お狐フレンズ   作:佐倉シキ

24 / 43
すごい個性

 

 

 

緑谷たちは、もはや内部からの道を探すのを諦め、外壁から最上階を目指すしかないと判断した。麗日の個性で緑谷とメリッサを無重力にし、ふたりを浮かせて上へ。

 

だが、状況はいつだってこちらの理想通りには進まない。

 

ふたりが浮き上がった、その刹那。

 

麗日の背後から、鋭い金属音と共に影が迫った。警備ロボットだ。彼女が反応するより早くロボットが動き、麗日はバランスを崩して後退らせられた。

 

そして最悪の追い討ち。

 

「行かせねぇよ!!」

「ヴィラン!!?」

 

怪鳥のように歪んだ体躯のヴィランが、空を切り裂くような速度で緑谷たちに体当たりしてきた。無重力の身体ではまともな抵抗もできない。軽い体は逆に衝撃を殺せず、ふたりの身体は撃墜されていく。

 

上空で軌道を乱す緑谷の耳に、麗日の張り裂けそうな声が届く。

 

「デク君!!メリッサさん!!」

 

どうしよう。どうすれば。そんな焦燥が喉元まで込み上げ、彼女は下唇を噛んだ。ロボットの襲撃は止まらない。緑谷とメリッサはヴィランに追われている。緑谷が対抗できるようにするには個性を解除するしかない。

 

(でも解除したら2人が落ちちゃうッ)

 

空中では踏ん張りが効かない。 そのまま地上まで真っ逆さまだ。迷っている麗日にロボットが拘束用のロープを飛ばす。麗日は思わず強く目を瞑る。

 

そのとき。

爆ぜるような爆音が空気を裂いた。

 

「っ!爆豪くん!」

 

麗日に襲いかかったロボットの装甲が爆発でねじ曲がり、弾け飛ぶ。火花と煙が舞い散り、爆豪が炎の尾を引いて降り立つ。続くように、切島や轟の姿が視界に躍り込む。轟が腕を振り上げた瞬間、床が震え、天井まで届く巨大な氷山が隆起してロボットを一掃した。

 

「麗日、無事か」

「うん!でも、でもデクくん達が!!」

「緑谷?どこにいるんだ?」

「下に落っことされちゃった!」

「何だとッ」

 

爆豪と切島が揃って息を呑む。

この高さ、人間が落ちて無事でいられるはずがない。ましてヴィランが追いかけているという。4人は縁に駆け寄り、身を乗り出すように下を覗いた。

 

その瞬間。

 

「うわッ!」

 

焼け付くような熱風が吹き上がり、猛烈な炎柱が下から噴き上がった。

 

 

 

 

      *    *    *

 

 

 

少し時間は遡る。

 

緑谷は無重力の身体のまま、ビルの底へ向けて真っ逆さまに落ちていた。強烈な風で眼球が乾く。

 

(まずい!!体が無重力だから、アイツが起こした風に乗って真っ逆さまだ!!)

 

背中にしがみつくメリッサの震えが、恐怖そのものとして伝わってくる。振り返れば、上空から怪鳥の姿に変貌したヴィランが翼を大きく広げ、加速しながら迫ってくる。

 

(空中では踏ん張りが効かない。麗日さんの個性で体に力も入れにくい。デコピンだけでも迎撃できると思うけど、反動で地上に着くまでの時間が短くなる)

 

叩きつけられれば終わりだ。

身体が軽くなっているとはいえ、衝撃は致命傷どころではない。

 

(横にワン•フォー•オールを撃って反動でタワーに戻るって手もあるけど、また最上階に行くには時間がかかりすぎる!オールマイトが保たない!というか、ガラスをぶち破ったらメリッサさんだって無事では済まないし!!)

 

考えろ。考えろ。考えろ。

 

頭が過熱して白くなる。

 

胸が苦しい。

 

涙が滲む。

 

選べる選択肢があまりにも少ない。

 

 

 

その時─────

 

バサッ、と巨大な生き物が羽ばたく低い音が迫ってきた。風圧が一瞬、落下の速度を乱す。

敵ではない、何かが来る。

 

(このヴィランじゃない!?何か来る!)

 

視界の端に黒い影が滑り込んでくる。

急降下してくる黒い鱗。広がる翼。

金色の瞳と、緑谷の瞳が正面からぶつかった。

 

瞬間、緑谷の喉が震え、涙が零れた。

 

巨大なドラゴンは怪鳥のヴィランを一瞬で追い抜き、流れるような動きで緑谷たちの真下に入り込むと、ふたりを落とさぬよう驚くほど柔らかに背中で受け止め、そのまま空へと舞い戻っていった。

 

「福州くん!!」

「ひゃーっはっはっは!!真・打・登・場ッ!!主役はいつだって遅れてやって来るもの!さぁスポットライトはこの僕に!!お待たせしましたねぇ、緑谷出久!」

「また、助けられちゃったね……!」

「あはは!!気にしないでください!弱虫共を助けるのがヒーローの仕事なんでしょう!?」

 

巨大な翼が空を裂き、熱を含んだ風が身体を包み込む。どこでもいいから掴まれと言われ、緑谷はドラゴンのトサカを掴んだ。

 

「上で麗日さんがロボットに襲われてるんだ!すぐに向かって!!」

「了解了解!ロボット風情、グレムリンに変身すれば一発で倒せます!」

「福州くんって……確かヴィランアタックの時、小さいイタチみたいになってた人よね?イタチに変身する個性じゃないの?」

「福州くんの個性は文字通り何にでも変身できるんだよ。そして変身した対象の能力も操れる」

「まあ、なんてすごい個性なの」

「当然当然!すごい個性なんですコレは!昔の友人もそう言ってくれた!」

 

メリッサの手が恐れもなく鱗に触れた。金属のように硬いはずのそれは、体温を帯びてわずかに脈動している。純粋な賞賛の眼差しで撫でられ、ソロは思いがけず悪くない気分になり、緑谷はまるで自分のことのように嬉しそうにソロの能力を語り続けていた。

 

その刹那、敵影が空気を裂いた。

 

「ドラゴンが何だって言うんだ!!」

 

羽ばたく風圧を切り裂くように、ヴィランが突撃してくる。ソロの喉奥で熱が渦を巻いた。腹の底からせり上がる灼熱が、焼け付くような痛みとともに喉を押し広げ、口腔へと集まる。

 

そして、爆裂。

 

喉が軋み、口から迸る炎が周囲の空気を一瞬で焦がした。轟音と熱波が一帯を震わせる。

 

(体育祭の時より威力が上がってる!?)

 

緑谷が思わず息を呑む。炎に触れかけたヴィランは悲鳴を上げ、羽根を焦がしてよろめきながら必死に上空へ逃げ上がった。だが炎に炙られた羽根は黒く縮み、痛みに涙を流しながらの逃走だった。

 

ソロはそのまま二人を背に乗せ、巨大な翼をしならせて空へ躍り上がる。緑谷たちが汗だくになって登ってきた100階以上の高さ。そのすべてを、ドラゴンはほんの数秒の羽ばたきで追い越していった。風圧で視界が揺れ、耳が弾けるように痛む。

 

ほどなくして戻った先では、鳥の姿のヴィランが轟たちと激しく交戦していた。警備ロボットもすでに群れを成し、4人は押し込まれている。

 

「轟くん!!それにかっちゃん達も!」

「デクくん!」

「無事か緑谷」

「うん!福州くんが助けてくれたから!」

「福州、2人を先に上まで届けてくれ!」

「はいはい了解!」

「え!?」

「初乗り50000円です」

「ええッ!!?」

 

緑谷の驚愕をよそに、ドラゴンは大きく羽を開き、風を巻き上げながらさらに上階へ進む。そして首をもたげ、緑谷に壁の破壊を指示した。

個性の衝撃で壁が砕け、埃が舞い上がる。その向こうに広がるのは最上階の廊下だった。

 

ソロは頭を低くし、巨大な首を伸ばして床にそっと顎を下ろした。メリッサはわずかに躊躇しつつも、ドラゴンの頭を足場にして降りる。その異様で荘厳な光景に、緊張が胸を締めつけた。

 

「先に行ってください。僕は弱っちくてロボット如きに手こずっている彼らを援護してから連れて戻りますから!」

「うん!分かった、ありがとう福州くん!」

 

ソロはそれだけ言って急降下して戻っていった。竜の影が消えていくのを眺め、緑谷はメリッサに頷く。

 

「行きましょう。みんなを助けに」

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────轟音。

 

ソロは地面を抉る勢いで降下し、そのままヴィランへ衝突した。鳥型の男の身体が歪むほどの衝撃で吹き飛ばされ、背中から壁に叩きつけられる。打撃の痛みにヴィランの口から濁った息が漏れ、壁に亀裂が走った。

 

「テメー余計な事すんじゃねー!!」

「あは!貴方がチンタラしてるのが悪いのです!」

 

そこへ、無機質な音とともに出入口が開いた。追加のロボットとヴィランが雪崩れ込む。

 

「上等だ!!全員まとめてぶっ殺してやる!!」

「ロボットは僕がやりますので、貴方たちはヴィランをお願いします」

「俺に命令すんじゃねぇッ!!」

 

爆豪は怒号とともに突進した。爆風が肌を刺し、焦げた金属臭が周囲に満ちる。ソロは瞬時にグレムリンへ姿を変え、小柄な身体でロボットの懐に潜り込み、ロボット達を無力化していく。

 

倒されたヴィランの腕を拘束し、動けないように縛り上げるソロ。その背後では轟が冷気を広げ、床を白く凍らせながら敵を凍結していく。

 

「お前らって仲悪いけど相性はいいんだよなぁ」

「誰と誰がだ!ふざけんなクソ髪!」

「僕が強くて優秀なので、弱い方に合わせてあげているだけです。僕の優しすぎる配慮に感謝してください!」

「テメェはほざいてんじゃねぇぞコラァッ!!」

 

怒号と爆音、氷結音が入り混じり、そして戦場は一気に静かになった。ヴィランもロボットも、わずかな抵抗すら残さず制圧される。同時に、警備ロボット全体の稼働が停止し、駆動音が消えた。

 

嵐のような戦闘の余韻だけが、しんと空気の中に残っていた。

 

「デクくん間に合ったんだ!」

「やったか」

 

安堵の声があがり、モニターに映る警備システムの表示が正常に戻った。解除音が鳴り、施設に張り巡らされた制御が一気に再起動していく。これで下にいるヒーローたち、そしてオールマイトも本来の力を発揮できる。胸を撫で下ろすのも束の間、ほどなくして下層で足止めされていたクラスメイト達も駆け上がってきた。

 

そろそろ自分達も上階へ向かおう。そう思った瞬間だった。下から凄まじい風が吹き抜けた。空気が押し潰され、肺が圧迫される。

 

「な、何!?」

「オールマイトか」

「ひゃー!」

 

竜になる前の小柄な体だったせいで、ソロの軽い身体が容易く風に攫われる。視界がぐるりと回り、空と床が入れ替わる。吹っ飛びかけたところを、轟が素早く腕を伸ばしてキャッチした。掴まれた襟首が食い込み、ぐえっと声が出る。

 

そのまま最上階を見上げると、金属同士が噛み合うような甲高い機械音と、衝撃の連続音が響いていた。戦闘の匂い。焦げた油と鉄の臭いが漂ってくる。

 

「何が起きてんの!?」

「福州、俺たちも上に向かおう。頼む」

「オッケーオッケー!初乗り50000円ね」

「まだ言ってんのかそれ!自認タクシーでいいのか!?」

 

切島のツッコミを無視して、轟が手を放すと同時にソロは変身する。身体が形を崩し、瞬時に巨大なドラゴンへと変貌した。鱗が光を反射し、巨大な翼が夜空に広がる。その背に轟が飛び乗り、ほかのクラスメイトも次々に後へ続く。

 

「何やってんだ爆豪、お前も乗れって!」

「誰が乗るか!自分で行けるわ!!」

「僕の方が早いですけどね!On your marks、Set、バーン!」

 

と、言い終わるより前にドラゴンは風を巻き上げて垂直に飛翔した。床が揺れ、風圧が押し広がる。

 

「テメェフライングしてんじゃねぇッ!!」

 

と、怒号が背後から追いすがり、爆豪が後を追ってくる。

 

最上階へと到達すると、その中心ではオールマイトが金属の巨躯のヴィランに押し込まれ、追い詰められていた。

轟は躊躇なくソロの背から飛び降り、着地と同時に氷を放つ。続けて爆豪が爆音とともに蹴り込み、火花と炎が金属装甲を削った。ソロも大きく息を吸い込み、喉の奥が焼けるような熱を放射した。

 

「オールマイト!!あんなクソだせぇラスボスに何やられてんだよ!!」

 

爆豪は連続で激しく個性を使った影響で痛む腕を押さえ、痙攣する筋肉を無理やり動かしながら吠えた。皮膚は赤く腫れ、衝撃で細かく裂けて血が滲んでいる。それでも止まらない。

 

「今のうちにヴィランを」

「攻撃は僕達が抑えて差し上げます!」

 

クラスメイト達が次々と参戦し、金属の巨体へ一斉に攻撃を叩き込む。子どもたちの奮闘ぶりを前に、オールマイトが無様な姿を晒すわけにはいかない。血を吐きそうなほど息が荒くとも、折れそうな膝を叱咤し、オールマイトは拳を握り直した。

 

「限界を超えて!!更に向こうへ!!!」

 

叫ぶと同時に筋肉が膨張し、腕の骨が悲鳴を上げる。拳が金属の壁を叩き割り、首魁への距離を詰める、だが。

 

強化されたヴィランの力はそれを上回った。

拳が届く寸前、オールマイトの腕が金属の束に絡み取られ、全身が締め上げられた。骨が軋み、苦鳴が漏れる。

 

爆豪も轟も、呼吸が荒い。ソロもまた、火を吹くたびに喉の粘膜が焼け、鋭く刺す痛みが走る。高火力の連射は喉に火傷を負う危険がある。

それでも、クラスメイト達へ伸びてくる金属の触手を、竜の腕で力任せに叩き折り続けた。鱗越しに金属の重さと衝撃が響く。

 

しかしその先で、最悪の光景が広がる。

 

オールマイトが金属の塊に押し潰されていた。

 

「オールマイトォ!!」

「おじ様!!」

 

金属の杭が檻状に絡みつき、その合間から突き刺さるように伸びていく。その衝撃音と、辺りに漂う血の臭いに、子供達の悲鳴が重なった。

 

爆豪たち3人も、その瞬間だけは思考が止まり、目を見開いた。

 

(オールマイトが、やられた…!?)

 

静止した空気を破ったのは、緑谷だった。

 

誰よりも早く、迷いなく動き出す。

思考より先に身体が走った。

 

「デトロイトォッ、スマッシュ!!!」

 

緑谷の拳が檻を叩き割り、金属が弾け飛ぶ。破片が肌を切り裂き、血が滲んでも止まらない。彼はそのままオールマイトの身体を抱え、檻の中から引きずり出した。

 

噴き上がる風。砕け散る金属。

そして、それを貫く少年の咆哮。

 

オールマイトは、救われた。

 

「くたばり損ない共が!往生際が悪いんだよ!!」

 

怒号とともに、ヴィランの首魁の周囲へ金属片が渦を巻きながら吸い寄せられていく。鋭い破片が激しい音を響かせ、次の瞬間には鋼鉄の槍の群れとなり、ヒーロー達へと向けて放たれた。その殺意の奔流に正面から飛び込んだのは爆豪だった。

 

「往生際が悪ぃのはテメーだろうがッ!!」

 

そう叫ぶ爆豪の掌から迸る爆炎が金属を弾き飛ばしていく。衝撃のたびに衝撃波が生まれ、周囲の空気が震えた。弾ける爆音は耳の奥に刺さり、飛び散る火花が視界を白く染める。それでも爆豪は怯まない。破片が頬をかすめ、鋭い切り傷を生む。その痛みに顔を歪めながらも、彼はさらに踏み込んだ。

 

その背後で、緑谷とオールマイトが一斉に駆け出した。

 

「道を開くぞ福州!!」

「合わせろ轟焦凍ッ!」

 

竜の巨体が振り向き、喉奥から赤熱した息を漏らす。次の瞬間、ソロの口から放たれた業火が、空を覆う金属に襲いかかった。炎は空気を焦がし、鉄を溶かすような勢いで金属群を包み込む。焼ける匂いが鼻を刺し、溶断された破片が赤い残光を引きながら落ちていった。

 

勢いを削がれた金属群に轟が一歩踏み込み、冷気を噴き出した。凍気が床を走り、白い霧を引きながら金属を一気に氷結させる。灼熱と極寒、両極の力が交差し、氷と火が砕け散る音が耳に響く。その一瞬で緑谷とオールマイト、2人の進むべき道から全ての障害物は消えた。

 

緑谷とオールマイトは勢いそのままに跳躍する。空気を切り裂くような音とともに、2人の影が宙を走った。

 

対するヴィランは、全ての金属を一点に集束し、これまでの攻撃とは比べものにならない規模の塊を形成し始める。重圧が空気を押しつぶし、その質量だけで視界が歪むほど。落下すれば、A組の生徒達はもちろん、タワー内部の避難者達、外周にいる人々までもが確実に巻き込まれる。

 

ソロの心臓が跳ねた。

胸の奥を直接握られるような感覚だった。

 

タワーごと押し潰される。

その中に、ユウがいる。

 

(……まずい。落ちたら……ユウも……)

 

竜の姿の喉奥がひきつり、息が止まる。福州ソロという存在を任されている以上、家族は、姉は、必ず守らねばならない。家の名誉を守るために自死を選んだ男。福州ならばそうする、だから守らないと。そう思っていた。

 

だが今は違う。義務でも誇りでもなく、ただ心の底からそう思った。

 

ユウは死なせたくない。守らなくてはいけない。

 

それは“福州ソロだから”ではない。

“自分自身”がそう願った。

 

しかし、今の距離ではどうにもならない。

炎を撃っても届かない。

翼を広げても間に合わない。

 

だから、信じるしかなかった。

緑谷と、オールマイトを。

彼らの拳を。

ヒーローという存在を。

 

「目の前にあるピンチを!」

「全力で乗り越え!」

「人々を!」

「全力で助ける」

 

2人の声が重なり、全身から溢れる力が空気を震わせる。金属塊の影が地面を覆い、絶望が迫る。だが、2人だけは揺らがずに前を見据えていた。タワーごと潰すため、ヴィランの攻撃が振り下ろされる。

 

「それこそが!」

「ヒーロー!!」

 

オールマイトと緑谷は同時に拳を引き絞った。

 

「「ダブルデトロイトォォォ」」

 

筋肉繊維が悲鳴をあげ、骨が軋む音まで届くほどの力がこめられる。衝撃で空気が叩き割れ、風圧だけで周囲の瓦礫が弾け飛んだ。

 

「「スマッシュッ!!!!!」」

 

ぶつかった。

天地を貫く閃光が視界を焼き、轟音が空気を震撼させた。振動がタワー全体を揺らし、ソロの足元まで伝わった。地面が小刻みに震え、皮膚が振動するほどの衝撃が走る。

 

「いけーッ!!」

 

麗日の叫びが響く。

耳郎と八百万がオールマイトの名を呼び、飯田、切島、峰田が緑谷の名を叫ぶ。

 

「「「ぶちかませッ!!!」」」

 

爆豪、轟、そしてソロも声を張り上げた。

胸の底から絞り出すような叫びだった。

 

──勝て。

 

皆がそう願い、祈った。

 

そして。

 

「更に!」

「向こうへ!!」

 

「「プルスウルトラァァァァッ!!!」」

 

ヴィランの絶叫があがり、圧力で風が逆巻いた。巨大な金属塊は内部から砕け散り、破片が光の中で細かく弾けて消えていく。

 

勝利の瞬間だった。

 

歓喜の声がいっせいに湧き上がる。膝から崩れ落ちる者、叫ぶ者、泣き出す者。安堵と興奮がI・アイランドを渦巻いた。

 

轟はソロの方に手をかざした。

その意図を察し、ソロは竜の姿から人の姿へ戻る。戻った瞬間、どっと疲れが押し寄せるが、それでも轟としっかりハイタッチを交わした。

 

2人はそのまま爆豪の方を見るが、爆豪は舌打ちして背を向けた。扱いづらいが、誰よりも熱い男だ。だからこそ、仲間として信じられる。

 

「ばくごう゛がづぎはあ゛い゛がわ゛ら゛ずでずね゛ぇ」

「声やばいぞ福州、どうした?」

「はり゛ぎっだら゛の゛どや゛げだ、お゛ぇ゛ぇ」

 

そして、その後ヴィラン達は全員捕縛された。

人質も全員無事解放され、乗っ取られたシステムやロボットも復旧する。

こうして、I・アイランドでの騒動はしかし確かに幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。