大雪、やばいですね。皆さんどうかお気をつけて。UA9000、ありがとうございます!他にもお気に入りに登録していただけて、感謝の極みです!
というところで、第二十八話です。どうぞ。
「ハンガリーに降伏するか、それとも戦うか。」
それが。それだけがこの青空議会の議題だった。もちろん、奴らは蛮族だと思いたいし、何よりここまでやられて黙っているのはプライドが竦む。だから、もちろんそういう主張をしたものだっていたよ。
「そう抜け抜けと逃げてたまるかっ!!ハンガリーへの降伏など、世界がどう見ると思うっ!!」
そこへ、すっと手を挙げるカイオス。
「しかし実際に貴方がた軍隊は、どうでしょう。この攻撃を防ぐこともできなかった。」
確かにそれはそうだ。そも海軍がしっかりしていれば、相手はたった一隻なのだから。この悲劇だって防げたやもしれない。
「黙れっ!だいたい、そんなことをしては属領が反乱を起こすに決まっとるわい!」
「ハンガリーと戦わねば戦力の保全もできるはずです。そのあまり切った戦力を叛逆のリカバリに当てることもできるのでは?」
「そういう問題じゃないっ!!メンツの問題だ!レミール様もなんとか言ってはいかがですか!?皇帝陛下が、死んだのですぞ!」
「だから何だというのだっ!!皇帝陛下が死んだなら、それだけ苦しい状況であることは明白っ!!今すぐにでもハンガリーと交渉するべきだ!!」
「何を小童め!!」
「なんだと!!」
「静粛に!静粛に!」
こんな、大混乱な状態で会議などできたものか。そう思うのはルパーサ。皇帝の相談役。いや、元相談役というがいいか。だって今は、もはやお役御免なのだから。そこで、レミールが口を開いた。いや、何度でも言うようだが女帝レミールと言うべきか。
「………私はハンガリーを倒したいと思う。個人的には!!」
しいんと静まり返るあたり一帯。それは、単にこの女のヒステリックにかけられたからじゃあない。誰もが、分かってた。なんとなく知っていたから。ハンガリーに勝てないことを。個人的には、という言葉にはそういうニュアンスだって含まれているはず。
「………」
「ど、どうすれば……」
だからって、どうにでもなるわけじゃない。属領をどうするか。これまでのしっぺ返しを、どう対処するか。そこまで考えなければならない。そう。言わばどちらを取ろうと「詰み」の状態。これが、エブリンとヴィクトルという、互いに名前をも知らぬコンビネーションが生み出した、最悪のチェックメイト。選択肢は2つに1つ。死ぬか、それとも死ぬか。
「………く、どうすべきなんだっ!」
「妾たちがどう進むべきか、とことん考えて結論を出そう、」
その時。かろうじて残喘を保っていた装飾柱の上に、人影がさっと。
「へえ。それは私からも興味があるなあ。」
そこに居た女の、黒服を着たりはエブリン。いや、セブンブリッジ。
「ああ、失礼。私はセブンブリッジ。ハンガリーの諜報員よ。こういう表舞台に立つのは生憎苦手で。」
そう言いながら、柱を飛び降りるエブリン。その御姿に、さっと血の気を引かせる一同。どうすれば。ただでさえ、地獄とましな地獄しか用意されてない選択肢を、また狭めるというのか。
「な、なんの用事だっ!!どの面を下げて出てきやがった!」
ピストルを向けるアルデに、またにやりと不気味な笑みを向けるエブリン。その様子が、まるで蛇のようで。彼らはぞわりと背筋を戦慄かせた。だって、気づいたから。彼らにはやはり絶対に勝てないことを。エブリンは、その骨と皮ばかりに細い指をアルデの顎に突き立てる。そして、くいっと引き上げて見せた。
「さあて。負けるか……それともワンチャンスに賭けるか。ちょっとだけ時間をあげるから存分に考えてもらえる?」
愛すべき皇帝を亡くした女は、ただ拳をわなわな震わせて、黙りこくるばかり。ただ、その細くて向けどころのない憎悪の目が全てを物語っていた。
「じ、時間を破るとどうなるというんだ……!」
エブリンは、これが答えだと言わんばかりに、洋上のカイゼリン・エリザベートを指差す。それが意味することは、みんな分かっていた。だから、またその背筋にぶるっと寒気を感じたのだ。
ところ変わって港。いや、港だった場所。
リヒャルトは、あの時と同じくしてエストシラントの港へと降り立った。だが、あの時とは違う。ざらざらした道に、崩れた瓦礫。まだ、燻る炎の焦げ臭い匂いだけが鼻に充満した。
「やあ、これはまた派手にやりましたねえ。」
それにしても、とマールスは付け加える。彼らの表情は心なしか、いつもよりつやつやと美しく照り映えている気さえした。
「はは。命令ですよ。おっと、そこに不発弾が!」
びくっと震えて、リヒャルトの方に詰め寄るマールス。どうやら、そういうことには相当トラウマがあるらしい。
「やめてくださいよリヒャルト司令。びっくりしましたよ。」
そういいつつ、また階段みたいになった道を進んでいく2人。行く場所はただひとつ。パラディス城。いや、そうだった場所とでも言うべきか。
「さあ、もう少しですよ。いやあ楽しみですねえ。我ながら。」
そうして、きれいな真っ白の紙をつやつやと撫でて見せるのだった。そこにある、びっしり描かれた文字など知れず。
「さあ、行きましょう。最後の外交の時間です。」
これが、最後の打ち歩詰め。やってやろうじゃないか。最後のチェックメイトを。むかった先は青空議会。見えてきた見えてきた。人間の醜い争いが。
「だからといって……!」
「ハンガリーを今すぐに倒すのだ!」
「なにを!!」
そこへ、すっと息を吸ってから大きな声で叫ぶマールス。
「皆さん静粛に!!ここに、ハンガリー全権大使ニーメット・マールスがおりますよ。」
はっとする一同。そして冷たい視線はこちらへ、徐々に徐々に向いていった。その、怒りを先ず爆破させたのはレミール。この戦いでの、ある意味1番の被害者。
「そうだ!!まず貴様らがこのような卑怯な手を用いるのが悪いのだ!!忘れておらんぞ!妾の腕を撃ち抜いたのも!外交の場で!」
「黙りなさい美人局。私たちはそんな文句を吐口としてお呼ばれしたわけじゃないのですよ。」
「何を!」
握り拳を、今までの分も振るおうとする一同。しかし、そこへリヒャルトが言い放つ。銀色の、ロス・ステアー1907を携えて。
「で、どうするんですか?ほらやってみなさいよ。やれるものならば。」
彼の目元はまるで漫画かアニメで描かれるみたいに暗い。本当に、吸い込まれそうなほど。
「く………ここは引くしかないか………して、それだけではあるまい。何だと言うのだね?」
アルデが言い終わる前に、ばっと紙吹雪を舞わせるマールス。それを拾えと言うことだろう。
「洪パ戦争における和平条件………?」
その内容が、こちらである。
・パーパルディア皇国は、ハンガリー、アルタラス王国含め属国など被害を及ぼした国家に対し謝罪すること。
・パーパルディア皇国は、ハンガリー、アルタラス王国にそれぞれ軍事費、医療費など合計610107000000000フォリント(三兆円相当)を支払うこと。
・パーパルディア皇国は、今後如何なる差別的発言を控えること。
・パーパルディア皇国は、属領すべての独立を認め支援すること。
・ハンガリーは、パーパルディア皇国と防共協定を締結する。
その他諸々………
「何だこれは!ふざけているのか!」
「そうだ!あまりにも暴虐無尽な振る舞いだ!」
ギャアギャアと五月蝿い声の中。ぐるりと目玉を回すマールス。そして、さっきのように大きな声で言い放った。
「これは、貴国がしてきたことです。これが、貴国の鏡合わせです。それをよおく理解してから。文句を言っていただきたい。」
しいんと静まり返る周辺。やれやれ。感情の起伏が激しい奴らだよ。
「で、どうするんですか?私たちは既に貴国へ向けた占領部隊をも編成してます。」
その視線は、マールスのその先。レミールに向けられた。レミールの目には涙が浮かび、その爪を食い込ませんばかりに拳をぎゅうっと握っている。しぶといやつだ。いろんな意味でね。
「………もう少し、待っていただけないか…?」
「少しとはどの程度?具体的には?それをする我が国のメリットとは?」
うっと言葉に詰まるレミール。どうすればいいのか。レミールはその小さな頭を必死に回す。が、やっぱり解決策はどこにもない。
「我が国も、まあ。慈悲深いのでねえ。しばらく待って差し上げましょう。最終的にはここが上陸されるまで。ハーフタイムはそうですねえ……」
腕時計を眺めながら、声をぶつぶつ発するマールス。みんなが、それを固唾を飲んで見守っていた。
「貴国の監察軍残存艦隊が、攻撃されるまでですかねえ。」
全員の顔から血の気が引いてしまった。これじゃあ、今すぐなんて無理だ。その上、言ってしまえばこう言うことだろう。これは我が艦隊はいつでも攻撃される位置にあるというメッセージ。
「1週間待ちます。今すぐにこの紙に従えとは言いません。ただ、それまでにアルタラス沖の艦隊を撤収してください。それと、ハンガリー沖のもね。」
まさか。そこまで察せられてたなんて。艦隊決戦をする思想が根本から読まれてたなんて。
「その2艦隊の撤収を以て、一旦検討、つまり今の所我が国に敵意なしと皆します。ただし!!」
パーパルディアのメンツはまた、ごくりと唾を飲んで真剣に聞く。まるで牧師の説法を聞くみたいに。
「………1週間後の23時59分までに、撤収しない場合は、我が国へ宣戦布告したも同義とみなします。しかし急いだ方がいいですよ、従わない場合には段階的に攻撃を始めるので。それでは、Szép napot!!!」
マールスはあの時と同じように、スタスタと帰っていった。これから楽しい1日になどならないはずなのに。皮肉なものだな。と、リヒャルトは思うのだった。
ここは、いつもの政治部の部屋。まだ暖房は必須。だって寒いから。だが今はもう寒さなんてどうでもいい。そんなことより、パーパルディアだ。パーパルディアについて、話し合わねばならない。まあ、それもあらかた片付いてはいるが。
「まあそう言うことだよ。艦隊を引き上げれば、制海権がお留守になり、そうせねばボコボコ。もし引き上げればそれこそ易々上陸できる条件を整わせることになるからねえ。」
とすると、きっとパーパルディアの沖合のあたりに艦隊を集結させるはず。多分。そこは、条件でも提示していないから。その上1番融通が効く。守るだけならば、なかなか厄介なのにねえ。そこで、ひとつヤーノシュに尋ねることにした。そろそろ、スパイによる麻痺も買収も奇襲も効かないだろうから。
「ワイバーンは?」
「何。第一航空師団に任せろ。グリペンとMiGの独壇場だろうね。」
「戻ってこれるかい?」
「もちろん。」
と、言いながら片手間で火を起こし、暖炉に温かい火をつけるヴィクトル。マッチの火を放り投げて、薪を燃やす。そんな片手間な風に、ヴィクトルは他国を欺いてきた。そういうやつなんだ。ヤーノシュは心底震え上がる。これが、ヴィクトルという男のやり口か。こういう男なんだ、こいつは。やはりヴィクトルは真性のサディストで間違いないな。
「………ヴィクトル。お前最初から詰ませる気だったのか?」
「ん?ああ。もちろん。なあ、火をつけてるからちょっと話しててくれねえか。」
ああそう言うことか。こいつにとってパーパルディアはこれほどにどうでもいいんだな。ヤーノシュは肩を窄めて見せた。これじゃあ、どうにもこうにも行くまい。パーパルディアさんは詰みですな。
実を言うとこういう理不尽を見せる方が、ただボコボコにするより応えたりする。それを、しっかり知り得ているから。
「さあて、奴さんはどうやって答えるのかなあ。」
ヤーノシュは指を折りながらポキポキ鳴らして見せた。この手も相当、疲労が溜まっているのだろうに。
「パーパルディアがどっちを取るかが見ものだね。」
そう言いながら、お茶を飲むヴィクトル。ヴィクトルにとってみれば、パーパルディアなんて今や何が怖いのか。今となってはの話だし、こんなに早い開戦なんざ想定してなかったはずなのに。ここまで対応できるならパーパルディアなんて余裕だろう。
「そういえば、上陸部隊は?」
「上出来だ。自転車部隊も、自動車部隊も、騎兵隊も。これで、迅速に占領するのだな。」
「ああ。占領さえできりゃあいい。負担だから早く決断してほしいが……」
そこはきっと向こうもわかってる。そうでなくとも、回答を先延ばしにはしたいだろう。だから、きっとこの面ではちょっと不利になる。ただ、向こうが国土を占領されてもまだ折れない連中でなくば。
「大変そうですね」
「げっ貴様は仮称翠星石!!」
「今回アドバイスするなら、パーパルディアで遊びすぎないように、です。」
わかってるって。と、ヴィクトルは言った。そこはきちんと政治家。それが腹立つんだよなあ。そして、彼は紙を一枚、ぱらりと捲った。そこには、こう書いてあったとも言う。
オペレーション・レザーフェイスの概要はただ一つ。パーパルディアを、占領すること。
ここは、遠く離れたムーという国。この国は、戦争となると必ず観戦武官を送り込んで研究するという。しかもその正確さよ。そのせいか、ムーが観戦武官を送る国は必ず勝つという噂さえあった。
だがしかし。今日はそう易々とはいかない。ここでは、今パーパルディアとハンガリー。もし戦うとしてどちらに観戦武官を送るかで、大議論が起きていた。もっぱら、その理由はハンガリーが文明圏外国だからだが。
「だから言っておるだろう!!新興国の文明圏外国が、パーパルディアに勝てるわけがなかろう!」
「いいえ。ハンガリーは、格が違う。これをご覧ください!」
そうして、レトロな白黒写真を見せるマイラス。これは、ムーのスパイが撮ったカイゼリン・エリザベートの写真。実を言うと、最初の方からネズミが彷徨き回っていたのは知っている。それを、まあまあ優秀なスパイが居るハンガリーが見逃すことはない。まあまあなのがすずろに悲しいが。とにかく今回は、敵を造らぬためにも野放しもしてやったのだ。もちろん敢えて。
「これは何だね?我が国が使用しているような巡洋艦ではないか?」
「ええ。しかし、何かツギハギに繋ぎ止めてあります。」
マイラスは、ミサイルの発射管を指して言う。その役割がわからないのか、頑固な将校はばりばり頭をかいた。
「ここにあと数門は大砲が置けるだろうに、勿体無い。」
「命中精度に自信があるのでしょうか。」
「だとしても多い方がいいはずだ。」
騒めき始める一同たち。その中で、とりあえず一言。
「この国は元々内陸国で、我々と同じように召喚されたそう。技術力だけでももはや上を行っているのに、これを用意できる対応力が尋常ではない。」
いや、それは転移の副産物だよ。神の見えざる手だよとは誰も知れず。
「………少なくとも、ハンガリーはパーパルディアより上でしょう。」
「そうだな……私も考えを改めよう、」
こうして、本格的な戦争が始まる時にはハンガリーに観戦武官を派遣することに決定したという。
ここは、パパ基地という場所。ここでは、ハンガリーの殆どの軍用ヘリが収められている。まずは、橋頭堡を作らねば。と言うことで、いつものようにエル隊長率いるコロナ中退がヘリボーンでの攻撃をするのだった。
「よし、行くか!」
「エルー!頑張ってこいよおおお!」
と、自分への飲み仲間からの鼓舞が響く。そういえば、このパーパルディアの凶行をテレビで流したところハンガリー軍の志願者は増加したと言う。訓練が追いついていないけど、正直いえばパーパルディアなんて銃の使い方さえわかりゃあ誰でも倒せる。と言うことで、だいたい新兵ばっかりのこの橋頭堡部隊。ちなみに、引っ張り出したホームレスやら物乞いも居る。それだけ人的資源がないと言うことだ。
とはいえ、今すぐ出発というわけではない。何ならば、プロペラすら回してない。ただ、オペレーション・レザーフェイスに合わせるため今すぐ出発できる風の感じは出していた。
「一体、そうなるんだろうなあ。新兵のお世話なんてしたことねえよ。なあヤーチン?」
「キュウ!」
このヤーチン、この間還ったばっかりのあの魔獣の卵。どうやらリントヴルムのガキらしい。飼うのは無理だな。国にも没収されるだろうし。というのもこのリントヴルム。パーパルディアの主力らしいからな。
ここは、沈黙だけが残る青空議会。マールスが去ってから、アルデ以外の誰も喋っていないという。
「レミール様………いかがなさいましょう。」
レミールは答えない。ただ、まるで空気中にある何かを見つめているみたいに。そして、笑い始めた。まるで、妖怪か何かみたいにケタケタと。
「く、ふふふ……ふはは……くはははははははははははははは……!あーっはははははははははははは!」
全員が、またさっきと同じように身震いする。そして、こちらを向いた。ゆっくりと、ゆっくりと。
「ならば、向こうも待っているのだろう。」
何が、何がだと問い掛けんとする一同。
「攻撃するのを、だ!向こうもまだこの間は絶対に攻撃して来ない!その無防備を突く!これがクリアルートだ!」
そして、彼女は目にまるで悪魔のような色を浮かべた。それが本当に、地獄のななり。
「卑怯とはいうまい、そちらがした事なのだから、な。ハンガリーからしてみれば良かれと思ってやったことが、クリアルートにつながるとは。皮肉なものだ。」
全員が身震いをした。この国の進むべき道は、そちらではないような気がしてならないのだから。いや、それ以上に怖かった。この女のオブセッションの感情が。
「ハンガリーに奇襲攻撃をしろっ!!軍隊を集めるのだ!!」
女帝レミールはにやりと笑ってみせた。それこそ、さっきと同じ。悪魔のように。
いかがでしたか?
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ちなみに、エル隊長の卵は孵りました。いつの間にか。そういうことにさせてください本当にすみません。
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