父さん、ニケになるってよ。   作:ハヤモ

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前書き
未来は他のメンバーやカウンターズに任せて、ナグサの物語は締めたい気持ち
先ずはアークとの交渉事。原作だとエイブが偵察か資源回収で地上に出てきたニケと接触、アークに入りますが人体実験紛いを受けて顔面崩壊後、地上にポイ捨てされるという


利用し合う者

皆は地上でラプチャーとドンパチ、エイブのデータ収集に協力する中。

私は侵食ネットワークでアークの情報をも収集。 混乱はやがて落ち着き、経済活動が始まろうとする最中。

建材なり食糧なりの資源を得る為にも、コソコソと昇降機を無計画に建設。 そこからアークで生産されたニケ部隊が上昇し始めました。

その件を私は皆に報告。 直ぐにも交渉役としてドロシーが向かいました。

私も護衛兼オトリとして同行。 最寄りの量産型に接触すれば、相手の反応は結構なものでした。

 

 

「わぁ! ピルグリムと会えるなんて!」

 

「ピルグリムとは何でしょうか?」

 

「地上で活動している、謎のニケの総称です。 偶に目撃談があるくらいで、誰も接触した事がない幻の存在だとして認知されています。 でも噂は本当だった……!」

 

「ふふっ。 私もアークから来たニケとお会いできて光栄です。 可能でしたら、アークにご案内して頂けますか?」

 

「勿論です! 窮屈な所ですが、どうぞ!」

 

 

アッサリと私達は通されました。

待合室で待機、後は偉い人が対応するとの事。

が、嫌な予感がしますのでドロシーに耳打ち。

 

 

「ドロシー。 侵食で周囲の光景をジャックしてみましたが、相手は我々を使者ではなく実験体として迎え入れるつもりです。 交渉なんて端からする気はなさそうです」

 

「なら相応の対応をするまで。 少し赤子を捻る真似をすれば考えも変わるでしょう」

 

 

悪い顔をするドロシー様。

そりゃリリスに次ぐステゴロさんが暴れたら、アークの1区画くらい吹き飛ばせるでしょうけど。

でもね、それやるとテロリスト扱いです。 ピルグリムは危険な存在として、ヘレティックと同列にされます。 そうなれば討伐対象で交渉どころではない。 それはいけない。

 

 

「それをしたら我々は危険な存在として排除されますよ。 パイオニアの代表者としての自覚を持ってください。 ピナも悲しみます」

 

 

ピナと聞いて、瞬時に曇るドロシー。

親友に失望されるのを想像したのでしょう。

やはりピナ……翼ちゃんはドロの良薬……!

 

 

「……仕方ないですね。 しかし忍耐力を試す気はありませんよ」

 

「その時は私が矢面に立ちましょう。 適材適所というものです」

 

「そうやって貴女は……リリーバイスのボディを借りている自覚は持ってくださいね」

 

 

言い返されながらも時は来た。

目前に立つは人間数名。 実験着を隠すでもなく、下卑た目で"物"を見てくる。

 

 

「ようこそアークへ。 お疲れでしょう、先ずは此方へ……」

 

「アークの代表者と話しに来たのですが。 それとも、貴方達がそうとでも?」

 

「まぁ、そんなところです」

 

 

ぞろぞろと新たに入ってくる量産型。

皆して銃を向けてくる。 やっぱりな展開です。

 

 

「これは何の真似でしょうか?」

 

「第1次ラプチャー侵攻のニケといえば、ロストテクノロジーの塊と目される"モノ"。 頭を開けば面白いモノが出てくると思いましてね。 アークの為に犠牲になってください、ええ。 人類の為になる筈です。 それがニケの義務、仕事でしょう」

 

「下劣ですね。 私を誰と知っての狼藉でしょうか。 今なら頭を地面に擦り付けて土下座すれば半殺しで済ましてあげます」

 

 

ドロシーも睨みを効かせるも余裕の笑み。

まぁ実際余裕です。 量産型の1個小隊規模程度で童話型は止められませんよ。

そもそも戦闘にもならない。 弾丸の1発もおらずに制圧できる。 私のやり方であれば、侵食洗脳済なので、やめさせるのは簡単です。

ですが、それでは私が面白くない。 ここは茶番劇を観せてあげますか。

 

 

「私が囮になります。 その間にドロシーは地上に退避してください」

 

「何を言っているのですかナグサ!?」

 

 

私はウィンクし、彼女にだけに聞こえるように声を潜めます。

 

 

「私の再生力と頑強さであれば、並大抵は乗り越えられます。 それにコレはチャンスなのですよ。 アークの威力偵察的な意味でも、私が潜入する意味でもね」

 

「本気なのですか?」

 

 

眉間に皺を寄せられますが、同時に魅力的な話でもあります。

ドロシーはアークに敵対心がありますからね。 武力によらない制圧含めてアークを支配ないし奪いたいとか、自分の作る楽園の方が魅力的だとアピったり、自分こそ人類を救った勝利の女神だ英雄だと賞賛を受けたいとか人間らしくも俗っぽい欲求を抱えています。

その足掛かりに仲間を使う事も厭わない。 昔ならともかく、今はある程度自由の身。

そして部隊の代表者とはいえ、この場には己とナグサしかいない。 しかも、人を嵌めるでもなく、ナグサ自らの提案とあれば魅力的な相談な筈です。

そうでなくても侵食洗脳で承諾させる方向に思考誘導できますが、なるべく弄らずに持っていく事こそ美しさがある。

 

 

「……分かりました」

 

 

そして答えは1つ。

ドロシーは尻を向けて駆け出した。 私を信じて。

 

 

「おやおや、君を置いて逃げ出すとはね。 随分と薄情な仲間じゃないか」

 

 

信じてくれて……ありがとう……ッ!

これで私はアークを侵食三昧ですよぉ!!

 

 

「別に。 私が適任というだけの話。 それよりも早く実験台にでも載せてくれますか。 無駄話をして給料貰えるほど、アークの研究員はお高く止まれる存在なんですかね?」

 

「へっ。 ニケの分際でナマ言えるのも今のうちだからなオイ」

 

 

へっへっへっ、と薄笑いを始める塵屑共。

口調もすっかり下卑たモノに変わる研究員。

本性表したね? まぁ私も間も無くですが。

ニケは人間に逆らえないという前提があるからこそ、高圧的に威張り腐れる。

でも、ただそれだけの安全装置が外れた瞬間はどうなるのか。 私の侵食の息が掛かったニケは既に大半を占める。 何の安全性を確かめず、ただ搭載すれば能力が強化される適度の認識でコードを添えられているから。

一斉に思考誘導すれば、ニケが人間を皆殺しにしてアークをニケによるニケの為のニケによる国に変えてしまうでしょう。

でもそうなると、息子が巻き込まれる。 オスワルドもそう。 それは避けたい。

そんな小さな慈悲程度でアークは生かされている。 そんな事も知らない下賤な屑共は、意気揚々と私を手術台に載せるのでした。

 

 

 

 

 

視界が闇の中、私はつらつらと人生を想う。

家族に囲まれて、自分の死を悲しんでくれる子達に囲まれて、自分は満ち足りて死ぬ筈でした。

それが今はなんてザマでしょうか。

欺瞞とはいえ、自分の苦悶と悲鳴を笑われながら切り刻まれ、永遠に侮辱される。 こんな終わり方なんて誰もが嫌でしょう。

 

ああ、痛い。 痛い。

楽になれない。 楽になりたい。

 

完全に反応を無くしてみると、今度は腹を切り裂かれ、中身をゆっくりと掻き回され始めました。

 

中身が大量に溢れ出さないように。

中枢を傷付けないように。

長く長く苦しむように。

 

興味本位で痛覚センサーを少し緩ます。

嗚呼、こんな苦痛がこの世にあったのか。

こんな苦痛がこの世に存在する必要があるのか。

なんで自分がこんな目に遭うのか。

ただ苦痛に染まった世界を悶え回る。 その視界は最期のその時まで人間の意地悪い嘲笑で満ちていた───

 

 

「とでも思っている人間はお笑いでしたよぉ!」

 

 

別の屑によって切り刻まれ、手術台の上でのたうち回る屑を、私は嘲笑しながらじっくりと観察してやりました。

思考誘導、洗脳実験。 人間に有効ではなかったそれを今、私は試していたのでした!

 

私の脳が男性である事、それでいてニンフや侵食が独自に働いている事に着目した私はですね、これらを採血、培養して人間に実験できる機会を伺っておりました!

地上には既に絶滅したであろう人間さん。 であればアークにいる地底人に試すしかないのですが、善良な人間には良心が痛む……。

そんな時! 屑が向こうからノコノコ来てくれました! これは私を歓迎してくれています間違いない……!

 

 

「相手を実験台にするつもりが、逆にされるのってどんな気持ち? ねぇどんな気持ち?」

 

 

答えはありません。

刺激が強いので、脳内お姉様ことリリスの意識も切っていますから、誰の反応もありません。

まぁ良いですけどね。 私も久々に人間の、本物の血肉を見る機会に恵まれて郷愁にも似た気持ちを味わえましたから。

改めて自分が医者で人間だったと身が引き締まる思いです。 倫理観の欠如を指摘されてもソレはソレ。 分別はしているつもりです。

 

してなかったら、ねぇ?

アークで楽園実験を敢行。

とうに人間を皆殺しにしてますよぉ。




後書き
ナグサも時々はサイコ感出さないとねと。
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