レッドシューズからパク……譲渡された資料を読み漁りましたが、内容は彼女がペラペラと喋っていたペラッペラな思想の走り書きで興味が湧きませんでしたね。
ラプチャーと人類の共生。 本気だった様子。
不利でも未知からの"移民"を歓迎しようとした。
その為に侵食コードを使用。
奴らの"ルール"を秘密裏に弄り、勝手に取り入れて、私も仲間に入れてくれよ〜(マジキチスマイル)としようとしたというオチ。
ラプチャーからすれば、敵が勝手に己の組織弄って体内にブスリして仲間になろうとしてくるという、ナニそれ怖、近寄るなよ案件である。
尤も、ラプチャーに意思は無いとされるけど。
何にせよ、人類の破滅は身内で加速した。
そして向こうが多数派になれば、我々は先住民と呼ばれるようになるでしょう。
限られた土地に住む事すら許されない、駆逐されるだけの存在に成り下がりつつあります。
そう考えると、さて、我々人類の歴史において先住民と呼ばれる人達はどうなったか……例外があるとしても、それは希望的観測。 末路が見えるようで怖いですねぇ。
平時で議論になっていた移民問題、センシティブな話ですが、そんな的外れでも無いでしょう。 舞台規模が地球全土の戦場であって。
決定的に違うのは、交渉の余地が無いだけでなく、ナニがしたいのかも分からない、全くの未知という点でしょうか。
土地が欲しいのか、資源が欲しいのか、はたまた何者かの無差別殺戮、快楽殺人、破滅願望者の仕業なのか……。
圧倒的な未知。
それに無条件での信奉。 赦し。 命乞い。
困った時の神頼み。 救って、助けてくださいと。
レッドシューズや一部の人達は、そうやって破滅の運命に抗うのを諦め、だけど絶望を受け入れられず、歪んだ希望として自己解釈、破滅思想を伝染病のように広げてしまった。
人間、生物の本能的な力への畏怖ですかね。
雄大な大型獣だとか、神々しい輝きを放つ毛色の鳥やアルビノ種を祀り、祠や神社、像が世界中に建てられ、科学の時代に移っても信者はおり、お参りしたり何がしの恩恵にあやかろうとする、そんな感じに並ぶもの。
レッドシューズは研究者でありながら、ニケでありV.T.C.という宗教機関に属しておきながら、このような世迷言を……。
いえ、だからこそというべきでしょうか。
科学者とした世の理を学んできた知識人ほど、世界の不条理や不思議に気付き、疑問を持ち、解明出来ない物事に神の存在を見るのだと、何かで聞いたような。
しかし、ラプチャーが神とは思いたくない。
神だとしても人類の神ではない。 不必要です。
今現在、人類は追い詰められ、途方に暮れ、無力感に苛まれています。
その瞬間こそ羽化の時、進化の時……古い私は死に、ニケとして誕生、そしてリリスという人類の、勝利の女神をも手に入れた。
そうです。 そんな私がいる。
まだ神は死んでいない。
いや、死んでも次の私が上手くやる。
ニケもニンフも、侵食も私のモノ。
そんな『
何れも起源不明で得体が知れない未知の代物ですが、神秘の存在、神器として使わせて頂きましょう。
少なくともラプチャー信仰より健全、ヨシ!
レッドシューズと私は違うんです!
そして生きて、生きて、生き延びて。
あの子に会うんです。
あの子に……。
…………誰に?
「よぉナグサ先生。 また気難しい顔してんな」
声をかけられ、思想の海からサルベージ。
顔を上げたら赤い……髪。 レッドフード。
ああ、この娘もシューズよりマシですね。
「あらレッフー、診察ですか?」
「違ェよ。 てかなんだよ、そのレッフゥて」
「良いでしょう。 貴女もドロシーの事、お嬢様と呼び続けているではありませんか」
「まー、親愛ってやつ?」
「私もそうですよレッフーお嬢様?」
「それならレッフゥの方が良いぞ"
カラカラと笑うレッフー。
そうそう、貴女は元気が取り柄なんです。
そうして部隊のムードを明るくしてください。
「それで、どのような要件でしょう。 もしや拳銃を返しに来てくれたとか?」
「そんな訳ねーだろ。 返す気ねぇし、その事を謝る気もねぇよ。 でも、さ……私を助けてくれたのは感謝してる。 ありがとう」
何を言い出すと思えば……まだ気にしてる?
自分のせいで私が侵食を受けた事を。
「おやおや、レッフは可愛いですね」
「そんなに意外かよ!?」
だから話題を変えていきましょう。
また湿っぽい話をすると怒られそうです。
「まぁそれはね。 あなた、故郷でも随分と元気してたそうですし。 友人とだいぶ悪さしてたとも聞きましたよ」
「まぁ、そのせいか事故ってニケになったワケだけど。 まさか田舎の不良が、一転して勝利の女神様だもんなぁ。 似合わねぇって今も思ってるけど、人生って本当何が起きるかワカンねぇのな。 ナグサ先生もだろ?」
「そうですねぇ。 なんでニケになれたのか、どうして志願したのか、上手く思い出せませんが……でも後悔はありません。 お陰で大切な人達を救えた気がします。 こうしてニケの体、能力の取得という貴重な体験をさせて貰えてますし」
「しっかりしろよな先生。 アンタは息子の為にニケになったんだろ」
ああ、息子……そう。 息子でした。
あの子、顔がボヤけますが、まだなんとか。
「そうでしたね。 すみません、思い出しました」
「頼むぜ? ボケるには若すぎるって!」
「これも侵食のせいか……リセット作業で頭に銃弾を受けたせいか……」
頭をトントンと叩いて、おちゃらける。
でも真面目に捉えられて尋ねられた。
「それで、治療法は見つかったのか?」
やっぱ気になるんですねぇ。
やっぱ不良といっても優しいよ、この娘。
「まぁ曖昧ながら」
「おっ! マジか!?」
「短期製作、臨床試験なし、モニターもほぼ私だけ。 こんな有様故に確立したとはいえませんが。 既にラプンツェルや司令部にはデータを送りました。 認可され上手くいけば、侵食への恐怖は和らぐ事でしょう」
「さすが先生! スゲーじゃん!」
「貴女も1本如何です?」
「なんかそれ、危ねぇ薬の誘い文句みたいだな」
「タバコかも知れませんよ?」
「どっちにしろ医者が勧めるもんか?」
「怖いのですか?」
「やってやろーじゃんか!」
やっぱり騒がしくも面白い娘ですねぇ。
レッドフード……お可愛い事。
ここはダメ押しもしておきましょうねぇ。
「因みにリリスは打ちました」
「隊長が?」
「何ともないでしょう? 寧ろ彼女、強くなりました。 私もですが。 この調子で他のメンバーも強くなるでしょう。 勿論、ドーピングみたいで忌避感もあるかと存じますから任意で打って貰います。 打たなくても良いですが、その場合、他のメンバーより1歩遅れる形になるかもですねぇ」
「怖いくらい煽るなぁ。 何か裏ある?」
あるんだなぁコレが!
具体的には乗っ取りや洗脳。 不自然に見えない程度の洗脳……思考誘導もできそうです。
焼きそばパン買ってこい! と言わなくても、購買行ったついでにアンタのも買ってきてやったぜ、みたいな無意識での行動。
これにより周囲から悟られないという。
……我ながら怖いですねぇ。
でも隠し事をすると後が面倒だし。
悪女にはなりたくないのでネタばらし。
リリスにも言いましたからね。
「コレを打つと、私のニンフが体内に混ざります。 すると私がそのボディを乗っ取る事が出来るようになります」
「怖っ!? ナグサ先生、乙女達の体を弄ぶ気とか、職権濫用どころじゃないぞ?」
「それはシてから言ってくださいね。 それに打つのは任意です。 お任せします」
「むぅ……リスクはあるけど、背に腹はかえられぬってね」
結局、レッドフードも打つ事に決めたのだった。
よしよし、順調に私の世界は仕上がっている。
「ああ、そうだ。 ヤンチャな貴女と話していたら、1つの医療技術を思い出しましたよ。 それで打つ事にしましょうかねぇ」
「へぇ、どんな?」
「貴女も知っているものかと」
両手を合わせ、銃の形にし───。
「悪ガキ風に言えば、○年殺し、医学的には浣腸と呼ぶべき行為でして───」
「嘘だろ!!? 尊厳破壊も良いところだぞ、まさか隊長相手にもそんな事したのかよ!? 注射とかじゃないのか普通!?」
顔を赤らめ、自分の尻を両手で押さえる赤狼。
いやぁ……彼女のレア顔をまた見れました!
「……冗談です。 直接流し込む事も出来ますが、確実性を考慮し、ちゃんとした器具を渡しますよ」
「焦らせるなって……!」
「まぁ緊急時はそうも言ってられませんが」
「……ちゃんと予防接種は打つって!」
脅せば益々紅潮の赤頭巾ちゃん。
不良娘にも羞恥心。
赤飯はいらなそうやなって(激キモ)