お狐フレンズ   作:佐倉シキ

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ヴィラン

 

 

戦闘訓練から数日後のこと。

雄英高校の門の前にはどこからかオールマイトの雄英就職を聞きつけたインタビュアーたちが集まっていた。

 

インタビュアーの1人が、のこのことやって来たソロを見つけるや否や勢いよく駆け寄ってくる。マナーも常識も感じさせないその様子に、新しい玩具をもらった犬のような気分になったソロはニッコリと笑った。お喋りは大好きだ。

 

「初めまして!雄英の一年生かな!?」

「えぇえぇ、そうですそうです、そうですとも!ハロー視聴者の皆さん、僕は雄英一年の中で一番優秀な生徒ですよー!」

 

と、笑顔でカメラに向かって手を振る。

 

「早速ですが、オールマイトの授業はどんな感じですか?」

「えー、どんな感じかって?そう聞かれたのなら僕はこう答えます。“すごく愉快”!!だってNo.1から直接指導を受けられるんですよ?今年の一年は間違いなく幸福でしょう。なぜなら彼はNo.1だから!ヒーローを目指し、ヒーローを学び、ヒーローを知る。そういう環境で、これ以上の教師がいるわけないじゃないですか!」

「なるほど!平和の象徴が教壇に立っていることについては、何かありますか?」

「そりゃあありますとも!ヒーローを目指す子供たちにとって、オールマイトはもう憧れの的ってやつです!友情!努力!勝利!暴力!平和!暴力!暴力!暴力!男子たるもの、圧倒的なパワーってのは大好物ですからね!合法的に暴力を振るいたいがために雄英に入ったらそこに最強のパワーヒーローがいた!そりゃもう心が踊るのは当然です!

ちなみに昨日の訓練も大変に愉快なものでしたよ。いやぁ……教師としてはまだ初心者のオールマイト先生、アメコミみたいな設定を一生懸命考えてきてましてね。あの大きな体でちっちゃいカンペを覗きながら授業してる姿……あれはもう滑稽……いや、大変愛らしかったです!

そうやってNo.1ヒーローが頑張ってるんですから、生徒No.1の僕も当然気合が入りますよ!雄英の自己顕示欲が爆発しただっさいジャージを着て体力テストをし、頼んでもいないのに送られてきたありがた迷惑な厨二コスチュームに身を包んで生徒たちと組んず解れつ血を流しながら」

「福州黙れ。お前もう喋るな」

 

インタビュアーと楽しく会話していたところ、後ろから口を乱暴に塞がれた。

 

「小汚ッ!?なんですか貴方!?」

「オールマイトは今日非番です。授業の妨げになるのでお引き取りください。それと、門の前で許可なくうちの生徒にインタビューしないでもらいたい。福州、さっさと教室に行け」

「おっと、相澤ティーチャーがすごい顔をしています!どうやら今回はここまでみたいだ!名残惜しいけど放送はここまでです!次回も『友情!努力!暴力!』でお会いしましょう、Plus ultra~」

「福州、黙れ」

 

現れた相澤はそれだけ言うと、ソロを引っ張って校内に入り、さっさと門を閉めてしまった。「馬鹿みたいなことペラペラ喋ってないで、さっさと教室に行け」と、そう言われたのでソロは大人しく教室に向かった。

 

少しして教室に入ってきた相澤は、軽く挨拶をすると早速戦闘訓練の結果について話し出す。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績、見させてもらった」

 

そうして爆豪と緑谷に軽く注意を入れる。爆豪には子供みたいな真似をするな。緑谷にはまた体壊して一件落着か、と。そしてそのまま流れで、矛先はソロにも向けられた。

 

「福州、暴言にも限度があるぞ。今回はヴィラン役ってことで目を瞑るが、追い詰められている個人を嘲笑うのはやめろ。それはヴィランのやることだ」

「これはこれは、大変失礼しました。以後気をつけます」

「はぁ……本当に分かってるんだかね」

 

ホームレスみたいな見た目で、意外と優しいんだなとソロは笑った。さて、そんなこんなで本日行われるのは学級委員を決める投票である。雄英高校とは学年で一番我の強い者たちだけが受験をし、その中からさらに選別された、文字通り選び抜かれた20人の集まりだ。当然ながら、全員が全員元のクラスでは委員長を務めていたような面々である。

 

分かっていたことだが、クラス全員が立候補していた。ちなみにソロは学級委員よりも放送委員がやりたかったので立候補はしなかった。そして、皆が立候補したままでは埒が明かないため、飯田の発案で多数決を取ることに。正直誰でも良いと思う。だが興味のない奴に入れるのも癪なので、ソロは結局自分に入れた。そして、投票の結果は委員長が緑谷、副委員長が八百万となった。

八百万はともかく、緑谷は向いていないと思う。けれどまあ、弄ったら大袈裟なリアクションをしてくれそうで面白そうなのでソロ的にはOKだ。

 

その後、ソロは一人で食事に向かった。

雄英高校ではランチラッシュという有名ヒーローが料理を担当している。非常に美味いらしいが、うるさいのは苦手なので、ソロはいつも弁当を買って外で食べていた。

 

本人が喧しいので意外に思うかもしれないが、ソロは五感が非常に優れているため、うるさいのも臭いのも苦手なのだ。

 

美味い食事に満足し、弁当を仕舞ったその時だった。

 

 

ウウーッ───────

 

 

と、校舎を揺るがすように警報が鳴り響いた。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』

 

入学前に配られたパンフレットによれば、“セキュリティ3が突破された”とは、校舎内に侵入者が出現したことを意味している。雄英の堅牢な防御システムを破る者など、一体誰が、何の目的で……。

 

校舎の方へ目を向けると、パニックに陥った在校生たちの姿が見えた。教室や廊下からは慌ただしい足音と叫び声が響き渡り、生徒たちは我先にと逃げ出そうとしている。廊下は混雑し、互いにぶつかり合い、転びそうになりながら押し合う姿もあった。

 

一部の生徒は友人や教師と一緒に行動しようとするが、他の者は自分の身を守ることを最優先にしていた。窓からの脱出を試みる者、階段を駆け下りる者、非常口を目指す者。その動きはどれも統率を欠いて混沌としている。

 

中にいなくて良かったとソロは胸を撫で下ろした。

あの騒ぎに巻き込まれていたら、さすがの自分でもかなり苛立っていたに違いない。噛み殺して踏み潰したくなっていたはずだ。一流の高校とはいっても所詮は子供たちの集まりだ。緊急時の反応はやはりこんなものなのだろう。慌てふためく彼らの姿を、ソロは外から愉快そうにニコニコと眺めていた。

 

そしてふと気になり、音のした正門の方へ足を向ける。角まで歩み寄り、そっと覗き込んだ。

 

「ッ!」

 

そこに男がいた。

細身の体つきで、全身に手のような装飾をつけた不気味な男。彼は身体をポリポリと掻いたかと思うと、ニィッと口角を吊り上げ、黒い穴に吸い込まれるように消えた。

 

その雰囲気だけで分かった。あれはヴィランだ。

 

そこまで強くないのか直接的な危険は感じなかったが、雄英のセキュリティを突破できるということはそれなりの実力者であるはずだ。男が消えた奥の方には報道陣の群れが見える。相澤とプレゼントマイクがその対応に追われていた。混乱を引き起こすことが目的だったのかもしれない。だとすれば、狙いはあのパニックの中にあったのだろう。まず獲物をパニックに陥らせるというのは狩りの常套手段だ。

 

再び校舎へ視線を戻すと、生徒たちの混乱はすでに落ち着きつつあった。ソロは校舎から出てきた校長の姿を見つけると駆け寄り、先ほど目にした男のことを簡潔に報告した。

 

 

 

     *   *   *

 

 

 

 

教室の窓から射し込む陽光が穏やかにクラスを照らす。生徒たちは机に向かい、静かに授業に集中していた。そんな中、ソロは椅子に腰を下ろしたまま、ふと外を見やる。今日は随分と空が青い。

 

午前の授業が終わりに差しかかる頃、教壇に立った相澤が口を開いた。今日のヒーロー基礎学の説明だという。どうやら相澤、オールマイト、そしてもう一人の教員による3人体制で行われるらしい。相当な規模の訓練だ。

 

「災害、水難、なんでもござれ。人命救助訓練だ」

 

その言葉に、クラスが一斉に沸いた。

人助けこそがヒーローの本分。訓練内容に胸を躍らせる生徒たちの顔が輝いている。

 

ソロは頬杖をつきながら考える。自分の変身能力も、こういう場面なら有効活用できそうだ。海ではクジラやイルカに、崖ならドラゴンに化けて飛べばいい。被災者を背に乗せて運べばそれで済む。抵抗されたら、まぁ鷲掴みにすればいいだけの話だ。

 

そんな単純な発想をプロヒーローが聞いたらきっと顔をしかめて怒るだろう。そう思いながらも、ソロはニコニコと楽しげに空想を巡らせた。

 

訓練施設は校舎から少し離れた場所にあるらしく、一同はバスで移動することになった。ソロがたまたま空いていた席に腰を下ろすと、隣が轟だった。いつものように軽く「ハロー!」と声をかけてみたものの、見事に無視された。だが、ソロはこの程度で諦める男ではない。返事がなかろうが構うものかとばかりに、彼はそのまま轟へと一方的に話しかけ続けた。

 

バスの中は雑談と笑い声に満ちている。そのざわめきの中で、話題は自然と、誰からともなく個性の話へと移っていった。

 

その話題の発端は、緑谷の個性がオールマイトに似ているというものだった。いつの間にかそれは個性の格好良さ談義に変わり、男子たちは盛り上がっている。

 

「派手で強いのは、やっぱ轟と爆豪だよなぁ。あと福州。福州の個性はロマンがあるわ」

「鳥になって空を飛ぶとか、子供の頃の夢だもんな〜」

「ケッ」

「2人は人気出そうだけど、爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なそ」

「んだとコラ!!出すわ!!誰よりも人気になるわ!!つーかなんで俺があの煽りカスより下なんだよ!!」

「ハッハッハ!そうやって下品に喚き散らかすところですよ。貴方を見ていると、どうにもディスカバリーチャンネルで見たメキシコの刑務所を思い出す」

「テメェどういう意味だコラァァッ!!」

「ほらほら笑って下さい爆豪勝己。ヒーローとは笑顔で国民に尻尾を振る国家公認の奴隷の事ですからね。はいスマ〜イル」

「死ねッ!!!」

「うーん、どっちもどっちかもしれないわね」

「下品に叫ばない分、ギリ福州の勝ちかな〜」

「暴言の質は福州の方が最悪だけどな」

「どんぐりの背比べ」

「どっちかって言うと目くそ鼻くそ」

 

そんな賑やかなやり取りを背に、バスはゆっくりと目的地へ進んでいった。

数分後、一行は雄英の演習施設、嘘の災害と事故ルームことUSJへと到着した。案内役はスペースヒーロー13号。彼女によればここは、水難、土砂災害、火災など、あらゆる災害を想定して設計された総合訓練場だという。

 

「えー、始める前にお小言を一つ二つ、三つ。皆さんご存知かと思いますが、僕の個性はブラックホール。どんなものも吸い込み、チリにしてしまいます」

「その個性で、どんな災害からも人を救うんですよね!」

「ええ。しかし、それは簡単に人を殺せる力でもあります」

 

その一言で明るかった空気が一瞬で静まり返った。当然だ。超常の力とは、裏を返せば暴力そのもの。ソロだって、人を殺そうと思えばいくらでも殺せる。実際、2歳の時に一人殺している。ふとそんなことを考えてしまい、ソロはコスチュームの紐を弄りながら小さく笑った。

 

「皆さんの中にも、そういう個性を持つ者はいるでしょう?」

 

13号の声が再び響く。

 

超人社会、それは個性の使用を資格制と厳しい法規で縛ることによって、ようやく成り立っている。だが一歩間違えば、拳銃を懐に忍ばせた者が何千何万と街を歩いているようなものだ。いつ暴発するか分からない爆弾がそこら中にある。ヒーロー社会は、人々の良心に依存してかろうじて保たれている仮初の安定にすぎない。だからこそ、生徒たちは相澤やオールマイトの授業で、己の力とその危うさを学んでいる。

 

「それでは今回の授業では心機一転!人命のために個性をどう活用するかを学んでいきましょう!」

 

13号の明るい声が響き、生徒たちは再びざわめき始めた。笑い声と会話が戻る。だがその中で、ソロの耳だけが異音を拾った。

 

かすかな、空気の歪みのような音。

続いて、肌を刺すような嫌な気配。

獣の勘が、危険を告げていた。

 

ソロは反射的に顔を上げ、その方向を睨む。

隣の轟が気づき、怪訝そうに彼の視線を追った。

そして彼もまた、異変を察知した。

 

黒い滲みのようなものが、空間に現れていたのだ。

 

見覚えがある。

マスコミが侵入した日の、それと同じもの。

 

相澤もすぐに異変に気づいた。

振り返った瞬間、滲みが広がり、そこから手が突き出される。黒い空間の中から、ギョロリとした赤い瞳がのぞき、こちらを見た。

 

その瞬間、ソロは確信した。あれはヴィランだ。

 

「一かたまりになって動くな!!13号!生徒を守れ!!」

 

相澤が叫び、ゴーグルを装着して戦闘態勢に入る。だが、生徒たちはまだ事態を理解していなかった。「入試の時と同じ訓練か?」そんな困惑が広がる。だがそんな彼らに相澤が短く告げた。あれは本物のヴィランだ、と。

 

ざわめきが凍りついた。

 

ソロの視線は、出現した群れの中でもひときわ異様な存在に釘付けになる。脳みそをむき出しにした、異形の怪物。あれが群れの中で最も危険な臭いを放っている。それになんだか気に食わない。自分の縄張りを侵されたかのような不快感が胸を覆う。思わず喉から獣のような唸り声が溢れる。

 

戦えと言われれば、戦うつもりはあった。だが今は、相澤の指示に従って一歩下がる。

 

ヴィランたちは、次々と暗い穴の中から姿を現した。この施設には侵入者を感知するセンサーがあるはずだ。だが、反応がまったくない。つまり妨害されている。

 

センサーを無効化しての侵入。少なくとも衝動任せの暴徒ではない。相澤はすぐに状況を分析する。恐らく、緻密に計画された襲撃だ。

 

13号が生徒たちの避難を誘導し、上鳴は個性を使って通信を試みる。その最中、相澤は迷いなくヴィランの群れへと単身突っ込んだ。

 

彼の個性は抹消。相手の個性そのものを打ち消す異能。イレイザーヘッドを知らぬヴィランたちは、次々と力を奪われ、地面に沈む。異形型でさえも、相澤の動きの前ではまるで赤子同然。白い帯が閃き、骨が鳴り、あっという間に敵は沈黙した。

 

プロのヒーロー、イレイザーヘッド。

有象無象のチンピラごときが太刀打ちできる相手ではない。生徒たちが息を呑み、その戦いに見惚れる中、13号は焦ったように声を上げた。

 

「皆さん、避難を……!」

 

しかし、その言葉を遮るように、黒い影が現れる。

 

「逃しませんよ」

「ッ、しまった!」

「初めまして。我々は敵連合。僭越ながら、この度ヒーローの巣窟、雄英高校にお邪魔したのは……」

 

その男は不気味な笑みを浮かべたようだった。

 

「“平和の象徴”オールマイトに、息絶えていただきたいと思いまして」

 

馬鹿げている。だが、その目は本気だった。

オールマイトを殺す?こんな有象無象達にできるわけがない。だが、彼らはできるつもりで来ている。つまり、何か策がある。

 

13号がワープの男に向け、ブラックホールを放とうとする。しかしその瞬間、勇み足の爆豪と切島が飛び出した。

 

「危ないッ!」

 

攻撃が不発に終わり、空間が歪む。黒い渦が生まれ、生徒たちは次々と吸い込まれた。ソロも逃れる間もなくその中へ。

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

目を開けた瞬間、強烈な熱気に思わず顔を顰める。火事だ。

 

おそらく、火災ゾーン。

コンクリートの街並みが真っ赤に染まり、炎が地面を這い、爆ぜる。熱が皮膚を刺し、空気そのものが灼熱に変わっていた。息を吸うたび喉がひりつく。

 

「……これはまた、派手でいいですね」

 

思わぬ暑さに眉をしかめたその時、一人の少年が駆け寄ってきた。

 

「福州!」

「あなたは、尾白猿夫」

「そう!なあ、お前は大丈夫か!?」

「当然です。僕ほど優秀な男には暑さなど何の問題もならないんですよね。ところで、ポカリスエットとか持ってませんか?」

「熱中症かよ!ってか、そういうボケはいいから、今はッ」

 

尾白の声を遮るように地面が爆ぜた。

次の瞬間、炎の壁が襲いかかる。

 

ソロは反射的に尾白を抱えて跳躍した。燃えた瓦礫を蹴り、建物の屋根へ飛び乗る。頬に熱が走り、ジリリと痛みが広がった。皮膚が焦げた匂い、軽い火傷だ。

 

「来た来たァ!」

「獲物が来たぜ〜!」

「燃やしてやる、ヒヒヒ!」

 

下方では、炎を纏ったヴィランたちが群れていた。三下のチンピラめいた口ぶり。だが、個性は洒落にならない。

 

「どうだ〜、俺様の炎の味は?俺は炎がある限り最強なんだよ!どんな小さな火でも、一瞬で街ごと焦がす炎に変えて操れるんだぜ!」

「ハロー、虫ケラども。よくもこの顔を焼いてくれましたね。ぬるい炎なんて無意味だってこと、骨の髄まで刻んで差し上げます。踏み潰されるのと噛み砕かれるの、どちらがお好みです?」

「ひゃは!言ってろよクソガキ、どうせ焼け焦げるだけだ!」

 

炎が唸りを上げる。

熱波で空気が揺れ、視界が歪む。

 

「どうしよう福州、あの炎……マジでやばそうだぞ」

「なに言ってるんですか?大したことありませんよ。ええ、全然。馬鹿どもが自分で説明してくれたじゃないですか。炎がなければ何もできないって」

「炎のない所まで逃げるってことか?でも囲まれてるし……」

「炎が邪魔なら、炎を無くせばいい」

 

尾白の目が大きく開かれた。どうやって?と。福州の個性は変身。姿を変えるだけだ。それで何を……。

 

「鳥に化けて飛んで逃げるとか!?でも俺は……」

「何を言ってるんですか、こんな弱者相手に背中を見せるわけないでしょう」

「じゃあ、どうするって」

「僕の個性は、この世で最も優れたもののひとつです。No.1ですよ。欠点のないスーパーチャンピオン。貴方は運がいい。僕と共にあれて。怪我ひとつ負わずにこの場を脱出させてあげます、泣いて感謝してください」

「いや、泣きはしないけど……何をするつもりなんだ?」

「さぁ再び始まりました!ヒーローチャンネル!パーソナリティはこの僕、福州ソロがお送りします!今日も元気にいってみよう!」

「急にテンション上げるなよ……」

 

ソロは指を鳴らす。するとその姿がぐにゃりと歪んだ。次の瞬間、そこに立っていたのは金髪の美しい女性だった。清らかな衣をまとい、静かな微笑を浮かべる。

 

「何であろうと化けてみせるが、我が個性。そして、僕は化けた物の力を我が物とする。と言うわけで行ってみよう!SHOWTIME!」

 

女性の姿のまま手をかざす。すると、掌から澄んだ水が溢れ出した。

 

「水の精霊、ウンディーネ。パラケルススの四大精霊論において水を司る者です。馬鹿な貴方たちにこの意味わかるかな?」

 

溢れた水が渦を巻き、巨大な波を生み出す。唸りを上げて膨れ上がった大波が、ヴィランたちをあっという間に飲み込んだ。

 

「う、嘘だろッ!?」

「逃げッ!」

 

訓練用の小さな街が、瞬く間に水の奔流に呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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