖かい空間は、ロウリアのとは違う。しっかりと、暖炉の日に照らされて昼間のように明るいのだ。
そしてここにも、ロウリアがやられた仰せは伝わっていたのだ。もちろんだけど、その投資相手が負けた上勝手に浮気しようとしているのだ。
「……ロウリアが負けた?我が国の支援もあってか?」
真っ白ではない、少しクリーム色の混じったざらつく紙を見つめる職員。暖炉では、相変わらずそっと炎が燃えていた。そのままゆっくりと顔をあげる。その顔に、どんどん皺が増えているのが目に見えてわかった。やっぱり、こんな報告をすればこうも怒られるだろうな。自分のせいではないのに。こうして職員は、早くもこの国に根付く一種の理不尽に、気づいてしまったのだった。
「はい。」
「はい、じゃ無いんだよ。あの計画にどれだけ投資したか分かっているのか?」
これだけの金をかけて、成果なしは怒られるどころじゃあ済まないだろう。職員は頭を抱える。明るい火に照らされながら。
「やめだやめだ。こうなったら、そのハンガリーとクワトイネ、クイラにロウリアを全て召喚しろ!」
だがその時、茶色い木のドアを蹴破る勢いで、青い服をきた兵士が入ってくる。はあはあと、荒い息を立てるあたり、結構走っていたらしい。
「どうした落ち着くんだ。ほら座れ。水は?」
「ありがとうございます……実は、その……とんでもないことが……」
「……何だ!」
まるで水を得た魚のように、勢いを取り戻した兵士。しかしその口から飛び出したことの数々に、職員はまただるまの如く転がるほど驚いてしまうのだった。
「え?どういうこと?」
「どうもこうも、申し上げた通りです。ロウリアに停戦の兆しがあります。しかも、皇国を裏切りあまつさえクワトイネやクイラと同盟を!」
何と言う事だ。こんな事があっていいのか。皇国を、ここまでコケにするとは。文明圏外の蛮族はやはり無茶をするな。流石だ。
「さらにアルタラス王国の監察軍が、全て撃沈されました。」
わなわなと震え始める職員。その顔は、もう皺なんてない。顔が火を吹いたみたいに真っ赤で、その分別も何も付かなかったのだ。
「………もういい!これは、もはや第三外務局のみに限った問題ではない!皇国そのものの威厳に関わる大問題だ!都合の悪い部分はしっかりとかき消して、上に報告する!」
いや、怖いのは分かるがそこも書いとけよと思う一同。だってその方が帰って祖国の為になるだろうし。
「兎に角、まずはロウリアに事実確認を!回答次第では、監察軍を送ってくれるわ!」
そこではっと気付く報告兵。そして、指を立ててから言った。全てのマスターマインドを忘れているじゃ無いか。
「……あの、全ての発端たるハンガリーもやるべきかと。アルタラスとロウリアだけでは、きっと皇国に太刀打ちもできません。ですが、クワトイネ、クイラ、加えて、蛮族ながらこの国家の中では突出した軍事力を持つであろうハンガリー。それらが群れれば、死屍累々ながら旧式の観察軍をどうにか追い返すことが可能かと。」
なるほどよくある話だ。まるで、我が国をお化け屋敷や心霊スポットと勘違いしている小国どものなんと多いことか。大きなため息をつく職員。そのまま、『都合の悪い書類』を、メラメラ燃える暖炉の中へと放り込んだ。
「……とりあえず、その外交というやつは上にお任せしよう。やむごとなき人の言うことは分からんからな。」
そこまで言うと、また、はあっと大きなため息をついた。暖かい空気が、部屋を包み込む。
「観察軍は、いつでも出れるようにしろ!先ほどのことを、全て本国に報告!」
「はっ!」
報告員と兵士が部屋を出ると、さっきまでそこにあった黒い影もすっと姿を消す。
「……第三文明圏の王者は、我々であるべきだ。」
そう言う彼の目には、炎だけが映っていた。まるで、野心の鏡合わせのように。
いかがでしたか?
そろそろ、パーパルディアとの接触に入ります。
一体どうなるやら……
次回もお楽しみに!励みになりますので、よろしければ、お気に入り登録と高評価お願いします。感想も、全て目を通しますのでぜひお気軽に。
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