「にゃは!やっぱりユウちゃん居た〜。僕の無様な失態を見ていたのかい?」
「うん、見てたよー」
色とりどりの屋台が並ぶ会場が賑わいを見せていた。焼き鳥の焦げる匂い、鉄板の上で跳ねるソースの音、綿飴の甘い香り。太陽は高く、風が吹くたびに旗が揺れ、屋台のカラフルなのぼりがキラキラと瞬いていた。
その喧騒の中、ソロの視線がテーブルに止まった。テーブルの上に積み上げられているのは、焼きそば、フランクフルト、たこ焼き、かき氷などなど。そしてそれをもぐもぐと頬張る、見慣れた少女の姿。質の良い服に身を包み、背筋を正したまま、それでも子どものような無邪気さで食べている。花のような独特の虹彩の瞳には楽しそうな色が浮かんでいた。
「買いすぎじゃ〜ん!大食い芸能人じゃないんだからさ、食べきれないでしょ。時代はSDGsなんだよ?僕がパワポ作って教えてあげようか?」
「要らないわよ、知ってるし。“Stuffed with delicious food, grinning satisfied”でしょ?」
「“腹一杯美味いものを食ってご機嫌な笑顔を浮かべてる”って!?にゃは!一から十まで全部違うね!」
ユウは笑いながら、串に刺さった焼き鳥をひとつ口に運ぶ。
「実は憧れだったのよね。こういう屋台のご飯食べるの。焼きそば、たこ焼き、フランクフルト!かき氷に綿飴にリンゴ飴!チョコバナナ!必ず制覇してみせますとも!」
「絶対無理無理、現実を見て!もう手が止まってるじゃーん」
「全部一口は食べたのよ〜。ちゃんとナイフで切って食べたから口はつけてないわ。残りはアンタ食べてよ」
「これが良家のお嬢様の姿とは驚きだね!あまりにも行儀が悪い!腹ペコの犬か貴方は!」
「いいじゃないの〜。私たちの仲なんだし。それに貴方だってたくさん食べた方がパワーがつくでしょう?パワーがつけば、爆発で空から叩き落とされることもないでしょう!」
「ひゃー!痛いとこ突かれたー!」
ソロは思わず笑った。見られていたのかと思うと恥ずかしさよりも、妙な可笑しみが湧いてきた。
「油断大敵とはこのことねー。慢心はヒーローの天敵よ?」
ユウはそう言って、買ったばかりのチョコバナナをピッと突きつける。ソロはそれをひょいと受け取り、二口で平らげた。甘い香りが舌に広がる。バナナのねっとりとした甘味と、冷えたチョコが一瞬で溶け合い、思わず目を細めた。
「個性を使って遊ぶのは結構だけど、遊びすぎると負けちゃうわよ〜。負けて悔しがる弟の姿も可愛いから、それはそれで良いけどね!」
「にゃは、可愛がられるのは好きじゃないね。どうせなら、カッコよく決めたいや」
ソロはそう言いながら、ユウが残したたこ焼きを口に運ぶ。素朴な味が舌を包んだ。彼女の家なら、もっと上等な料理はいくらでも出るはずだ。それでもこうして庶民的な味を欲する彼女が不思議だった。
「最終種目は1対1のバトルだっけ?」
「例年そうらしいね。ガチンコバトル。結局、暴力がいちばん盛り上がるんだ。公開処刑が娯楽だった頃から、人間の本質は進化していないと言える」
「公開処刑が今もあったら、アンタがいちばん楽しみそうだけどね」
ユウは苦笑しながら、フランクフルトを口に運ぶ。
「まあお父様は見てないし、見るつもりもないらしいから。好きなようにやったらいいわよ。勝っても負けても、目一杯楽しんだら良いわ」
「はは、どうせならド派手に目立ってNo.1を取りたいね。でも1日で連戦はやっぱり面倒くさいな……痛いし疲れるし……」
「ふふ、負けたら撫でてあげるわ」
「僕のことを犬猫と同類に見てるのかな!?撫でられるのは屈辱的だ」
「ええ〜、悲しいなぁ。昔は結構撫でてあげてたんだけどなー。アンタが凹むたびに、ヨシヨシってね」
「覚えてないでーす!なのでそんな事実は存在してないと同義」
「それは結構な暴論よ」
笑い合う二人の声が、喧騒に紛れていく。ソロは残っていたフランクフルトを二口で平らげ、口の端を拭った。
「そろそろ昼休憩が終わるから、僕は行くね。ソロだけに、そろそろね!」
「つまんな」
ユウは笑いながらも、その背中をじっと見送る。
ソロは人混みの中へと消えていった。姿が見えなくなるまで、ユウはチョコバナナを持ったまま手を振る。
「……あいつ、大丈夫かなぁ」
小さく呟く声が、夏の喧騒に溶けた。
長い付き合いだからこそ分かる。
(いつもよりテンションが高めだった。戦いの前で高揚している、そういう感じじゃない。どちらかと言えば……ドキドキしてて、それがすごく面白い。みたいな?確かコスチューム作ってもらってる時もこんな感じだったかしら?)
ユウは思わず、視線を遠くにやった。
ソロがああいう風になるのは数年前からだった。何か“非常に面白いもの”を見つけたり、何かを“やってしまった”後。ゲームでもネットでもない。もっと現実的で、もっと危ういなにか。
ヴィランに絡んでみたり、いじめっ子を屋上から吊るしたり。あるいは……あの、森の話をするとき。
家を出た、12歳の頃の話。ユウの知らないあの日のこと。
(きっとあの日、ソロは……)
胸の奥がざわめいた。
言葉にするのもためらわれる。ユウは小さく首を振った。その話題に触れようとすると、彼は決まって少しおかしくなる。まるでマタタビを嗅いだ猫のように頬を紅潮させて笑い、瞳に奇妙な光を宿すのだ。
嬉しそうに、楽しそうに。けれど、それはどこか危うい笑みだった。
だが、今日はそんな過去を思い出すようなこともない。ということは。
(……ひょっとして、誰かに話したのかな?)
ふと、そんな考えが脳裏をかすめた。
(そっか。話したんだ。大事な何かを。……うん、それでいい)
彼の秘密を共有できる相手ができたなら、それはきっと良いことだ。自分では駄目だ。福州ソロの身内ではきっと、ダメなのだ。だからこそ、誰でもいい、誰かとその秘密を分け合ってくれるなら、それでいい。
(誰かに話したくて、知ってほしくて……でも、話せないのかな)
あの高揚したテンションは、心の奥に隠していた何かが少しだけ顔を出した証。もしそれを誰かが暴いてくれるなら、もし彼が“自分から話せる日”が来るなら……。
きっと彼は変われるはずだ。それも、良い方に。ユウはそう信じたい。
彼はいま、心の成長期にいる。他人と関わり、理解し、傷つき、笑う。そのすべてが必要だ。今のままでは、彼は永遠に快と不快だけで生きてしまう。
だからこそユウは、ソロの雄英入学を父に薦めたのだ。あの子は力を持て余す。閉じた場所に置けば、いつか最悪なことになる。
きっと、同じ年代の強い子達と共にいれば、良い刺激を受け取れるはずだ。そう信じて。
* * *
ソロが戻ってきたのは、ちょうどレクリエーションの片付けが始まった頃だった。運動場にはまだ熱気が残り、遠くで生徒たちの笑い声が響いている。A組の女子たちはどうやらチアガールの衣装を着せられているらしく、色とりどりのスカートが陽光を反射してきらめいていた。しかしソロはそれを一瞥しただけで興味を失い、笑顔のまま歩き去ろうとする。
だが、その前に。
「よう福州!オイラはお前を待ってたぜ!」
「う〜ん、失せろ」
「な、なんだよいきなり!?お前が知らねぇって言うからわざわざ教師の目を掻い潜って持ってきたんだぞ!」
「ん〜、何の話ですか?」
話が分からない様子で眉を上げるソロの手に、峰田がニヤつきながら一冊の雑誌を押しつけた。表紙は女性だった。上半身裸の女性がM字に脚を開き、挑発的な視線でこちらを見つめている。
「にゃ〜!?あっはっはっはっ!貴方バカすぎるでしょう!」
ソロの笑い声が響いた。まさか体育祭の会場にエロ本を持ち込むとは。この男、常識の欠片もない。
「愉快ですね貴方!息を吸うように恥を晒すその生き様、尊敬に値します!ただ、こんな所でこれを僕に渡すのはやめてください!いろいろ誤解されますので!」
そう言うや否や、ソロはその雑誌で峰田の頭をパシンと叩き、逆に押し返した。
「それが前言った森野ミドリだ。美人だろ?なあなあ、この人に化けてアイツらと同じチアの衣装着てくれよー!!一生のお願い!!それだけでオイラ一生生きていけるから!!満たされるから!!」
「満たされるって何がですか?」
「性的な欲求が」
「あっははは!貴方バカですね〜。前も思ったんですけど、変身しても僕なんですから性的欲求は満たせませんよ。だって男同士では子孫を残すことはできないのですから」
「そんな事は求めてねぇ!気持ちの悪いことを言うな!」
「では繁殖もできないのになぜそこまで僕にその女性への変身を求めるんです?」
「繁殖の為じゃねぇんだよオイラのこれは。もっと文化的なんだ、オイラの性的欲求は!」
「セクシャルに文化的も何もないでしょう。いいですか?性に関する関心が増大するのは第二次性徴が発現し、生殖能力を獲得してからです。つまりセクシャルとは繁殖の為の「黙れぇぇい!!」うわなに?」
峰田は血走った目で「お前はなにもわかっていない!」とソロを指差した。
「お前みたいなセクシャルバブちゃんにも分かるように説明してやる!オイラたちが女体に惹かれるのは最早ただの生理現象じゃない。あれらは立派なアートだからなんだ!AVも写真集も、最早ただのエロじゃないんだよ!光と影、構図、肉体のライン、計算された美しさッ。つまり、彼女達の全てが芸術!
オイラがお前に変身してほしいって言うのも、ただ近くでそのアートを鑑賞したいからなんだよ!そのアートを眺めるだけで、オイラの性的欲求は満たされるんだ!」
「すいません。意味がよく……」
「……そうか。お前には最初からこう言えば良いんだったな。エンターテイメントの為にだよ!美人がチアの衣装を着て踊ればみんな楽しい!」
「なるほど……!」
その瞬間、背後から切島が現れて彼の襟首を掴んだ。
「お前そろそろマズいぞ、やめとけ」
「離せよ切島ぁぁ!後少しなんだ!!」
「はいはい、連行。福州、変身はしなくていいからな」
「おや、了解です」
引きずられていく峰田を見送りながら、ソロは笑った。
『さーてレクリエーションも終わって、最終種目の時間よッ!!』
ミッドナイトの声が場内に響き渡り、同時にバシィン!と鋭い音が空気を裂いた。彼女の鞭が地面を叩くたび、スタンドの生徒や観客たちの視線が集まる。
最終種目に勝ち残ったのは、16名。対戦の組み合わせはくじ引きで決まった。
1位の心操チームからは心操人使、福州ソロ、蛙吹梅雨、峰田実。2位の轟チームからは轟焦凍、八百万百、上鳴電気、飯田天哉。3位の爆豪チームからは爆豪勝己、切島鋭児郎、芦戸三奈、瀬呂範太。そして4位の緑谷チームからは緑谷出久、麗日お茶子、発目明、常闇踏陰となる。
そして、戦いの順番が読み上げられた。
爆豪VS麗日
切島VS蛙吹
八百万VS常闇
芦戸VS峰田
発目VS飯田
上鳴VS福州
瀬呂VS轟
そして、緑谷VS心操。
観客席の熱気が一気に高まる。
(なぁんだ。緑谷出久か轟焦凍、どっちともやってみたかったんだけどな。つまんな)
はっきり言うと、ソロは緑谷と戦ってみたい。だが、超絶パワーを放つ度に自傷する緑谷が、果たして轟にどう勝つのかが分からない。かと言って轟も炎は使わないと言うし、見当がつかなかった。イタチごっこになりそうである。
(緑谷出久勝て、お前のパワーと戦ってみたい)
唇の端をゆっくり吊り上げる。その目はまるで肉を狙う猛獣のようだった。会場中央では、セメントスが地面を変形させ、試合場を造り上げていった。
まず行われるのは第一戦、緑谷と心操。ふたりが対峙した瞬間、観客たちのざわめきが潮のように引いた。
緑谷の表情は硬い。
その視線の奥には警戒と恐怖が入り混じっていた。
(……喋らずに殴り飛ばせば済む話だろ。なにをそんなに怯える必要があるんだ?)
福州は淡々とした目で見下ろす。第二種目で手を組んだとはいえ、そこに情けなど微塵もない。
『一回戦ッ!成績の割になんだその顔ッ、緑谷出久!VS、第二種目で大活躍!1000万奪取の名助演ッ!!心操人使ぃぃ!!』
観客席がどっと湧く。だがその歓声に反してステージ上のふたりは一切動かない。
『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする!!あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!ケガ上等!!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理は一旦捨ておけ!!
だがまぁ命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!!!
ヒーローはヴィランを捕まえる為に拳を振るうのだ!!』
放送席からの声が途切れると同時に、場内に張り詰めた静寂が落ちた。心操はじり、と一歩前へ出る。
「まいった、か……」
低く、しかしよく通る声で心操は口を開いた。
「……わかるか、緑谷出久。これは心の強さを問われる戦い。強く思うヴィジョンがあるなら、冷静沈着に、虎視眈々と勝ちを取りに行くべきなんだ」
そして、口角をわずかに上げる。
「……そういや、一人間抜けな男がいたよな」
緑谷の表情が、ぴくりと揺れた。
心操はそれを見逃さない。
「家族の問題に執着して、下らない意地を張って……1000万をみすみす取られたとんでもない間抜けが」
緑谷の拳がわなわなと震えた。
「なんか偉そうな態度でごちゃごちゃ言ってた割に二種目とも無様に負けて、情けない男だと思わないか?」
「なんてこと言うんだッ!!!」
思わず緑谷は飛びかかった。
そして、その直後固まる。
「あー!!!緑谷やっちまった!!!」
「にゃは、詰みましたね!」
「ケロケロ、これは厳しいわね」
と、先の種目で手を組んでいた3人がそれぞれ感想を述べる。それを見て周りのクラスメイト達がどう言う意味だと詰め寄ってくる。ソロは「秘密〜!」と笑うが、峰田は普通に喋った。事情を知ったクラスメイト達も頭を抱える。
観客席のあちこちから、落胆と溜息が漏れた。
福州は小さくあくびを噛み殺しながら、試合場を見つめる。
(……もう終わりか。情けないやつ)
と、思ったその瞬間、突如舞台で爆発が起きた。会場全体が揺れ、砂塵が舞い上がる。思わず視線を向けたソロの目に飛び込んできたのは、爆風の中で踏みとどまる緑谷の姿だった。
(え……?どういう原理で?)
轟でさえ自力では解けなかった心操の洗脳。それを、どうやって?疑問に思うが答えは出ない。よく分からないが緑谷は洗脳を解いたようだった。もう緑谷は心操の言葉に応えない。心操がどんな言葉を投げても、返事はしない。緑谷は無言で距離を詰め、心操の胸倉を掴むと、そのまま渾身の力で投げ飛ばした。
砂塵を巻き上げ、心操の身体が無残にも場外へ叩きつけられた。一瞬の静寂ののち、観客席が割れんばかりの歓声に包まれる。
(……洗脳にかかった時点で負けだと思ってたけど、流石にそこまで弱くはなかったか)
そして少しの休憩時間を挟み、次の対戦が始まる。轟VS瀬呂である。
『優秀!!優秀なのにその地味さは何だ!!ヒーロー科瀬呂範太VSトップクラスの実力者!轟焦凍!!』
観客席では笑いと興奮が入り混じる。
「頑張れー!瀬呂ー!」
「番狂わせ起こせー!」
「いやいやいや、流石に無理無理、チワワがレースでサラブレッドに勝つくらい無理ですよ!」
上鳴と峰田が声を張り上げる中、ソロは笑顔で2人にそう告げる。
「ぜ〜ったいに無理です」
「なんだよ!もうちょい夢見ようぜ!」
「瀬呂だってやれるかもしれないだろう」
その瞬間、ドンッとソロの背後の席が蹴られた。
「しょうゆ顔じゃどうにもできねぇよボケが」
「なんで僕の席を蹴るんですか?」
爆豪が低く吐き捨てるように言う。
「番狂わせってのはなぁ、起きる可能性がなきゃ起きねぇんだよ」
「ま、そういう事です。例えば競馬であれば、すべてが同じ馬だから、一頭抜けた実力のものがいようと番狂せは起こり得ます。各馬の調子とか、あとは環境の問題とかでね」
「人間だって同じだろ?全部同じ人間じゃねーか!瀬呂が根性見せてくれるかもしれないぜ?」
「アホか、馬にはねぇが俺らには個性があんだろ」
「轟焦凍の個性と瀬呂範太の個性では実力が違いすぎる。ここまでいくともう全く別の種族と言っても過言ではありません。轟焦凍はまさしくthorough、bred!徹底的に強さを求めた繁殖の成果だ彼は、すごいですね!あはははは!」
「……こんだけの差があったら根性だけじゃどうにもなんねーんだよ間抜け」
皆がそうやって話すその頃、瀬呂はもう動いていた。素早くテープを射出し、轟の身体に絡みつける。そのまま場外へ引きずり出そうと全力で振り回した。
「ほら見ろ!いけるいける!」
「勝てるぞ、瀬呂ー!!」
上鳴と峰田が勢いよく叫ぶ。だが、
足元から、瞬く間に氷の壁が隆起した。
大氷壁が一瞬でスタジアムに発生し、冷たく白く光る。観客たちは息を呑んだ。その冷気は観覧席にまで押し寄せる。
勝敗は決まった。
観客席からは「どんまい」「どんま〜い」と慰めの声が上がる。
結果。
二回戦進出は、あっという間に轟で確定した。
そして次はソロの番だった。対戦相手は、電撃の個性を持つ上鳴。上鳴は観覧席で頬を叩き、「よーし!!」と声を張り上げて言った。
「俺は負けねーからな!」
「福州もういないけど」
「ぅえッ!?」
指差した先には既にソロの姿はなく、上鳴は驚いて間抜けな声を出し、慌てて控え室に向かって走っていった。その様子を見て耳郎が小さくため息をついた。
そしてまた少し経ち、数分後、スタジアムが再び熱を帯びる。
『ステージを乾かして次の対決ッ!!』
プレゼントマイクが叫ぶ。
『2位、1位と連続トップ成績!入試一位の実力者ッ!福州ソロVSスパーキングキリングボーイ!上鳴電気!!』
歓声が響く中、上鳴が拳を握った。
「なぁ福州、お前どうせ電気を使うバケモンにもなれるんだろ?」
「おやおや、やめてくださいよ。バケモノなんて言葉、僕は好きじゃありません。誠意と敬意を持って怪物とお呼び下さい」
「何が違うの……?」
ソロは笑みを浮かべる。
「まぁ……そうですね。質問に答えましょう。ビリビリもバチバチも、ありえるかもしれませんよ?」
「そうか、それでも俺は、負けねぇから!!!」
上鳴の全身が帯電し、火花が走る。その様子を見た耳郎が小声で爆豪に問う。
「上鳴、福州に勝てるかな?」
「知るか、勝機があるとすりゃアイツの変身のタイムラグを狙う事だ」
爆豪が腕を組みながら呟く。
「タイムラグ?」
「あ?見てりゃわかんだろ」
面倒臭そうな爆豪に変わり、八百万が補足する。
「福州さんの変身は瞬く間もなく行われているわけではありません。別の姿になるまで2、3秒はかかっているのです。ですから、そのタイムラグを狙って上鳴さんが全力の放電をしかければ、もしかしたら」
「勝てるかもってこと?」
「ええ、ただ福州さんも当然その事を理解しておりますので、彼が上鳴さんの最大出力をどう耐えるのかが肝ですわね」
「……そっか」
耳郎はそういうと、再びスタジアムへと目を向けた。