スノホワがシミュレーションを制作しました。
その名をMEMORY OF GODDESSという。
略してMOG。 可愛いですね。
ラプチャーに囲まれた際を想定、状況への対処能力を高めるのを目的とし、シミュレーション内では迫り来るラプチャーをひたすらに捌き生き残れるよう振る舞います。
これから行われるであろう決戦においてはどうなるか分かりませんが、敵の本丸に飛び込む以上、想定される事態の1つには数えられるでしょう。
だけど、ピコピコ音声やドット風のキャラや敵といい、ゲームといって差し支えないクオリティかも。
実際、レッフはゲームじゃんといいました。
スノホワは否定しましたがね。 そんなスノホワはゲーム内で自身のキャラを美化しているというか、大人びた、寡黙キャラになっていますが。
そういう設定に憧れているらしく。
分かりますよ。 子供が想像する理想の大人像の1つです。 現実は悲惨ですが、まぁ夢を持つのは自由。 故に微笑ましい。
でも人の夢と書いて儚いと書きますからね。
こんな世の中。 未来へ期待するのは……いえ、きっと大丈夫。 大団円を望みましょう。
何せ私達は勝利の女神。 希望でなくてはね。
だからこそ形にしなくては。
自由の征服、平和の支配。
誰もが私を記憶する、永遠の形を。
閑話休題。
このMOGにおける私ですが。
火力に劣るサブマシンガンをばら撒き牽制しながら、ラプチャーをハッキングモドキ……都合良く侵食させて、何処をどうしてか味方に引き摺り込み、同士討ちさせる特殊キャラ扱い。
回数制限はありますが、治療による回復も可能とし、慣れると単体でも無双できるという。
スノウは「ナグサお姉ちゃんは強いですから!」とニコニコと語ってくれました。 可愛いですね。
非現実性で過大評価ではありますが。 私、リアルでそこまで立派では無いでしょうに。
改めてゴッデス内での序列や評価が気になるところですよ。 あいや、私の野望に沿う形の内は最下位でも構いませんがね。
一方、リリスは操作キャラになく、ボムのようなアイテム扱いという。
なんでも強過ぎるからだとか。
それには同意します。 元々強かったのが侵食で更に強化されている筈。 正攻法では誰も敵わないでしょう。
故に気になってしまった。
今、"私の
なので私はスノウの無意識を操り、シミュレーションルームを製作。
椅子のような装置に座り脳スキャン、仮想空間でドンパチできる仕様。
今は真っ白で殺風景な空間のみの出力ですが、そこにリリスを呼び、戦闘力を計ります。
「リリス、私と対戦、宜しくお願いします」
「うーん……あまり気乗りしないわ」
「これはシミュレーションです。 本当に破損する事は無いので遠慮なく。 私もサンドバッグになるつもりはありません」
「そう? それじゃ、恨みっこなしで!」
「ええ。 お互い様に」
刹那、瞬間移動かと見間違う程の機動力で接近してくるリリス。
認識する頃には、彼女の拳が腹を貫通。
腹に大穴が空いてしまい───
「私じゃなきゃ、これで終わりでしょうね」
瞬間、大穴が塞がる。
リリスの片腕を腹に収めたまま。
「これで逃げられ───」
リリス、もう一方の手で手刀を喰らわす。
半身が吹き飛び暗転。 けれど直ぐに復帰。
リリスとは距離が空いている。 普通に私を解体して距離を取ったようで。
「容赦ありませんねぇ。 手心は無いので?」
「折角の機会ですもの。 多少強めにしないとね」
人をバラしておいて、多少ですかぁ……怖ッ。
やはりリリス、最強のニケの称号のままに。
「次は私から行きますよ」
「来て。 今のナグサを見せて頂戴」
目を閉じ意識を集中。
そして───リリスのボディを乗っ取ります。
目を開けたら、"
「シミュレーション内でしたが、今回も上手くいきましたねぇ」
リリスの声のまま、細くしなやかなリリスの白手袋の手を開け閉めし、この事実を噛み締めながら感傷に浸る。
その内に脳内お姉様こと本体のリリスが文句を垂れてきました。 然もありなん。
「(ちょっとぉ、これは反則じゃない?)」
「リリスに勝てる者はいませんよ。 私含めて」
「(そう? こうして勝ったじゃない)」
「反則勝ちでしょ? 他にも方法が無いわけではありませんが」
「(例えば?)」
「腹パン食らったタイミングで、私と擬似的に1つのボディとみなし、コアエネルギーを停止させるか、ボディごと吸収してしまうなど……どちらにせよ、殴り合いで勝てませんよ」
意識を再度集中。
リリスに体を返し、私は元の体に戻ります。
……やはり、修復する元の体が良く馴染む。
「どこかの格闘アニメのようなドンパチをしたくはありますがねぇ。 憧れは理解から最も遠い存在らしいのでね」
「その気になればできるんじゃない?」
「……まぁ、人の想像は実現できると述べた人もいるようですし。 試してみますか」
目を開けたまま、意識を自身に集中。
髪の毛の先から爪先に至るまで巡らして。
そして───
「後ろですよッ!」
ほぼ瞬間移動のように、リリスの背後へ。
そのまま発勁モドキ……張り手を喰らわした。
「ッ! やればできるじゃない!」
驚きながら吹き飛ぶリリス。
けれど本人はケロリとしている。 空中で姿勢制御、拳を地面に叩きつけ威力を殺して停止……したと思ったら、切り返しに突っ込んでくる!
「そこから反撃してきますか」
「その方が好きでしょ?」
「まぁ、はい」
飛んでくる拳、手刀、足払い、掴み技。
強化されたリリスのフルスペックスピード。
音も思考も置き去りにした、超常的速度。
でも不思議と相手の動きが読めてしまう。
たぶん侵食技の情報の盗み見の1種ですかね。
思考しない、だけど無意識の内に動きは決定され、それを動作にするまでのラグ。 それをニンフが認識し、私に情報を送信、体がごく自然と動いてしまう。
バシバシバシィ!! と、攻防を繰り広げる手足同士がぶつかり空気が擦れ、轟音が響くも、段々と防戦一方になっていく。
リリスが。
「おや。 おやおやおや。 どうしましたか、手加減ですか。 拳の観察ですか。 さすがは隊長。 私なんか余裕ですね」
「その逆、よ……! 格闘技に心得がなく、今始めたばかりで、こんな動けるなんてね!」
段々と息があがり、衝撃を逃しきれず怯み始め、足が蹌踉け、押されていくリリス。
ふむ……これもまた然もありなん。
リリスの弱点、稼働時間の短さ。 圧倒的な力を保持、行使するも、長くは使えない。 無理をすればオーバーヒートを起こします。
かくいう私はリリスより侵食が馴染み、相性が良いようで。 こうしてリリスと遊べるだけの力があるものと愚考します。
けれどボディ強度は相手より軟弱か。 相手のパワーで千切れそうになっては自動修復が働き繋ぎ止めます。
……お互いに素晴らしいが、花の命は短いもの。
そして奇しくも私とリリスは花の名を冠します。
お互い、そういう運命なのでしょうかねぇ。
でも、こうして出会えた。
故に抗う。 生花で終われない。 ドライフラワーでも押し花でもして、この美しさを保管したい。
そして皆に永遠に愛でられ、記憶される花であれ。
そして絶対に。 絶対に誰にも忘れさせない。
貴女も、私も。 皆の中に保管する……!
刹那、鈍い痛みが腹部に走る。
「ッ!」
リリスの手刀に込められた衝撃波が腹を貫通、私は真っ二つに。
転がる私。 息も絶え絶え、汗をかくリリス。
遅れて視界の隅で崩れる、私の下半身。
「はぁはぁ……持久力はナグサが上ね。 そしてごめんなさい、水を挿す形になっちゃった」
「謝らないでください。 実戦でしたら無遠慮に衝撃波を放つべきところ、リリスは配慮して格闘に付き合ってくれた。 ありがとうございます。 仮想空間とはいえ、貴重な経験でした」
「優しいのね」
「リリスこそ」
刹那、暗転。
再び視界が開けたら、そこはシミュレーションルーム。 私とリリスは隣り合って横になっていました。
設定された稼働時間を超えて、現実に戻ってきたようです。 ううむ、オリジナルのMOGとは違うリアルな仮想空間でした……。
「あー、楽しかった!」
笑顔で伸びをするリリスに、私は苦笑するしかない。 擬似的に殺し合った後でコレですからね。
「ナグサ、またやりましょ!」
「はは……ならば現実を生き延びましょうか」
「ええ。 お互いに」
最後に握手を交わし締めとする。
これもまた、保存したい思い出の1つです。
決して消させはしない。
代わりに寂寥感は消えて貰う。
コードに我々を刻み、全て1つになるのです。
そして皆の中で生き続ける。
そうして私たちの生きた証は残り続ける。
未来永劫、永遠に……。
ナグサはリリスに対抗できないとしたかったですが、ここはやり方次第、相手次第という事に