クイーンは斃れた。
女神が倒した。
……そのはずです。
ゴッデスの総攻撃を受けて瀕死になった奴のボディを、私が至近距離の短機関銃フルオートで粉砕しました。
美味しいところだけ持って行った形ですね。
地上に送り返したゴッデスの皆さんには申し訳ないですが、諸事情です。 許してください。
感染者を隔離する意味でも、凱旋で肩を堂々並べる資格がない意味でも、旅路はここまでが良いでしょう。
「はてさて、これからどうしますかね」
宇宙ステーションは崩壊。
軌道エレベーターも接続が切れ、私のいる大きめの部分は地球軌道上を漂うデブリと化しました。
空気もなく、無重力。 人間なら宇宙服もなしに生きれない過酷な環境。
ですが私は幸運にもニケ。
いや、ニケのようなナニか。
息ができないのに、違和感なく息ができている感覚があり、気温すら適温に感じられます。 ボディとニンフ君様々ですねぇ。
一部の外壁やナニかしらのパーツは地球に落下していますが、大気圏に突入して流れ星となり燃え尽きるかも。
もはや同じ道では帰れません。 でも中々デカい宇宙ステーションですからね、脱出ポッドの1つや2つはありそうな気がします。
そうでなくても、ここにあるパーツを何とかすれば地球に帰れるかも。
私のボディなら、大気圏突入にも耐えるかなと無謀な考えが過りましたが、確証もなしに燃える訳には参りませんねぇ。
そもそも、地上に帰ってどうしろと。 アーク防衛や息子探しは地上に帰ったゴッデスや量産型を利用すれば良い。 侵食ネットワーク越しに把握し、必要なら意識を飛ばして手頃なボディに乗り移れば良いでしょう。
クイーンは残骸となり足元に転がります。
が、しかし。 その残留思念的なのが私に入り込み、時々囁くのです。
ゴッデスを倒せ、アークを壊せ、と。
私の知識から述べているようで。
逆にこちらからクイーンの情報にはアクセスできないとか理不尽。 無許可で一方的に抜かれるとかプライバシーの侵害ですよ。
あ、コレはブーメランでしたねぇ……ラプンツェルの脳内を見た時が思い出されます。
アレはピンク頭で聖女ならぬ性女でした。
人間時代の禁欲的な生活の反動なのでしょう。
ナノマシンのニンフがアレコレ最適化しているはずが、その領域は曖昧。 そうでないと個体差が生まれる理由に説明がし難い。
寧ろ本能的な欲求が増大した可能性すら疑えます。 戦場など、心身に大きな負荷かかると、生物は種の保存の欲求が高まると聞いた事がありますが、その事例の1つではないでしょうか。
閑話休題。
今回の件でクイーンやラプチャーの正体が分かれば良かったのですが。 そうしたら、その情報を地上に送り、ゴッデスや生き残った人類に後を託して、私は宇宙から高みの見物なのに。
「とにかく、脳内女王様を飼ってしまった以上、地上に戻れても戻らない方が良いかも知れませんが」
独り言をブツブツ言いながらも、意識を地上へ送れるか試みます。
……何とかナグサちゃん侵食ネットワークの検索に引っ掛かりました。
宇宙からもアクセスできるとか凄い。 伝達速度も気にならない。 有効範囲が気になってきましたが、何とか平和利用すれば新しい通信技術になりそう。
……門外漢ですが。 光通信や量子もつれ云々を利用する方法とか、他にも研究分野を含めればより効率が良いものはあると思います。
えーと……。
最寄りは軌道エレベーターのゴッデス。
その次に陽動に使用された量産型の生き残りですね。 それも五体満足の機体は少なく、だいぶ数が減っています。
しかし、そうした弱い機体を私は求めていない。
情報収集の意味でも価値は低い。 やはり利用するならゴッデスの誰かが理想ですが……視界ジャックで様子を見ましょう。
「リリスはオーバーヒートで気絶しているでしょうし、レッフ辺りが良い塩梅ですかね」
侵食コード越し。
私の発言や行動で曇り、動揺した心境を味わい、それに愉悦を覚えながらも、レッフの視界を共有。
忽ちFPS視点のゲーム実況を見ている気分に。
……どうやら軌道エレベーターの麓辺りから、ラプチャーの包囲網を抜けて皆と共に撤退行動中のようですねぇ。
「くそっ! あの馬鹿、形見を押し付けやがって!」
早速開口1番、不良娘に馬鹿呼ばわりですか。
しかも、さも死んだみたいな扱いですよ。
まぁ否定しませんよ。 似たものです。
それに地上に帰らず、一方的に除隊したのも私的な理由、一身上の都合という奴ですし。
指揮官の叫び声が聞こえ、皆の声も続きます。
「全力で撤退だ! 量産型の部隊はほぼ壊滅している! 包囲網が直る前に抜けないと袋叩きだぞ!」
「くっ、リリスを担ぎながらでは走り難いな」
「ガラスの靴、フルコンタクト……! ゴッデスを、これ以上失う訳にはいかない!」
「お姉ちゃん……ナグサお姉ちゃんが……!」
「きっと会えます。 今は此処から離れるのです」
後ろ髪を引かれる思いのまま、何度も振り返り、涙目で空高く見上げるスノウ。
リリスを担ぎ、仲間を信じ走り続ける紅蓮。
他のメンバーは今は生き残る事だけを考えろと言わんばかりに走り抜けている。
道を塞ぐ邪魔なラプチャーは、レッフが走りながら射撃し直線上を薙ぎ払う。
ドロシーは左右から迫る波濤をフルオート射撃で牽制、距離が詰められる速度を遅らせる。
シンデレラは謎技術のまま空中飛行、ガラスの靴を展開。 残りのエネルギーを放出し、ラプチャーを広範囲に渡り破壊すると同時、囮役となり時間を稼ぐ。
うんうん、流石ゴッデス。
私なんて居てもいなくても変わらない。 寧ろいない方が上手くやれる部隊です。
初陣にして敵本陣で暴れ、今なお重大な戦局で戦うシンデレラも優秀です。
皆さんには、侵食によるスペックの底上げを施しましたが、それが無くても上手くやれていたでしょう。
リリスは……まぁ侵食がより馴染めば、稼働時間の短さも改善するかも。 今は文字通りのお荷物状態ですが、時間の問題です。
「とりま、ゴッデスは無事に生き延びれそうですねぇ。 でもラプチャーにクイーンの喪失による混乱は見られない。 いや、残留思念があるから……でもステーションは崩壊、エレベーターとの繋がりは消えて、宇宙と地球で隔離されてる……だけど私のネットワークみたいに、遠隔で繋がりはある。 その媒体は私……?」
つまり、私が生きている限りクイーンは生きる。
そうなると、クイーンは半端な不死属性を手に入れた形ですねぇ。
もしかして、これが狙いだった……?
「考え過ぎとしたいですが」
で、あれば。
いずれ私は死なねばならない。
でも今じゃない。 アーク防衛を見届けて、息子探しを終わらせて、未練は残さないようにしたい。
「人類に、かつての栄光は戻らなくても。 生き延びる術があるなら希望は残る。 皆のナカに私の因子が残り後世に『私』が残るなら、是非もない。 後はクイーン因子を私のボディに閉じ込めて、アンチェインドで諸共心中……という計画ですよぉ」
確証のない、ガバ計画ですが。
希望が残る限り、託す相手がいる限り。
私は安心して逝ける。
ですが、私は失念していた。
ステーションの残骸と共に地表に落下した『クイーンの血』であるダークマターの存在や。
血の繋がらない息子や、屑な実の母親がどうしているかなど。
でも仕方ないですよね。
私は神様ではない。
元々人の機微に疎く、故に漸く手に入れた小さな幸福をも身体諸共手放すしかなかった。
宇宙から地球を俯瞰する、神様気取りの王様。
広大な宇宙で、王は孤独です。
いえ、私は王様でもない。
皆を不幸にする、自己中な親なのですから。
作品、形になればと着地点模索中(弱腰
雌堕ちから始まるも、性別の差異による反応とか堕ちていく様を楽しむ筈が、尻ASS♂ですら無い感じに進んでしまった…どうしてこんなことに(自虐