プラモクラフトな世界で心に火を点け生きていく   作:ダルマ

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投稿の時間だ、621


第⑨話 まさに最強で無敵の……

 こうして不良三人組を無事に撃退した八尋は、安全になった事を女の子に伝えるべく、彼女のもとへと近づく。

 その時、八尋は改めて彼女の姿を確認し、不良三人組が声をかけたのも納得であると理解した。

 

 艶のある綺麗なロングの金髪、透き通るような肌にアイドルに勝るとも劣らない整った顔立ち。それに組み合わさるのは、黒いブラウスとフレアスカート。

 彼女は、誰もが振り返るような容姿の持ち主であった。

 そんな彼女に暫し見惚れてしまう八尋。

 すると、そんな八尋を不思議に思ったのか、彼女の方から八尋に声をかける。

 

「あの……」

「は、はい!」

「この度は助けていただいて、本当にありがとうございます」

 

 容姿に違わぬ透き通るような美しい彼女の声。そして、言葉の節々から感じられる育ちの良さ。

 刹那、八尋は自身の頬が染まるのを感じた。

 

「あの、もしよろしければ、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「はい喜んで!」

「え?」

「あわわ! す、すいません……」

 

 美少女から名前を尋ねられ、嬉しくてつい本音が言葉と共に零れてしまう八尋。

 慌てて訂正しようとする八尋の姿を目にし、女の子はふっと笑みを零した。

 その姿がまた画になり、八尋は再び見惚れてしまうが、直ぐに我に返ると改めて自己紹介を始める。

 

「俺……じゃなくて、自分の名前は尾崎 八尋と言います!」

「尾崎 八尋さん。素敵なお名前ですね」

 

 名前を褒められ、思わずはにかむ八尋。

 そんな八尋を他所に、女の子も自己紹介を始める。

 

(わたくし)滝田 彩雅(たきた あやか)と申します。尾崎さん、どうかお見知りおきください」

「滝田 彩雅さん……凄く素敵なお名前です!」

「ふふ、ありがとうございます。……所で尾崎さん」

「は、はい。なんでしょうか!」

「もしご迷惑でなければ、苗字ではなくお名前で呼ばせてもらってもよろしいでしょうか?」

「っ! 勿論、喜んで!」

「ふふ、では(わたくし)の事も、お気軽に彩雅と呼んでください八尋さん」

 

 こうしてお互いに自己紹介を終えお近づきになった所で、八尋が話を切り出す。

 

「所で彩雅さん」

「はい、何でしょうか?」

「その、会ったばかりなのにこんな事を言うのはお節介に聞こえるかもしれないけど、秋天橋は治安が悪い場所じゃないけど賑わいのある街だから、必然的にさっきの不良みたいな人達もやって来ることがあるんだ。だから、そういう人たちに絡まれない様に、今度来る時は友達と一緒に来た方がいいと思うよ」

 

 八尋の助言を聞いた彩雅は嫌な顔をすることなく、優しく微笑むと、感謝の言葉を述べ始めた。

 

「八尋さん、御忠告ありがとうございます。では、今度訪れる時はその様にいたしますね」

 

 こうして八尋の助言を聞き入れた彩雅は、一拍置いた後、更に言葉を続けた。

 

「八尋さん。もしよろしければこの後、少し付き合っていただけませんでしょうか?」

「……え?」

「折角助けていただいたので、そのお礼をしたいと思ったのですけど…駄目、ですか?」

 

 小首を傾げながらお願いをする彩雅の姿を前にして、八尋の脳内に断るという選択肢は、最早存在していなかった。

 

「勿論、喜んで!」

「ふふ、では、参りましょうか」

 

 こうして八尋は、彩雅と肩を並べて裏通りを歩き始める。

 道中、すれ違う通行人達が彩雅に向けてチラチラと熱のこもった視線を向ける。最も、当人は全く気にする様子もない。

 一方、隣を歩く八尋はそんな視線に気が付き、人知れず優越感に浸っていた。その視線の幾つかが自身に向けられていたとも知らずに。

 

「ここです、八尋さん」

 

 こうして裏通りを歩く事数分。二人は、とある店舗ビルの前で足を止めた。

 

「今日(わたくし)こちら(秋天橋)に足を運んだのは、このお店にお伺いしたかったからなんです」

 

 彩雅の説明を聞きながら八尋が目にしたのは、ビルの一階に店を構えた喫茶店。

 場所柄メイド喫茶かと思われたが、掲げられた看板が肉球の形状をしている他、窓に貼られた様々な動物のシルエット等。この喫茶店が、メイド喫茶や純粋な喫茶店でない事を物語っていた。

 

「動物カフェ……。彩雅さん、動物が好きなんだ」

「そうなんです! 犬や猫などの動物も好きなんですが、(わたくし)は特に、ハリネズミが大好きなんです! あの背中の鋭い棘に反してお腹のぷにぷにした触感や、あのつぶらな瞳がとても愛らしくて大好きなんです! 特にここ"あにまるんず"さんの人気ナンバーワンとしてSNSで紹介されていたハリネズミの"ふぅ"さんは、ヨツユビハリネズミというハリネズミの中で最もポピュラーな品種なのですが、ぶち模様のあるパイドと呼ばれる珍しい色をしているので──。あ、すいません! (わたくし)ったら、つい……」

 

 まるでオタクの様に、彩雅は大好きなハリネズミの話になると饒舌になってしまう様だ。

 そのギャップに、八尋はますます心惹かれるのであった。

 

「その、(わたくし)、ハリネズミの事となるとついお喋りが止まらなくなってしまって……」

「全然大丈夫ですよ! 寧ろ、俺も大好きなTBFの事になると話が止まらない時もあるから、彩雅さんの気持ち、凄く分かります!」

「ふふ、似た者同士ですね、(わたくし)達」

「ですね、ははは!」

「では、そろそろ入りましょうか」

「はい」

 

 こうして距離を縮め終えた所で、二人は動物カフェのあにまるんずに入店する。

 その後二人は、彩雅が会いたいと熱望していたハリネズミのふぅをはじめ、様々な動物と触れ合いながら、楽しい一時を過ごすのであった。

 

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎるもの。気が付けば、空は夕焼け色に染まり切ろうとしていた。

 そんな空の下、楽しい一時を過ごし終えた二人に、別れの時が訪れる。

 

「八尋さん、今日は色々と、ありがとうございます。とても楽しい時間でした」

「こちらこそ!」

「ちょっとだけ……名残惜しいですね」

「え……」

「ですが、八尋さんとは近いうちにまた会う事ができる。そんな気がします」

「あの、それって──」

「ふふ、では八尋さん、ごきげんよう」

 

 程なく通行人の人波に消えた彩雅の後姿を見送った八尋は、彩雅が最後に口にした意味深な言葉を胸に刻みながら、自身も帰路につくべく秋天橋駅に向けて足を進めるのであった。

 

 

 

 

 再び車上の人となり、揺られる事数分後。

 夏愛駅へと到着し数時間ぶりに愛用の自転車にまたがった八尋は、そのまま自宅に戻る……のではなく、夏愛商店街へと自転車を進めた。

 その理由は秋天橋駅にて電車を待っていた時、倉矢から無料の通信アプリを通じて伝えたい事があるからニッパーに来てくれ、と連絡があったからだ。

 

 程なく、既に会場の片付けも粗方終わり大会の熱気も冷め、いつも通りの様子を見せている夏愛商店街へと到着した八尋は、店の脇に自転車を停めるとニッパーの自動ドアを潜った。

 

「よぉ、待ってたぞ!」

 

 店内には坂井店長の他、拓叶と葉月、それに倉矢と幸来の四人の姿があった。

 

「ん?ねぇ八尋くん。何かいい事でもあったの?」

「……え?」

「何だか、嬉しそうな様子だったから」

 

 四人のもとへと近づいた八尋は、不意に葉月の口から飛び出した質問に対して、一瞬言葉を詰まらせる。

 どうやら自分自身でも気づかぬうちに、彩雅と出会えた喜びが表面に現れていた様だ。

 

 素直に打ち明けようか迷ったが、主に拓叶に茶化される気がしたので適当に誤魔化す事にした。

 

「えっと……秋天橋でTBF用の掘り出し物のパーツや武装を手に入れたから、多分それでじゃないかな!」

「ふーん、そうなんだ」

 

 八尋の返答を聞き少なからず疑念を抱く葉月。一方の八尋は、誤魔化す事に成功したと思い内心安堵するのであった。

 

「それで倉矢、俺に伝えたい事って一体?」

「実はな……聞いて驚くなよ八尋!」

「そうなの、倉矢くん、すっごく頑張ったんだよ!」

 

 追及を避ける意味合いも込めて話題を変える八尋。すると、拓叶と幸来の口から気になる前置きが語られる。

 刹那、倉矢もまた意味深な笑みを浮かべていた。

 

「これ、見てくれ」

 

 刹那、倉矢は一枚の紙を取り出すと八尋の方へと差し出した。

 

「……な!」

 

 差し出された紙に書かれた内容に目を通した途端、八尋は目を丸くする。

 何故ならそこに描かれていたのは、夏愛商店街主催のTBF大会にて優勝した事を称える文章。即ち、倉矢が夏愛商店街主催のTBF大会にて優勝した事を物語っていたからだ。

 

「大会初出場で優勝するなんて、凄いじゃないか倉矢! おめでとう!」

 

 まるで自分の事のように、倉矢が優勝した事を祝福する八尋。

 

「にしても、まさに有言実行だな!」

「へへ……」

「あ、と言う事は、もしかして拓叶と葉月さんの二人も!?」

「おうよ! 俺達三人で表彰台を独占……、と言いたいところだが。生憎、俺は準々決勝敗退だ」

「因みに私は三位入賞」

 

 大会に参加した拓叶と葉月の戦績を聞き終え、健闘むなしく準々決勝で敗退した拓叶を励ます八尋。

 そして、話の流れで準優勝者がどの様な人物かを八尋が尋ねた直後、何故か四人の表情が曇り始める。

 

「……あれ? もしかして俺、何か不味い事でも聞いた?」

「いや、そんな事はないんだけど」

「ちょっと、ね」

「くそ! 思い出したらまた腹が立ってきたぜ!」

 

 どうやら準優勝者に対してあまり良い印象がないのか、不快感を露わにする大会参加組の三人。

 すると、そんな三人に代わり、観戦していた幸来が事情を説明し始める。

 

「八尋くん、凱士(ときじ)高校って知ってる?」

「えーと確か、市内でも有名な不良高校、だよね」

「実は今日の大会に、その凱士高校の生徒の人たちも参加してたの」

「え、そうだったの!?」

 

 幸来曰く、今回大会に参加したのは凱士高校の不良たちを束ねている番長と呼ばれる人物の仲間で、自らを凱士高校三人衆と名乗った三人。

 そんな三人は大会の最中、勝利を挙げれば負けた相手を口汚く罵り、逆に負ければ調子が悪かっただけだのインチキだのと文句を垂れる始末。

 当然、実行委員側も三人に注意をしたものの、結局最後までやりたい放題した様だ。

 

 因みに、拓叶が準々決勝で敗退した時の対戦相手がその内の一人だったらしく、拓叶がこの話題で一段と不愉快になっているのはそれが原因との事。

 

「確かに口は汚かったけど、TBFの腕前に関しては、そこまで悪いものじゃなかった」

「そうね。特にリーダー格の女子生徒は、現に準優勝者な訳だし」

 

 言動に難があるとはいえ、三人のTBFの腕前が高い事実を、若干悔しそうに語る倉矢と葉月の二人。

 

「あー、もう止めようぜこの話題!」

「あぁ、そうだな」

「そうね」

「そうだね」

「ごめん、俺が余計な事聞いたから……」

「気にするなって」

 

 こうして準優勝者に関する話題が終わりを告げた所で、場の雰囲気を変えるべく、拓叶が口火を切る。

 

「なぁ八尋」

「ん?」

「俺達この後、倉矢の優勝を祝してファミレスに行くんだが、当然八尋も来るよな?」

「勿論!」

「よし、それじゃいくぜー!」

「「おぉーっ!!」」

「若いって、いいねぇ……」

 

 拓叶からの提案を快く快諾した八尋は坂井店長に見送られながらニッパーを後にすると、そのまま四人と共に近くのファミレスへと赴き、そこで倉矢の優勝を再び祝うのであった。

 

 因みに、お会計に際して大会不参加の八尋が奢るのがいいのではとの拓叶の提案に際し、八尋は優勝した倉矢を除く四人で割り勘にするべきだとの主張を展開。

 最終的に、八尋と拓叶の二人による絶対に負けられない世紀の一戦(じゃんけん)で決着をつける事となり、その際八尋は完璧で究極の必勝法である"パー"を出したのだが……。結果、八尋が奢る事になったのは、ここだけのお話。




やっぱりお嬢様キャラは外せませんですわ!
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