それは必然だったのか、それとも、運命の女神の悪戯か。
期せずして運命の女神に気に入られた一人の青年は、二回目の人生を与えられる事となる。
二回目の人生が始まった当初は、一回目とあまり変わらぬ周囲の環境に少々落胆した。
だが程なく、彼は邂逅を果たす事となる。科学技術の結晶、雄々しき
そんな、男の子なら誰しもが一度は憧れる、ホビー用の小型ロボットとの。
時は流れ。
ホビー用の小型ロボットの
まるで、人々の内に巣くう闘争本能と言う名の導火線に火を点けるかの如く。
そして、その流れを受けて、各地では様々な規模の大会が開かれる事となる。
お店単位の小さなものから世界規模での大舞台まで、多種多様な大会が開かれ、熱気の渦を巻き起こす。
そして、その内の一つでもあるこの大会でも、次々と繰り広げられる白熱したバトルの熱に当てられ、観客達の熱気で大いに盛り上がりを見せていた。
「白熱のバトルが繰り広げられ、大いに盛り上がっている本大会! 残す予選ブロックも残り一つ! 果たして、このブロックではどの様なドラマが生まれるのか!? それでは、各選手準備をお願いします!!」
司会者の小気味のよい合図と共に、参加者であるプレイヤー達がステージに姿を現す。
その中には、青年から少年へと戻り、二回目の人生を謳歌している彼の姿もあった。
程なく、彼は指定されたバトルフィールドの前に立つとチラリと、向かい側に佇む今回の対戦相手である男性プレイヤーに視線を向けた。
相手は、大学生位の軽薄そうな青年であった。
「やっと出番だぜ、待たせやがってよ! で、テメェが俺の相手か? ふん……」
「……」
「チッ、シカトかよ。偉そうにしやがって、俺なんて眼中にねぇってか!? まぁいい、今日の主役は俺だ! だから、今日は俺に道を譲ってもらうぜ若輩がぁ!!」
試合前、早速対戦相手からの口撃を受ける少年だが、彼はそれに反応する事無く静かに試合開始の時を待つ。
「それでは、予選最終ブロック第一回戦! Ready……」
そして、司会者の声と同時に、二つの小さな影が四角いバトルフィールド内に降り立つ。
「バトルスタート!」
刹那、戦いの幕が切って落とされた。
「近接バカ一代だ、これは無念の剣だなんだと周りの連中はほざきやがるが、最新型が負けるわけねぇだろぉ!! いくぞおおぉぁああ!!」
開始と同時に、少々キレ気味な台詞を吐きながら、青年は自身が操作する機体を突撃させる。
スカイブルーと黄色を基調とした青年の機体は、見た目通り機動性が売りの細身の機体。更に特徴的なのが、青年の発言にもあった最新のエネルギーブレードタイプの両腕、所謂武器腕だ。
機動力を最大限に生かす為武器腕以外の攻撃方法を持たぬ同機は、その速さで少年の機体に迫る。
(相手はあの見た目だ、スピードならこちらが上。なら、一気に懐に飛び込めばいい)
バトルフィールドとなるコンビナートのジオラマを駆けながら、青年は自身の勝利のビジョンを描く。
刹那、機体のセンサーカメラが少年の機体を捉えた。
次の瞬間、青年の機体目掛けて火線が伸びる。
「チッ、そう簡単にゃいかねぇか。だが、最新型は伊達じゃねぇぇっ!!」
如何にも重装甲重武装と言った武骨な外観の少年の機体、その右手に装備したライフルが火を噴き、青年の機体目掛けて弾丸を放ち続ける。
しかし青年も、機体性能と巧みな操作で弾丸を躱しつつ、少年の機体に徐々に接近していく。
そして、彼我の距離が間もなく懐に飛び込めるかと言った所まで縮まった、その時。
不意に、少年の機体がスラスターを噴かせ、後退しながらその身を上空へと舞い上げる。
「距離を取るつもりか。だが、そう易々と逃がすかよ!!」
後退しつつライフルで応戦する少年の機体、上空からの攻撃を躱しつつ追いかける青年の機体。
(いつまでも逃げ回る事は出来ねえ筈。何れは痺れを切らしてあの背中の大砲を撃つために動きを止める筈……。その時こそ、速攻で懐に飛び込んで斬る!! クククッ、それまではネチネチと付かず離れずの距離を保ってやるよ! 斬らせずして斬り! 撃たせずして撃ち抜く!! 卑怯などと、所詮は敗北者の戯言ぉぉ! 勝った者が正義! 所詮それが全てだよぉ!!)
一見すると青年が徐々に追い詰めている様にも思えるが、実は、追い詰められているのは青年の方であった。
青年は気付かぬ内に誘導されていたのだ、キルゾーンへと。
程なく、二機はコンビナート内の一角、円筒形タンクの並ぶ場所に姿を現す。
「ん、何だ?」
その時、青年は少年の機体の変化に気が付く。
ライフルを撃つのを止めたのはもとより、機体背部に装備されている大砲の、折り畳み式の砲身が展開を始めたのだ。
程なく、機体の全長を優に超える巨砲は展開を完了すると、その砲口を地上……、青年の機体に向けた。
「な、空中であの大砲を!?」
刹那、巨砲が火を噴き、その巨大な砲弾を地上目掛けて飛来させる。
次の瞬間、巨大な爆炎と共に大量の爆煙が周囲を覆った。
(く、ははは!! やはり空中では満足な制御もできなかったか!)
放たれた砲弾は青年の機体に直撃する事無く、近くの円筒形タンクに弾着していた。
最も、これにより発生した爆炎とその衝撃波で青年の機体には幾分かダメージを負ったが、バトルを続行するのに支障はない。
(この煙じゃ、向こうも俺の事を見失ってる筈。なら、これを利用して懐に飛び込めば……)
そして、青年が飛び出すタイミングを計っていた、その時。
突如、スラスターの轟音が鳴り響く。
「っ!!」
刹那、轟音と共に爆煙を突き破り、少年の機体が姿を現す。
得物を狙う狩人の如く頭部の単眼センサーカメラが光を放ち、光の軌跡が青年の機体に迫る。
同時に、機体の左腕に装備された、巨大で凶悪な杭打ち機が、油断し無防備となっていた青年の機体の胴体部を捉えた。
この場所まで逃げてきたのも、外したのではなく最初からタンクを狙っていたのも、全ては、この一撃の為の布石。
その瞬間、青年は理解した、対戦相手の少年は……。
「こ、こいつ普通じゃ──」
青年が言い終える間もなく、放たれたその一撃は青年の機体を貫き、見事勝利を掴み取るのであった。
「決着ーーっ!! 見事勝利を手にしたのは──」
司会者の口から少年の勝利が宣言されると共に、観客達の歓声が響き渡る。
それに応えるように、少年は観客達に手を振る。
やがて、一頻り手を振り終えた少年は、バトルフィールド内から自身の機体を回収すると、スタッフの誘導に従い次の戦場へと移動を開始する。
その最中、少年はふと、この素晴らしき現世に転生する切っ掛けとなった、最期を告げたあの日に思いを馳せた。
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