父さん、ニケになるってよ。   作:ハヤモ

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家族の器

紅蓮が仲間になった。

銃火の中、刀を佩く時代錯誤のニケである。

他の隊員同様、黒いラバースーツのような服で身を包み、紅い刀剣を振る者だ。

 

しかしながら、今日まで生き延びてきた技量は伊達や酔狂で研がれていない。

鋼鉄をも割く切味と、大群も翻弄させる韋駄天の剣士は原隊解散後も健在であった。

リリスが唐突に連れてきた際は困惑もあれど、確かな戦力に期待を寄せる。

 

……まぁ好戦的な堅物の印象は受けますが。

弱い奴の下には付きとう無い、己がどれくらいの立場か、上下関係をハッキリさせたいからと隊員それぞれにタイマン勝負を仕掛ける脳筋具合ですからね。

 

そして、ドロシー以外には敗北。

リリスには語るまでも無くワンパンにされ。

ラプンツェルとは座禅勝負、我慢比べで負け。

スノウには武器組み立て速度で負け。

レッフゥにはかくれんぼで負け。

私にはトランプで負けました。

そしてドロシーには腕相撲で勝ちましたが。

 

 

「そんなに踏ん張ったら、う◯こ出るぞ」

 

「ぶふっ!?」

 

 

観戦していたレッフゥの横槍で気が抜けてしまい、その隙を突く形で勝利。

大人しくしていれば美少女の部類に入るレッフゥですが、油断していると下品な言葉を使ってきますからねぇ。 改めて不良の出立ちであると認識させられるばかり。

 

さても、これら勝負で分かった事がある。

彼女は強い。 間違いなく。

リリスの速度や力に対応出来ないが、レッフゥが紅蓮を近付けさせないように使用した対物ライフルの弾丸を見極めて、タイミングを掴み始めると、弾丸を斬って見せる反射神経と剣のコントロール。

座禅では途中で眠ってしまうが、ずっと構えが綺麗だったと評価するラプンツェル。

スノウが銃火器を人外な速度で組み立てた事には驚愕していたが、途中から作業を目で追い、次のパーツに視線を這わせ、その先を読める頭脳と判断力。

リリスに次ぐ力を持つドロシーと拮抗できるほど、単純な腕力に依らない上手な体の使い方。

 

そして私とのトランプ勝負では───

 

 

「まるで心でも読まれてるかのようだ。 確実に欲しい札だけを取っている。 ナグサはイカサマでもしておるのか?」

 

 

などと疑われました。

まぁ都合良すぎましたからね。

そして事実、私はイカサマをしております。

 

彼女には勝負前に礼儀だなんだと言い訳し、握手して感染させておきました。 本人に自覚は無いでしょうが、これでニンフ越し、私の傀儡とできます。

 

今は視界ジャック中とでも言っておきましょう。

ニンフ越し、乗っ取りまではいかずとも、意識を向けた相手の視界を盗み見る事が出来ます。

私の視界と被ると視界酔いを起こすので、目を閉じて使用するのが好ましいですかね。

そして瞼の裏に映るようにして、紅蓮の視界が脳裏に投影される。 そこには彼女の手札が丸見えとなっています。

 

 

「心外ですねぇ。 被害妄想ですよ」

 

「ふむ……」

 

 

煽ってみると、紅蓮も目を閉じた。

そして札をシャッフルして私に取るよう促した。

 

ざわ……ざわ……と、心がざわつかます。

 

本当、観察力というか、鋭いのは刀だけでは無いようですねぇ。

 

 

「どうした? 先程より手が鈍っておるぞ」

 

「むぅ」

 

 

ニヤつく紅蓮にイラッとしつつ1枚取った。

……全然欲しく無いカードでした。

 

 

「ナグサのいう、他者を傀儡にする能力とやらは万能ではないようだ。 ここからが真剣勝負だな」

 

「そうですねぇ」

 

 

などと思っていたお前の顔はお笑いでしたよ。

私は別の能力、思考誘導を発動するのみ。

 

紅蓮に念を送り、カードの並びを決めさせる。

本人に操られているという自覚は無い。

自分で考えたと思い込み、ニヤニヤと私にカードを晒し出す。 無防備に。

後は私に好きなだけ抜かれるのみ。 そして勝負は私の勝ちと相なった。

 

 

「また妙な術を使ったな?」

 

「先程から酷い言い掛かり。 そんなに私の事がお嫌いなのですか?」

 

「そうだな。 姉さんを操られて良い感情は無い」

 

「やむを得ない処置でした。 謀反を起こし、隊を壊滅させた首謀者ですよ?」

 

「だとしても私の姉さんだった。 貴様には家族がいないのか?」

 

 

家族?

いましたよ。 碌でもない、ね。

 

 

「そんなの、ニケになって生き死にを繰り返す内に忘れました。 大切なのは今ですよ。 貴女もでしょ? なんでしたら量産型は私達より人間の記憶が無い筈ですが」

 

「確かに人間であった頃の記憶は無い。 家族であった事も姉さんが教えてくれただけに過ぎない。 だが苦楽を共にした仲間だ。 それだけでも家族といえなくもない」

 

「苦しい思い出しかなくても言い張れますか?」

 

「無論。 唯一無二、同じ釜飯の仲だ」

 

 

本当ぉ?

コイツのニンフを弄って辛い記憶だけを残し、後を消してやりましょうか?

……冗談ですよ。

 

 

「家族とは、紅蓮にとって何者ですか?」

 

「共に過ごす、かけがえの無い仲間だ」

 

「血の繋がりは気にしませんか?」

 

「些細な問題だ。 ナグサは随分と拘りを持っているように思えるが、何かあったか?」

 

「いいえ、ただの興味本位です」

 

「……そうか」

 

 

ひとまず紅蓮との勝負と問答は幕を閉じた。

後は同じ部隊として歩むだけ。

 

 

「まぁなんです、ゴッデスへようこそ」

 

「認めよう。 そして家族とまで言えるように馴染む日が来る事を願う」

 

 

大丈夫。 貴女は別の意味では家族です。

私のニンフが入った残機(うつわ)としてね。




お前も家族だ(ファミパン風
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