父さん、ニケになるってよ。   作:ハヤモ

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愛おしい純白

童話型4号機スノーホワイト。

ゴッデス最年少にして天才ガンスミス。 小柄な背丈に名前の通り白い服、アクセントに胸元に黒いリボン。

お人形さんのような愛らしさから、リリスやレッドフードには可愛いがられています。

無論、私も愛おしく思っております。 息子より年上の風貌ですが、まだまだ子供です。

 

戦闘は不慣れですが器用な子でして、皆の銃火器や装備を調整、開発している凄腕です。

私も例に漏れずお世話になっていますが、拳銃絡みの依頼は拒否されました。 己が作った武器が自決に使われるのは嫌だからとの事。 まぁ当然の帰結ですね。 仕方なし。

 

ですが医療系の器具製作には付き合ってくれました。 侵食を治す為に必要と言ったら、不安気にも協力してくれた形です。

とはいえ、銃火器とは別の専門的な知識を必要とし、精密性を要する物品の製作は困難を極めます。

そこは私やV.T.C.の協力を得て進める訳ですね。

 

 

「ナグサお姉ちゃん」

 

 

スノウが話し掛けます。

視線は作業台のまま。 対する私はレポートに目を通したまま応対。

 

 

「はいはい、なんですか?」

 

「えっと、その。 息子さんはどんな人ですか?」

 

 

唐突ですねぇ。

……本当は体調の事とか、本当に治るのかとか、不安に思う事を聞きたいのでしょう。

でも現実は怖い。 尋ねる勇気が無い。 直前でたわいもない話に変えて、己と相手を誤魔化しています。

 

 

「おやおや気になりますか?」

 

 

誘導はしても指摘はしない。

心身が危うい者に現実をつきつけるのは劇物の投薬に近い事もあります。

可愛いスノホワを虐めたくはありません。 自然治癒、経過観察に留めて"今"を付き合います。

 

 

「スノウよりずっと年下ですよ。 血は繋がっておりませんが、目に入れても痛くない子供でした。 ニケになる際、信頼できる親戚に預けておりますが、このご時世。 インフラが乱れ流通も止まりかけ、通常の通信機器での交信は困難。 荒廃化が進む地上の何処で何をしているか把握出来ておりません」

 

「……きっと何処かに避難していますよ」

 

「だと良いんですがね。 なにせ地球全土が戦場であり最前線と言っても過言では無い世界。 無事を願う以外、ありませんよ。 でも未来を悲観する気はありません。 避難所の地下都市アークも建設中。 きっと大丈夫、何とでもなりますよ」

 

「すみません。 こんなつもりじゃ」

 

 

申し訳なさそうな声。

書面を置いて振り返る。 哀しげな目と合った。

スノウはポツリポツリと語り始める。

 

 

「私は息子さんの事は何も知りません。 ですがナグサお姉ちゃんの大切な家族なら、私にとっても大切な存在です。 きっと息子さんだって、ナグサお姉ちゃんの事を大切だと思ってくれています。 だから、上手く言えないのですが……無事に再会できるように私は協力します」

 

「ありがとうスノウ。 優しいですね」

 

 

少し踏み込む勇気を持ってくれました。

侵食とか、直接ワードを口にしたくはないようですが、進展ですね。

 

 

「でも無理はしないで。 必死に生きていれば誰かを傷付ける事もあります。 綺麗事だけではいけない事もあります。 人を一方的に傷付けるのは良くありませんが……」

 

「……お姉ちゃん?」

 

 

少し暗い話になってしまいました。

話を逸らしましょう。

 

 

「失礼しました。 ところでなのですが、私が元男という話……信じてます?」

 

「それは……まだ懐疑的というか」

 

「ですよね、それが普通でしょう。 一般にニケは若い女性しか適合しないとされます。 自我の弱い子は量産型になり、人間時代の記憶の大半が消され、空いたストレージに戦闘技能等の知識を詰め込み効率化を図りますが……男の成功例は他に聞きません。 何故なのでしょうね」

 

「うーん……お姉ちゃんが特別だから?」

 

 

特別ですか。

確かに頭が何度吹き飛んでも再生しますし。

人格データや記憶は胴体や手足を巡るニンフからロードしているという見解ですが。

 

 

そもそも私が人間だったという保証は?

 

 

やめよう。 考えるのは。

本能が「これ以上は危険」と警笛を鳴らしてる。

結局私も、スノホワと似て幼稚ですね。

 

 

「その点も踏まえ、V.T.C.に連絡済みです」

 

「有効な治療法を確立出来ると良いですが」

 

「返答待ちの間、こうして向こうのレポートを読んでおりますが……ヒントがありそうで掴めないですねぇ」

 

 

レッドシューズの私宛の手紙も届いております。

どうやら私の考えに興味を持ってる様子。

現在の侵食コードを調べていると、どうもラプチャー側での進化ではなく、人為的に弄られた疑いがあることや、私のコードは変質し、宿主たるボディを強化しているように感じられること。

進化を促進させるウィルスを例えに出しましたが、向こうの琴線に触れたのか興奮気味に思想が語られています。

……V.T.C.はミッション系というか、宗教系なので言い回しが気になりますね。 少し圧が強くて怖いくらいです。

 

 

「近々、V.T.C.に出向するかも知れません」

 

「えっ? ちゃんと戻ってきますよね……?」

 

「勿論です。 約束しますよ」

 

 

微笑んで、スノウを安心させてやります。

向こうも満足してニコリと返してくれました。

 

ああ、本当に可愛い。

故に出来ない約束はしたくありませんねぇ。

 

私、死なないとか言って嘘吐いた前科者ですし。

いよいよ嘘吐きナグサお姉ちゃん呼ばわりとなれば、思考転換しちゃうかも。

 

……冗談ですよ。

 

約束も守ります、きっと。

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