父さん、ニケになるってよ。   作:ハヤモ

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復讐の魔女

私たちゴッデスの拠点である飛行艇、勝利の翼号は第3ニケ研究所へ向かう。

そこにいる第2世代型フェアリーテールモデルの1体、シンデレラを迎えに行く為です。

 

第2世代は私たち第1世代のデータを参考に製造され、単純なスペックなら私たちを超えています。

シンデレラの場合、戦略爆撃に匹敵するほどの殲滅力を誇る武装『ガラスの靴』を装備し、短期決戦/殲滅型としての運用が想定されている。

また、部隊の中では最も好成績であり、エイブ博士の最高傑作。 故にゴッデスとの共闘に選抜された形です。

あの気狂いな侵食研究員、レッドシューズが執着していただけはあるのでしょう。

他にも隊員がいるのですが不参加。 アークへの避難、防衛時における戦力として温存しておきたいという上層部のビビりですね。

 

……あと、赤靴の事件の影響もありますか。

不信感から、監視されて辛い中でしょう。

人類の希望の筈が、敵として疑われている。

おお、おいたわしや第2世代。

 

分かりますよぉ。 信じていた家族からの裏切り、想像を絶するでしょ? 苦しいでしょ?

涙も流した筈です……!

たまたま家族の1人が悪かっただけで、全員が悪党として扱われ、非難され、罵詈雑言を浴びせられて他人の憂さ晴らしの捌け口にされ、社会的な地位を失い、凋落して先が見えない暗黒の時代……!

 

かくいう私もそうでした。 クソ女に騙され人生を狂わされましたからねぇ!

後に残されたは根も葉もない悪評と行方知らずの、血の繋がらない息子だけとは救いが無い。

エイブ博士たちと私は似た者同士ではありませんか。 赤靴とは違い、我々は仲良く出来そうです。

 

汚名を雪ぐには結果を出すのです。 共にね!

それが赤靴への復讐ともなりましょう!

復讐は虚しいとか更なる犠牲が出るから良くないと言う者がいますがね、無駄な話ではありませんからねぇ。

復讐は己の運命に決着をつける為にあります。

区切りは必要です。 未来に進む為の儀式です。

私もその意味では、復讐街道の先輩ですよぉ?

なんたって、人として遺伝子を後世に残せなかったんで、代わりにコードを、ミームを永遠に残そうとしているのですから!

 

……まぁ士気は高いといえないのですが。

人類の命運を賭けた博打なので是非頑張って。

 

 

「ナグサ」

 

 

指揮官にお呼ばれしました。

なんですかね。 私を危険視しての説教です?

 

 

「はいはい、ナグサですよ。 何でしょう?」

 

「上の連中が君を研究所へ先行させろと言ってきた。 この意味が分かるか?」

 

「第2世代型を侵食させて強くしろと」

 

「そうだ。 形振り構ってられないんだろうな。 だが第2世代型の開発者、エイブ博士は君の能力に懐疑的、侵食を拒否している。 当然だろう、侵食研究で人類を裏切っていた、レッドシューズの件があったからな」

 

 

でしょうね。

何ら不思議ではない。 寧ろ当然の反応。

上の命令とはいえ無理強いは駄目ですねぇ。

 

 

「でもシンデレラはどうでしょうねぇ。 かの者は強火のゴッデスファンガールです」

 

「調べたのか?」

 

「調べたという程でもありませんが。 彼女、ゴッデスの活動記録を飽きもせず、欠かさずに見ているほどの信奉者だそうですよぉ。 ゴッデスの皆が既に侵食済みならば、盲目的に是非自分もと進んでくれるものかと」

 

「事件の後だ。 そう単純ではないだろう」

 

「確かに逡巡くらいはするかも知れません。 だとしてもこっそり仕込みますよ、得意分野です」

 

「味方すら騙さなきゃならないのか」

 

「それが私を形作っています。 卑怯、女郎、結構。 そうさせた連中に1発くれてやれるのなら尚更に」

 

「……後始末をする身にもなってくれ」

 

「人類に後始末をする余裕があるとでも?」

 

「分からんぞ。 今回の作戦でクイーンを倒して戦争が落ち着けば、復興を嫌でもしなきゃならないだろ?」

 

 

それはまた、随分と希望的観測で。

私は上手くいかないと考えていますよ。

仮にクイーンなる存在がいたとして、それを倒せたとして。 本当に戦争が終わると?

ラプチャーの正体もよく分からないのですよ?

第2、第3のクイーンが出るオチもあり得る。

生きて地球の大地を拝めるとも限らない。 だから保険を私は残していく。 侵食コードという保険をねぇ!

最悪、宇宙の藻屑になるとしても『次の私』が上手くやるでしょう。

 

私は肩を竦めて、おどけて見せた。

 

 

「生きてる限り、働かせる気ですか」

 

「当然だ……正直、俺だって休みたい」

 

 

おいたわしや指揮官。

ゴッデスに安息の日は訪れるのでしょうか。

 

 

「部隊がヤンチャですからねぇ」

 

「お前に限っては侵食を広げる問題児だ」

 

「必要だからしているまで」

 

「……で、どうする? 研究所に行くのか?」

 

「それこそ当然。 "()"の器は多く強いほど良い」

 

「当然なのか……まぁ良い。 どうせ駄目だと言っても、どこかのタイミングで侵食させるんだろう」

 

「よくご存知で」

 

「仮にも指揮官だ、皆の事は見ているつもりだ……本当ならナグサ、お前を封印するべきなんだがな。 そう悠長に言っていられるほど、今の人類に余裕は無い」

 

「これまたご存知で。 ええ、その温情に全ての私が感謝しましょう。 きっとご満足頂ける結果を……とまで約束できないのが憎らしいですが」

 

 

約束しても良いんですがね?

所詮口約束。 約束は破る為にあるんだとか適当に屁理屈並べて、惨めに敗北するのも味があります。

その後、うっかり生き延びた隊員と再会した時が気不味いから、やりたくないだけで。

……色々手遅れでしょうけど。

 

 

「……先に輸送機で向かってくれ。 直ぐ追いつくから、それまでに向こうとナシをつけるように。 俺は一応止めたからな」

 

「そんな口約束、()()が効くとでも?」

 

 

そうして私はひと足先にシンデレラの元へ。

待っていてくださいシンデレラ。

貴女を出迎えるのは王子様ではありませんよぉ!

かといって良い魔女でもありません!

その逆、ゆくゆくはになれる悪い悪い魔女の魔法をぶっかけにいきますからねぇ!

 

……まぁ強くなる意味では良い魔法でしょうか。

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