お狐フレンズ   作:佐倉シキ

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雄英体育祭

 

 

USJ襲撃の翌日は臨時休校となった為、ソロは横浜に戻り、家で寛いでいた。気になるのは脳無のことだ。どうもあの怪物が引っかかる。親近感か、それとも同族嫌悪か……そんな感情だった。

 

(んー、なんだろ、アイツには負けたくないな。不思議。なんか謎の対抗意識がある)

 

食事の時も考え事をしていたソロの姿を見て、ユウは怪訝な表情を浮かべて尋ねる。

 

「やっぱりどっか怪我した?ずっとなんか考え事してるし、嫌なこととかあった?ヴィランいっぱい来たんでしょ?」

「ハッハッハ!まさか、大した怪我はしてないよ。それに、沢山来たといってもその大半は取るに足らない素人集団だったからね。嫌なことも特にない。気分的にはアレだ、芝生歩いてたら飛び跳ねてきたバッタが顔に飛んできたみたいな?」

「それだいぶ嫌だな。っていうか、火傷したんでしょ?それは痛くない?」

「本当にちっさい火傷だったからね。このくらい、分かる?」

「いや指で示されても分かるわけないでしょ?それ範囲?1センチくらい?」

「痛さ」

「余計分かんないわ!」

「まあまあまあ、気分的にはこんなもんってことだよ。痛いより久々にちょっと疲れたってのはあるかな。火炎系の個性を持つ連中が火災ゾーンに集められていて、好きにさせたらまずそうだったからウンディーネで一蹴した」

「じゃあ疲れてるんじゃん。あっちの家で休んでれば良かったのに」

「強めの追い切り一本こなした後の競走馬くらいだよ、今の疲労感」

「さっきから全然分かんない例えしかしないね?」

「まあまあ、大したことないってことさ。紅茶でも飲む?」

「じゃあ頂こうかな」

 

ソロは笑顔で下手くそな鼻歌を歌いながら紅茶を淹れる。音痴だと言うユウのツッコミは無視し、丁寧に紅茶を作る。まずは磨き上げられた銀のティーポットを手に取った。指先の動きは慎重で、いや、慎重さが少し行き過ぎていて、蓋を開けるたびにわずかにカチリと音が鳴る。

やかんから湯を注ぐ動作も丁寧だが、少し強めに握った取っ手がきゅっと軋む。お湯の流れは細く、ほとんど完璧な角度に見えるが、ポットの口が揺れて紅茶の葉がふわりと跳ねてしまう。

 

「……チッ」

 

ソロは一瞬だけ動きを止めたが、すぐに何事もなかったように続ける。茶葉の量を測るときもソロは真剣そのものだった。だが、量りの皿に葉を落とすたびに小さな音が立つ。

 

そして十分な時間を置き、ソロはティーポットを持ち上げ、黄金色の液体を注いだ。流れる紅茶はほとんど絹のように見えたが、最後の一滴だけが思いがけず跳ねて、カップの縁に小さな雫が残る。

 

「……」

 

ソロは紅茶をそっと差し出した。その顔には遺憾の色が浮かんでいる。ユウはなんでもない様子で受け取り、ひと口含む。微妙な沈黙が落ちた。

 

渋みが際立ち、わずかな酸味すら感じる不快な味が舌を襲ったのだ。苦く、えぐみが残るその紅茶は、とても飲みやすいものとは言えず、香りに反して味は荒削りだ。茶葉の選定か、湯の温度か、どこからしくじったのか、その紅茶は驚くほどに不味かった。

 

「……よく出来てるよ、おいしい」

 

ソロはぽかんとしたまま首を傾げ、次の瞬間、どこか嬉しそうに笑った。

 

「絶対不味いのにちゃんと飲んでくれるとこ、僕は好きだぞ」

「まあ、上達はしてるわ。努力の味を感じてるのよ」

 

ユウはカップをテーブルに置き、ため息をつく。どうもソロは細かい作業が致命的に下手くそだった。とにかく不器用なのだ。料理や掃除など、日常生活で重要なことが全くできない。文字も下手だし、靴紐も上手く結べない。ソロは「まあ誰にでもウィークポイントはあるものさ」と戯けた様子で、自分の分の不味い紅茶を飲んでいた。

 

そしてふと、ユウは思いついたことを口にした。

 

「ねぇ、そういえば脳無って」

 

ソロがカップをテーブルに置こうとした時、ユウがそう言った。ソロは思わず手に力が入り、カップの持ち手を砕いてしまった。油断するとすぐに変身が綻びそうになるのがこの、変身の個性の難しいところである。支えるものが無くなったカップは重力に従い床に落ち、砕ける。

 

らしくない失態にユウは目を見開いた。ソロは慌てて割れたカップと溢れた紅茶の掃除をする。

 

「アンタが動揺するとは珍しいね、いつも太々しいのに」

「ユウちゃんも意外と失礼なことを言うね。太々しいんじゃなくて堂々としてるんだよ。威風堂々。……ただちょっと、ちょうど脳無のことを考えていたからね。思わず力が入ってしまったんだ」

「脳無のこと?何か気になることでもあったの?」

「脳無がかなりの実力者だったからね。オールマイトと渡り合うほどの。僕だったらどう戦うか、どうすれば勝てるかといろいろ考えていたんだけど、勝てるヴィジョンが浮かばなくてちょっと凹んでた。ちょうどそのタイミングでユウちゃんが憎きアンチクショーの名前を出すもんだから、ついつい力が入ってしまった」

「ふ〜ん、アンタでも勝てないんだ。でもオールマイトと渡り合うくらいなら、勝てなくて普通じゃない?」

「いや、そうなんだけどね。分からないんだけど、こう……本能っていうのかな?う〜ん、本当にわからないんだけど、それじゃあダメだと思ったんだよ。お、僕はあの脳無には負けたくないってね。というか、脳無の名前は出てないはずだけど、一体どこでそれを知ったんだい?」

 

一体どこでその情報を手に入れたのか。ソロは小さく首を傾げて考える。脳無に関する情報など、普通のニュースでは出回らない。オールマイトが雄英に赴任した事すら、もともとは最高機密扱いだったはずだ。だが、福州家の当主はそれを知っていた。つまり、福州家にはそういう情報すら独自に掴める筋があるということだ。

 

(……まあ、なんでもいいか)

 

ソロは特に詮索することもなく、心の奥に疑念を沈めた。自分にはどうせ関係のないことだし、そこまで興味もわかなかった。

 

「なんか改造人間なんだってね?一介の雑魚ヴィランにできることじゃないよ」

 

ユウのその声色には単なる好奇心ではない、どこかの不安の影が差していた。

 

「脳無。複数の個性を持った改造人間。資金も、素材も、人材も必要よ。あれを作れる組織ってだけで、ただ者じゃないって想像ができるわ」

「あとはチンピラをあれだけ集められる力。普通じゃないね」

 

ユウは唇を尖らせ、軽く紅茶のカップを揺らした。カップの中で淡い琥珀色が波紋を描く。それを見つめる瞳には真剣さが滲む。

 

「なぁんか、ちょっと不穏な感じ……。マジで気をつけてね。雄英ってトップの中のトップでしょ?変な陰謀に巻き込まれたら、笑い事じゃ済まないよ」

「その点については問題ないさ!」

 

ソロは笑った。その笑みは穏やかだが、どこか猛々しい光を宿していた。

 

「僕がもっともっと強く、逞しく、優秀になれば良いって話!あの脳無とやらの首を噛みちぎって殺せるくらいにね」

「殺しちゃダメだよ?」

「知ってる知ってる!言葉のあやだよ、ユウちゃん。つまりぶっ倒せるくらい強くなるってことさ。もっと強くなる。誰よりも、何よりもね」

 

その目には、野心と執念が交錯していた。人を守るための強さではなく、自分の存在を証明するための強さ。その執念が笑いながら放つ言葉の隙間から滲み出ていた。

 

「もう十分強いと思うけどね。でも、気合十分だ。凹んでるかと思ったけど、大丈夫そうで安心したよ。雄英体育祭も迫ってるし、ファイトッ!」

 

ユウはグッと親指を立て、明るく笑った。ソロはそれに口角を上げて応えた。

 

 

 

 

 

       *   *   *

 

 

 

 

 

「皆ー!!席につけ!!朝のホームルームが始まるぞー!!」

「ついてるよ、ついてねーのお前だけだ」

 

いつものように飯田の空回りと瀬呂のツッコミで1日が始まった。教室は朝のざわめきに包まれ、どこか日常が戻ってきたような空気が流れている。

だが、次の瞬間にはクラス中の視線が一斉に教壇へ向いた。教壇に立っていたのは、包帯でぐるぐる巻きになった相澤だった。人間の体であんな事になったら痛くて辛くて最悪なのに、治る前に出てくるなんて馬鹿じゃないのかとソロは思った。

 

相澤は静かに宣言した。

 

「雄英体育祭が迫っている」

「体育祭!」

「クソ学校っぽいの来たー!!」

「僕の独壇場だ!」

 

上鳴や芦戸、ソロのはしゃぐ声が教室に響く。ヴィラン襲撃の直後だというのに、雄英はあえて体育祭を中止にしなかった。この学校は、襲撃ごときでは揺るがない、危機管理体制が万全である。そう全世界に示すための舞台。

 

生徒達はそれぞれの思いで顔を見合わせる。体育祭はすべてのスタートラインなのだ。

 

「いや、そこは中止しようぜ……」

「何言ってるの峰田くん……ひょっとして、雄英体育祭見た事ないの!?全国放送だよ!?」

「あるに決まってんだろ、そう言うことじゃなくてよー……」

「全国のトップヒーローも見ますのよ。スカウト目的で」

 

八百万が淑やかに微笑む。

 

「私、八百万の名を背負う者として負けていられません。資格習得後はプロ事務所に入り、サイドキックとして独立するのが定石ですので。今日この日まで努力を怠らず誠実に訓練してまいりましたの。大抵の方はこの体育祭でプロヒーローとの繋がりを作りますし、中止になっては困ります」

「こんな最高のエンターテインメントを、ヴィランの襲撃なんていう下らないイベントで台無しにされたらさすがにショックで激萎えです。ド派手に目立つチャンスなのに、峰田実は後ろ向きですね。感心しません」

「分かってるってば……八百万はガチだし、福州はお遊び気分だし……。オイラのこの気持ち誰か分かんないかなー?」

「みんなやる気満々だから難しいかもねー」

「にしても独立かー。なんか上鳴とかは万年サイドキックやってそうだよね」

「耳郎はなんで急にオレを刺したの?」

 

プロに見込まれればその場で自分の将来が拓ける。未来の選択肢が増えるのだ。偉大なヒーローになるための試練はとうに始まっている。年に1回、計3回しかない貴重なチャンスだ。生徒達の心が引き締まった。

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

昼休み。

ソロは家の縁がある八百万に誘われ、食堂で食事を取っていた。八百万は近くにいた轟にも声をかけていたが、そちらはいつものように無表情で断られている。

 

2人は列に並びながら、食券を手にした。談笑の内容は、芸能やヒーローではなく、政治と経済。まるで大人同士の会話のようであり、そこにほんの少しばかり互いの家の情報を探り合うような火花が散る。

 

だが、ふとソロの耳が馴染みある声を拾った。オールマイトが緑谷を食事に誘った。彼の登場で、ソロの興味はすべてそちらへと傾いた。

 

(……何の用だ?オールマイトが、生徒を個別に呼び出す?)

 

「デクくんなんだろうね?」

「オールマイトが襲われた時、1人飛び出したと聞いたぞ。その関係じゃないか?蛙水くんが言っていたように、超絶パワーも似ているし」

 

オールマイトが、緑谷を気に入っている?

ソロの胸中に疑問が湧き上がる。似ているだけで贔屓するような人間には見えないが、いったいどのような関係なのだろう。疑問に続いて、好奇心も湧いてくる。その微妙な変化を見逃さなかった八百万が、首を傾げて声をかけてきた。ソロは「なんでもありませんよ」と笑ってその場を取り繕った。

 

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

 

そして、2週間が経過した。

 

訓練と放送部の仕事で日々を埋めるうち、時間は瞬く間に過ぎ去った。雄英体育祭の朝。

空は澄み渡り、校舎の屋根が太陽の光に染まっている。学生達のざわめきが、辺りいったいに響き渡る。

 

「皆、準備はできてるか!?もうじき入場だ!!」

 

飯田が腕を振り回して張り切っている。緊張と興奮が入り混じった空気の中、轟が静かに緑谷へと歩み寄った。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「へっ!?う、うん……」

「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな?」

「っ!」

「別に詮索する気はねぇが……おまえには勝つぞ」

 

その言葉に、空気がピンと張りつめた。クラスがざわめく中、ソロはゆっくりと立ち上がった。

 

「そう!確かに、貴方はオールマイトに気に入られているように見える。その姿はさながら、コミックの主人公と秘密の師匠キャラですね」

「え!?ふ、福州くんまで」

「とってもとってもショックな話なんですけど、僕はUSJの襲撃の時、脳無に勝てないと思ってしまったんです。困った事にあの超絶パワーに対応する手段が全く思いつかなくて、だいぶ凹みました。だ〜け〜ど、今は違います!次はあの怪人もボッコボコのギッタギタに食いちぎってやるつもりなんです!」

「え……な、何が言いたいの?」

「脳無は対オールマイトを目的とした怪人でしょう? あれはオールマイトクラスの力を持っていた。そして貴方は、オールマイトに比肩する速さと力を持っていて、しかも彼に気に入られていると来た」

「そ、それは……えっと」

「試金石になってもらいたいってことです。緑谷出久。まずは貴方を倒す。そうして僕は、僕の強さを証明する」

 

ソロの笑顔がすっと消えた。そして次に見せた表情は、獣そのものだった。薄く光る犬歯を剥き出しにし、瞳には鋭い捕食者の光。微笑んでいるはずなのに、その笑みは明らかに威圧的だった。

 

その視線を受け、緑谷の背筋が粟立つ。まるで野生動物に狙われているかのような錯覚。息が浅くなる。

 

そんな緊迫の空気を裂くように、轟が口を開いた。

 

「俺はお前にも負けるつもりはねぇぞ、福州」

「おやおやおや、貴方も宣戦布告?」

「俺の目から見て、一番底が見えないのがお前だ。入学テスト第1位、万能な個性。火災ゾーンでの戦い方も尾白から聞いた」

「おやぁ、尾白猿夫……口が軽いですね、全くもう」

 

尾白が眉を下げて「す、すまん」と頭を下げる。だがソロは本気で怒っている様子ではなかった。どこか愉しげに目を細める。一部がバレたところで、ソロの攻撃は多彩で、読めない。その万能さこそが、彼の最大の武器だった。

 

「お前にも、俺は負けねぇ」

「勝つのは僕だ。轟焦凍」

 

二人の間に火花が散る。教室中がざわめき、息を呑む音すら聞こえる。

 

「何だ何だ!?」

「男の因縁、だね」

「ばちばちのトライアングルや……」

 

切島が慌てて割って入り、「喧嘩腰はやめろよ!」と止めるが、轟は軽くその手を払い、ソロはただ一瞥をくれただけだった。空気がぴんと張り詰める。しかし、その沈黙を破ったのは意外にも緑谷だった。

 

「……君たちの方が、客観的に見ても実力は上だと思う。というか、実力なんて大半の人には敵わないと思うし……」

「おい緑谷、あんまそういうネガティブな事は言わない方が」

 

切島の言葉を遮るように、緑谷は拳を握りしめた。関節が白く浮かび上がるほどに力を込め、そして顔を上げる。瞳の奥には強い意志が宿っていた。

 

「でも!!」

 

まっすぐな声を上げる。

 

「皆、他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって、遅れを取るわけにはいかない!僕も本気で、獲りにいく!!」

 

その宣言に、轟はわずかに目を細め「……おお」と短く応じる。一方ソロは、獣めいた笑みを再び浮かべた。

 

次の瞬間、場内にアナウンスが響いた。

 

入場開始だ。

 

 

体育祭の幕が上がる。

観客の熱気と歓声が一気に押し寄せ、スタジアム全体が沸騰したように揺れた。

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る、年に一度の大バトル!!どうせテメーら、こいつら目当てだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!

 

ヒーロー科!!一年A組だぁぁぁッ!!!』

 

怒涛の歓声。

緊張で喉を鳴らす者、拳を握りしめる者、静かに深呼吸を繰り返す者。反応は様々だった。

 

やがてステージ上にミッドナイトが現れた。刺激的な衣装と妖艶な仕草。高校行事に出ていいのかどうかはさておき、観客席からの歓声はひときわ大きかった。

 

「選手代表、1年A組!福州ソロ!!」

 

その名が呼ばれた瞬間、A組の一部がざわつく。

 

「おい不味いぞ福州だ!」

「人格終わってても入試1位通過だしな」

「2位の人に交換してもらえよ」

「馬鹿言うな、2位は爆豪だ」

「なん……だと……!」

「おい殺されてぇのかモブども」

 

そんな声をよそに、ソロは静かに歩き出した。

だがその途中、普通科の生徒の一人が、わざと聞こえるように呟いた。

 

「1位って言っても、“ヒーロー科の入試”の、な」

 

挑発された。そう判断したソロの足が止まる。

ゆっくりと顎を上げ、目を細め、獣のように笑う。

 

「ハロー、負け犬。僕はその“国立雄英高校”の学力試験でも全教科満点を取ってるわけですけど、貴方は?」

「……は?」

「あれ?言葉が通じませんでした……?あ、そうか、負け犬だから犬語を使わないといけないんですね。これは失礼。うっかりです。わん!わんわん!わおーん!」

「何で態々喧嘩を売るんだ早く行けバカ!」

 

切島が慌てて背中を押し、ソロは壇上に上がった。

会場中が注視する中、マイクを手に取る。

 

「宣誓」

 

その声は張りがあり、よく通る。

 

「というわけで、はいどうも皆さまこんにちは!

雄英高校放送部兼すんばらしく優秀な生徒、入試No. 1の福州ソロでございます、どうぞ最後までお付き合いくださいね。

 

さてさて、本日ついにこの日がやってまいりました~。我々1年A組、艱難辛苦を乗り越え、誰一人欠けることなくこの場に立っております!いやぁ、奇跡ですね。だってあんな事があって全員生きてるなんて、ミラクル以外言いようがありません。

……まぁ、ちょっとぐらい減ってた方が話題性はあったかもしれませんけどね。残念ながら皆しぶとくて。ほんと笑っちゃいます。

 

そんなわけで!今日も我々はスポーツマンシップに則り、清く正しく!ええ、正々堂々と戦いますとも。どんな悪意を向けられようとも、アンチの声は右から左です。

ではでは皆さま、どうぞ暖かな声援を。拍手でも悲鳴でも罵声でも歓声でも大歓迎!

 

それじゃあ最後まで、血と汗と涙の青春劇場にお付き合いください!雄英体育祭、スタートですっ!」

 

『YEAH!!!!』

『うるさい』

 

 

完璧な礼をしてから、もう一度マイクを持つ。

 

「ではではでは、“1年A組”への応援!よろしくお願いしますね!」

 

そう言って観客席へウィンクを飛ばすと、特に若い女性層から黄色い悲鳴が上がった。峰田は唇を噛み、「ずりぃ……イケメンずりぃよ……」と呻く。

 

『こいつぁすげー声援だ!! 会場はもれなくA組の味方だぜぇぇ!!』

 

他クラスの生徒がうんざりしたように眉をひそめる。

 

そうして、体育祭が本格的に幕を開ける。

無数の視線と歓声が彼らを包み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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