プラモクラフトな世界で心に火を点け生きていく   作:ダルマ

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お待たせしました、それでは続きをどうぞ。


第十話 旅行だ! 温泉だ! お土産ゲッチュだ!

 倉矢が夏愛商店街主催のTBF大会にて優勝し、八尋が秋天橋で彩雅と出会う等。濃厚な日曜日から早いもので一週間ほどが経過した。

 四月の末、それは学生のみならず社会人も待ち焦がれた期間の始まり……即ち、ゴールデンウィークの開始である。

 

 当然、暁高校の生徒達も各々の過ごし方でゴールデンウィークを堪能していた。

 家族と旅行に出かける者、部活動に勤しむ者、中には通常の休日と同じ様に過ごす者等々。素晴らしき休日の日々を思い思いに過ごしている。

 

「ありがとうございました!」

 

 そんな中、八尋はどの様にゴールデンウィークを過ごしていたのかと言えば、相も変わらずニッパーでのアルバイトに精を出していた。

 

「本当にありがとうね、八尋君」

「いえ、どうせ誰かと遊ぶ予定もないですし、自宅にいても自作パーツの試作品を作ってる位だったので」

「おや、てっきり倉矢君達と遊ぶ予定があるかと思っていたよ」

「皆それぞれ先約があったみたいで……」

「成程ね。……そういえば、八尋君はご家族と旅行に行かないのかい?」

「坂井店長。俺の父親の職業、忘れたわけじゃないでしょ?」

「おっと、そうだったね」

 

 現在三期目の任期を務めている夏愛市議会の議員。それが、八尋の父親である辰哉の職業である。

 六月・九月・十二月・三月の年四回開催される市議会への出席はもとより、市議会の閉会中でも議員事務所での来客対応や視察、更には研修やデスクワーク等々、市民の代表としてより良い街づくりのために日々奔走している。

 その為、ゴールデンウィークの様な大型連休に家族で旅行に行く機会などなく、八尋自身もまた、それが当たり前という認識であった。

 

「そう言う坂井店長は、旅行に行かないんですか?」

「僕はお店でお客さんとお喋りしている方が楽しいから」

「坂井店長らしいですね」

「さてと、それじゃ残り時間も頑張ろうかな」

「はい」

 

 

 それから数時間後。

 上記の様なやり取りが行われた本日の業務を無事に終え、ニッパーを後にする八尋。

 愛用の自転車を進める事十数分。帰宅した八尋は出迎えてくれた母親の美沙希に声をかけ自室で着替えなどを済ませると、先に帰宅していた辰哉と共に、リビングで家族揃っての夕食を楽しんでいた。

 

「八尋、少しいいか?」

「ん、何?」

「八尋は明日バイトが休みだったよな」

「うん、そうだけど?」

 

 その最中、不意に辰哉が翌日の予定を確認してきたので、何事かと疑問符を浮かべる八尋。

 すると次の瞬間、辰哉が意外な言葉を口にする。

 

「実は父さん、明日休みなんだ。そこで、久々に家族みんなで旅行に行かないかと思ってな」

「え……旅行?」

「あぁ、どうだ?」

 

 突然の家族旅行の提案に、八尋は暫し目を丸くする。

 やがて冷静さを取り戻すと、八尋は両親の顔を見つめる。

 辰哉は、八尋ももう高校生だし難しいかなと、期待と不安が入り混じったような表情を浮かべ。

 美沙希は、久方ぶりの家族旅行とあって、文字通り目をキラキラと輝かせていた。

 

 そんな両親の顔を見て気持ちを汲み取った八尋は、ゆっくりと返答を始めた。

 

「いいよ」

「おぉ、そうか!」

「久々に家族皆でお出かけ、楽しみね! 思いで一杯作らなくちゃ!」

「所で、何処行くの?」

 

 刹那、そんな八尋の問いに、両親が同時に答えた。

 

「「温泉だ!(よ!)」」

「温泉?」

 

 答えを聞いた八尋は、再び目を丸くするのであった。

 

 

 

 

 翌日。

 天候にも恵まれ、絶好のお出かけ日和となったこの日、尾崎家一行は自宅から車で二時間ほどの距離にある温泉地に来ていた。

 風に乗って運ばれてくるお湯の香り、浴衣姿で散策する観光客等。賑わいのある温泉地だ。

 

「晴れてよかったわね、お父さん!」

「本当だな!」

 

 久々の家族旅行に心が躍る辰哉と美沙希。

 そんな二人につられて、八尋も胸が高鳴る。

 

「それで、どの温泉から入るの?」

「まずはあの"雷電の湯"からよ!」

「ほぉ、楽しみだな」

 

 温泉地に複数ある外湯、その内の一つである雷電の湯は、まるでタイムスリップしたかのような大正ロマンを感じるレトロな外観をしていた。

 更に内部も木の香りとぬくもりに溢れており、とてもリラックスできる空間となっていた。

 

 こうして雷電の湯を堪能し終えた尾崎家一行はその後、車懸の湯や有澤の湯等々、幾つかの外湯を堪能する。

 更に昼食を食べ終えた後は、スマートボールやパチンコ等、レトロな遊びを楽しめる遊技場を楽しむのであった。

 

「さぁ、最後はお土産よ! ご近所さんとか、事務所のスタッフさんとか……あぁそうだわ、八尋がお世話になってる玩具屋さんの分も忘れずに! 一杯買わなきゃ!」

「あー美沙希、そこそこのものでいいからな、あまり高いのは……」

「何言ってるのよ! 日頃からお世話になってるんだから、こういう機会の時にこそ、今までの分の感謝の気持ちを込めたものを渡さないと!!」

「あ、あぁ……」

「父さん。母さん、久しぶりの家族旅行で嬉しいんだから、今回位は大目に見てあげたら」

「そうだな……」

 

 そして最後に、尾崎家一行はお土産を買うべく、お土産屋が集まるエリアに足を運んでいた。

 数多くの店舗が建ち並び、店先には、お店ごとに特色のあるお土産がずらりと並んでいる。

 

「あら~、これなんかいいわね。でも、こっちもいいかも……」

 

 そんなお土産の数々に目移りする美沙希。その横で時折アドバイスをする辰哉。

 そして、そんな両親の後ろをついて歩く八尋。

 

 それから暫く、お土産屋を見て回る尾崎家一行。

 しかし、肝心のお土産選びは難航していた。

 

「うーん、どれにしようかしら……。あら?」

 

 そんな時、不意に美沙希が何かに気が付き、それにつられて辰哉と八尋の二人も、そちらに視線を向ける。

 視線を向けた先にあったのは、とあるお土産屋の店先に出来た人だかりであった。

 

「何かしら?」

「行ってみよう」

「そうね」

 

 刹那、美沙希と辰哉の二人は足早に人だかりの方へと向かう。八尋もやや遅れて、そんな二人の後を追う様に人だかりに向かった。

 

「あら、これって……」

「ほぉ、中々面白そうなイベントだな」

「ん?」

 

 程なく、人だかりをかき分け尾崎家一行が目にしたのは、とある店頭イベントであった。

 イベント自体は、開催しているお土産屋の創業ニ十周年を記念して行われたもので、お土産が二割引きから半額になると言うもの。

 それだけでも人だかりを作り出すには十分ではあるが、今回の店頭イベントには、それ以上に人々の興味を引くものが用意されていた。

 

「さぁ! 次の挑戦者さんは何方かなー!? 腕に覚えのある人は、どんどん挑戦してみてねー!」

「ウキーッ!!」

 

 それが、TBFのバトルで勝利すれば三万円相当のお土産セットをプレゼントするという太っ腹なもの。

 しかも、バトルの対戦相手と言うのが、呼び込みを行う女性従業員の前で得意げに佇む一匹のお猿さん。

 

「よーし、なら次は俺が挑戦するぜ!」

「おっと、やる気満々のお兄さんが名乗りを上げた! それじゃ、早速バトルを始めるよ! 準備はいい、シーザー?」

「ウキャッ!」

 

 名乗りを上げた青年は、シーザーと呼ばれたお猿さんとのバトルに対して、既に勝利を確信していた。

 訓練され操作方法を習得したとは言え、所詮はお猿さん。人間である自分が負けるはずなどない。

 だが、その絶対的な自信は、程なく失われる事となる。

 

「嘘、だろ……」

「見事勝利したのは、シーザー!」

「ウキャッキャーッ!」

 

 女性従業員の勝利宣言に胸を張るシーザー。一方、負けた青年は半ば呆然と言った様子。

 そして、一連のバトルを観戦してた群衆は、この結果に大いに沸き返る。

 

「さぁ、このシーザーとバトルして勝った挑戦者には、豪華お土産セットをプレゼントするよ! 挑戦したい人は、どんどん挑戦してねー!」

「八尋、一度挑戦してみるのはどうだ? こんな機会、滅多にないだろうしな」

「え?」

「持ってきているんだろう、お前の大好きなTBF」

「一応、持ってるけど……」

「なら挑戦しましょう! 勝てば豪華お土産セットゲットよ! それに、良い記念になるわよ!」

「「な(ね)! 八尋!!」」

「えぇ……」

 

 まさか両親がこんなにも乗り気になるとは思わず、若干引き気味になる八尋。

 しかし、お猿さんとバトルする機会など滅多にないし、何より先ほどのバトルを見て八尋の中に熱いものが込み上げていた。

 

「はい、挑戦します!」

 

 程なく、八尋は手を挙げると、力強く名乗りを上げるのであった。

 

 

 

 

 両親そして大勢の人々が見守る中、店先に設置されたバトルセウムの前に立つ八尋とシーザー。

 

「バトルは一対一のソロバトル、スタンダード・レギュレーションで行われます。それじゃ、準備はいい?」

「はい!」

「ウキャッ!(勿論!)」

 

 司会進行役兼審判を務める女性従業員の問いに、力強く答える両名。

 

「では、レディー……」

「スイープ・アンフ、発進!」

「キッ、ウキャッ! キシャーッ!!(本能覚醒! やぁっーてやるぜ!!)」

 

 刹那、鬱蒼とした木々に横断する様に流れる川。今回のバトルフィールドであるジャングルのジオラマに、各々が使用するTBFが降り立つ。

 

「バトルスタート!」

 

 黄色と茶色を基調とするカラーリングのパーツ、太い両腕にがっしりとした脚部、更にお尻から伸びる尻尾をイメージした造形は、大自然に生息する猿を彷彿とさせる。

 生き物をモチーフとしたTBFを数多く手掛けるアニマランズ社、同社が販売している猿型TBF、その名を"バトルモンキー"。

 それが、シーザーの使用するTBFである。

 

「これで!」

 

 バトルモンキーは背部に武装を背負う事もなく、その両手にも武装の類を装備していない。

 故に、スイープ・アンフは先手必勝とばかりに両手に装備したシャープマシンガンの狙いを定める。

 

「キキッ!(やられる……なーんてね!)」

「っ!」

 

 だがその時、バトルモンキーが思わぬ行動をとる。

 鬱蒼とした木々の方へと右腕を向けた次の瞬間、音と共にその右腕が木々の方へと伸びていったのだ。

 実はバトルモンキーの両腕はワイヤーハンドとなっており、ある程度の距離があっても伸ばして攻撃することが可能となっている。

 

 そんな腕部の特性を生かし、バトルモンキーは一瞬の内にその姿を鬱蒼とした木々の中へと消した。

 

「くそ!」

 

 反応が遅れたスイープ・アンフは慌ててバトルモンキーが消えた方角に射撃を開始するも、弾薬を無駄に消費するだけに終わった。

 

「一体何処に……」

 

 センサーカメラ越しに、鬱蒼とした木々の中で動くものがないか目を凝らす八尋。

 その時、とある木の陰で何かが動いた。

 

「っ!」

 

 刹那、木の陰からスイープ・アンフ目掛けて勢いよく飛び出したのは、バトルモンキーの両腕。

 まさにロケットパンチの如く、質量弾となったバトルモンキーの両腕がスイープ・アンフに迫る。

 これに対し、スイープ・アンフは咄嗟に、サブアームに装備した中型シールドを構えて攻撃に備えた。

 

 だが次の瞬間、バトルモンキーの両腕は攻撃する事無くスイープ・アンフの脚部を掴むと、そのままスイープ・アンフを鬱蒼とした木々の中へと引きずり込んだ。

 

「しまった!?」

 

 やがて、前後左右、見渡す限りの木々が広がる空間へと放り込まれたスイープ・アンフ。

 この状況を目にし、八尋は瞬時に察する。相手の土俵に乗せられた事を。

 

「っ!」

 

 刹那、何処からか飛来したバトルモンキーの腕がスイープ・アンフを襲う。

 威力はさほどでもなく、大したダメージではなかったが、突然の攻撃に八尋は動揺を隠せない。

 

「そこか!?」

 

 慌てて飛来してきた方角にシャープマシンガンの銃口を向けるも、既にバトルモンキーの気配はなかった。

 

「今度はこっちか!?」

 

 刹那、今度は先ほどとは別の方角からバトルモンキーの腕が飛来する。

 間一髪、サブアームに装備した中型シールドで防ぐも、更に続けて別の方角から三撃目が飛来した。

 

「く、一体何処から……」

「ウキャキャキャッ!(フハハハハッ!)」

 

 翻弄されつつも、バトルモンキーの姿を捉えようとするスイープ・アンフ。

 すると程なく、スイープ・アンフの集音センサーが、木から木へと高速で飛び移る物体の音を拾った。

 しかも、その音はスイープ・アンフの方へと徐々に近づきつつあった。

 

 

 そして、次の瞬間……。

 

「ウキャー!」

 

 シーザーの雄叫びと共に忽然と姿を現したバトルモンキーは、スイープ・アンフの眼前で見事な三点着地を決める。

 

「ウキャ……。ウキャッキャ(オイラの故郷へようこそ……。歓迎するぜ、盛大にな)」

 

 そして、バトルモンキーはシーザーの声に合わせて、歓迎の意を表すかのように両手を広げた。

 

「ウッキー……、ウキキ(挑戦者よ……、あまねく大地の精霊達のご加護を授かりしこのオイラが、お前にまだ見た事のない戦いというものを見せてやろう)」

「??」

「ウキャ、ウキキ!(さぁ、いくぞ!)」

 

 刹那、バトルモンキーは軽快な身のこなしで近くの木を登ると、再びその姿を消した。

 一方、八尋はシーザーが何を言っていたのかは分からなかったが、バトルモンキーの身振り手振りから改めて宣戦布告されたと察知し、警戒を強めた。

 

(何処からくる?)

 

 神経を研ぎ澄ませ、バトルモンキーの姿を捉えようとする八尋。

 だが、そんな八尋を嘲笑うかのように、あちらこちらからバトルモンキーの腕が襲い掛かる。

 

「くっ!」

 

 多少のダメージを覚悟の上で、飛来した方角にシャープマシンガンを放つも、効果の程は感じられない。

 

「ウキキッ!(何処を撃っている、オイラはここだ!)」

「後ろ!?」

 

 刹那、再び忽然と姿を現したバトルモンキーが、無防備となっていたスイープ・アンフの背部に拳をお見舞いする。

 

「く、このままじゃ……」

 

 一撃一撃は僅かでも、塵も積もれば何とやら。徐々に減少していくアーマーポイントを目にし、八尋の顔に焦りの色が見え始める。

 翻弄され防戦一方になりながらも、八尋は突破口を見出すべく考えを巡らせる。

 やがて、八尋はとある作戦を思いつく。

 

「これで!」

 

 刹那、スイープ・アンフはスラスターを噴かせ、木々の間を駆け始める。

 

「ウキャッ!(逃がすか!)」

 

 その姿を確認したバトルモンキーも、木から木へと飛び移りながら後を追う。

 だが、加速性能ではスイープ・アンフに分があり、程なく同機を見失ってしまう。

 

「ウキ―?(何処行った?)」

 

 暫し捜索を続けるバトルモンキー。

 すると程なく、バトルモンキーのセンサーカメラが、川の真ん中に佇むスイープ・アンフの姿を捉える。

 

「ウーキーッ!(みぃーつけた!)」

 

 刹那、バトルモンキーは頭部に搭載されたステルス機能を発動させ透明状態となると、勢いよく木の陰から飛び出し、スイープ・アンフ目掛け颯爽とジオラマを駆ける。

 

「キシャーッ!(これで終わりだぁ!)」

 

 そして、スイープ・アンフの無防備な背部にトドメの一撃をお見舞いしようと腕を振り上げた……まさにその時。

 突如、スイープ・アンフが見えない筈のバトルモンキーに正面を向けると、躊躇う事無くシャープマシンガンの引き金を引いた。

 

「ウキャァ!?(なにぃ!?)」

 

 次の瞬間、至近距離から放たれた弾丸の雨を受けるバトルモンキー。

 程なく、透明状態が解除されたバトルモンキーは、がくりと膝をつくのであった。

 

 

「そこまで! 見事勝利したのは……挑戦者君だ!!」

「「わぁーーっ!!」」

 

 女性従業員の口から八尋の勝利が告げられるや否や、観戦していた大勢の人々の大歓声が沸き起こる。

 

「凄いじゃないか、八尋!」

「流石は八尋ね!」

 

 当然、その中には両親二人も含まれており、八尋は嬉しくもあり恥ずかしくもあると言わんばかりにはにかむ。

 一方、負けてしまったシーザーはと言えば。

 

「ウキ……(まさか、水面の状態からオイラの位置を把握するなんて……)」

 

 必殺のステルス機能を看破された原因を突き止めた後、改めて自身が敗北した事実を痛感していた。

 

「負けちゃったね、シーザー」

「ウッキ……(お姉さん……)」

「でも、最後まで戦い抜いたシーザーの姿、かっこよかったよ」

「ウキ―ッ!(おねいさーん!)」

「よしよし。今回は負けちゃったけど、次は勝とうね、シーザー!」

「ウキッ!!(うん、オイラ頑張る!!)」

 

 しかし、女性従業員に慰められ立ち直ると、次なるバトルの意欲を燃やすのであった。

 

 

 こうして尾崎家による久々の家族旅行は、記憶に残る特別なものとなった。




やっぱり人間以外のプレイヤーがいてもいいよね、という事でお猿さんプレイヤー爆誕!
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