少しだけ頻度が上がるかも?とにかく、皆様お大事に。インフルエンザ流行っているので。
今回は短めです。ご勘弁を。
第七話 Virágom, virágom.
ギムの制圧を行い、疲労困憊に陥る中隊に告げられた言葉は、まるで憎悪の囁きのようだった。
「あ、隊長。連絡です。Virágom, virágom.」
エル隊長が顔に手を当てて、首を振る。
「ああ、ちきしょう。やっぱり休みはないか。」
ヘリコプターに、自分の顔ほどの卵を抱えながら乗るエル隊長。しかし、その目には多少の同情の念も映されて居た。
「いいか、俺はほっとけねえから連れてくんだよ。分かってるなクソ卵!余計なことするなら今にポーチドエッグにでもして食ってやるからな!」
「そんな手間かかる物戦場で作んないでください。」
「やめろマジレスは。」
レーチェルとカナタは話し込んでいる。俺たちに、政治的な話は分かんないが、正直良い話じゃなさそう。だって、あのカナタ首相の青いことよ。
「ヴィクトル大統領のお土産にでもしよう。」
こうして、大事に抱きかかえたその卵を撫でる。それがまるで、本当に水晶玉の様に艶やかだった。
「さあ行くぞ!城塞都市エジェイ!」
ヘリコプターの風を浴びながら、エル隊長は歌う。妙にそれが、皆を興がらせてくれた。
「Tavaszi szél vizet áraszt,virágom, virágom.」
「Minden madár társat választ,virágom, virágom.」
2、3人が続いた。パイロットもそれにハミングして歌い始める。
『Hát én immár kit válasszak,Virágom, virágom?』
小声でカナタが尋ねたらレーチェルが答えた。
「ハンガリーの民謡です。」
察したカナタが、猿真似で続く。
「Te engemet, én Tégedet,virágom, virágom.」
カナタの美声に全員が拍手を行う。歌い出したら、止まらない。この暗号は単なる意思疎通ではなかった。春は必ず来る。そして、やがて水が溢れて来るだろう。
「この歌は、いい歌ですね。」
ヘリコプターが向かう先は決戦の地、城塞都市エジェイである。
「よっしゃ、これでギムは安泰だな。」
「しかし、次なる問題はここだね。」
ヴィクトルが指差すのは地図の上、そこに載っているのは勿論、パーパルディア皇国である。その、黄色く変色した古い地図の限り相当の力が見込まれた。
「彼奴は、どうやら観戦武官を送って居たみたいだぜ。無論、我々は捕虜にしたが。」
「ちょっとまて、そりゃあ大問題になるかもしれないぞ。」
だって、こんなプライドの権化のような国。きっと自国の観戦武官を傷物にされちゃ黙っているはずないに決まってる。
「……それはまた面倒なのがやってきた。しかし、今はロウリアだ。ロウリアに集中せねばならない。」
そう、結局ロウリアが終わらぬことには始まらない。石油はぼちぼち鼠輸送ができたので、まだどうにかなる。それなら今はどうやって奴らを交渉台に座らせるか、だ。
「……それならばいい場所がある。」
ヴィクトルがもう一度指した場所は城塞都市エジェイ。彼らにとって最後の要塞であり、ロウリアの目線最も厄介な場所。此処を、今回決戦の地とする心持ちらしい。ならば好都合だ。コロナ中隊を其方に差し向けよう。
「ああそうそう、輸送ヘリは別にもう帰っていい。一部な一部。」
ヤーノシュが右手の指を折る。ポキポキと音がした。若干にして60名の兵士たち。レーチェルには呆れた物だ。まさか、カナタ首相の無双という肩書きが欲しいだけだなんて。
「まあ、とりあえず一旦は防衛成功だな」
その後、ヤーノシュはワイングラスを傾けた。血の様に真っ赤な葡萄酒が流れ込む。
「おい、狡いじゃないか。私にもよこしてくれよ。」
こうして、慎ましい戦勝祝いがなされるのだった。そこへ、今回の裏MVPが入る。
「やあやあソンバトヘイだぜ私は帰ってきた。」
「おうソンバトヘイ。飲むかい?」
「食うかいみたいなノリで言うんじゃないよ。俺は酒に弱いんだ。」
「ああ、分かっている。とりあえず、奴らに電信。Virágom, virágom。」
「はいはい。全く、奴らが哀れだよ。」
無線機に向き合うソンバトヘイが、すぐに終わらせると酒を飲みに戻ってきた。
「さあ、乾杯といこうじゃあないか。」
なみなみに注いだワインをがぶっと飲み干すソンバトヘイ。弱いはずなのに、するすると胃袋が許すのだ。気分がいい。俺たちはもう、孤独ではないんだ。もう何も怖くない。
「おい、今死亡フラグを考えてなかったかい」
「いや?」
「そんな気がしただけだよ。気にするなって。」
赤く好調したソンバトヘイに、さらにワインを勧めるヴィクトル。だがソンバトヘイにもまだ理性があったのである。
「いやあ、でもめでたいねえ勝てて。」
「アホが、まだ勝ったとは決まってない。その上、新しい敵まで来やがった。」
ヤーノシュがカーテンを捲る。陽光が刺して、少し部屋が明るくなった。
「パーパルディア皇国。奴らは規格外だ。俺たちでも勝てるか分からん。」
問題はそれだけじゃない。他、虐げられている国家群は、クイラを中心としてハンガリーを旗頭とし、パーパルディアへ叛逆をするつもりなのだ。そんな面倒は絶対にしたくはない。
「ああ、そうは言うからとにかく軍備増強だ。兵器を量産し、兵士を増やさねば。訓練も必要だ。」
「おまけに、ロウリア戦に戦車を使えっていう意見もある。船がねえんだよ。国防省は大忙しだねえ。」
「人ごとじゃないぞ。内務大臣殿。警察力は、日に日に落ちているじゃないか。」
ハンガリー国内にある石油の精製場では殆ど足りない。クイラにはひと段落したら建てるつもりだけど、まだ先だ。資材を運ぶのも、機材を運ぶのも、現地調達も難しい。こうなれば、崇高な建物を建てるんじゃなくて、何というか、木と石での質素なのを建てるべきという意見すらある。
何が言いたいかというと、国民の反感が日に日に増加しているという事。そりゃこんなストレスフル環境で耐えれる方がおかしい。
「国民の皆様には申し訳ないが、もう少し我慢してもらう。」
ヴィクトルがそこで口を挟んだ。とりあえず、こう提案する。
「まあとりあえず、今やりたいことをリストアップしようぜ。」
そして各々やりたいことを書いてみた。その結果が以下。
・石油タンカーと精製場の作成
・輸送船の建造
・軍隊の強化
・パーパルディアとの接触
・ロウリア戦での攻撃
・治安維持
「こんなもんか。メインは。」
「ああ。そうだな。」
さらでも、これだけのみならず、様々問題は山積みだ。国家召喚ってとにかく面倒臭い。就任初日からこれを味合わされたヴィクトルはとにかくその運命をわびた。
「よそ見しちゃあいかんぜ。パーパルディアは着々とこっちに近づいているんだ。だから、仮想敵国じゃない。もはや、本物の敵国として見るべきだ。」
「勿論、こっちは礼節を弁えるぜ。最初から喧嘩腰なのも何だこいつってなるし。何より、程度の低い奴と思われとうないぜ。」
「無論。奴らとは違う人種なのだよ。我々フン族はな。」
「おい、差別とも取れるぜそれ。」
「ああ、すまない。ただ、我々はそのように軍隊を用いた脅しを頻繁に使うことはない、という婉曲的な意思表示のつもりだった。」
「ならばいいが……」
しばしの沈黙の中、それを破ったのはヴィクトルである。あの王冠たちと、心を通わせて。
「Tavaszi szél vizet áraszt,virágom, virágom」
「春はまだ先だぜ。ブショーも来てないだろ。」
「いや?結構近いぜ。」
ソンバトヘイは仕方なさそうに肩を窄めた。そして、ヴィクトルに変わり歌い出す。
「Minden madár társat választ,virágom, virágom」
「見つかるといいな。それが。」
「ねえよ。絶対。」
ソンバトヘイと同じ仕草を、今度はヤーノシュがする。2人の視線がこちらを向いた。きっと、そういう意味。
「俺は音痴だぞ」
「関係ないね。」
今度はその仕草と同時に目玉を回した。諦めたのか歌い始める。その姿は、まるでどの歌姫よりも輝いていた。
「Hát én immár kit válasszak,Virágom, virágom」
歌ってから少し間を空けてヤーノシュが尋ねる。
「お前たちは、いいか?こんな状況だが、俺たちでどうにかすると誓ってくれるか?」
答えは、一つだった。ソンバトヘイとヴィクトルが答える。
今日、11月13日もまた、ドナウが美しい。転移から早2週間が過ぎようとして居た。
ロウリアの王宮には、かつてのクワトイネの時のような重い空気が漂って居た。この大敗北に対する議論と召喚である。
「何かおかしいとは思わないか?我々は、本当にクワトイネの亜人と戦っているのだろうか、導師ワッシューナよ、どう思う?意見を述べよ」
東部諸侯団を取りまとめるジューンフィルア伯爵が問い糺す。その様子には、真っ青なブルーベリーのように血色を失って居たのが確認できる。
「魔力探知には、一切反応が無く、誰も気がつかなかったのでワイバーン等の高魔力生物の使用や、ワイバーンの導力火炎弾のような高威力魔法の使用は無かったものと思われます」
「では何だと思う?」
「まさかとは思うのですが……」
「何だ!」
「最近、導師の間で導師魔信掲示板に記載されていたのですが、あまりにも現実離れしております。誰も信じて居たなっかのですが、もはやそれしか考えられません。」
「うむ」
「マイハーク攻略部隊が、船団の四分の一を失い大敗、さらに敵船に向かっていたワイバーンが全滅し、作戦は失敗に終わったと…」
その場にいた全員に衝撃が走る。全員、騒めきを隠すことができなかった。
「いや、待て待て、今回の派遣船団とワイバーンは、それだけでクワトイネを征服出来るほどの大部隊だった。仮にその戦力で列強パーパルディア皇国に攻め入ったとしても、彼らの艦隊包囲網を力でこじ開け上陸させられるだけの量と戦力だ。会戦の戦力としては、歴史上最大かもしれない。それが負けただと?たかがクワトイネに!?」
「実はギムの粛清後に、ハンガリーとやらが攻撃を仕掛けたのですが。彼らの操る船は、轟音と共に船を1撃で沈めるほどの魔導を連続して放ち、ワイバーンに対しては、追尾してくる光の槍を使い、光の槍が当たったワイバーンは粉々に吹き飛んだそうです。導師掲示板に、私の同期生が書き込んでいました」一同は考え込む。よくある戦場伝説なのか、突拍子も無い話だが、まさか本当なのか。しかし、これが本当なら全ての辻褄が合う。
「それならば、やるしかあるまい。」
ハーク・ロウリア34世は再び口を開いた。
「奴らは、ギムにも部隊を送った。これからエジェイに攻め込むのであれば、全力で攻撃するつもりであったが、そうはいくまい。幸い、あのアデムは捕虜となった。これで、奴の無理な命令に従う筋合いは無くなる。奴らもこの侵入経路から、エジェイに向かうものと予測するだろう。反対だ。素通りし、奴らの首へと向かうのだ。」
それが意味するのは、首都への攻撃。既に制空権を失っているが、自分達へ向かうはずの兵士がいきなり進路を変えればさぞ驚くだろう。
「失敗すれば、直ぐに撤収へと向かう。奴らに我々に攻め入る力はない。ただ怖いのはハンガリーだ。」
このハンガリー、地図を見れば分かるが。前線をまるで桂馬のようにスキップして入っている。詰まる所、これは何某かの遠距離攻撃手段を持っているということだ。となると、奴らがクワトイネにワイバーンで来たことが臭い。移動特化型のワイバーンを持っているのだろう。
「奴らが、空から来るのは分かった。それならば。」
ハーク・ロウリア34世はニヤリと笑った。
「対空兵器を量産するといい。」
そして付け加える。
「このことはくれぐれも内密に頼もう。」
こうして、エジェイへの攻撃は中断された。この国王、原作より優秀である。
次回はエジェイ書こうかな。なんだっけ、なんか陣地を出るなって言われた奴。どうしようネタ切れが近い。あとなんかエルフ狩りするやつも。
作中の歌は、ハンガリーの民謡です。大阪万博でも歌われたらしいぜ。確か主も天皇家の方がいらっしゃった時に歌った気がする。いまだに全部覚えてるよ歌詞を。ここは日本なので、漢字の一つでも覚えた方がいいのにね、って友人に言われました。しばき倒すぞ。
まあ身バレしてもどうせ誰1人分かんねえし寧ろ小話になるから積極的にバラしていくわ。今の人生にゃ影響しねえよ。多分。きっと。メイビー。
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あと、これその歌のリンクとコードです。よかったら聞いてきださい。
https://www.youtube.com/watch?v=dCB66y5haBU
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