固い土の野原に生い茂る草、太陽は容赦なく俺を照らし続けていて、冬だと言うのに暑さを感じるほどであった。
青臭い匂いは服から離れることはなく、いつまでも俺の体にまとわりついて離れない。
重い体を持ち上げて「痛たた……」と老人のような声を出し、前を向く、ちょうど目の前だ
日光に照らされ、神々しい光を放った少女が仁王立ちでこちらを見ていたのだ
「……あの?どちら様……って言うかここはどこでしょうか?」
「アーッハハハハァ!よくぞ聞いてくれたな少年!聞いてくれなかったら言葉に詰まってたから助かったぞ!」
「あ……うん」
少女は高笑い(?)をしてビシッ!と俺を指差す。
なぜ自分がこんなに冷静なのかは分からないが、目が覚めたらいきなりこの野原で目が覚めて、さらに神々しい少女が仁王立ちで目の前に立っていたのだ
もうこれをカオスと呼ばずになんと呼ぼうか?
「ここは……そうだな、君からしたら異世界だ!」
「い、異世……はぁ!?」
「もっとも平たく言うとだがな、そしてこの場所が……えっと……まぁ私の家の近くにあった野原だ、決して特別な場所だったりとかそんなのではない」
なるほど、となぜか納得し、再び辺りを見渡す、普通に綺麗な野原だった
「それで……なんで俺こんな所にいるんだ……」
「向こうの世界で生きるの辛そうにしてたから連れて来ちゃった☆」
「そうかー」
「あれ?大体の人は拉致したら怒るんだけど……」
「拉致って自覚あったのかよ……」
確かに、俺は生きる事が辛かった、両親は他界し、学校も行くところなど腐るほどあったのだが、あえて行くことは無かった、そのうち《いじめ》の対象になるのは目に見えていた、と言うより予告されていたのだ。
難しい話は思い出すと長くなってしまうのでここで一度思考をシャットダウンし、また思考を動かして少女に対し口を開いた
「本当に俺、『連れて来ちゃった』なんて理由で異世界に拉致られたの?」
「そうだよ?」
「な、なんか特別な能力を持ってるとかは……」
「今のままだとその可能性は0に等しいね、諦めたほうがいいよ」
この少女が言っていることはどうも嘘だと思うことが出来ない、言っていることが本当なら俺は本当に拉致られただけなのだ。
少女はペタンと地面に座る、白く、長い髪が地面に付くがあまり気にしていないようだ
「まぁ拉致したのはいいのだが……」
「いやよくないよ」
「どうせ行くあてもないだろう?私の家に来ないか?」
「それはいいけど男を家に入れて大丈夫なのか?」
「いや、家に入る前に風呂に入ってもらうぞ」
少女は勢いよく立ち上がり、指を鳴らす、その瞬間だった。
俺の前の何もない空間から突然扉が出現したのだ、見た所古い扉のようで、木製の物に金属の取っ手が付いている、劣化版ど◯でもドアのような物だった。
少女は扉を開けて中に入り、手招きをする、入ってみると扉の先は真っ暗で、どこが地面でどこが壁か……などが全く分からなかったので、ただただ少女についていったのである
「さ、着いたぞ」
「早いなぁ……」
歩き続けた先の光?のような物を通った少女がまた手招きをする、俺も急いで光を通り、顔を上げる
「すご……和風の家だなぁ……」
「大きいでしょ?」
後ろ姿からでも少女がドヤ顔をしているのは簡単に分かった、再び仁王立ちをして門の前に立ち、くるりとこちらを向く
「風呂はこの門を通ってすぐ横に行った所にある、着替えも用意しておくからゆっくり体を洗うがいいぞ」
「うーん……なんか悪いけどお言葉に甘えとくよ」
門を開いてすぐに、《温泉→》と書かれた看板が見える、風呂と言うより温泉だったのか、と思いながら指示に従って足を動かす。
………思えば今まで俺は引きこもりだったのだ、ロクに足も動かしていないため、もう体だって悲鳴を上げている
「ここか……ってデカイな」
普通の風呂の8倍か10倍はあるであろう露天風呂が、曇るガラス製のドアからちらりと見える、俺は服を脱いで、おそらく服を入れるものであろうカゴに服を入れて風呂に入る、もちろん頭や体も洗ってからだ
「しかし広いな……高級旅館にでも来たのか?」
独り言をブツブツと言いながら体と頭を洗い、お湯に浸かる、温度も程よく、なにより露天風呂であるため、景色がこの上ないほど綺麗だった。
湖の周りに生い茂る木々や草、広大な大地がまた俺を癒した
「綺麗な景色だろう?」
「うん、すごくきれ……い……」
後ろが振り向けない、なぜこの少女がここにいるのだろうか
思考をフルに使い、最善の行動を考える。
ペタペタと言う足音を聞くにおそらく服を着ていない、と言うかチラッと見たときに着てなかった
「いやこっち見ていいぞ?大事な所はちゃんと隠してるから」
「え……?」
振り向いて少女を見る、確かに2枚のタオルで隠しているようだ
「しょ、少年の方はどうなんだ?」
「俺は隠さないと落ち着いて風呂入れないから……」
いわゆるトラウマである、詳しい事は書かないが
詳しい事は書かないが(二回目)
「じゃあ隣座るぞー」
「うん」
「風呂を上がったらこの世界の話をしようと思う、構わないな?」
「おー、うん大丈夫」
簡単にここが異世界だと忘れてくつろいでいたが、もし異世界に行けたらやってみたいことがあったのだ、ファンタジー物の小説だったり、異世界転生物の小説やアニメなどで使える魔法だ、能力は無いらしいが、もしかしたら魔法なら使えるかもしれない。
小さい頃はよく「もし魔法が使えたら」なんて想像して遊んだものだ、特別なチカラを使える正義のヒーローにも憧れていた純粋な子供が、今ではこれだ、正直元いた世界では救いようも無かっただろうから異世界に行けて助かった
「そういえば君は一人暮らしだったのか?」
「基本はね、両親もいなければ頼れる友達だっていない、両親の貯金もそろそろ危なかったし」
「大変だったのだな……」
そんな会話を続けて5分………
着替えを済ませた俺は、すでに着替え終えている少女の後を付いていき、屋敷の玄関へと足を踏み入れる、屋敷へ上がるためであろうゾウリは、少女に用意してもらった替えの服(俺が着てもぶかぶかのポロシャツと長ズボン)とはお世辞にも合っているとは言えなかった
「えっと客室は……」
「もしかしてここ一人で……?」
「もしかしなくても一人で暮らしてるぞ」
白髪をわしゃわしゃと掻きながらしばらく歩いて、それらしき部屋の前で歩くのをやめる、髪と同じく白いスライド式の扉をガラッと開けてドヤ顔をする、部屋の中はなんとも普通で、ベッドにこたつ、そして大きな棚以外何も珍しいものは見つからない
「あ、そこに座ってくれ」
こたつを指差し言う、命令通りに扉側に座って、しばらく間を置いてから向かいに少女が座り、口を開く
「まずは自己紹介だ、私はアマテラス、確かそっちの世界では神の名前だったとか?」
「あー……うん、結構有名だね、なんで女の子にそんな名前付いたのか分からないけど」
「まぁ実際神だし、神の名前が付いてても問題あるまい」
アマテラス(?)はまたもやドヤ顔をしてなぜか勝ち誇ったような熱い眼差しで俺の目を見る、ここが異世界と言う事までは信じるのだが、いきなり「私は神だ!」とか言われてもイマイチ実感が湧かないし、第一にこんな女の子が神様やってるのはイメージすら湧かない、デ◯ノートでも持ってるのなら別だったかもしれないのだが
「あ、次俺か、なんて言うか自己紹介苦手だけど……マキタニ ハルトだ」
「ハルトか、良い名前じゃないか。……さて、そろそろ本題に入ろう」
アマちゃん(めんどくさいのでこう呼ぶ事にした)はA4サイズの紙をこたつの上に広げる、紙の端っこ4つをミカンで抑えているのがまた可愛らしいが、俺から見て右上、アマちゃんから見て左下のミカンを剥いてしまい、半分を俺に渡してもう半分をもしゃもしゃと食べる、なんとも微笑ましい。
「まずは何から聞きたい?あ、この紙はあまり気にしないでくれ」
「えっと……俺にも魔法って使えたりする?」
「簡単な物なら出来るかもしれないな、だが使えたとしても、それは特定の場所だけでだ、それ以外の場所は魔法が使えない」
「特定の場所……?」
「そうだ、例えば国の領土だったりだな、国家秘密になってるらしいが、国のどこかが発している《チカラ》の周辺でしか、生き物は持っている魔力を形にできないのだ」
簡単にまとめると、国が許可している場所ではないと魔法が『使えない』わけだ、禁止などではなく、使えなくなる、そして発されている《チカラ》は一つの国に一つ、もしくは幾つかあるようだ。
行動範囲には気をつけて動かないといけないのだろうか?その前に魔法が使えるかが分からないのだが
「今や魔法は必需品、生活にも大きく使われている……つまりそのチカラの発生源が潰されれば……」
「簡単に生活が壊れる……か」
「そうゆうことだ、だから国はチカラの正体、どこから発生させているのかも、情報を全て隠している」
世界の話を聞き、何かが見えてきた気がする中、アマはまたミカンを剥いて半分を俺に渡す、どうやら相当気に入っているらしく、ミカンに付いている白い部分も完璧に取れていた、しかしミカンを剥いている時の表情は俺に話をした時と同じく真剣そのものである
……正直ミカンに対して真剣なのか俺との話で真剣なのかわからないのだが……
魔王たんガワイイヨォォォォォォォ!(通りすがりのネタバレ)