いつの間にやらUAが1000超えた……!こんなしょうもない小説に付き合ってもらい、本当に感謝の言葉も見つかりません!これぞ弟の誕生日パワー(?)
あと言及し忘れましたが、11月1日は死者の日です。教会の墓場で売っている焼き栗は、冗談抜きにうまいです。その内、死者の日関係の話も書きますがいつになるやら……
さて、前置きはこの位にしましょう。ロウリア相手の戦争ですが、ごめんなさい。ガッツリした戦闘はないかも。次はあのロデニウス沖大海戦ですので、それに免じて許してくださいなんでもしますから。
さあ、ハンガリーの奮闘をご覧ください。
その日は晴れた晴天の朝だった。ロウリア王国軍はクワトイネへと侵攻を開始する。
「ついに来ましたなカナタ首相。」
「ええ。亜人の殲滅など、させるわけには参りません。やりましょう。」
そうして、すぐに魔信を飛ばすように言った。先は勿論、ハンガリーとクイラである。
「……奴らの目的は…ギムか…」
何とか持ってくれ。一分でも、一秒でも。援軍が来るまでに。
「ソンバトヘイ大臣、どうしたんだい。」
その場にはソンバトヘイ以外に、ヘッペシュ、ヤーノシュ、レーチェル、ヴィクトルとハンガリーを率いる男どもが集結していた。外交帰りだが容赦はない。レーチェルだけが余裕の表情を浮かべながら、いつの間にやらパンを齧っていた。
「おかえり大統領。悪い知らせだ」
「こういうのは良いのを先に選ばせてくれるモンだぜ。」
ヴィクトルはふうっとため息をつく。すると卒爾ソンバトヘイが言い始めた。
「ロウリアが宣戦布告してきた。クワトイネとクイラに加えて、我が国にも。本当の本当に、戦争を振りかけてきやがった。」
大統領が息を呑み言葉を失う。そうして、そこに居た全員が凍りつくのだった。
「これからやる事は分かってるな?まずはクワトイネの確保だ。山脈地点であるクイラには重装歩兵や騎兵は攻め込みにくい。となるとまずはクワトイネを狙うのが筋だ。詰まる所。」
ソンバトヘイは一拍置くと、再び続ける。だがおそらくヤーノシュもヴィクトルも、たいがいの筋書きは分かっていたはずである。
「お前らがいる『ロデニウス沖』こそが決戦の地だ。そこの制海権を取らねばガスも石油も運べねえ。陸上戦力も送れねえ。奴さんもそれをきっと分かっててここを決戦の地に仕立て上げたんだ。その規模がとてつもねえとよ。」
「どのくらいだ?」
「聞いておどろけ。4400隻。」
「多い…弘安の役もビックリだな。」
「おい、所詮ガレー船だろ?ならば大丈夫じゃ無いか?」
「そこまで居ると対処ができん。カイゼリン・エリザベートがなければ詰みだったかもしれない。」
ヤーノシュの言葉にまたその場にいた全員がゾッとした。それ即ち、あの国家の傀儡となる世界線もあったのでは無いかということ。
「とにかくあとは海上と航空戦力だな。グリペン14機でワイバーンをたいしょできるか?」
「無理だよ。でも大丈夫だ退役したミグ29をまた出す。」
レーチェルが呑気に提案するが、それは言うほど簡単でない。もちろん整備面もあるが最大の難関は。
「だが石油が…」
そう。結局燃料問題へと帰ってくる。燃料のためには制海権が必要で、そのためには軍船や戦闘機が必要で、しかしそれを動かすのには石油が不可欠。そのためには…というスパイラルへとこの国は陥っているのだ。そうなると求められるのは「十分ワイバーンと渡り合えて、いや、圧倒し無双できて、かつ燃費のいい戦闘機」である。
「いったいどこにあるっちゅうんだ。」
とりあえず、今はワイバーンの圏外なので大丈夫。直近は石油など諸問題に直結するロデニウスの4400隻だ。制海権を取らねばなるまい。石炭で動くカイゼリン・エリザベートがこの時彼らには神のように見えた。その時側近の1人がバタンと音を立てて入ってくる。
「大臣!クワトイネのカナタ首相からです」
「出せ。」
そうして純白の受話器を取ると、確かにあの時の首相だ。
「もしもし。カナタ首相。」
「ああ、ヴィクトル大統領大変です。ロウリアが攻め込んでしました。貴国にも宣戦布告文書を渡すよう言われてます。」
「存じ上げております。」
きっとこの場にカナタが居ればもっとこう驚いた表情をしたであろう。が、それは想像に留めるしか無い。
「……そうですか。しかし、如何なさいましょう。」
「どうもこうもありません。迎撃します。」
しかし、向こうの声のトーンは一向に上がらない。
「いえ、もうダメでしょう……すでにギムへ蹄の音が響いているんです。ワイバーンが空高く飛び、私たちの迎撃もおいついてません。」
これは想像以上にまずい。迅速にことを進めねば。
「急げこうしちゃいられん!さっさと河川警備隊の掃海艇をレティニエに終結させるのだ!」
そう叫ぶ国防長官ヤーノシュを見て、一同はハッとした。戦争とは自分たちが思っているより近く目覚めているのだと。
「あの子は無事かな……確かギムに家があるって…」
「おいまて誰だあの子って」
「俺が途中行く前に食べ歩きしてたんだよ。そしたらエレシアって名乗る10歳くらいのエルフ女がパン買わないって言ってきて。硬えけどうめえよ。噛み締めるように食ってる。現在5個目。」
「おいてめえ何個買った。」
「何個って10個。おまけにこれあげちゃった。」
彼はヤーノシュのツッコミを他所に胸ポケットから赤城緑のブローチを取り出す。それは3月になると何処でも売っているあの革命記念日のブローチだ。
「貴様アアアアアアアア!また予算でしょうもねえ買い物しやがってええええええ!」
ヤーノシュが胸ぐらを掴むとぐわんぐわんと揺さぶる。
「やめてくれえええええええ!」
「おい!今はそれどころじゃないだろう!ギムは残念だが……諦める……申し訳ない。」
全員が、先ほどと違う重い空気に包まれた。
「でも弔わないわけじゃあないぜ。追悼式を行おう。立派に蘇った街で。」
そうして、全員が希望を持って顔を上げる。すると、まずはレーチェルがそのニュアンスを読み取って、ニヤリと笑いながら話し出した。
「そうだ。俺たちゃハンガリーのトップだ。何だってできる。」
「全く、僕としたことが怖気付いてしまったよ」
続くヘッペシュ。お次はソンバトヘイ。
「私はまずは、国内で警察の武装と治安維持に勤めます。」
「それなら僕は石油ガス石炭の配給を迅速に進めていく」
国防長官ヤーノシュが少し遅く口を開いた。
「それならば私は大統領の言っていたことをやろう。予備のmigを引っ張り出して来る。ちょっとしたヒデブーもあるから期待しといてくれ。」
最後にレーチェルだ。髭をさすりながら言う。
「私は少数の部隊とともにヘリで向こうに行くよ。こんな人間が危険に晒された方がダメージは少ないだろう?」
「いやあ?」
その言葉に笑うレーチェルとヤーノシュ。そして、最後の最後に大統領キラーイ・ヴィクトルを皆で見据えた。一斉に唱える。
「さあ大統領、『ご指示』を!」
ヴィクトルは困ったように笑った。物語は、まだまだ序盤。
「エスコートしてやれ、地獄まで。」
ドナウの流れは絶えずして、今日もその宝珠に宝石をひとつまみ加えてくれる。そんな不思議な付加価値の中、今日も佇むブダの王宮が美しかった。
クワトイネ公国、西部方面騎士団、及び西部方面、第一飛龍隊、第二飛龍隊西部方面騎士団団長モイジは、えもいえぬ焦燥感にかられていた。
というか、もはやほぼ戦争状態に近い。すでに、市民の一部は、ギムから疎開を開始している。クワトイネ政府も、市民に対し疎開を励行していた。詰まる所、この場所の命運は見限られたということだ。
しかし突如として、ギムの西側国境から赤い煙が上がる。と、同時に通信用魔法から、緊迫した通信が入った。それが、まさか吉報であるはずはない。
「ロウリアのワイバーン多数がギム方向へ侵攻、同時に歩数万が国境を越え、侵攻を開始した。繰り返…逃げろーーーーーーー!!ぐあぁぁぁ」
魔法通信が突如途絶える。まるで流れた血のように赤いのろし。ロウリアがクワトイネに侵攻した合図だ。それを目撃した西部方面騎士団団長モイジは吼えた。
「竜騎士は至急、敵ワイバーンの迎撃にあたれ!制空権を握らせるな!軽騎兵は、右側側面からかく乱しろ!!騎兵200は遊撃とする。指示あるまで待機!!最前列に重装歩兵、その後に歩兵を配置、隊列を乱すな!弓兵は、その後ろに!最大射程で支援しろ!魔道士は、攻撃しなくて良い!全員で、風向きをこちらを風上としろ!」
すぐさま24の飛竜たちが大空へとはばたつ。そこが、美空からまるでこの世の終わりのような色へと変わるのは、もう少し後の話。
それと同時、ロウリアの方角に黒い点が写り始めた。数75ほどの黒点はだんだん大きくなっている。もちろん、ロウリア王国東方討伐軍先遣隊の飛龍第一次攻撃隊に他ならない。このロウリアの飛龍を指揮する竜騎士団長は一気にケリをつけるつもりだった。75騎のワイバーンが、まるで星系のように並び、口を開ける。口の中には、徐々に火球が形成されていった。その様子はまるで、太陽のよう。きっと戦争のという切った貼ったの領分でなくば美しい。それがクワトイネ竜騎士団が破滅の序曲の始まりだった。クワトイネの騎士が果敢に襲いかかっていく。だが、それもまるでハエのように落とされるばかりであった。この火炎弾でも、半数程度に値する12騎が落とされている。練度も数も上なロウリアにとって見ればそう難儀では無い。彼らに敢えてタイトルをつけるならきっと「蹂躙」。まるでそれが竜と人の血とが平等に、紅繻子のような血粒へと変換されていったようで。かくしていとも簡単にクワトイネの竜騎士は堕ち、そして全滅した。
「くそ!思ったよりも速かったか!」
次にロウリアの標的になったのは無防備へと苦しんだ地上戦力たち。勿論、防衛用のバリスタが作動するがそんなものは滅多なことが無ければ当たるまい。もはやお祈りの領域とも言えるお粗末な対空兵器は、諸共に木片へと変わった。
この短時間の間、すでにクワトイネの戦力は3分の1が殲滅されてしまった。そこへ先遣隊の2万5000ほどの歩兵が雪崩れ込む。時間にして僅か30分。クワトイネの軍隊は降伏した。
同時にモイジは縄に繋がれて地へ伏す。その目の前に現れる何となく天邪鬼のような雰囲気を纏う騎士。そしてこの男がその「破滅の序曲」を演奏する言わばコンサートマスターだ。制圧後のためか、勝ち誇った表情だ。騎士の名前はアデム。ロウリアの副将。
「あのモイジも、こうなると形無しだな、弱い。魔獣を投入するまでもなかった。そういえば、お前の妻と娘はギムにいたな」
「何をする気だ!」
「おい!」
アデムは部下に命じる。このコンサートマスターの想像など恐らく碌でも無いことは分かりきっていた。
「モイジの妻と娘は、ここにつれてこい。こいつの前で、散々嬲った後に、魔獣に生きたまま食わせろ」
「きさまぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
モイジは飛び掛ろうとするが、すぐに取り押さえられる。
「大丈夫だ。全て見届けた後で、お前も魔獣の餌にしてやるから」
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
アデムの命令は、その日のうちに実行された。町のあらゆる所で、強盗殺人、強姦殺人、略奪、暴行が行われ、モデムの一族も、悲惨な運命をたどる。
生きて解き放たれた100人は、その惨状を、各都市に伝えた。その中にレーチェルが友人も混じっていたというこの蛮行は、ハンガリーをも震撼させた。だから鏖殺からクワトイネ公国の民を救うという大義名分を与える事になる。無論、彼らを突き動かす世論にも動滑車のように作動した。だがそんなことを知らないアデムは、まだほぼ知らぬハンガリーの旗を拾い上げた。それは、レーチェルがその子のため最後友好の証に残した革命の紋章だ。
「これは?」
「はっ。宣戦布告したハンガリーの旗色かと。」
「ハンガリーか。面白い。」
1800年代の革命を記念し、ハンガリーではこの国旗を装ったブローチを胸にあしらって行進する。そのバッチを渡していたのだ。だが、その約束も反故にされる事になる。いや、反故にさせられたという方が正しい。
「ふふ。いいだろうハンガリー!亜人共々滅ぶがいい!」
そうしてブローチを死体の山と共に火に焚べた。妙に明るい光が、ギムの街を覆っているのだった。
こうしてギムはあえなく陥落し、指揮官たるモイジは捕らえられた。まるで、数日遅れのハロウィンタウンを想像させるその有様に叫び喜ぶのは、メイヤーやジャックのそれくらいだろう。綴ざされた街は、今日より日の目を見る事はなくなるのだった。
レティニエでは対空機関砲搭載など諸改装を終えた「カイゼリン・エリザベート」が悠々と出航準備を始めていた。かつてのセルビアで使われていた掃海艇たち3隻にも立派な名前がつけられ、それぞれ、「ドナウ」「ティサ」「マルギット」という。この小鳥の囀りのように脆弱な4隻こそ、ハンガリー海軍の全戦力だ。木造船が相手でも、正直に言ってかなり危ない。他方対空兵装が充実しないカイゼリン・エリザベートのみではワイバーンに対して危ない。これで、一応お互いにカバーをし合う構成は完成した。あとは相手次第、いや祈るしかない。多分木造船は機関銃でも抜けるから、大丈夫だ。そう信じてやまない。いや、そう信じないと気が気ではない。
「よし。あのロウリアのクソ野郎に、一泡吹かせてやろうじゃあないか。」
他方艦長は燃えていた。彼らの船は、かつての巨砲主義の先祖か分からないが、とにかく大砲という大砲が、まるで針鼠のように鎮座していたのである。このくらいのほうが、実は数の多いだけのガレオン船なんかには効いたりするのか。
実際リヒャルトの脳裏には、少しだけ足の速いガレオン船を仕留めた記憶がまざまざと蘇っていた。もちろんファーストコンタクトではワイバーンが仕掛けてきたが、恐らくその時のデータを元にして相手をしてくるだろう。加えて、この魔法という者が跋扈する異世界。ただでさえ苦戦を強いられそうなのにいつどんな形でイレギュラーが飛んでくるかも分からない。
実を言うとリヒャルトの自尊心は、ガレオン船程度を本気に相手取らなければならないという事実にボロボロにされつつあった。勝った負けたや性能差などという結果論に左右されるほど、残念ながら彼の心臓は強く無かったのである。
「くそったれのロウリアめ!鎧甲冑と空飛ぶトゲツラで調子に乗りやがって!」
「あのー艦長ウイスキーはそろそろ控えてください。」
ちなみにこういう船で酒が出されるのは、水が腐りやすかった過去の名残とも言われている。が、そんな事は彼にとって問題ではなかった。彼はとにかくこの思いを韜晦するために、何かアルコールとかを使うしか無かったのである。
「お黙り!おれは負けたのが悔しいんじゃない。帝国の紋章に泥を塗られたのが悔しいんだ。」
いや、その帝国がないので後継国(?)に従っているんだよという意思を、船中に伝播させる。どうやら同じ気持ちの人も幾分いるらしい。
「艦長!きましたよ現代のハンガリーの船が!」
あれか。なんと武装の少ない。内陸国だったから仕方ないとは思うが、だからって大砲のひとつつけて欲しいもんだ。まあ、何かしらドクトリンがあるのだろう。
「艦長、あの船の艦長たちがお見えです。」
甲板に3人が上がって来る。そいつらもどうやら同じ考えで片手にウイスキーを握っていた。
「船乗りが考える事はだいたい一緒だな。よろしく頼むよ。」
彼は手を出して握手を求める。それに応えるはよく顔のにた三人。この者たちは、ヴィクトルの古き同級生パプ一家の兄妹たちだ。
「よろしくお願いします。長男のオルフィーです。こっちが次男坊アンドル、末っ子のエマ。頼みますよ司令官。」
「よろしくお願いします。司令官。」
「よろしく。」
新たに抜擢された優秀な三人であるが無論海に出た事はない。だから自分が彼らのシッターをしなくてはならないことは彼も分かっていたし、それ含めての命令だと解釈していた。
「楽しみだ。あのロウリアが慌てふためき尻尾巻いて逃げていくのが。」
そうして彼は煙を上げる煙突を見上げた。その先に見据えるは地獄でも天国でもない。ただ、青くて懐かしい凪いだ海だ。
「さあ、やってやろうぜ。いざ出航じゃ!」
「エスコートよろしくお願いしますよ司令。」
他方このギムがロウリア王国に落ちた話はすでにクワトイネ中枢部まで伝わっている。主要都市が陥落し、町のほとんどの民が虐殺されるといった大惨事に、まるで通夜のような鈍重な空気が漂っていた。
「現状を報告せよ」
首相カナタの命令に、冷や汗をかいた軍務卿が答える。
「はい……現在ギム以西は、ロウリア王国の勢力圏となっております。奴らの総兵力は、先遣隊だけで3万を超え作戦兵力は50万に達する模様です。」
外務卿が付け加えた。
「不確定な情報ではございますが、第三文明圏の列強国、パーパルディア皇国が彼らに軍事支援をしているという情報もあります。現に今回500騎もののワイバーンを投入してきて、4000隻以上の艦隊がロデニウス沖に向かっているのです。」
会議の誰もが息を飲み、その情報を頭の中で繰り返す。沈黙が彼らの思考を表現していた。50万という圧倒的な数値。しかも、ワイバーンが500騎もいる。おまけにバックに列強国と来た。
さらに、4000隻以上の艦隊。そこに彼らの本気の恣意を読み取った一同。絶望、終焉。そう言った言葉が彼らの頭を巡回する。この破滅の序曲を止められるのは、ただ1カ国しかないだろう。カナタはそれに期待して外務卿を見る。その胸のうちを読んだのか外務卿が吉報を話し始めた。その小さな吉報どころか彼らにとってくじ程度の期待値も、財宝に他ならなかったのである。実際、ハンガリーはこの国から買いかぶられている側面は全然あった。
「首相、よろしいでしょうか?」
「何だ?」
と言ってみるが、カナタ内心その言葉を待っていたのである。
「実は、政治部会が始まる寸前に、ハンガリーから連絡がありまして・・・。」
「内容は?」
カナタは少し悔い気味だ。この言わばマエストロによる故意的な侮辱行為に、焦りを隠しきれていない。リンスイは続ける。
「読み上げます。我がハンガリーは、かつての帝国の遺産を傷物にされるのみならず、国家として最大級の侮蔑を受け、ロウリアに対し激昂している。加えて、このギムの直視し難い惨劇は見過ごす事は、ロウリアの危険思想を鑑みれば到底できない。我がハンガリーは貴国に対して、ハンガリー軍の派遣をしたいことと、通行権の許可をお願いしたい旨をお伝え致します………要約すればハンガリーが援軍を送るということです。」
ハンガリーがどの程度か。私たちが彼らにどれほど期待していいか。だが一兵でも欲しい今、断る義理はない。
「今すぐ通信で返信しろ!」
呑気に内海まで出てきたハンガリーの艦隊。戦争中とはいえ、それでも移動中は手持ち無沙汰だ。暫くすると、皆んながトランプやらギターやらを始める。
「それにしても、兄さんの船では特に何もしないね。」
彼の兄、オルフィーは一等航海士という職でオランダまで飛んでいた経験がある。民間とはいえ、海に出た経験があるのは彼くらいだ。この場では希少であり、かつ呑気なことをしていられない程よい緊張感に駆られていたのである。
と同時に彼には期待に踊っていた。というのも、海軍として活躍することは兼ねての夢であり、一等航海士を志願した理由の一つだったのだ。この千載一遇の不幸は、彼にとって良い方向だったらしい。
「おいアンドル艦長!スペ3返しじゃ!」
「あっちくしょうやっぱお前が持ってやがったか!」
あらまほしくは永久に続く楽しい時間と対照的に、恐怖の対象は着々と近づいていた。けたたましい警報が艦隊一同に鳴り響く。
「レーダーに感あり!110km先、1時の方角です!数10!」
この話し方はレーダーに慣れていない「カイゼリン・エリザベート」の乗組員、つまり昔の言い方に合わせたものだ。
「総員戦闘配備!……まあとは言ってもやれる事はねえが。」
しかしそれでもその事実は彼らを震撼させた。おそらくワイバーンだろう。M75やM71を命綱のように大事に握りしめて空を索敵する兵士たち。向いたのはもちろん1時の方向だ。まだ見えない。
「だがワイバーンの時速は235km。30分しねえうちにファーストコンタクトだ。」
アンドルはまるで人が変わったようにてきぱきと指示をとる。少なくとも、トランプを吹っ飛ばして走り回るくらいには。
「エマに兄さん、そして司令聞こえるか」
「聞こえるさ。もう既に対空戦闘の準備はした。早いだろう。」
「これは恐らく哨戒用のワイバーンね。」
「どうするんだよ。迎撃できるか?」
数10なら十分対処できる。恐らく明日のに向けた前準備だろう。幸い、この一帯を制圧してない関係か、ロウリアが馬鹿のように沢山の飛竜を飛ばす機会はなさそうだが。
「来たぞ!ワイバーンだ!」
水兵の1人が叫んで知らせる。そして、担当全員が戦慄き手汗とともに対空機銃を握った。
「来るぞ!仕返しをしてやれ!」
「了解司令官!主砲(?)、てぇっ!」
すぐに光の閃光が音を立てて飛び出す。その小さな光のアサシンが颯のごとく竜騎士に襲いかかったのだ。竜騎士たちは何が起きてるか分かっていない。ハンガリーの船に、おそらく悪戯に攻撃を仕掛けてみようと、下手な諧謔心を拗らせて見たのだろう。可哀想な話だ。
「容赦するな。全機撃ち落とせ。」
命令するは勿論艦長にして総司令官のリヒャルト。その目にはハイライトがない。純粋に、突出した恨みと自分の内在人格に一瞬呑まれていたのだ。
無論相手も反撃を加えるが、そうしてより近づく事は、即ち対空砲に狩られやすい領域にいくと言う事。ワイバーンはなす術もなく落ちていった。いけるぞ。思ったよりいける。だが、それでも運のいい一騎が火炎を発射。しかしそれは当たらず、返り討ちにされた。続くもう一騎。
「近づいてきたぞ!」
「大丈夫だ問題ない!ストレラを使え!」
ロケットランチャーを構えた水兵が竜騎士と向き合う。ピィーという電子音とも軋轢音とも言えぬ音の後、ばしゅっと科学の槍がワイバーンに向かった。そして、爆散したそれはもはや人とはいえぬ形になって、まるで人と竜の合い挽きと化してしまった。
「司令、既に4騎が落ちました。」
言うと共に、カイゼリン・エリザベートの横に火だるまになった竜が落ちていった。一瞬感じた、まるで髪の毛を燃やしたような生々しい臭いが吐き気を催す。
「相手は撤退しておりますが、如何なさいましょう。」
「そうだな。引くならいい。ただあれは落とせそうだから落とそう。」
彼は一匹を指さした。それは確かに、弱っている様子。すぐさま近くの水兵たちが、新設の対空機銃で撃ち落とす。ダンダンという音の後に、それもしっかりと水面に落ちたのである。
「あぶねえ。被害確認。」
「ドナウありません。」
「ティサありません。」
「マルギットオールグリーン。」
これがこの世界の現実なのか。此方に当てはめてみれば、マルチロール機10機の編隊が4隻のフリゲートに負け半数を失ったようなものだ。しかも損害はないと来たので困る。
「ロウリア王国……ワイバーンへの個人的な怨恨を晴らせてよかったよ。」
この感情は戦場で絶対に瘤になることは彼も存じていた。だからこそ、捨て置きたかったのである。
「さあ、進もう。クワトイネ海軍が待っているよ。」
奥にはもう既に、クワトイネの旗がちらついている。そうして彼らは広い海を進んでいった。戦争は、始まったばかり。
如何でしたか。今回少しもどかしかったと思うので次でもう楽にしてあげます(?)大乱戦と無双を期待して良いと、思う……どうしてだろうこの国だとどうしても確証が持てない……僕はこの国を愛してるはずなのになあ……
とにかく次回、ロデニウス沖大海戦!デュエルスタンバイ!
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