侵食を受けたエイブ並びに次世代の皆様方。
思考誘導を受けた事で、ホストである私は拒絶される事はない。 そのままシンデレラとの謁見となりました。
白銀の長髪ツインテールに美しい翡翠の目。
色白でしなやかなボディながら、でるところは出ている曲線美。
その身体に張り付くようにして、レオタードのようなぴっちりスーツを着用しているときた。
……エイブの趣味かな?
さても興味を惹かれるは周囲に浮く専用武装ガラスの靴。 盾のようにも見えるソレらは彼女を囲むように4枚浮いていた。
白い外枠の内側に、ガラスを思わせる青いハニカム構造体が輝きを放っている。
ここや先端から大量のビームが雨霰と発射され、大多数相手に凄まじい殲滅力を誇るらしい。
1つの脳だけで全てを制御するのは大変だと思うので、ニンフや兵器内部のコンピュータ類で補助されていると思われますが……その異質な力をもって防衛網に風穴を開けさせ、ゴッデスを支援して貰う手筈。
「初めまして……! ゴッデスのナグサに会えるなんて、とっても光栄よ」
「こちらこそ、シンデレラに会えて光栄ですよ」
よしよし、侵食が効いてますねぇ!
シラフでしたら拒絶されていた可能性あり。
いくら私たちゴッデスの強火ファンとはいえ、何もかも盲信する厄介オタクという訳ではないでしょうからね。
「色々心の整理はついていないかも知れませんが、共闘時は宜しくお願いしますね」
「ええ。 最善を尽くすわ」
「必ずやクイーンを倒し、ハッピーエンドを迎えましょう。 その為に童話の人物の名を与えられているのですから……その意味では、リリスと私は少し異なりますが」
紅蓮も、と思いましたが。
彼女もまた、何かしらのお話に出てくる人らしいですからねぇ。
知名度はどうであれ、羨ましい限りですよ。
……欠番の1号機の名前は……どうだったか。
「そんな卑下する事はないわ。 どちらも花の名前。 美しいと思うわ」
「ありがとうございます。 シンデレラもとても美しいですよ」
私は白百合ほど立派じゃないですがね。
でも童話本に挟まれる押し花程度になれたらと思いますよ。 言いませんが。
謙遜も過ぎれば嫌味ですからね。 今後、共に作戦を遂行する上で、余計なギスギスはしたくない。
侵食しているとはいえ、無理な思考誘導は本人や周囲に不自然に思われるかも知れませんからねぇ。
「嬉しいわ。 エイブが頑張ってくれたの」
「資料には目を通しました。 専用武装ガラスの靴。 凄まじいスペックですね」
「ええ。 実戦はまだだけど、シミュレーションでは1番の成績。 だからゴッデスとの共闘に選ばれたの……必ず役に立って見せる」
「きっと皆さんも喜んでくれますよ……その、ところでなのですが」
「なにかしら?」
「その格好は破廉恥というか、大胆というか。 他の隊員も? エイブの趣味?」
「? 機能美溢れる姿だと思うのだけど……」
つい聞いてしまいましたよぉ。
ハイレグというかレオタードというか。
だけどヘソだしというか、痴女というか。
でも本人はケロリとしております。 たぶん舞台(部隊)衣装感覚なのでしょう。
或いは彼女の言う通り、機能を十全に働かせるには最適の格好なのかも。
……認めたくないものですがねぇ。
「失礼しました。 データを見る限り疑いようのないもの。 ですがつい聞いてしまうのは私の悪い癖。 どうか、お目溢しを」
「気にしてないわ。 そう言うナグサの軍服姿も素敵よ。 リリーバイスに対となるようで美しいわ」
「こそばゆい想いです」
童話型の末っ子、それも半端者な試作機としては、色々思うところもありますが。
……なんで私、試作機なんでしょうね。 ナニを目的として作られたのか。
あいや、男性脳のニケという異端を封入する器である以上、あらゆる面で未知数だからという事なのでしょうが。
シンデレラのように光り輝く者が羨ましい。
彼女もまた、辛い過去があるかもですけど。
「……シンデレラは何故、ニケになろうとしたのですか?」
「人々が、世界がラプチャーのせいで醜くなる事に耐えられなくて、無謀に挑もうとした時があったの。 その時、偶然にもゴッデスに助けられた。 その背中がとても眩しくて、美しくて。 私もそうなれたらって志願したわ。 ナグサはどうなのかしら」
「私は碌でもないですよ。
「貴女から直接聞きたいわ」
「……本当に碌でも無いんですがね。 連れ子のいる人と結婚したのですが、借金と子供を押し付けられて、その人は金持ちの所へ行ってしまい。 挙句に離婚や借金は私の暴力や素行が原因だと嘘の悪い噂まで流されて仕事が無くなって。 だけど罪の無い息子まで苦労するのは間違いだと思いましてね。 金の工面をする為にニケ化実験に参加、契約金の宛先を全部息子と預け先にしたんですよ。 私は生きて帰れないと思っていたのですが、何の因果か手術は成功、助かってしまい今に至ります。 とはいえ未だ息子とは会えていません。 アークに避難出来れば良いのですが」
長々と話し終えると、シンデレラは閉目。
だから碌でもない、詰まらない話で───
「美しいわ」
……はい?
「血の繋がらない息子さんの為、愛の為に尊厳も命も投げてニケになり、人類の為に戦い続けているのね。 とても美しい物語よ」
そういう解釈もあるんですか、たまげたなぁ。
「誰にも語られる事の無い、綺麗な童話と比較にもならない、早々に忘れるべき泥臭さですが?」
「そんな事ないわ。 経緯はどうあれ、自分の道を突き進んでいるもの」
「茨の道ですねぇ」
「その道を進める貴女は美しいわ」
傷だらけなんですがそれは。
なんなら死んでは生き返るを繰り返しています。
それに裏話を知れば褒められないですよ。
己を保存する為に、私は人を利用している。
侵食という禍々しい技術を応用している。
そして、私という種の保存に邪魔な存在、
色んな意味で信用性に欠ける、それが私。
「……もう直ぐゴッデスが来ます」
「ああ、緊張するわ……胸が張り裂けそう!」
だから……そんな"
私は
……その目は崇高な存在に向けるべきですよ。