父さん、ニケになるってよ。   作:ハヤモ

25 / 51
短め


小さな翼の温情

波濤のように押し寄せるラプチャー。

ひたすら迎撃するゴッデスと量産型。

第2世代型(シンデレラ達)も加勢し、戦力は表面上あるように見えるものの、補給もなしに戦い続けるのはニケであっても苦境。

ニケそのものに固定武装はなく、武器を手に持って戦う訳ですが。 その武器が壊れたり弾薬が尽きたら使えなくなりますし。

ゴッデスの機体はエネルギー補給も必要とします。 人間のようにカロリーの摂取が必要なのです。 以後のモデル、量産型はありませんが、思考転換防止の為にも食事は可能であれば摂る事が推奨されます。

面倒な部分の1つであり、ニケに人間の脳を使用している弊害も合わさり、陸戦兵器としての不完全さが垣間見えますねぇ。

 

食事を多少怠れる量産型の群勢も気が付けば、私が操る機体ソルジャーO.W.(オウル)と、ショットガンナーのピナちゃん……プロダクト(製品モデル)23の2体だけという惨状に。

童話型と比較出来ない低次元諸元の量産型ですので、やられ役モブの如く湯水の様に消耗するのは仕方ない。

それでも想定より減るのが早かった。 それだけラプチャーが怒涛の侵攻を繰り返しているという証左であり、他に生き延びた基地や戦線は皆無、残る最後の抵抗地、ここアーク入口に総攻撃という絶望感。

 

拠点にしているアーク入口監視所には、既に人の気配は感じられない。

寂れ、廃墟同然、瓦礫の山に塗れた簡素な建物が、今の私たちの家でした。

それはかつての栄光を失ったのよう。 女神の凋落。 落ちぶれ。 もう私たちを讃える声は聞こえやしない。

アークとは連絡がつきません。 地下深く、混乱の中にあるのでしょうから無理はありません。

ですが、ゴッデスの面々は心身の疲労が溜まってます。 隊長代理のドロシーは何とか規律

を正し続けていますが、ストレスから隊員同士の衝突や摩擦も起き始めています。

見ていて辛い……ゴッデスか、これが……。

それでも人類の殿軍として、最後の戦力として、入口をひたすらに守ります。

 

 

「あの、ちょっと良いですか?」

 

 

ピナちゃんに声をかけられました。

戦闘の余波でゴーグルを無くしたのか、綺麗な翡翠の目が輝いています。

……といっても、密かに彼女にも侵食して強化はしているんですがね。

他の機体にもしたんですが、それでも破壊される運命だったのでしょう。 そこは過ぎた事。

 

 

「はいはい、ナグ……私に御用です?」

 

「ゴッデスやニューテールの皆さんの事です。 喧嘩が増えて連帯感も薄れてきて、きっとこのままじゃいけないと思うんです」

 

「そうですねぇ。 でも私たちに何が出来るというのですか。 戦闘の邪魔にならないようにするので精一杯ですよ」

 

「あなたはそういって謙遜しますね……そうではなくて。 孤立無支援の中、連絡の無いアークの為にひたすら守り続ける事の辛さ。 物資不足。 こうした苦難に心身が削れるのは仕方ない事です。 ですが改善の方法はあるはずです」

 

 

ピナは可愛いですね。

でも具体的にどうしろと?

 

 

「遮蔽物の修復材や食糧探しをするよう、ドロシーに具申しますか?」

 

「そうですね。 でも先ずはドロシー様を元気付けてからです。 きっと上手くいかずに悩んでると思いますから」

 

「……まぁ量産型にできる事ってのは、肉壁になる事だけじゃないですからね」

 

 

寧ろ他もやらねば誰がやる。

土嚢や弾薬運び、塹壕掘りと雑用諸々。

ゴッデスの後光で蒸発しない為には、出来る事は全てやるつもりじゃないと。 そうして初めて己の価値が生まれるのかも知れません。

私は……暫定的に量産型の身体を乗っ取り、地上観察している御身分。 飽きたり、この殻が駄目になったら、ピナかリリスに意識を飛ばすと思います。

リセット症候群に近いナニか、ですかねぇ。

 

 

「して、どのように?」

 

「ドロシー様はリリス様のお墓参りに行かれました。 私も向かって、話をするつもりです」

 

「そこから会話が広がって、彼女の述懐を聞きますか。 その相談に乗り、自論も交えて励ますと」

 

「はい。 その、ナグ? さんも来ませんか?」

 

 

行きますかねぇ。

蛸壺や塹壕で砂塵に塗れ続ける待機状態を維持していると、そのまま風化しそうですし。

リリスの墓参り兼、ボディチェックも兼ねます。

 

 

「ピナちゃんに同行しましょう。 1人では駄目なことも2人なら解決する事もあるかもですし」

 

「頼もしいです。 正直1人で出歩くのは不安もありましたから……ナグさんは何というか、貫禄があるというか。 とても頼もしいですね」

 

 

褒めても侵食しか出ませんよ。

……冗談ですよ。

 

 

「そうですかね。 弱い弾丸をばら撒くだけで、後は欺瞞と虚偽に満ちた人生ですよ」

 

「そうやってまた……知ってますか? 行き過ぎた謙遜は嫌味に聞こえるんです。 それにナグさんは強いですよ。 私より、ずっと。 この銃だって、相手にちゃんと効くのか、不安になる事があります」

 

「どうでしょう。 ピナちゃんのショットガンも中々では。 片目を瞑ってよぉく狙う、コレですよ」

 

「タイラント級とか、強い相手が出てきたら……ナグさんなら、どうします?」

 

「その時は、もう片目も瞑るんですよぉ」

 

「諦めるってコトです!?」

 

 

思わず口角が上がります。

ピナちゃん、ノリは悪く無いですねぇ。

気に入った。 乗っ取るのはヤメにしてやります。

 

 

「生き延びた者同士、上手くやりましょ」

 

「はい。 お互いに生きて、楽園(アーク)に……」

 

 

そこで逡巡、口を閉じるピナ。

現実としてあり得るシナリオが浮かんだのかな。

 

だから気休めですけれど。

私は静かに微笑み返してあげました。

残酷な可能性を口や顔に出さない、その温情を私は理解しておりますよ……って。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。