プラモクラフトな世界で心に火を点け生きていく   作:ダルマ

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第十三話 「ある」のがいけない!!!!

 四人で肩を並べて歩く事数十分。無事にニッパーへと到着した四人は自動ドアを潜り店内へと足を踏み入れる。

 

「いらっしゃい……今日は随分と早いね」

「今日は中間テストの初日だったの」

「あぁ、成程。……おや、拓叶君の姿が見当たらないようだけど?」

「それが……拓叶は今日のテストで精根を使い果たしたみたいで」

 

 四人を迎えた坂井店長は当初、拓叶の姿がない事を不思議に思っていたが、八尋の説明で事情を察した様で、程なく納得の表情を浮かべるのであった。

 

「所で、今日は着替えずに来たんだね?」

「今日はバトル・ゲイシャの発売日でしょ、だから息抜きも兼ねて見せてもらおうと思って、学校からそのまま来たんです」

「成程、そうだったんだね」

 

 いつもは私服に着替えてから訪れる事の多い四人が、今日に限って制服姿である理由を葉月の口から聞き、納得した様子の坂井店長。

 同時に、本日入荷したばかりのバトル・ゲイシャを早く見たくて待ち切れない四人の様子を感じ取ったものの、坂井店長は何故か、申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「本当ならすぐにでも見せてあげたいんだけど……ごめんね。実は、今朝入荷した分は既に完売してしまったんだよ」

「「えぇ!?」」

「本当にごめんね」

「……完売したのなら、仕方ないな」

「うん、そうだよね」

「むぅ……この時間なら、完売する事はないと思ってたのに」

 

 坂井店長の口から出た完売の事実に、倉矢・幸来・葉月の三人は残念そうな様子を浮かべながらも、完売したのなら仕方がないと感じていた。

 しかし八尋は、三人とは異なりこの状況に納得する事無く違和感を覚えていた。

 

「んー、何だか納得できない」

「え、納得できないってどういう事、八尋くん?」

「確かにバトル・ゲイシャは新商品だけど、発売前の注目度は、入荷した分が直ぐに完売してしまう程高くはなかった筈なんだ」

 

 曰く、事前にSNS等で調べたバトル・ゲイシャの世間の注目度は然程高くはない為、直ぐに品薄になるようなこの状況はあまりにも不自然との事。

 すると、八尋の言葉を聞いた葉月達も、この状況に違和感を抱き始める。

 

「確かに、それは妙だな」

「愛好家の人が買っていった可能性はないかな?」

「その可能性も考えられなくはないけど……」

「ねぇ坂井店長。バトル・ゲイシャを買っていったお客さんって、どんな人だったか覚えてない?」

「えーっとね、確か若い男性の二人組で……。あぁ、そう言えば二人ともサングラスをかけていたよ。それに、語尾に"っす"と付けていたね」

「サングラスをかけて、語尾にっすを付けて話す二人組の若い男。うーん、これだけじゃ、探し出すのは難しそうね」

 

 坂井店長から購入者の特徴を聞いた四人だったが、あまり有力な手掛かりとなる情報は得られなかった。

 こうして、当初の目的であるバトル・ゲイシャの実物を見る事が叶わなかった四人は、暫く坂井店長と談笑した後、ニッパーを後にする。

 そして、そのまま各々の自宅に帰るのかと思われたが。

 

「ねぇ、気分転換にファミレスに寄っていかない? 丁度お腹も空いてきた事だしさ」

「いいですね!」

「俺も賛成!」

「うん、いいよ」

「なら、早速レッツゴー!」

 

 葉月の提案により、四人は以前倉矢の大会優勝の祝賀会を開いたファミレスへと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 ファミレスに到着した四人は、ドリンクバー付きながらもワンコインと言うお手頃価格な日替わりランチで楽しい昼食を取る。

 食後、四人はドリンクバーで各々選択した飲み物を片手に談笑に興じていた。

 

「この後は、どうしようか?」

「そうだな……。拓叶はいないけど、明日の中間テスト二日目に向けた勉強会をウチでやる?」

「それがいいかな。ね、葉月さんもそれでいい?」

 

 幸来・倉矢・八尋の三人がこの後の予定を相談しているのを他所に、葉月は自身のスマートフォンを操作し、画面を一心に見つめていた。

 一体何を熱心に見ているのかと八尋が尋ねると、葉月はスマートフォンの画面を見せる。そこに映し出されていたのは、とあるSNSの投稿画面であった。

 

「これって……」

「実はね、バトル・ゲイシャの件がどうしても気になって、ネット上に何か情報がないか探してたの」

「それで、このSNSの投稿を?」

「うん。それに見てこれ、この投稿以外にも既に完売しちゃったって投稿が沢山上がってるの」

「本当だ。秋天橋のお店や他の地域のお店でも売り切れが続出してるなんて……」

 

 SNS上に上がった悲しみの声の数々。

 ニッパーと同様の事が複数個所で同時に起こっている、これには八尋も不穏な空気を感じずにはいられなかった。

 

「それで、この投稿、これ見て」

「ん?」

「この投稿者の人、今朝"クレイドルモール"でバトル・ゲイシャを購入しようとしていたみたいなのよ」

「本当だ」

 

 クレイドルモールとは、夏愛駅と歩道橋並びに地下通路で直結した大型ショッピングモールである。

 地下一階から地上四階までの各フロアには食料品から雑貨、更には家電やコスメにペット等々、約二百もの専門店が入っている。その為、老若男女幅広い層が買い物や食事、更には様々なエンターテイメントを楽しめる空間となっている。

 当然その中には、TBFを含めた玩具を販売する玩具専門店も入居していた。

 

 今回葉月が見つけた投稿者は、この玩具専門店でバトル・ゲイシャを購入するべく開店の数分後に向かったのだが、到着した時には既にバトル・ゲイシャは売り切れ状態となっていた事が文章で綴られていた。

 

「クレイドルモールの玩具専門店は全国展開している大手だから、入荷した数もニッパーよりも多い筈。それなのに、開店数分で完売なんて……」

「しかも、これには続きがあるの」

「続き?」

「そう、これよ」

 

 先ほどの投稿から数分後、新たに投稿されたその内容は驚くべきものであった。

 クレイドルモールを後にした投稿者が購入できなかった悔しさを噛みしめていた矢先、ふと自身の目の前を、サングラスをかけた数人の男達が通り過ぎていった。しかもその手に、自身が買えなかったバトル・ゲイシャの箱を大量に抱えて。

 これに気付いた投稿者は、彼らが買い占めの犯人であり、尚且つ購入の目的も自らが遊ぶのではなく転売目的であると理解する。

 刹那、投稿者は驚きの行動に出る。なんと彼らを尾行し始めたのだ。おそらく、尾行して彼らの拠点を暴く腹積もりなのだろう。

 

 そして彼らを尾行した結果、夏愛市の北東郊外にある"ナツヴェーラ"なる場所に男達が入っていくところまで突き止めたものの、そこで止む無く尾行を諦めた。との文章で締め括られていた。

 

「ナツヴェーラ、一体何処だ?」

「ナツヴェーラ、ナツヴェーラ。うーん、確か以前、何処かで聞いた事があった気がするんだけど……何だっけ?」

 

 投稿の中に出てきたナツヴェーラなる場所に首を傾げる倉矢と八尋の二人。

 すると、不意に幸来が口を開いた。

 

「私、知ってるよ。ナツヴェーラは今は使われなくなった古い工場や建物が並ぶ市の未利用地の事で、数年前から再開発等促進区として計画は持ち上がっているんだけど、何故か市議会で何度も否決されて、計画は宙に浮いた状態なんだって」

 

 そこで幸来は一拍置いた後、更に説明を続ける。

 

「そんな場所だから人の目も届きにくくて、今では不良さん達のたまり場になってるって言われてる。因みに、名前の由来はブラジルでスラムや貧民街を指す言葉ファヴェーラ、その言葉をもじって名付けられたんだって」

「そうだ思い出した! 昔父さんが、市長や市長派の議員が何故か首を縦に振らないってぼやいてた所だ」

「そんな場所があったなんて、流石は幸来、物知りだな! 助かったよ」

「えへへ、お役に立てて良かった」

 

 幸来の説明を聞き思い出した様子の八尋。一方の倉矢は、疑問が解消されると、幸来にお礼を述べるのであった。

 

「と言う事で、今からそのナツヴェーラに行ってみない?」

「え、今から!」

「で、でも葉月ちゃん……危ないよ」

「そうだよ葉月さん、一体どういう事かな?」

 

 こうしてナツヴェーラの正体も判明した所で、葉月の口から唐突に飛び出した提案に、他の三人は驚愕する。

 そして、八尋が何故その様な提案をしたのかと尋ねると、葉月は説明を始めた。

 

「坂井店長も言ってたでしょ、バトル・ゲイシャを買い占めたのはサングラスをかけてた人物だって」

「うん、確かに言ってたね」

「そして、クレイドルモールで買い占めたのも同じくサングラスをかけてた人物達。つまり、両者は同じ集団のメンバー、即ちナツヴェーラにたむろしている不良達じゃないかと推測したの! 不良なら、例え平日で学校があっても欠席する事に躊躇いもない筈。だから、開店前に並ぶ事も難しくないわ。それに、語尾に"っす"って付けるのはため口でしょ、だから絶対、犯人は不良達だと思うの!」

「うーん、確かに葉月さんの言う事も一理あるけど。仮に今回の買い占めの犯人が不良達だったとして、おそらく目的はお金の為だと思うけど……わざわざこんなまどろっこしいやり方を不良がするのかな?」

「不良だからこそ、こういう"悪知恵"が働いたんじゃない?」

「それはそうかもしれないけど……」

 

 葉月の説明を聞いた八尋は、どこか腑に落ちないでいた。

 

「なら八尋くんは、不良以外の誰が買い占めの犯人だと?」

「それは……分からないけどさ」

「他に手掛かりがないからこそ、絞り込む意味でも、ナツヴェーラに行って直接真相を確かめてみないと!」

「だったらさ、せめて行く前に誰か大人に相談した方がいいんじゃないかな。ナツヴェーラは不良のたまり場で危険な場所な訳だし」

「あの葉月ちゃん。私も、そうした方がいいと思う」

「確かに、何があるか分からないし、その方がいいかもな」

 

 最早、自分では葉月を止めることができないと悟った八尋は、相談という形で大人の口から葉月に思いとどまる様に説得してもらおうと考えた。

 幸い、幸来と倉矢の二人も事前に大人に相談する事は賛成なようで、三対一の多数決により事前の相談が決定した。

 

 そして四人は、身近に相談できる大人である坂井店長のもとへ向かうべく、ファミレスを後にするとニッパーへと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 数分後、四人がニッパーのある夏愛商店街まで戻ってきた時の事。

 不意にニッパーから、二メートル程はあろう巨漢のお客さんが出てくる場面を目撃することになる。

 刹那、突如葉月が声を上げた。

 

「あぁ!」

「どうしたの、葉月さん?」

「あれ、あの大男! 先月の夏愛商店街主催のTBF大会に出場していた凱士高校三人衆の一人よ!」

 

 ニッパーから出てきたお客さんは、確かに制服と思しき学ランを身に付けていた。

 顔を確認できたのは一瞬の筈だったが、やはりその巨漢故に、葉月は彼の事を覚えていた様だ。

 

「やっぱりそうよ、買い占めの犯人は不良、それも凱士高校の不良達で間違いないわ!」

「ちょっと葉月さん、急にどうしたの?」

「犯人は現場に戻るって言うでしょ!? 多分、買い占めに漏れがないかを確認しに来たのよ。番長に束ねられている不良達なら、組織的に行動できたっておかしくないわ!」

 

 自身の推測が確信に変わったとばかりに、自信満々に話す葉月。一方の八尋は、やはりどこか腑に落ちないでいた。

 

「そうとなれば、早速後を追いかけましょう!」

「え!? でも場所は分かってるんだし、相談してからでも……」

「これは絶好のチャンスなのよ! 早くしないと見失っちゃう!」

 

 しかし、結局葉月の勢いに押されてしまい、四人は尾行を開始するのであった。




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