ニッパーから出てきた凱士高校三人衆の一人を尾行する事数十分。
道中電柱や自販機など、物陰に隠れながら尾行を続けた四人の姿は、市の北東部にある閑静な住宅街の一角にあった。
「あ、あそこは……」
刹那、四人はとある風景を目にし声を上げた。
それは住宅街を抜けた先に広がる、まるで時が止まったかの如く佇む非日常の風景。
主を失い、栄華を極めていた頃の輝きも消え失せ、静かに……だが確実に朽ちてゆく。ノスタルジーを感じずにはいられない、そんなナツヴェーラと呼ばれるエリアの外縁部。
まるで生と死の境界線を示すかの如く張られた立ち入り禁止のロープ。
そのロープを躊躇うことなく、凱士高校三人衆の一人は慣れた様子で越えると、エリアの奥深くに姿を消した。
「見失う前に、私達も行くわよ!」
「う、うん!」
その様子を電柱の影に隠れながら確認した四人も、葉月の合図と共に立ち入り禁止のロープを越えて、ナツヴェーラ内へと足を踏み入れる。
そこに広がっていた世界は、四人が普段生活している世界とは全くの別世界であった。
放置されて久しい自動車、朽ち果てた木箱や錆びついたドラム缶、経年劣化でコケや錆、更には壁にひび割れなどが現れた建物の数々。
まさに死者の世界と呼ぶに相応しい、命の営みを感じられないその雰囲気の中を、四人は歩き続けていた。
「ね、ねぇ倉矢くん……」
「ん、どうしたんだ幸来?」
「その……手、繋いでもいい?」
しかし、遂にその雰囲気に耐え切れなくなった幸来は倉矢に助けを求める。
「もしかして怖いのか?」
「う、うん」
「分かった、ほら」
すると、倉矢は幸来を安心させるかのように、柔らかな笑みを浮かべながら手を差し出す。
刹那、差し出された手を握った幸来は不安や恐怖が消えたのか、安堵の表情を浮かべるのであった。
一方、そんな二人の前方を歩いていた八尋と葉月の二人はと言えば。
「ねぇ……八尋くん」
「何、葉月さん?」
「気づいてる? さっきから私達に向けられている視線に」
「うん。多分、ここにたむろしている不良達だよね。今はまだ監視しているだけで、襲ってくる気配はないみたいだけど……」
ナツヴェーラに足を踏み入れて暫くした頃から感じ始めた視線の数々。
その正体を推測した二人は、今の所害はないのでこのまま様子を見る、との結論に至るのであった。
こうして監視の目を受けつつ、奥に向けて更に歩みを進めていく四人。
やがて四人の目の前に、少し開けた空間が現れた。
「その制服、あんた達暁高校の生徒だろ? そんな優等生ちゃん達がこんな所にきて、なーにしようって言うんだい?」
刹那、その場に放置されていた廃車の影から、セーラー服を着用し赤いメッシュの入った黒髪を靡かせた、いかにもスケ番と言わんばかりの雰囲気を纏った女子生徒が姿を現す。
するとそれを合図とするかのように、学ランやセーラー服を着用した凱士高校の不良生徒と思しき者達が次々と姿を現し、八尋達を逃がさないように囲み始めた。
「ま、こんな人気のない所に男と女がやって来てする事って言ったら、アレしかないけどね」
「アレ、アレって何だ?」
「馬鹿、アレって言ったら"あ"から始まるアレしかねぇだろ!」
「あぁ、"あなたと合体したい"か!」
「大佐和ぁ! あんたなにベタなボケかましてんだよ!」
スケ番女子生徒の言葉に反応し、不良達の一部が漫才の様ならやり取りを始める。
しかし、どうやら大佐和と呼ばれた不良のボケが気に入らなかった様で、スケ番女子生徒の 声が飛んだ。
「不甲斐ないです、姉御……」
「そこは、"あやとり"って言うんだよ!」
「流石です、姉御!!」
そして、大佐和に対する指導を終えた所で、スケ番女子生徒は脱線した話を本題に戻し始めた。
「所であんた達。こそこそと
「っ!」
「ま、何を企んでるかは知らないけど……ここに足を踏み入れた以上、どうなるかは分かってんだよね?」
目つきを鋭くし、語気を強めるスケ番女子生徒。
これに対して八尋達は臆することなく、毅然とした態度を貫く。
「貴女、凱士高校三人衆の一人よね!」
「んー? あんたの顔、何処かで……あぁ、思い出した! あんた、確か先月商店街のTBF大会に出場して、アタシにボロ負けした奴じゃない! それにそっちのあんた、決勝でアタシと戦った奴よね!」
一番に声をあげた葉月の顔を見て、スケ番女子生徒は夏愛商店街主催のTBF大会にて葉月とバトルした事を思い出した他。更に続けて倉矢の事を思い出した様子から、どうやら彼女が三人衆のリーダー格にして大会で準優勝を果たした人物の様だ。
「何であんたがこんな所に……まさか、アタシに負けたのが悔しくて、わざわざ再戦しに来たの? は、だったら何度やっても無駄無駄!」
「再戦するのに、賽銭はいらねぇ。……くくくくっ」
「おやびんの言う通りでがんす。何度再戦しても、おやびんに敵うはずないでがんす!」
少々煽りながら語るスケ番女子生徒。そんな彼女の背後から、二つの人影が姿を現した。
現れたのは、薄気味悪い雰囲気を纏いながら自身の呟いた駄洒落で一人笑う男子生徒。そして、八尋達が尾行していた、鹿次郎と呼ばれた巨漢の男子生徒だ。
「
「ひ! す、すいません……姉御」
そんな二人に対してスケ番女子生徒は厳しく注意をすると、再び八尋達に対して話を続けた。
「兎に角。怪我したくなかったら、さっさと回れ右してお家に帰んな!」
「ここまで来て、そう簡単にはいそうですかって帰る訳ないでしょ!」
勇ましい葉月の言葉に、スケ番女子生徒は面白くなさそうな顔を浮かべる。
「隠しても無駄よ! 貴女達が今日発売したばかりのRZA社のTBF、バトル・ゲイシャを買い占めてるって事は、もうお見通しなんだから!」
「……はぁ? あんた、何言ってるの?」
「だから、白を切っても無駄なのよ!」
「ここで白を切るのはしらけーる。……くくくくくっ!!」
「源晃先輩、相変わらず寒いでがんす」
「お前ら、ちょっと黙ってろ!!」
刹那、スケ番女子生徒は源晃と鹿次郎を一喝して黙らせると、咳払いした後、再び口を開く。
「あんたさ、何か勘違いしてるんじゃないの? アタシらは、そのバトル・ゲイシャなんてTBFの事は、これっぽっちも知らないんだけど」
「幾ら白を切っても無駄よ! こっちには、貴女達の仲間がクレイドルモールの玩具専門店でバトル・ゲイシャを買い占めて、それをこのナツヴェーラに運び込んだって情報を掴んでるんだから!」
「……はぁ? あんたさ、さっきから本当、何言ってる訳?」
食い違う両者の言い分。このまま話は平行線をたどるかと思われた矢先、鹿次郎が声をあげた。
「バトル・ゲイシャ……思い出したでがんす!」
「あ? どうしたんだい鹿次郎?」
「おやび……姉御。バトル・ゲイシャと言えば、今朝
「あぁ、成程。あれの事か」
二人のやり取りを聞いていた葉月がやっぱり白を切っていたと憤るのを他所に、二人は葉月を無視して更に話を続ける。
「姉御。もしかしてあいつら、
「そういう事か。確かにあのTBFは
「強盗は、業が深い。業・twoだけに……くくくくっ!!」
相変わらずの源晃はさておき、スケ番女子生徒と鹿次郎は、八尋達がバトル・ゲイシャに固執する理由を理解した様だ。
「よーくわかったよ、あんた達がここに来た理由がね! ……だけど、だからってはいそうですかなんて、素直に渡すとでも思ってんの!?」
「え?」
「そんなに欲しいなら、先ずはアタシらとバトルして勝つんだね!!」
刹那、八尋達の目の前にハンディ・バトルセウムが展開され、同時に三人衆が各々のTBFを取り出した。
この突然の流れに、八尋達は困惑の表情を浮かべる。
「葉月さん。ここはバトルしないと、どの道逃がしてはくれなさそうだよ」
「そうみたいね」
バトルをする気満々の三人衆の他。八尋達を囲んでいる不良達も、口々にバトルを行えと言って圧力をかけていた。
「……いいわ。そのバトル、受けて立つ!」
「そうこなくちゃね。所で、バトルは三対三だけど、あとの二人は誰が参加するんだい?」
「なら、俺が参加する」
「なら俺も! ……幸来、応援を頼む」
「うん! 頑張って、皆!」
こうしてチームメンバーが決定した所で、葉月・八尋・倉矢の三人は各々のTBFを用意すると、ハンディ・バトルセウムの前に立つ。
「レギュレーションはリミットレス、それでいいね?」
「えぇ、勿論」
「それじゃいくよ! "クノイチ・アゲハ"!」
「"ヨイチ"、出陣……」
「いくでがんす、"ヨコヅナ"!」
「トイアリス、いくわよ!」
「ラーベアハト、ゴーッ!」
「スイープ・アンフ、発進!」
刹那、各々のTBFがハンディ・バトルセウム内に投入され山岳のジオラマに降り立った所で、戦いの幕が切って落とされた。
スケ番女子生徒が操作するのは、背部に装備した巨大な手裏剣の如くユニットが目を引き、黒を基調とした装甲パーツがまるで忍び装束を纏った女忍者を彷彿とさせるTBF。その名をクノイチ・アゲハ。
一方源晃が操作するのは、頭部の兜、肩や腰などを保護する大袖や草摺を模った赤と白のパーツの数々。それらが平安時代の鎧である大鎧を彷彿とさせるものの、脚部は逆関節を採用した異形のTBF。その名をヨイチ。
最後に鹿次郎が操作するのは、頭頂部の髷や腰部の廻しを模したパーツにがっちりとしたシルエット、何よりも目を引くのが通常の腕部よりも巨大な射撃武装を内蔵した両腕。所謂武器腕を有している事だろう。その見た目から一目で力士をモデルとしていると分るTBF、その名をヨコヅナ。
何れもRZA社が製造・販売しているTBF達である。
「この前は大会ルールで出来なかったけど。今回は、その可愛い機体をバラバラに切り刻んでやるよ!」
「そうはいかないんだから!」
先に動いたのは、両チームで機動力の高いクノイチ・アゲハとトイアリスであった。
安定した足場の少ない山岳のジオラマだが、両機はその高い機動力で足場の悪さを感じさせることなく山間を飛び越えるように接近すると、片やくないをモデルに刃の部分がビーム状になっているニンジャ・ナイフ、片やセブン・キー。それぞれの得物を用いて近接戦を繰り広げ始める。
一方のラーベアハトとスイープ・アンフも、数少ない安定した足場を使って、残りの敵機と会敵するべく足を進めていた。
「っ! 危ない!」
だがその道中、不意にスイープ・アンフがラーベアハトの前方に飛び出すと、瞬時にサブアームの中型シールドを展開させる。
次の瞬間、展開した中型シールドに何かが飛来し、爆発を生じさせた。
「何だ!?」
音もなく、突如爆発が起こった事に驚く倉矢。
一方の八尋は、スイープ・アンフの両手に装備したシャープマシンガンの銃口をとある方角に向けると、躊躇う事無く引き金を引いた。
「くくく、凄いね。腕が四本もあるんだ、それ。いいなぁ、嬉しいな、そんな奴と戦えて
弾幕が斜面に置かれた岩に飛来するや否や、その影から、両手用武装の弓であるダイキュウを装備したヨイチが姿を現した。
その姿を見た瞬間、倉矢は先ほどの爆発がダイキュウによるものだと理解する。
バズーカ系やスナイパー系の両手武装と比較し弓系の武装は弾速や射程等で劣るものの、消音性が極めて高い。その為、奇襲攻撃を行うのに適した武装と言えた。
「でも、一度防いだだけで勝った気になるのは、お門違いだよ。地の利はこちらにある。だから君達は、血糊を吐く事になるよ。くくくっ!!」
相変わらず自慢の駄洒落で一人笑う源晃。だが先ほど呟いた言葉ははったりなどではなく、逆関節の脚部の特徴である高い跳躍力を生かし、険しい斜面を飛んで移動しながら、手にしたダイキュウから爆発矢を放つ。
放たれた爆発矢を中型シールドで防ぐスイープ・アンフ。同機の影に隠れながら、装備したビームライフルで応戦するラーベアハト。
各々の特性を生かした銃撃戦が繰り広げられる中、そこに新たな影が近づく。
「わしの事を忘れてもらっちゃ困るでがんす!」
「くっ! 新手か……」
その正体は、鹿次郎の操作するヨコヅナであった。
張り手の如く両手を突き出すと、手の平にあたる部分に設けられた発射口から弾丸を発射していく。
可能ならば左右どちらかに退避して避けたいスイープ・アンフ。だが今回は安定した足場が限られている為、不用意に回避すれば斜面を転がる危険性がある。故に中型シールドで防ぐ事しかできなかった。
「鹿次郎、このままじわじわと追い詰めていくぞ」
「おっす! 源晃先輩」
その言葉の通り、激しく攻め立てるヨイチとヨコヅナ。
対する八尋と倉矢の二人は、自機の状態を確認しつつ、この状況を打開するべく考えを巡らせていた。
「八尋、シールドの耐久値はまだ大丈夫か?」
「今はまだ。けど、このままじゃ何れ壊れる」
「なら、俺がヨイチの方に仕掛けるから、八尋はヨコヅナを頼めるか?」
「ちゃんと仕留めてよ」
「分かってるって!」
そして、話し合いを終えた二人は、仕掛けるタイミングを合わせるべくカウントダウンを始める。
程なく、カウントがゼロになると同時に、スイープ・アンフとラーベアハトが一転して攻勢に出る。
「っ、飛んだ!?」
スラスターを噴かせ、天高く飛翔するラーベアハト。
刹那、同機に狙いを定めるべくヨイチが一瞬動きを止める。その瞬間こそ、倉矢が待ち望んだ瞬間であった。
「今だ!」
機械音声と共に、ラーベアハトが構えたビームライフルの銃口にエネルギーが集束していく。そして次の瞬間、集束したエネルギーがヨイチ目掛けて放たれる。
巨大な弾丸と化したエネルギーは見事にヨイチを貫き、直後、ヨイチは爆散するのであった。
「敗北の二文字……、やらレター」
「あぁ、源晃先輩! こ、このぉ、よくもやったでがんすね!」
ヨイチがバトルから落伍し、怒りの矛先を接近してくるスイープ・アンフに向けるヨコヅナ。
しかし、スイープ・アンフは怒りの弾丸を中型シールドを駆使して防ぎながら、両手のシャープマシンガンを発射する。
撃ち合いならば重装甲のヨコヅナに分がある、鹿次郎がそう思った次の瞬間。ヨコヅナの両腕が突如として爆発した。
「ぬぁ! ヨコヅナのツッパリテッポウが!?」
「いくら本体の装甲が厚くったって、発射口までは装甲化できないからね!」
どうやら、発射口を狙って放たれた弾丸が見事に発射口に入り、内部からヨコヅナの武器腕を破壊したようだ。
攻撃手段である武器腕を失い、あとは降伏するしかないと思われた。だが、ヨコヅナは諦めることなく、その巨体を生かした体当たりを仕掛ける。
当然ながら、スイープ・アンフはそれを受けるつもりなど毛頭ない。
一旦バックステップで距離を取ると、右手の装備をシャープマシンガンからビームトライデントに持ち替える。
機械音声の無慈悲な宣告と共に、黒く輝く光のランスがヨコヅナ目掛けて放たれる。
次の瞬間、その巨体を光のランスに貫かれたヨコヅナは膝から崩れ落ちると、その巨体を爆炎の中に消すのであった。
こうしてヨイチとヨコヅナを撃破した後、スイープ・アンフとラーベアハトの両機は、トイアリスのもとへと向かう。
程なく、両機のセンサーカメラが、未だクノイチ・アゲハと激しい近接戦を繰り広げているトイアリスの姿を捉える。
しかし、どうやら戦況はクノイチ・アゲハに有利らしく、トイアリスは防戦一方の様子であった。
「く!」
「ははは、だから言ったんだよ、何度やっても無駄だって! さぁ、これでトドメだよ!!」
刹那、クノイチ・アゲハの背部に装備していたユニットがビーム状の刃を展開すると、ユニットが背部から分離する。次の瞬間、クノイチ・アゲハは巨大手裏剣と化したユニットをトイアリス目掛けて投げた。
迫る巨大手裏剣を避けようとしたトイアリスだが、これまでの戦闘でのダメージが脚部に蓄積したのか、機敏に動けずぎこちない。
最早万事休すと思われた、次の瞬間。巨大手裏剣目掛けて巨大なエネルギーの弾丸が飛来すると、巨大手裏剣を貫き破壊する。
「な!?」
「八尋くん、倉矢くん!」
「お待たせ、葉月さん!」
「これで三対一、形勢逆転だな!」
刹那、トイアリスのもとへと駆け寄るスイープ・アンフとラーベアハト。
必殺の巨大手裏剣を失い、倉矢の言う通り、戦況はスケ番女子生徒側が圧倒的に不利となる。それでも、彼女は闘志を滾らせる。
「なめるんじゃないよ! 二人がいなくても、アタシ一人であんた達三人を倒してやるよぉっ!!」
威勢のいい言葉と共に、両手にニンジャ・ナイフを装備したクノイチ・アゲハが、突撃を敢行する。
だが無情にも、スイープ・アンフとラーベアハトから容赦のない弾丸と光弾の雨が放たれる。
当初こそ、自慢の機動力で何とか躱し続けていたものの。やがて一発が命中すると、続けざまに数発が命中し、装甲の薄いクノイチ・アゲハは耐え切れずに倒れ込む。
だが、そこでバトルが終了する事はない。何故なら、虫の息ながらも、クノイチ・アゲハはまだ活動を停止していないからだ。
そんな同機に、トイアリスがゆっくりと近づいていく。
「どうやら今回は、私の勝ちの様ね」
「く、くそーーっ!!」
葉月の勝利宣言とスケ番女子生徒の叫び声が交差する中、トイアリスは装備したセブン・キーを高らかに振り上げる。次の瞬間、振り上げたそれを、クノイチ・アゲハ目掛けて勢いよく振り下ろした。
こうして三対三のチームバトルは、八尋達の勝利で幕を閉じるのであった。
「嘘だろ……」
「三人衆が、負けた」
「マジかよ。あいつら鬼つぇぇっ!?」
三人衆が負けるとは想像もしていなかった様で、バトルを観戦していた不良達の間にどよめきが起こる。
一方、バトルを行った当事者達は、ハンディ・バトルセウム内から各々のTBFを回収する。そして、無事に回収を終えると、葉月が口火を切った。
「さぁ、私達が勝ったんだから、約束通り、私達の言う事を素直に聞いてもらうわよ!」
「……はん! だーれが、あんた達の言う事を素直に聞くもんか!」
「な、何よそれ、約束が違うじゃない!」
バトルに勝利すれば大人しく言う事を聞くと思われていた。だが実際は、一向に態度を改める素振りもなく、葉月は憤慨する。
「アタシらに一度勝った位で調子に乗るんじゃないよ! そうだね……もし素直に言う事を聞いてほしかったら、アタシらの仲間と三回バトルして、三回とも勝ってみな。そしたら、素直に聞いてやらなくもないよ?」
不敵な笑みを浮かべながら、あっけらかんと新たな条件を提示するスケ番女子生徒。これに対して、葉月の怒りのボルテージは最高潮に達そうとしていた。
そして、葉月が怒りの反論を行おうとした、まさにその時。
「お前ら、なーにみみっちい事言ってやがるんだ!?」
「「「っ!!」」」
何処からともなく男性の声が響き渡ると、その直後、八尋達のもとへと近づく足音が聞こえ始める。
足音の方へと八尋が視線を向けると、そこには、自分達の方へと近づいてくる一人の青年の姿があった。
「悔しかろうが筋を通す。それを忘れた訳じゃねぇだろう、
「ぼ、
スケ番女子生徒こと加菜から
また、百九十センチ近い高身長も相まって、日本人離れした雰囲気を醸し出していた。
「お前ら、加菜達が駄々をこねたようで、すまなかったな」
「え、いえ……」
「
「負けを素直に認めるのも強さだ、違うか? ま、負けて悔しいと思う気持ちは分からなくもない。それが一度負かした相手となると、尚更だよな。……なら、その悔しさ、俺が少し紛らわしてやろう。ほれほれ」
「ふぇ!」
刹那、
この突然の行動に対して、加菜は子ども扱いするなと口では言っていたものの、その顔は、まさに満ち足りた表情であった。
程なく、加菜の頭を一頻り撫で終えた所で、
「さて。お前ら、暁高校の生徒だな。そんなお前らがこんな所まで、一体何の用だ?」
「その前に一つ聞いてもいい?
「あぁ、そうだ。俺が凱士高校の現番長、ジュン・ディクソンだ!」
自己紹介を行う
その後、八尋達が簡単な自己紹介を終えた所で、葉月が本題を切り出そうとしたのだが。不意にジュンがそれを制止する。
「ここじゃぁなんだ、奥に行って話をしようじゃねぇか?」
「分かったわ」
「よし、ならついてこい」
そして、ジュンや加菜達不良と共に、八尋達はナツヴェーラの奥地へと向かうのであった。
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