今回は短めです。ごめんなさい。これからの方針をどうしようか、めちゃくちゃに迷っております。そのため、あまり無闇に進めないのです。ごめんなさい。
さて、二十七話 クランプスの如くです。クランプスは早い話、ブラックサンタみたいなやつです。そう言えばクリスマスの時にちょっと出した気がします。
それでは、どうぞ。
これは、「あの出来事」の少し前の話。
姦しいほど明るい部屋の中。豪華な金に囲まれている男女があった。しかしその顔は真剣そのもの。それもそのはず。彼らこそが、この天下を左右する2人なのだから。そう。彼らこそがこの国の皇帝。そして、それに謁見した女の赤い服を着たるはレミール。彼らは、涼しい執務室の中会話を交わしていた。
「………そうか。ではハンガリーは真の蛮族だったのだな。」
「はい。必ずや、皇国に牙を向くでしょう。」
「そうか。我は蛮族にも等しく、滅びから脱する機会を与えるべきだと思っていた。だが、真の蛮族に限ればそうではなかったようだ。」
すっと立ち上がって、レミールへと振り返るルディアス。その目は、まるで夜のように真っ暗だった。
「どうやら其方が正しかったようだな。もはやハンガリーに慈悲はいらない。」
ばっと立ち上がって、マントを翻すルディアス。その様子はまるでかつての英雄たちのよう。
その瞬間のことだった。目の前が、どかんという音とともに、真っ暗になったのは。
がらがらと、瓦礫の崩れる音がする。私の体に、ひゅうっと生ぬるい風だけが吹きつけてきた。右腕は、あの時からどうしても上に上がらない。ならどうやってここまで来たかって?そりゃあ、侍従に運んでもらってだよ。今は療養していた最中だから。
「………うう……くそ……」
防衛隊は何をやっているんだか。どうして、こうも抜け抜けと攻撃を許したんだ!レミールの中に真っ赤なマグマのようなものが沸々沸き始める。それが、どんな感情なのか。誰に向いてるのか。それはもはやレミールにも分からなかった。ただ一つ分かったのは、蛮族ハンガリーは卑怯な手を用いて奇襲をしたということぐらい。
「くそっ!ハンガリーめっ!蛮族のくせn……」
と、言いかけた口を手で紡ぐレミール。街が、蛮族たちに誇ったあの街が。そのすベてが焼き払われているのだから。これを見て、レミールは口に手を当て目を丸くするばかり。彼女はまるでゴルゴンに睨まれたように一歩も動かなかった。いや、動けなかったのだ。
彼女の背中にぞわりと何かが迸る。啜り泣く傷などはもうどうでもいい。今は目の前に広がる、こんなひどい光景にただ恐ることしかできないから。レミールの背後には、マイケル・マイヤーズでもいるのだろうか。何度も言うようだが震えが止まらない。
炎が、いずこにも燃え上がり、瓦礫が積み重なる。それらがまるでレミールを包んでいるようで。そして、その光景に敢えてタイトルをつけるならばそう。それを言わば、『地獄』のななり。
「皇帝陛下ー!皇帝陛下ー!」
はっとして、声の方向を見るレミール。顔はまるで辛酸を飲み込んだみたいにくしゃりと歪んでいる。まさか。そんなまさか。レミールの心臓はまるで思い切り走ったみたいにバクバクと鳴っていた。
「皇帝陛下!レミールです!お返事を!」
侍従を押し除けて言い放ったその言葉に、返事は何も無かったという。ただその、目を閉じて虚空を見つめているような表情を、いくら突いても何も返さない。本当に、まるで最初からマネキン人形だったみたいに。
「こ、皇帝陛下……?皇帝陛下ー!!」
皇帝ルディアスは死んだ。これが、蛮族にできたことかは。これが、未だかつて皇国がされたことのあるものだろうか。レミールの顔はどんどんと、まるで深淵に落ちてくみたいに暗くなるばかり。
「おのれ……おのれハンガリーめっ!よくも皇帝陛下をおおおおおおおおおおおおおお!!」
そうして、魔王のようなオーラを纏うレミール。いや、女帝レミールと言うべきか。そんな、ポーンの気持ちの分からぬクイーンは、部下たちに向き直って言い放つ。
「ハンガリーに宣戦布告、いや………殲滅戦を宣言しろっ!」
誰も、何も言えなかった。それが、初めてになるレミールへの同情だったという。
「まあ、それは後ほど。」
と、リルセイドを宥めて何時間だろうか。こいつはさっきから、ついてきやがる。なぜウロウロしているかって?自走砲を配置する場所を探しているんだよ。
焼けこげた平原。そこに、何だか変な臭いが。焦げ臭いのを発していたのはやはりワイバーン。やれやれとスタメナは首を振った。これじゃ、案の定もいいところだな。ワイバーンって美味いのかい?美味ければ食ってやろうかこの丸焼きを。とりあえずは、リルセイドに何かメンションせねば。
「どうやら、山は超えたようですな。何よりです。」
私たちは対空兵器なんてないからな、と付け足すスタメナ。エマ司令たちが頑張ってくれたのだろう。この空襲から守るために、ただの掃海艇で。よくやったものだよ。本当の話。
「エマ司令にスタメナ司令、わかってますね?」
「はいはいわかってますよ。プラセンタを使うな、ですね。」
スタメナは目玉をぐるりと回した。ここまでこの重いのを運んだ労力は?苦労はどうなると思っているだか。まあとにかくこの縛りでやってみよう。全く何が残虐なんだか。
「エマ!いくぞ!アルタラス海軍と協力して竜母を叩きにいくぞ!」
スタメナは別に止めなかった。どうでもいいという意味じゃない。よくよく考えれば、艦載機のいない空母など丸腰同然だから。その護衛の駆逐艦を蹴散らせばおわり、というわけだ。
「それじゃあ、行ってきます。手合わせはまた今度で。」
「ああ。それまでには、私を納得できる強さを手に入れてほしい。」
ブーツを鳴らして船に向かうエマの背中。そこには、まるで何かが取り憑いているようで。ハッとして、リルセイドは言い放つ。どうしても、それは嫌だったから。
「エマ司令!」
向こうも、その三つ編みをふわり揺らしてこちらを振り返って見せた。静寂の中。ただ、風の音が響く。
「死なないでくださいよ?」
こくりと頷くエマ。それは、本当に死ぬはずがないような笑顔だった。
「………で、どうするんだ。」
見送った後の話。そう言いながらオルガのポテトチップスに手を伸ばすスタメナ。その手をばしっと叩き落とし、こっちをぐっと睨むオルガ。どうやら、それは許されなかったようで。
「パプリカ味のポテトチップスなんざいくらでも買えるだろう、ケチくさい。」
「バカ。気候が変わるに決まっているよ、これから先。だからこれも貴重品なの。」
「あのなあ未成年飲酒ちゃん。なんか知らねえが不思議な力で気候が変わらんとよ。」
「へえ。」
と、言いながらまたポテトチップスをぱりっと食む。
「あん?分かってんのかオルガ。俺たちが、プラセンタを使うなと言うんですぜ。」
「よかったじゃん。使いたくなかったんでしょ?」
その瞬間。呑気に指をぺろぺろ舐めていたオルガの胸元が、ぐわっと持ち上げられる。
「分かってんのか?そういうことじゃないんだよ。あいつら俺らを格下に見てるんだ。心の何処かでは。な。」
「は、離して……離してスタメナ!」
「てめえはそうぬけぬけとやってられるかもしれねえが、な。俺はそういう愛国心とか自尊心とか言うのを大事にするんだ。あの女それを知ってやがるんだぜ?知った上で俺たちに『命令』してんだぜ?」
「………」
怒りに任せたその手のひら。喉から、絞るように声が溢れる。でも抵抗できない。いや、抵抗しようとも思えないんだ。だって分かってたから。アルタラスだけじゃない。異世界の、気分を弁えぬ国たちへの侮蔑を。
その時、後ろからびゅっと風が吹いて後ろから人の気配が。思わずスタメナが振り返ると、そこには三つ編みの少女の風にコートを靡かせたるがいた。
「スタメナ司令。それ以上は。」
彼女は、こちらに鋭い視線を向けつつ、拳銃を構えている。目元が、ものすごく暗い。まるで漫画のように。いつのまにかそこに。スタメナはオルガを放すしかなかった。どさっと、緑の草に肌色が落ちる。
「………失礼した。」
すると大人しく銃を下ろすエマ。だがその目の色は全然変わってない。それを見るあたり、どうやら本気のよう。
「ああ、そうだ。君はいいのかい行かなくて。竜母を叩くんだろう。」
はっとしたように口を開くエマ。それでも、その目の色は変わらない。まるで蛇みたいにこちらをぎろり睨んで、離してくれなかった。スタメナは苦笑する。さっきのとはまるで逆じゃないか。
そうして去るエマを見届ける。今更、こいつをいじめる旨みもあるまい。私はその場を立ち去ろうとして、ぴたりと止まった。
「そうそうオルガ、上のポンコツは対空兵器を積んでない。だから、気をつけるがいいよ。」
そうして、スタメナはまた海の方へと逃げていった。
ここは、レティニエの港。
「今回は変わり種を用意して見たんだ。」
そう言いながら、上陸部隊を見送るのはヴィクトル。その目の前には、折りたたみの自転車を携えた兵隊たちが。そうして、上陸舟艇に向かうとそれを乗せるための場所も。至れり尽せりだな。と、ヤーノシュは思った。
「そう、これは自転車部隊。石油がいつ切れるかわからん現状、燃料も要らぬ起動戦力は素晴らしいだろう。」
もう一つ、彼の言う変わり種はある。それがこちら。
「自動車化歩兵だよ!ス○キの現地法人から金に物言わせてなんとか大量に購入したぜ!ちなみに、推進器もス○キ製のボート用エンジンだぜ!ああ、上陸用舟艇のね。」
「なるほど。自動車メーカーの軍事転用、か。」
やれやれと首を振りつつも、少しだけ顔を緩めるヤーノシュ。ここまで早く、しかも兵器なんかに流用できるのだから。その時。
「報告します!エストシラントへの奇襲攻撃、デュロでの攻撃に成功!その後、アルタラスの掃海艇艦隊も追撃に出ました!」
「よくやったよみんな。さあ、殲滅のメロディーを!!オペレーション・レザーフェイスの真核をっ!!」
ヴィクトルはそう言いながら空を仰いでみせる。が、誰も止めない。だって気付いてしまったから。彼の底知れないほど深い憎悪に。だから、誰も止めない。止められない。
そうして彼は、招集をなされたコロナ中隊へ向き直る。その数50名。これらと足してだいたい15000人ほど。ハンガリーの国力を鑑みれば、普通にえげつない数だ。
「いいね、『悪い子』を捕まえるんだ。クランプスの如く。」
そうして、師団たちは旅立っていった。その復讐を、果たすために。
静かな大理石の部屋の中。いや、部屋だったと言うべきか。今はあの豪奢な柱は倒れ、壁は敗れ、とんでもないところから空が見えたりしている。
「………皆に集まって貰ったのは、他でもない。ハンガリーについてだ。」
この、レミールから開口一番に飛び出した言葉に、みんな目玉を飛び出して卒倒したという。ぎょっとする一同たち。この女帝、いつになく落ち着き払っている。皇帝の死という現実が、ハンガリーに勝つ空想より先に行ったようで安心した。
これから、のちに青空議会と呼ばれる会議が、幕を開けたという。
いかがでしたか?
休みに入っても未だ更新速度が上がってないのは申し訳ないです。
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