原作レッドフードは、故郷に辿り着けずに途中で倒れてしまい、次に目覚めたら銃が錆びつく程の年数が経過。その時偶然にもアークから来たニケ、ラピと出会う流れですが……
もし侵食を受けずに生き延びたのなら、彼女は故郷で余生を過ごすのかなとか、だけど仲間達と協力してラプチャーを倒すのに協力するのかなとか妄想したり
普段の戦闘服から、コスチューム変更でレトロデイズな格好したりとか
レッフの家を訪ね、今更に後悔します。
私の人生、あまりに情けなかったなぁと。
仮にも人類の希望、切札とされたゴッデス隊員の私。 その過去、誇りを、早くもかなぐり捨てている。
最早私はゴッデスではない。 いや、そもそも最初から女神ですらなかった。 行く当てが無く、食う寝るに困る乞食だったのだ、最初から。
かつての私は子供を救う為に己を犠牲にした親の愛、という筋書きに酔っていたのでしょう。
それが運良く生き延びてしまっただけです。
今もそう。 レッフの家を訪ねている始末。
レッフの事は不勉強で教養が無く、品の無い、運だけで生き延びた不良娘と内心侮っていたのは否定できません。
そんな彼女の天真爛漫な笑顔を頼り、縋って、足の脛を齧ろうとしている私は、なんと見窄らしい塵屑か。
そんな私もレッフより努力をしたとは言い難い。
私は紅蓮のように自活する訳でもなく。 スノウの様に使命感もなく。 ラプンツェルのように崇高な想いも無い。 シンデレラ達の様に家族もいやしない。
気が付けば自ら孤立。 努力せず得た、降って湧いた能力や地位に胡座をかいた。
それが上手くいかなくなるや、旧友の家に転がり込んで寄生しようとしている。 部隊の恥晒し。 完全な負け組。 そんな1匹が私です。
運良く手に入れた体で死なず生きているだけ。
おお情けない。 ゴッデスの姿か、コレが。
歳を取り漸く気付く。
誰も仮に生きてなどいなかったと。 この人生が丸々本物だったと。
こんな筈じゃなかった、私はこの程度の男じゃないとか、そんな事は一切無い。 この現実が全て。 全部自分自身の実力不足と自立性の無い屑な本性が招いた、必然の結果です。
そして、ここまで落ちぶれて尚、1発逆転のチャンスがあると心の何処かで疑わず、ならばこのまま惰眠を貪り、罪を重ね、行動を起こさなくても良いやと怠け続けて人に迷惑を押し付ける。
でも良いよね、だっていつ来るかも分からない絵に描いたような餅な逆転劇があるのですから。
だからその時が来るまで生きなきゃいけませんねぇ。 きっといつか英雄としてチヤホヤされて金持ちになって豪邸に住んで酒池肉林の日々がくる。 来なきゃオカシイ。 来なくても、それはオカシイ世の中の所為にすれば良い。 私は悪くない。 誰も悪くない。
そうでなくても、人間時代は医者になる為の努力をして、それなりに人を救い、子供を守る親のフリをしてニケになった後も、人類文明存続に貢献できた筈です。
私はこれだけ頑張った。 だから赦されるべきなんです。 ほんの少し優しくされるくらい。
……もう、ゴールしても良いよね?
そんな救いようの無い言い訳をする時間が今なのです。 泣けますね。 敗者の感情なんて誰も見やしない、無価値な絶望ですけど。
閑話休題。
小さな一軒家の扉の前で足を止める。
戦争の余波なのか、所々塗装が剥げていたり、表層が剥がれ落ちていますが、特筆して言うべき物は無いモブ家です。
ですが表には綺麗なバイクが停めてあり、家内に誰かしらいる事を示唆してきます。
事実、侵食の感覚ではレッフがいます。 ここが彼女の生家なのでしょう。
その扉の前で手が泳ぎ、逡巡します。
「覚悟は良いですかリリス。 私はできてる」
「(大丈夫よ。 私がついているもの)」
憑いてるのは私の方なんですがねぇ。
悪霊じゃないですかヤダー。 そんなしょうもないジョークで己を落ち着かせ、ノックした。
「誰だ?」
レッフの、緊張感の無い間延びした声。
ドキリとした。 久し振りに聞いた気がして。
ガチャリ、と出てきたは懐かしの彼女。
真紅の髪に、頭頂部に生えた2本のツノ。
悩みなんてない整った顔は1点の曇りなし。
胸元からヘソまで大きく開いたレザースーツは、いつも通りで、何の恥じらいもない。
「おぉ!? 隊長、生き返ったのか!!?」
その驚きの顔も、私が良く知る者のまま。
ああ。 貴女はいつも通りでした。
「レッドフード……!」「(レッドフード!)」
私と脳内リリスが同時に叫ぶ。
目頭が熱くなり、思わずギュッと抱きしめた。
勿論、壊れない程度に。
「おいおい、なんだよ急に。 てか墓から出てきてやる事がコレか? 他の連中には会ったのか?」
「すみません、貴女が最初です。 本当は定期的に皆が集まるタイミングで会うべきでした」
「なんだよ、知ってるの? てかその喋り方、もしかしてリリーバイスじゃなくてナグサだったりする?」
きた。 殴られる覚悟は良いか。
私はできている……!
「実はそうなんです。 リリスの許可を得て、私ことナグサが体を使っております。 私の本体は今も宇宙の上です」
「マジか!? あんだけ見栄張って居残りしといて、意識だけは地上に帰ってきてんの? 幽霊かよ」
強ち間違いではありませんね。
人の体を乗っ取って動いてますし。
「殴ってくれて構いません。 あ、でもリリスの体なので加減してあげてください」
「そうか、なら……」
コツン。 軽く肩パン、拳を当てられた。
「お前そのものじゃないし、本気で殴れる訳ねぇだろ。 やり返されて地面に埋まりたくなぇし。 まぁでも良く帰ってきた……ありがとうな、ナグサ!」
屈託の無い笑顔を向けられる。
うっ……歳を取ると涙腺が緩くて堪らない。
「えぇ、えぇ……こちらこそ、受け入れてくれてありがとう……」
「クイーンは倒したのか?」
「ボディは破壊しましたが、奴のコードというか、意識の残滓が私の体に残っています。 それを自力で追い出す事は出来ておらず、油断はできません。 今後何をしでかすか分かったものじゃない」
「体を乗っ取るお前が、逆に乗っ取られちまったと。 因果応報ってヤツじゃね?」
「だとして人類の危機ですよ。 私のボディは幾ら切り刻もうと蜂の巣にしようと再生しますからね。 そこでレッフ、貴女に頼みが。 私の拳銃、まだ持ってますよね?」
「……返さないぞ」
晴れやかな笑顔から一転。
厳しい顔になるレッフ。 気持ちの良い話じゃないですからね。
……殴られる、撃たれる覚悟は必要ですねぇ。
「もし、もしですよ。 私の身体が地上に降りてきたその時は。 どうか、その銃でトドメを刺してください。 私からのお願いです」
「……何やっても再生するナグサが、拳銃弾で倒せるかよ」
「弾倉の中身、まだ見てないんですか……弾は血液弾。 アンチェインドです。 少し前に話題になった、ナノマシンを無力化する特殊弾ですよ」
「いつの間に用意してたのか」
「私のボディは侵食が進みすぎて、構成する殆どはガッテシウムではなくニンフ、ナノマシンに置換されています。 弾が当たれば体全体が崩壊、クイーンもろとも滅びる事でしょう。 万が一は頼みましたよ」
「……皆が集まった時に相談する。 けどな、その時はこねぇよ。 期待すんな」
不機嫌な顔で睨みを利かす彼女。
ホント、私はレッフと仲悪くなるのが得意で。
「ええ勿論。 "期待"していますよ」
「どこでも、ふざけやがって……!」
何処かで聞いた事のある台詞ですな。
因果は巡る。 きっと貴女ならやってくれる。
そんな期待の眼差しを彼女に送る。
大丈夫、私は死なない。 皆が忘れない限り。
「『私を忘れないで』」
刹那、額に飛んでくる拳。
それを甘んじて受け入れる。
なのに侵食で強化されたリリスボディは、体躯1つ崩さず、怪我もなく、ニコリと微笑み続けるのみ。
「忘れるかよ。 お前が捻くれ者だってのはな」
「(ナグサ……)」
2人の声が聞こえる。
安心しましたよ。 無関心じゃなくて。
この先、皆の中で生きていられそうですよ。
後書き
ナグサのgdgd感……