父さん、ニケになるってよ。   作:ハヤモ

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血色/ミーム

 

 

「実に面白い」

 

 

部隊員のついで、人間である指揮官の血も採取、調べていたところ、驚くべき発見がありました。

その血液型は輸血に難儀する特殊なものでしたが、なんとこの血、ニケのナノマシン……ニンフを無力化、或いは変異させるときた。

 

 

「単なる偶然? 仕組みは? 利用価値は?」

 

 

次々と湧くはワクワクとドキドキ。

そこ次に湧き上がるは疑問。

 

なんであれ、この血の発見は大変大きい。

私はRh X型と呼称し記録します。

上手く凝縮、圧縮して加工すれば、侵食されたニケの治療に使えるでしょう。

私の侵食に頼らない、第2の手段として。

 

ただしその場合、そのニケはニンフを失います。

それに関しては……大変に面白くない。

 

ニンフは脳に作用し、記憶の管理や感情制御に寄与しております。 これを失うという事はつまり、戦場での恐怖心やトラウマを容易に想起させ、士気の低下や技能の喪失、それらによる戦闘不能、最悪は思考転換は無くても発狂して精神崩壊が起きる可能性が高まるという事です。

 

ニケの価値の低下。

洗脳や乗っ取りが出来なくなれば尚更に。

 

 

「"()()"……秘匿するべきですね。 でもいずれバレる。 それにこの特性を利用すれば、私の管理外にあって処分に困る存在を()()()できます」

 

 

レッドシューズが放った野良コード、それに侵されたニケの始末とか。

或いは、もしかしたらラプチャーにも有効?

いや、それは無いですかね。 奴らを機械生命体なんて呼びますが、ニケとは見た目が違えば構造が違う。

……心臓部のコアとか、一部は酷似してますが。

ニケの制作過程や材料は相変わらず謎です。

 

 

「一応、血液サンプルは後方に送りましょうかね。 指揮官の事は伏せておきますが。 永遠に瀉血、いえ、献血する羽目になりそうですから……今、ゴッデスから指揮官が抜けては悪影響でしょう」

 

 

そんな指揮官、アンダーソン君。

何者なのでしょうね。

雇われのようですが、昔は荒れていて、そこにリリスが来て大人しくなったとか。

愛の力って奴です。 愛ですよ愛。

私には無縁そうで。 あいや、部隊を家族のように想えば、その限りではなく。

あとは、そう。 人間時代の家族が……。

 

 

「……愛だ家族だに囚われたくは無いですが」

 

 

このオリジナルからは良い思い出が出てこない。

血の繋がった子が出来ず。

それでも愛した、向こうの連れ子がいた。

それでも血とは厄介でね。 心のどこか、本能の部分で我が子ではないと感じると、愛情が薄れる事がある。

野生動物の世界でも、自分じゃない子供を殺してしまうオスの話がありますが。

自分の遺伝子を残す上では、他人の子は邪魔にしかならない。 子がいる限り母は次の子を設けなかったり、世話をしなかったりする弊害がある為です。

人間もまた動物。 遺伝子を後世に残す上では、連れ子に良い感情は湧き難い(憎い)方も少なくないでしょう。

そんな子に愛情は注ぎ辛く、養育費だなんだと世話してやるのも嫌だという意見もあるやも。

母親としては自分が苦労して産んだ、己の遺伝子を受け継ぐ子孫ですから、男から子を守る義理はあります。

ですが女手1つで育てるのは困難ですし、そうした意味でも新しい男から好かれる方が大切だと思ってしまえば、子は最悪打ち捨てられ、育児疲れなども合わさり、食事などの世話を放棄、ネグレクトとした虐待に繋がり、挙句の果てに殺されてしまう可能性は十分ある。

それでも秩序ある人間社会を生きる上で道徳的に、社会的に仕方なく働き、義理でも家族を義務的に養う人も少なくないでしょう。

 

ご苦労だと思う。 立派だと思う。 偉いと思う。

人間やってる! できる存在!

格好良い! 使える優良人種! という感じ?

 

でも私は……紛い物の親。

 

血も体も偽物で、人に後の世話を押し付けた。

ニケという機械になり、子を2度と作れない。

私の血は未来永劫に途絶え、他人の踏み台となり生きるしかなくなった。

 

それでも受け継がせるモノがあれば、それが私の子となろう。 武器装備とした形のある物から、思想、技術、伝承といった言伝であれ。

 

利己的な遺伝子、ミーム。

子を産めないニケに残された道。 脳から脳へ伝達される仮想の遺伝子。

 

ゴッデスという栄光だけでは足りない。

ナグサという個体が群生の中で強く残るには、より強い遺伝子が必要だ。

それが私の侵食コード。 1人でも多くのニケに感染すれば、それだけ私の遺伝子は受け継がれ、私という存在は皆の中で生き続けてくれる。

私のボディの再生力は凄まじいけど、不老不死とは限らない。 万が一もある。 その保険も兼ねて、私の研究や行動は重要だ。

永遠に生きたい訳じゃない。 ただ皆の心に残り続けたいだけ。

生きているかどうかも分からない、血の繋がらない息子の為にニケになったのは生物の遺伝子的には愚行だったが、お陰でより永く遺伝子を残せる道が拓けた。

それに関しては感謝しなければならない。

 

 

「今は人類が、ニケが生き残らねば」

 

 

でなければ、私は滅んでしまう。

最終的には何処にでもいて、何処にもいない上位存在になりたい。

だけど、その器たるニケが滅んでは困る。 だから頑張る。 人間が絶滅しないように。

 

アークという避難所となる地下都市がありますが、あれも建設中ですし、完成前にラプチャーに破壊される可能性は十分ある。

楽も油断も出来ない、という事です。

 

 

「……息子も生き延びれば良いですが」

 

 

結局、そう呟いてしまう私。

記憶が擦り切れていっているというのにね。

 

愛というのも厄介です。

私を裏切った遺伝子(ゴミ)に利用されているというのに、存在意義が満たされているように感じてしまう。

 

それは私が作られた存在、ニケだからか。

はたまた、"()()"に囚われた奴隷故か───

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