お狐フレンズ   作:佐倉シキ

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二回戦

 

 

 

「上鳴ー!!根性見せろー!!」

『いけー!!瀬呂の仇をとれー!!」

「瀬呂関係なくね?」

「番狂わせ起こせー!!差し切れー!!」

 

A組の仲間たちが、一斉に上鳴へと声を送る。先の試合で轟が瀬呂を圧倒しただけに、次こそは番狂わせを、そんな期待が渦を巻いていた。

 

「アッハッハッハ!素晴らしい大歓声だ!みんなが僕の敗北を願っていますね!?いいねいいね、やる気が出ますね!僕の負けを願う人が多ければ多いほど、力が漲ります!皆の期待は裏切らないと!」

 

笑いながら手を広げるソロ。その表情には一片の焦りもない。むしろ、観衆の期待を愉しむかのように微笑んでいた。

 

(はっきり言って、俺には上鳴の放電に対する策はない。変身のタイムラグばかりはどうにもできないからな)

 

淡々とした思考。しかしその心の奥には、不思議なほどの確信があった。己なら耐えられる。雷ごときで倒れるほど、脆くはない。今は人の姿をしていても、本性は大きな獣だ。その姿で積み上げた年月がその自負を支えている。痛いのは大嫌いだけど、一回戦で負けるのは嫌だし我慢する。

 

『スタートォォォオオオ!!!』

 

その瞬間、上鳴が叫んだ。

 

「無差別放電!!130万ボルトッ!!!」

 

眩い閃光が爆ぜた。次の瞬間、轟音が空を裂き、観客席の空気が振動する。放電が奔流となって会場を呑み込み、地面が白く焼ける。光の中で、ソロの影が痙攣したように歪んだ。

 

「っぐ……ぅうあッ!!」

 

ソロの体が反り返る。歯を食いしばる間もなく、筋肉が勝手に跳ね、神経が焼き切れるような痛みが走った。全身が痛みに反応し、視界の端が白く霞む。

 

観客席がどよめいた。

 

「うわ、マジで効いてるぞ……!」

「上鳴やるじゃん!!」

『効いてるぞぉ!!これは行けるか!?上鳴電気!!!』

 

プレゼントマイクの声が弾む。上鳴は歯を食いしばり、さらに出力を上げようと踏み込んだ。しかし、

 

地面が大きくひび割れ、砕け散る。ソロが踏み締めたのだ。焼けつくような電流の中で、苦痛に顔を歪めながら、彼が顔を上げた。

 

「……久しぶりに、痛かった!最悪!」

 

その口元には凶悪な笑みが浮かぶ。目には光ではなく、獣の闘志が宿っていた。その瞬間、ソロの身体が膨張する。骨が軋み、皮膚が歪み、鋭い鱗が露わになる。ドラゴンがそこに立っていた。

 

轟音とともに大地を踏み割り、黄金の瞳で上鳴を睨む。その圧力に、上鳴は思わず声を上げた。

 

「ぅえッ!?」

 

次の瞬間にはもう宙を舞っていた。尾の一閃。上鳴の身体がまるで紙屑のように弾き飛ばされる。壁際のラインを越え、無情にも場外へと叩きつけられた。

 

ソロは尾を軽く振り払うと、ゆっくりと人の姿に戻り、息を吐く。そして、肩をぐるりと回しながら笑った。

 

「ビリビリが体の芯にまで響いた!にゃは、初めての感覚!バリバリダー!というわけで試合は終了!実力に差があると試合が終わるのもはっやいですねぇ!皆々様!僕の実力を感じてくれましたか〜?次回も一緒に燃え上がりましょう、PLUS ULTRAーッ!」

 

道化のように笑い、まるで愉快な遊びでも終えたかのような笑みを浮かべた。観客が息を呑む中、マイクの声が響く。

 

『上鳴場外ぃぃ!!放電をどうやって乗り越えるのかと思ったが、まさかの根性!!力技で勝利をもぎ取ったー!!2回戦進出は福州ソロ!!』

 

「対策、ありませんでしたわね……」

 

八百万が、わずかに頬を赤らめて呟いた。自分の分析が外れたのを恥じているのだろう。一方、爆豪は思わぬ弱点を見つけて笑う。

 

同じくA組の観覧席にいる麗日は緊張から拳を握りしめる。

彼女の番が、近づいている。

 

次の試合は飯田と発目。だが、発目は開始直後からプレゼンのように喋り続け、挙げ句の果てに自ら場外へ飛び出した。その後、芦戸と峰田は芦戸の勝利。八百万と常闇の戦いは常闇が制した。切島と蛙吹の試合は切島が勝利した。

 

そして、ついに麗日と爆豪。

 

麗日は開始と同時に突撃した。だが爆豪は一歩も退かず、至近距離で爆発を放つ。麗日は咄嗟に避け、転がり、立ち上がり、また飛び込む。彼女の顔には恐怖はない。あるのはただ、真っ直ぐな意思だけ。だが爆豪は彼女の全ての動きを読み切っていた。火花を散らしながら反撃を繰り返し、麗日の秘策すら正面から叩き潰す。

 

「けっ。轟に福州に爆豪に、真の強者は正面突破ってか!イケメンは気に食わねー!」

「お前が嫌いなの実力じゃなくて顔だろ」

 

峰田がぼやき、上鳴が突っ込む。

こうして一回戦はすべて終了した。順当な結果だった。

 

「緑谷VS轟、福州VS飯田、芦戸VS常闇、切島VS爆豪か」

「熱い戦いだな」

「もう全部A組になってる。表彰台はうちが独占だな」

 

歓声と雑談が混ざる中、福州は静かに立ち上がる。

次の相手は飯田。変身のタイムラグが弱点だと見抜かれている。また痛い目に合いそうだが、負けはしないだろうと言う思いがあった。

 

「お前、飯田の対策とかあんの?変身のタイムラグはどうにもできねーんだろ?」

「にゃは、その程度のことで僕が負けるとでも?あり得ませんよ」

「相変わらず自信満々だねー。ま、楽しみにしてるよ」

 

上鳴と耳郎に声をかけられ、軽く笑って返す。ヒラリと手を振り、控室へと向かった。上鳴に負わされたダメージはあるが、決勝までにはある程度回復するはずだ。それならば問題はない。

 

控え室前に少し寄り道し、一階の観覧席から彼らをを眺める。ステージの上では緑谷と轟が向かい合っていた。息を整え、水を一口飲む。

 

試合開始。

轟が氷結攻撃を放つ。ステージの床が一瞬で凍りつく。緑谷は指一本を犠牲にして、それを粉砕した。すると轟は再び氷を放ち、緑谷はまた指を砕いて応戦する。氷と衝撃波がぶつかるたび、冷気が辺りに飛び散った。

 

(……轟焦凍、震えているのか?自分の氷で凍えているのか。炎を使えば体温を保てるだろうに、本当になにがしたいんだろう。そもそも父親の否定って何?)

 

戦況は一方的に傾いていた。緑谷の手は紫に腫れ、爪が剥がれ、腕は震えている。それでも立ち続ける姿に、観客は息を呑んだ。

 

「その両手じゃもう戦いにならねぇだろう。終わりにしよう」

 

轟が低く言った。だが、緑谷は目を逸らさない。

 

「どこ見てるんだ…!!」

 

次の瞬間、再び爆音。壊れた指でまた攻撃を仕掛けたのだ。痛みで顔が歪むが、それでも止めない。

 

「皆本気でやってる!!勝ってっ…目標に近づく為にっ…一番になる為に!半分の力で勝つ!?まだ僕は君に、傷一つつけられてないぞ!!

 

全力で、かかってこい!!!」

 

声が、轟の心を震わせた。ソロはそれを見つめながら、理解できずにいた。油断している相手には忠告せず、叩き潰せばいい。隙は攻めるものだ。だが緑谷は違った。嘲りでも、侮辱でもない。まるで発破をかけているかのような、そんな言葉だ。

 

(発破をかけるって事は、悩み事から立ち直ってほしいって事だろ?なんで?自分のダメージを無視してまで相手を焚きつけるなんて、意味がわからない。あれ楽しいのかな、緑谷出久って変わってるな。あっちに勝って欲しいのになんか負けそう)

 

轟は緑谷の言葉に苛立ち、突進してくる。

だが、動きは鈍い。

 

(やっぱりな。……俺と似たタイプか。使えば使うほど体力を削る。今、轟焦凍は低体温症になりかかってる)

 

緑谷はその隙を逃さず、思い切り腹を殴りつけた。 轟は呻き声を漏らして転がったが、すぐに立ち上がる。緑谷は止まらない。ボロボロの指で、痛みに顔を歪めながらも、何度も攻撃する。

 

(痛いはずだ。絶対に。だってあの指、ぐしゃぐしゃだ。骨は砕け、筋肉も裂けてる。ひゃー、痛い痛い!……リカバリーガールが治してくれるからって、苦痛が消えるわけじゃないのに。どうしてそこまで?何がしたいんだ?頭おかしいのか?)

 

理解の及ばない光景に、ソロは小さく首を傾げた。

 

(それとも人助けって、そんなに楽しいもの?今は何も得るものなんてないのに)

 

緑谷はなおも話しかけている。相手の過去を知りもしないくせに、語りかけるように。鬱陶しいほどに。

 

「親父を──ッ!」

「君の!力じゃないか!!」

 

目の前で轟が炎を放つのを見た瞬間、ソロの笑いが止まった。左の手。絶対に使わないと言っていた、炎だ。

 

(えっ……使った……?説得、されちゃった?なんで急に元気になるの!?悩みから立ち直っちゃった!?そんな、急に!?)

 

ソロは思わず額に手をやる。

 

「あーあ、やりにくくなっちゃった。氷だけの方が狩りやすかったのになぁ」

 

ソロにも使うつもりのない力はある。黒ずんだ肌、血のような赤黒い体毛。それは、本当の姿。

 

(確かに、これも“俺の力”だ。……いや、“俺そのもの”だ)

 

だが、彼は小さく笑って、

 

「ま、俺はやらないけどね」

 

と呟き、水を一気に飲み干す。

 

「ふふふ。本気でやらないのって、そんなに気に食わないんだ。そういや蛙水梅雨チャンにも言われたっけ。“舐めプやめて”って」

 

(じゃあ俺がずっと舐めプしてるって知ったら、どのくらい怒るのかな?本当の姿が一番強いのに、それを使わないなんて許せないってなるのかな?)

 

ソロはぼんやりと悩む。

 

(その程度のことが許せないのなら、本物の福州ソロはとっくに死んでいて、俺は親を殺した化け狐だって知ったらどんな顔をするんだろ?)

 

ソロはぼんやりと考える。

 

(悲しみはしないよな、みんなはソロの事は知らない訳だし。じゃあ怒られるのかな?それとも嫌われる?ヴィランだ、バケモノだって昔みたいに敵意向けられて、攻撃されちゃう?)

 

悩みながら視線をモニターに戻す。

画面の中では轟が炎を掲げ、緑谷が無茶な突撃を仕掛けていた。セメントスが慌てて止めに入るほどの熱量。冷気と炎がぶつかり、空気が爆ぜた。

 

煙が晴れると、立っていたのは轟だった。

緑谷は吹き飛ばされ、敗北。

 

崩壊したステージの補修が始まる。だが、ソロは少しの間そこを動かなかった。何かを考え、じっとステージを見つめていた。

 

(……もし誰かが俺のことを見つけたら、その時ってどうなるんだろ。ちゃんと考えたこと無かったな……)

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

「デクくん!」

「緑谷!」

「緑谷くん!」

「緑谷ちゃん!」

 

保健室の扉が勢いよく開き、麗日、飯田、峰田、蛙水が飛び込んできた。緑谷の壮絶な戦いを見た彼らは、心配で駆けつけたのだ。だが、すぐに看護師たちに手術中だと追い出される。そして扉の外で、麗日が「あっ」と声を上げた。

 

「どうした麗日くん?」

「飯田くん、次の相手、福州くんじゃん!だ、大丈夫!?」

 

麗日は両手をばたつかせ、心配を隠せない。緑谷は轟に敗れ、麗日は爆豪に敗れた。そして飯田の次の相手はソロ。

 

「あいつバケモンだぜ」

「峰田ちゃん、化け物って言葉、福州ちゃんは嫌いみたいよ。やめてあげて」

「え、おお……」

 

蛙水に注意され、峰田は頷いた。

飯田は考える。果たして己の勝機はどこにあるだろうか、と。

 

「正直、対策はあまり思いつかない」

「福州くんの個性、ものすご〜く万能だもんね」

「ああ、一応モンスターや妖怪なんかの知識も入れてきたが所詮付け焼き刃だ。本職の知識には及ばない」

「むしろアレはあのモンスターだって誤認してしまう可能性がある分、逆に危険かもしれないわね」

「ドラゴンやグリフォンくらい分かりやすければ助かるのだけどな」

 

リングの補修の終わりを告げる放送が鳴る。飯田はふぅと息を吐き、立ち上がった。

 

「やはり変身のタイムラグを狙うしかない。福州くんに勝つには、あの一瞬の隙を狙って、最速で決着する事が最善だと思う」

 

幸い、自分の個性はその条件に適している。飯田はブーツの底でトントンと地を叩き、神経を集中させる。そしてその時、場内スピーカーが二人の名を呼んだ。飯田は深く息を吐き、己の鼓動を整える。

 

「うぅ〜、なんか私まで緊張してきちゃった……お腹痛いかも」

 

そわそわと落ち着かない様子の麗日に、飯田は一礼して応じる。

 

「では、行ってくる」

 

飯田はそう言うとまっすぐな背筋で、戦いの場へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エリートヒーロー一家出身飯田天哉!対するは変幻自在のスーパーマン、福州ソロ!!』

「ヒーロー志望の皆さーん!おはこんにちは!またまた始まりました、ヒーローチャンネル!パーソナリティの福州ソロが、今日も元気に絶望をお届けしまーす!」

 

ステージに二人が並び立つ。福州はいつものように笑みを浮かべていた。

 

(その余裕の笑顔……崩してみせる。勝つのは俺だ!)

 

開始の合図と同時に、飯田が地を蹴った。瞬間、猛烈な加速。目にも止まらぬ速さで距離を詰め、ソロの頭部を蹴り抜く。

 

「ッ……!」

 

衝撃音が響く。ソロの身体が地を転がり、砂煙が上がる。

 

『モロに入ったー!!変身の隙を与えない!!これは脳震盪コースかぁ!?』

 

飯田は息を吐く間もなく再加速した。2秒も、3秒も与えない。ソロが立ち上がる前に、次の蹴りを叩き込む。

 

『いける!いけるぞ飯田ーッ!!』

 

だが、

 

「……いける訳ねぇだろ」

 

その声が聞こえた瞬間、視界がひっくり返った。気づけば飯田は宙を舞い、背中から場外へと叩きつけられていた。肺の中の空気が強制的に吐き出され、激痛が背骨を走る。

 

『飯田場外ッ!!何が起きたーッ!?』

『飯田の突進の勢いを利用して、福州が投げ飛ばした。完全に見切っていたな』

 

ステージ上で、ソロは頭部を摩っていた。蹴りの跡が残り、こめかみが鈍く痛む。だが、その顔にはまだ余裕の笑みがあった。

 

「にゃは、一度攻撃を見れば、貴方の速さも力も理解できます。変身だけが僕の武器じゃあないんですよ?僕ってシンプルに強いので!」

「くっ……兄さん……!」

 

飯田は拳を握り、悔しさに唇を噛んだ。

 

『変身せずに福州WIN!!これが入試1位の実力だ!!』

 

「今回も笑顔で正義をお届けできましたか〜?次回もあなたの脳天にデトロイトスマッシュ!それじゃあご一緒に!Plus ultra~!」

 

そう言うとソロは軽く手を振りながら、振り返ることなくステージを去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

試合は順調に進んでいった。芦戸と常闇の戦いは常闇が勝利し、切島と爆豪の試合は爆豪が制した。休憩を挟み、いよいよ準決勝。

 

轟vsソロ。

常闇vs爆豪。

 

まずは怪我の少ない常闇と爆豪の試合から行われた。光に弱いダークシャドウは爆豪の閃光と爆音に翻弄され、結果は爆豪の勝利。

 

そして、観客が最も待ち望んだもう一つの準決勝。

 

轟VSソロ

 

整った顔立ちの二人が並び立つと、観客席から黄色い歓声が上がる。峰田は舌打ちをし、「どっちも負けろ」と恨み言を吐いた。

 

緑谷は真剣な目でスタジアムを見つめていた。

 

「どうなるんやろ」

「炎と氷も強力だけど、福州君の個性のバリエーションはそれ以上だ。飯田君との戦いでは体術も優れていると見せつけた。彼に勝つには変身の一瞬の隙を狙って遠くから、もしくは彼が反応できない速さで、一撃で気絶させるくらいの威力の攻撃を叩き込むしかない」

「それ無理じゃない?」

「かなり難しいと思う」

「隙はねぇのか、才能マン共め」

 

『さぁさぁ、待ちに待ったこの試合!!誰もがこの瞬間を見たかったはずだーッ!!轟焦凍!!!vs!!!福州ソロォォォ!!!!!』

「はい皆さんこんにちはー!ヒーロー志望の未来ある若者たち、その他負け犬モブ生徒の皆さん!そして無責任な視聴者諸君!元気ですかー!?

命を賭けて、夢を追い、倫理を窓から投げ捨てよう!担当はいつもハイテンションの福州ソロ、電波の上で暴れていきます!yeah!!」

『YEAHッ!!!!!』

『うるさい』

 

観客席の熱気が一気に爆発した。

 

爆豪は腕を組み、静かに見つめている。この試合の勝者が自分の相手になる。だからこそ集中する。個性も身体機能の一部。必ず限界がある。轟の限界は既に見えた。問題は、ソロの方だ。

 

 

 

 

「まえ……」

「ん?」

「不躾なこと聞いて悪かったな」

「はは、あれ程些細なことをわざわざ謝るだなんて、貴方も意外とお利口さんですね?急にどうしたんです?」

「少し……昔を思い出した」

「緑谷出久とのお話の成果、というやつですか?」

「ああ」

「あはは!貴方の力がどうのとかいう、あんな少年漫画みたいなクッサイ台詞に何か動かされたんですか?」

「俺の力……」

 

轟は左手をじっと見つめた。

 

「はは。自分の力、ね……」

「お前も、何か思うところがあるのか?」

「そうですねぇ、あると言えばあるし、ないと言えばない。何をしようと、どう思われようと、僕は僕ですから」

 

ソロが牙を剥き出しにして笑う。その笑みは鋭く、獰猛なものだった。

 

「あんな下らない、当たり前のことを叫んで脱落した緑谷出久にはガッカリです。僕は彼と戦いたかったのに。やる気が萎える。激萎えと言うやつですね〜。まあでも、負けたと言うことは弱いと言うことですし、もうどうでもいいか」

「……ッ」

「それに、緑谷出久を倒した貴方に勝てば、僕が緑谷出久より強いと言う証明にはなるでしょう。と言うわけで、仕方ないので貴方で我慢します。では轟焦凍、楽しいSHOWを始めましょう!」

 

瞳の奥に、嘲りが宿った瞬間。

プレゼントマイクの声が会場に響く。

 

『スタートッ!!』

 

轟が反射的に腕を振りあげた。ステージ全体が凍りつく。鋭く、白く、音を立てながら、巨大な氷が一瞬でソロを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

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