半端な気持ちで入ってくるなよ……Lifeの世界によぉ!! 作:まさみゃ〜(柾雅)
「おっと、すまん」
「あ、す、すみません」
昼休み。
飯を買う為に教室から出ようとして1人の人物とぶつかりそうになる。
背丈は俺よりも低いが、代わりに大層なものを持っている彼女。
彼女がこの教室に用があるとするならあの人にだろう。
と言うか、教室を出る直前に「ヨシっ」って感じで意気込んだ様な声は気のせいかと思ったか、彼女の声だったか。
悪い事をしたな。
「おーい、茂札ァー。お前に客さん来てるぞー」
という訳で詫びとして茂札を呼ぶ。
俺の行動に彼女は、天儀ドロシーは何故わかったのか慌てふためく。
いや、よく陰から茂札に声をかけようとして躊躇してるとこ見てたし……。
なんてことは本人には言えないけどな。
「あ、ああ、ドロ……天儀さん」
彼女に気付いたのか、茂札は胃が痛そうな雰囲気で立ち上がり彼女の元へ向かう。
俺はそのまま教室を出るが、茂札が天儀ドロシーの事を名前を呼ぼうとして教室の温度が1℃ぐらい下がった気がする。
ま、俺には関係のない事なのでここいらで失礼しよう。
こっそり学校から抜け出してコンビニへ。
こんな事をしているから不良と呼ばれるのだろうが、食堂は使いたく無い。
それに抜け出すのも基本、登校時にコンビニに寄れなかったからだ。
……おのれ闇のカードを使うファイターめ。
会計を済ませてコンビニを出る。
スマホで時刻を確認したが、余裕はまだありそうなのでそのまま買った昼食を一つ開けて一口。
「……むぐ?」
惣菜パンに一口かぶりつき、俺は固まった。
右肩が重い。
そんなまさか、真昼間に出てくるとか普通はないだろやめてくれよ……。
頬にはしっとりとした冷たさ。
人肌の様な質感がそこにある。
俺は……俺は
今、俺の肩に触れているのが闇のファイターならまだ良い。殴ればなんとかなるから。
同じ高校の生徒の悪戯も同じく問題ない。大体俺に声をかけてくるやつは碌でもないやつだから殴ればなんとかなる。
でもおb……幽霊。コイツだけは駄目だ。殴れないから。
恐る恐る右肩の方に視線だけ向ける。
そこには黒いずんぐりむっくりとした人型の何かが俺の食べている惣菜パンに興味の眼差しを向けて……待て、コイツ顔の何処だ?
初めは不意打ちもあって恐怖が大半を占めていたが、想像以上に変な姿の何かが惣菜パンに興味津々なところを見ていると、こちらも興味が湧いてくる。
『我が神子よ、汝は何を口にしている?』
「……意外と頬っぺた? ぷにぷにしてんのな」
触れられる。
つまりおばけじゃない。
おばけじゃないなら安心だな。
それに害意は無いみたいだ。
惣菜パンを食べ切り、黒い何かを抱える。
『こら、我が神子よ。何をする〜』
ゴム毬の様な弾力。
抵抗する様に俺の腕の中で四肢をパタパタと暴れるが、そこまで力は無い。
匂いは……無臭だが微かに闇のファイターが展開する闇の香り。
じっとりとした不快感が微かにある。
「ミコって俺のことか……?」
『汝以外に誰がいるのだ』
相変わらず男か女かも分からない混じった声。
地面にそっと降ろすと、俺の脚からよじ登って肩に収まる。
スマホの時間を確認するとそろそろ学校に戻ったほうがいいか。
他に買った昼食をゆっくり摂りたいし。
だがコイツはどうしたら良いのだろう。
「……コイツどうしよう」
『安心するが良い、我が神子よ。我は神子以外には見えぬ。……多分』
最後に「多分」って付け足しやがった。
まぁ今のところ俺の方への視線は無いし問題無い……か?
「……んでいつも通りと。つーか今日で2回目だぞ」
学校まであともう少しの所で絡まれる。
見た感じ、昨晩、コインランドリー帰りに絡んできた他の高校の不良だな。
特にそのモヒカン頭には見覚えがある。
「昨晩の御礼参りだゴラァ!!」
手に持つカードからは闇の気配。
入手ルートは知らんがこの程度の気配ならそこまで強くは無いだろう。
まぁ、取り巻きの様子的に試運転で何度か勝っているみたいだからそれとして油断はしない。
「まぁ……昨晩よりかは満足させてくれよ?」
時間は……1戦ぐらいなら問題ない。
「「レディ……ファイト!!」」
ボードが俺の先攻を知らせる。
宣言を欠かさずに、ライフデッキから2枚カードをドローして色彩をセット。
「まずはコストを2支払う代わりに手札を1枚捨てることで魔法<誤爆>をプレイ。自身のライフに1点のダメージ。さらに捨てられた<間抜けな爆弾魔>の効果で俺は2点のダメージを受ける」
ライフチェックは色彩が2と呪言が1。
呪言は発動せずそのまま墓地へ。
「俺はこれでターンエンド」
色彩は3で手札はライフカードを含めて5枚。
やっぱり闇のファイトじゃ1ターンで手札を半分以下には早々に出来ないか。
「俺のターン、ドロー!! 色彩をセットして1コスト、<瞬足の火威徒>を召喚!
そんで攻撃だ!」
「……ライフチェック」
捲れたのは……色彩。
昨晩と同じ動きだし、当然アレも握ってるだろう。
「手札の<瞬足の火威徒>の【
自分のステイ状態の幻獣が存在して、かつ相手のライフが減った時に発動する【拍動】。
自分の場のステイ状態の幻獣をコストと見立てて追加で手札から場に出せる効果だ。
<瞬足の火威徒>は【速攻】によりすぐに攻撃が可能なため、もう1点ライフが削られる。
「……呪言<報復>により直前にライフを削った幻獣、つまり2体目の<瞬足の火威徒>を破壊する。これは再生できない」
「チィッ!!」
どうやら3体目の<瞬足の火威徒>は握っていなかったみたいだな。
そのまま相手にターンが終了する。
「俺のターン、レイディ・アップキープ・ドローフェイズ。ライフ、メインから1枚ずつドロー」
色彩は4。全て黒だがまぁ色自体は気にしなくて良いか。
「色彩をセット、2コスト支払い<間抜けな爆弾魔>を召喚。召喚時に自身のライフに1点のダメージ」
捲れたのは呪言<誤作動>。
効果は手札を2枚、<煉獄門>と<無手ノ悪魔 ヴォー・イド>を捨てて1ドローして任意でライフ1点回復。普段使いなら採用されないけれど<無手ノ悪魔>には採用の余地はある。あと、回復が任意なのも個人的に嬉しいね。回復する際は色彩を戻さないといけないから。
「更に手札を1枚、<招来の契約>を捨てて1コスト軽減、コスト2魔法<偏執病の兆し>をプレイ。場の幻獣1体を生贄に手札、デッキから同じコストの<無手ノ悪魔>を場に出す。ただしこの効果で場に出た幻獣は効果に発動と攻撃を行えない」
場に出すのは手札から<無手ノ悪魔 イビル・セージ>。
起動効果に自身の手札を1枚捨てることができるが、<偏執病の兆し>の影響で使用できない。
「そしてコスト1魔法<濁る儀式>」
幻獣の召喚にのみ使用できる3コストを生成。
残る手札は1枚。
「コスト3<無手ノ悪魔 ネクロマンサー>をプレイ。
そしてコスト2魔法<
選択するのはイビル・セージ。
そしてタフネスは2であるためお互いに2点。
「俺の手札はゼロ。よってイビル・セージの【無手】が発動。これは墓地によって発動する効果なので問題なく適用できる。デッキから<無手ノ悪魔 コーラー>を墓地へ」
そしてネクロマンサーの効果により自身をレストさせてコーラーを蘇生。
そのままコーラーをレストさせて効果を起動。
「ま、まだだ! 既にお前の土地は全て使い切ってる!! 今更デッキを操作しても遅ェ!!」
「コスト4<無手ノ悪魔 カースド・ビショップ>を手札に。コイツは手札がコイツのみの場合、コストを支払わずに召喚できる。
……これでターンエンド」
必要なカードは揃っていないが、まず次のターン生きながらえる準備はできた。
そして手札は0枚のため、次からは<無手ノ悪魔>が本来の姿で暴れられる。
『我が神子よ、なぜ我を使わぬ?』
肩に乗る何かが語りかけてくる。
おそらく<煉獄門>のことを言っているのだろう。
それよりもこのデッキは手札を0枚にしてからが本番なため、秘宝をセットしている暇は無い。
まぁ、魔石の<フェイク・ハンズ>があれば動かし方は変わるんだけど。
「俺のターン、ドロー!! 色彩をセットして、コスト1<特攻の火威徒>を召喚! コイツはブロックされねぇ! そしてコスト3秘宝<増幅する拍動>をセット! これにより俺のコントロールする火威徒は攻撃時に+1の補正を受けるぜ!」
そして<瞬足の火威徒>と<特攻の火威徒>の攻撃が宣言される。
両方とも補正を受けているため全て受ければ計4点のダメージになる。
「両方ともライフだ」
ライフカードが自動的に捲られる。
色彩、色彩、色彩……呪言。
「呪言<契約の落とし穴>。効果により俺はデッキからカードを1枚墓地へ送る。俺はデッキから魔法<虚栄の加護>を墓地へ」
「今度こそ刻んでやる!! 【
モヒカンは赤と黒のカードをボードに叩きつける。
そしてそのまま攻撃してくるのだが……。
「その攻撃はカースド・ビショップでブロック。それに連鎖して墓地の<虚栄の加護>を除外して効果を発動。
バトルするお互いの幻獣の攻撃力は、お互い相手幻獣の体力になる。その際、お互いの幻獣の効果は無効となる」
相打ちにより相手の【拍動】は止まる。
もう充分だろう。
「……そろそろ終わらせないと授業に間に合わなくなるし次で決める」
「ギャハハッ!! テメェに手札はゼロで? しかもデッキトップの操作もしてねぇ。それで何とかなるかよ!!」
何か煽っているようだが、耳鳴りが騒がしくてうまく聞き取れない。
かろうじて聞き取れた内容から予測するが、このドローに掛かっているのは確かにそうだ。
けれど問題ない自信しか無い。
『我が神子よ。そろそろ戯れも終いにしようか』
「ああ、分かっている。俺のターン、レディ・アップキープ・ドローフェイズ」
ライフデッキから1枚ロスト。メインデッキから1枚ドロー……。
引いたカードを裏から表向きにする。
「……キヒッ。俺がドローしたのは<無手ノ悪魔 ノーチス>。そしてコイツ自身の効果により0コストで召喚。召喚時効果によりデッキトップにセットするカードは魔法<未来視の契約>だ。そしてドロー」
そのまま3コストを支払い<未来視の契約>で2枚ドロー。
加わったカードを見て俺は勝利を確信した。
「コスト0秘宝<虚無の祭壇>をセット。そして効果を起動する」
コストを2支払い、このターンの間、自分の場の幻獣のコストを+Xする。
このXは支払ったコストと同じになる。
「よってコストはプラス2だ。そして残る手札1枚は……コイツだ」
モヒカンに次にプレイするカードを見せる。
それは<無手ノ悪魔 ノーチス>だった。
「2枚目だと!?」
「召喚時効果、今度はコーラーを手札に加え、コイツも自身の効果でノーコストで召喚」
デッキが回る。
と言っても、ノーチスは既に2体場に出ているため、3体目を出して2体目のコーラーでサーチ先は変えなければならなくなる。
「コーラーの効果で最後に手札に加えるのは……コスト6<無手ノ悪魔
俺の場にはノーチスが3体。よって条件はクリア」
「無より無限は生まれ
無限は無限光を生む
無限に射す光のその先」
純白の、卵のような形状。
よく見れば、それは蝙蝠のような羽に包まれた何かのようだ。
そしてそれから感じるのは……歓喜。
「これより虚無の王者は再び目覚める……ッ!!
再誕せよ! <無手ノ悪魔 Z - E:ロー>!!」
歪な角を持つ純白の悪魔。
その顔には何も無く、胸には大きな孔がある。
傷だらけの6対の蝙蝠の翼は
「残る土地全てをレストしてそのコストを全て使用する。Z - E:ローのスタッツは相手のライフと同等となり、【速攻】と【飛行】そして【貫通】を得る」
俺の言葉に呼応するようにZ - E:ローは咆哮する。
支払ったコストに応じて追加で効果を得るのがコイツ。
4コスト支払ったため、【速攻】【飛行】【貫通】と順番に効果を持ち、そして4段階目。
「バトルだ。Z - E:ローでダイレクトアタック! この瞬間、Z - E:ローの4段階目の効果!!」
メインデッキから1枚のカードが飛び出す。
俺はそれを掴み、そのまま発動を宣言。
4段階目はデッキからカードを手札に加える効果。ただし、そのターンに使用しなかった場合、俺はZ - E:ローのタフネス分のライフを失う。
「瞬間魔法、コストは色彩4つを墓地へ送ることで代用……<罪を清めし炎>をプレイ。幻獣1体を対象に、対象となった幻獣は相手のターン終了時までこのカード以外の効果を受けない。そして──」
──このカードの発動に対してお互いは連鎖出来ない。
モヒカンに目掛けて高速で接近するZ - E:ロー。
奴の目の前に到達すると、腕を大きく振り上げ……膨張したその腕で斬り裂いた。
「ジ・エンドだ。これに懲りたら関わんじゃねぇーよ」
闇が晴れ、ボードとデッキを仕舞う。
アンティは敗者は勝者に隷属のようだった。
早速指示しようとして俺は固まる。
何故か肩にいたはずのそれが、そこにいたから。
「……で、何をしていらっしゃるんです?」
『我が神子よ。我の食事の邪魔をするで無い』
モヒカンのデッキからドス黒いオーラを放つカードを抜き出して、それをもっきゅもっきゅと喰らうずんぐりむっくり。
両手で丁寧に持ち、クッキーを食べるように齧る。
その度に何故かは分からないが、俺の気分は晴れるような気がした。
「……まぁいっか。さっさと学校に戻ろ」
念のため時間を確認したが、今から戻れば残りの昼食を摂る時間がないこと以外は問題ない。
学校帰りにMeeKingに寄ったら、常連客のユウキの近くに半透明の女の子が浮いてて俺は気を失った。
11050 607080 16200
──<無手ノ悪魔 Z - E:ロー>
【蛇足】
<無手ノ悪魔 Z - E:ロー>と<罪を清めし炎>はいつのまにかデッキに生えてきた(それぞれ1枚ずつ加わって、あまり使っていなかったカード2枚が紛失)