漫画喫茶で寝ていた眞の元に、一件の着信が入る。
相手は数日前に会った、世間を騒がせている殺人鬼キラ__その正体である、夜神月からだ。
眞は気だるげに、月からの通話に出る。
「もしも〜し……」
『おはよう。今日暇か?』
「今日?……暇だけど」
特に予定もない為そう言うと、携帯越しに月が爽やかに笑ったのが解った。好青年然とした反応に、思わずうげぇ……と顔を顰める。
『だったら、スペースランドに行かないか。バス停で待ってるよ』
「はぁ……あ、切れた」
端から断られるつもりは無かったのだろう。眞は大きく溜息を吐いて、身支度をする。
卓上鏡の前で髪を整えながら、にしても……と先程の誘いについて思案する。
「スペースランドって、テーマパークだっけ」
……何だってそんな所に、自分と二人で?
つい数日前に会ったばかりの人間と出掛けるには、少し華やかすぎる。それにお互い、世間からすれば犯罪者である。
そう思ったが、そんなのはいくら考えても詮無いことだ。いつもの黒いパーカーを羽織り、眞は漫画喫茶を出る。
後ろには当然、オーエンも着いて来ていた。
指定されたバス停に向かうと、既に月が待っていた。
「お待たせ」
「そんなに待ってないよ」
流石は熟れた対応である。
学校でも大層モテるんだろうなー等と考えていると、月は周囲に聞こえないくらいの声量で言った。
「実は今、尾行されているんだ」
「は?」
思わず訝しげに月を睨む。だが月は涼しい顔をして話を続けた。
「恐らくLが警察関係者に尾行を付けているんだろう。そいつの正体を探りたい」
「……成程ね」
月の様子からして、既に策は仕込んであるのだろう。
そして今の月の発言から、Lは警察を疑っていることが解った。尾行も恐らくLの伝手だろう。
そいつらがキラに始末されれば、Lはますます警察を疑うことになる……。
そう考え込んでいる間にバスが来たので、それに乗り込む。後方の席に座ると、二人の後に続いて男がその後ろに座った。
眞はこいつが尾行か……と納得する。
そうして暫くバスに揺られていると、ある一人の男が乗ってきた。
その男は、突如拳銃を構えて、運転手と乗客を脅す。車内に乗客たちの悲鳴が響き渡った。
眞はその男の顔に、見覚えがあった。
「(麻薬常習犯の恐田奇一郎……!!)」
ハッとして月の方を見る。彼は恐田の方を睨んでいるが、その目には若干の興奮が見え隠れしていた。
眞はこれが月の策だと悟り、隠れるように月に身を寄せる。月の方も庇うように眞の肩を抱き寄せた。
すると、月がメモを見せてくる。
そこには彼が恐田を取り押さえる旨が書かれていた。それを後方の男が見たのだろう、止めるんだと月の行動を諌める。
男は恐田に聞こえないよう、小声で話した。
「……私は現在、日本で極秘捜査をしているFBIの捜査官だ。バスジャック犯は私が取り押さえる」
「あなたが、FBI捜査官である証拠はありますか?」
疑う月に、眞は目を向ける。バスジャック等で、後部座席に捜査官を騙る者がいるのはよくある手口だと月は語った。
男は渋い顔をし、止むを得ないと二人にIDを見せる。そこにはレイモンド=ペッパーと名前が書いてある。眞はさり気なく男の顔を見て、それから月の方を見た。
「……判りました。あなたを信用しましょう」
月の言葉にレイモンドはホッとした顔をして、しかし直ぐに気を引き締める。恐田は銃を乗客らに向けながら、後方に向かって来ていた。
すると不意に、月が紙切れを落としてしまう。それを拾おうとするが……恐田に「動くな!」と怒鳴られ、動きを止める。代わりに恐田がメモを拾った。恐田はそれを見て、女とデートかよ!と吐き捨てて月に投げた。
___そこからの光景は、まさに「異様」だった。
あの時、恐田が拾ったのは、月のデスノートの切れ端だったのだろう。リュークを認識できるようになった恐田は、リュークに向かって銃を乱射する。かと思えば逃げるようにバスを降り、そして……車に撥ねられて死んだ。
まるで犯罪者が自滅したかのような一連の出来事に、眞は感嘆する。
そして、慌ててこの場を去って行ったレイモンドの背を見送りながら言った。
「彼、偽名だったね」
「あぁ。寧ろ良かったよ、FBIが間抜けな連中じゃなくて」
そう話しながら、二人もその場を離れた。
レイモンド__レイ=ペンバーの首には、既に死神の鎌が掛けられている。
あとはどう狩るかだな……と思案しながら、月は次の策に思考を巡らせた。
キリのいい所で区切ると、短くなったり長くなったり……。
もっと文字数が書けるよう頑張ります。