前回はご心配おかけしました。
ありがとうございます。励みになります
今後も今まで通りにいけるか分かりませんが、宜しくお願いします
破壊と再生を繰り返し、他の機体をも使ってきた私の記憶や人格は、最早破綻しているといって良い。
その片鱗に、目の前の少年の顔を見てもナニも思い出せないし感動もなく親近感も湧かない。 赤の他人だと言われた方がしっくりくる。 血の繋がりの無さも影響しているのかも。
それでも生前に共にいた息子ならばと。 人情的にも親的にも。 せめて挨拶しようと思うのは変な話ではないでしょう。
ああいやネグレクト、育児放棄の事例も少なくありませんが。 野生の世界でも散見するそれらは複雑な人間社会にも当て嵌まる。
特に哺乳類のオスは子育てには参加しない種が多い印象。 本能の部分では人も当て嵌まる部分や否定出来ない面もありましょう。
それでも皆が皆ではないし、愛情が皆無ではない。 私もそう。 だからニケになり今こうして再会しにきた。
例え不器用でも。 母性ではなく父性として。 ひとまず危険な地上から地下に降ろせた事に安堵して胸を撫で下ろす。
……量産型にも胸はあるんだよなぁ。
「お父さん? え、でも、ニケのお姉さん?」
困惑していますが無理もない。
人間の体は、もう無い。 オリジナルボディですらない。 仮初の体を使っている幽霊のような存在ですから。
能力でこうしてます、といっても幼い息子には理解できません。 簡単に、整合性を歪めない程度に説明しなくては。
背丈を合わせるようにかがみ込み、両手を膝の上に乗せながら言い聞かせます。
側から見たらおねショタ……それも路地裏にショタを連れ込む悪いお姉さんの図。 凶悪な精神犯罪者の扱いを受ける前に撤退せねば。
「ごめんね、びっくりさせちゃったね僕〜。 お姉さん、君のお父さんの知り合いなんだぁ」
「お父さんの!? お父さんは、何処にいるの?」
目の前だよマイサン! と喉元まで出かかった言葉を飲み込みつつ、話を続けます。
「地上で頑張って生きてるよ〜。 でもアークの扉は閉まっちゃったから、もう会うのは難しいなぁ」
「そんな! お父さん、僕や皆の為に頑張ってくれたのに、追い出すなんて酷いよ!」
追い出す、か。
そう考えられるだけ頭の良さがある。 拗らせて偉い人に目をつけられないと良いですが。
「……お父さんから伝言があるんだぁ」
「ど、どんなの?」
「お父さんの事は"忘れて"幸せに、元気に生きてって。 それがお父さんの幸せにもなるから」
「……お父さんも酷いよ。 僕は一緒に過ごしたかったのに」
「お父さんもですよ」
「えっ?」
「……そう思う筈です」
余計なひと言で、またも困惑させるとは。
私も悪い奴です。 謝罪代わりに息子の頭を撫で回します。
口調の意識も忘れて、素の表情になります。
「お姉さんが、お母さんだったら良いのに」
お母さんねぇ。
この子の母は人を騙すような人生の末、因果応報の如く死にましたからね。
私がニケになった要因でもあります。 ですがこの子には関係の無いこと。 同時に私は親にはもうなれないんだなって。
「ニケは見た目ばかりが女の子。 本当のママにはなれませんよ」
「一緒に過ごしてくれるなら、偽物だって僕は構わないよ。 こうして撫でてくれるだけでも、お母さんだと思えるから」
ギュッと抱きついてくる息子。
おおぅ。 幼い男の子に抱かれてドキドキしちゃう私。 危うくママ化しそうになりますが、耐える……! 耐える事なしに勝利はない!
……だけどハグの返しくらいは良いよね?
と自身に言い訳して抱き返します。 ああ、小さな男の子の体が私の胸元にスッポリと収まっちゃうなんて。
もうヤダ可愛い。 神的にマイサン。 しゅき。 大しゅきホールドしたい。 体格差や体重差で無理だけど気持ちで勝る!
「ふ、ふふふ、駄目ですよ。 お母さんが機械というのは世間体が悪い。 虐められちゃうかも……」
ごめんね。
お母さん機械だから。 本当にごめんね……。
「じゃあ、お姉さんと結婚する!」
ゴフッ!?
スピリチュアルボディにナチュラルブローだと!?
危うく意識が飛びそうになりましたよッ!?
それはたぶん、侵食体としてではなく思考転換の類。 さすれば意識のメス堕ち現象。
ああん、お姉さんも息子の僕と結婚するぅ!
血が繋がってないし、というか今は血すら流れてないから問題ないよね、ショタ旦那最高アッハンとメス声を出したらお終いです! 色々とアウッ!!
「ごめん、なさい……!」
だから理性をフル動員して、優しく突き放す。
まさか幼子を、息子を振る日が来ようとは。
私は運命を怨みます。 己を呪います。
「気持ちは嬉しいですが、お互い距離を取るのが健全なのです。 そもそもニケと人間が結婚というのも色々差別されそうだし」
「僕、頑張って偉くなって、そういう差別が無い世界を作るよ! それならきっと皆も認めるから!」
「大きくでましたねぇ。 他の偉い人達や冷酷な世間が認めないでしょう。 余計に差別が進み、下手すると殺されてしまいます。 そうなったらお父さんが悲しみますよ。 だからご安全にお過ごしください……私に言えるはここまで。 さようなら。 お元気で……!」
「お姉さん!」
理性が崩壊する前に、尻を見せ遁走する私。
目尻に涙を浮かべながらも、これが最善なのだと己に言い聞かせます。
悲しいなぁ。 こんな筈じゃなかった。 でも会えて良かったと思うワケ。 取り敢えずの挨拶はできたのだから。
その後、この機体を工場に戻してから意識をレッフの故郷に戻します。
「スマヌ。 スマヌ息子よ。 弱い親で御免なさい……父さんは女だから……!」
意味不明な泣き言で枕を濡らす私。
そしてほんの少しでも劣情を抱いた、このアバズレモドキを赦したまえ。 嗚呼、ラプンツェルがいたら懺悔していた事でしょう。 一緒にハァハァして大乱行スプラッシュシスターズになっていたかもですが。
「ああさて、ここからはリリスお姉様には過激過ぎて見せられないよ!」
「(ちょ、ちょっと急に何!?)」
私、ナグサはまたしても詰まらぬ事で宿主の意識をブラックアウトしてしまった。
その後、晴れやかな賢者と化した私の口調、体の軽さに、羞恥心マックスの声で「変態! スケベ! デリカシーなし!」と罵倒されました。
失礼ですね紳士ですよ。 例え体が女であろうと、心はまだ男であり続ける……まだだ、まだ終わらんよ! 侵食優良ゴッデスman子のナグサちゃんライフは続くんですよぉ!
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その後、意識を帰還した当該個体は数時間を超過する過酷な自慰……じゃなかった、自己メンテナンス作業を開始。
備考:てめぇら笑うな! ナグサはなぁ、性同一性に苦しみながら、毎日叡智な自己研究してんだ!
お前らはゴリラの身体で毎日希望を胸と股間に抱いて過酷できる奴いる? いねぇよなぁ!?
れぽぉと作成者:レッドフードより愛を込めて
後書き
雑な雰囲気もありつつ