プラモクラフトな世界で心に火を点け生きていく   作:ダルマ

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第八話 男には負けられない戦いがある

 秋天橋タワーを後にした八尋は、数多くの専門店が軒を連ねるメインストリート……ではなく。あまり人気のない、裏通りにある個人経営の店舗を中心に見て回る。

 メインストリートにある大手企業の経営している専門店は品質も品ぞろえも文句がないが、やはり安定した経営の為、掘り出し物のパーツ等は少ない。

 それに対して個人経営の店舗は人気を得るために、一体どの様な経路で入手したのか時折企業の試作品等、本来非売品の筈のパーツ等が販売されている事もあって、スイープ・アンフの強化に使えそうなパーツを探すには最適であった。

 

 因みに、現在スイープ・アンフが使用しているコア・シャーシやパーツ等も、その様な店舗で手に入れた品物である。

 

「うーん……」

 

 そうした店舗を見て回る事数軒目。八尋はとある店舗の商品棚で、気になる商品と巡り合う事となる。

 それは、TBF用の光学系射撃武装であるビームキャノンの四門セットであった。

 

 TBFの武装は、スタンダードハンドガンやコンバットソードの様に、実弾・実体系の武装が多い。

 だが、中にはビームライフルの様な光学系の武装も存在している。

 しかし、光学系の武装は実弾系に比べて販売価格が総じて割高の傾向にある。その理由は、実弾系に比べて内部構造が複雑であるが故だ。

 勿論長所もある、それが実弾系に比べて威力が高い事だ。最も、威力だけを求めるのならば実弾系でも高威力を誇るバズーカ系やキャノン系の武装でも十分ではないか、との意見もあろう。

 

 だがしかし、だがしかし! そんな意見があったとしても、八尋がこのビームキャノンに心惹かれたのは偏に、光学系武装が男のロマンだからだ。

 加えて四門セット故に、光学系にしてはかなりリーズナブルな販売価格になっている事も心惹かれたポイントであった。

 

「うーん……」

 

 それから暫く値札を見つめ、自身のお財布事情と脳内で相談をした結果、八尋はビームキャノンの四門セットの購入を決めた。

 こうして、掘り出し物を手に入れて満足げな笑みを浮かべた八尋は、現在時刻を確認する。すると、まだ帰るには少し早い時刻であった。

 

「どうしよっかな……」

 

 粗方用事も終わり、余った時間の使い方をどうするべきか考えながら、八尋はぶらぶらと秋天橋を歩き始める。

 それから暫く、特にあてもなく歩いていた、その時。

 

「なぁ、いいだろ? ちょっと付き合ってくれよ?」

「そうだぜお嬢ちゃん。すこーし、俺達と遊んでくれるだけでいいからよ」

「ぎひひ!」

 

 不意に裏通りの一角から、何やら若い男性の声が聞こえてくる。

 気になった八尋が声のする方へと向かうと、そこには壁際に追い詰めるようにして八尋と同年代と思しき女の子に迫る、見るからにガラの悪そうな三人の若い男の姿があった。

 

「なぁ、おい。いい加減返事位したらどうなんだ、あぁ!」

「おいおいお嬢ちゃん、俺達がやさしーく言ってる間に、応じた方が身のためだぜ?」

「そうだぜ、ぎひひ!」

 

 その下卑た笑みや高圧的な態度から、男達が女の子に対して無理やり迫っているのは明白であった。そして、そんな彼らの態度故に女の子が怯えて断れない事も。

 当然、八尋同様彼らの声に気が付いた人々もいたが、面倒事に巻き込まれるのを嫌ってか、殆どの人が見て見ぬ振りをしている。

 

 そんな中、八尋は男達の方へと近づくと、臆することなく声をかけた。

 

「ちょっとすいません」

「あぁ!? 何だぁゴラァ!」

「ん、なんだよにーちゃん?」

「ぎひ、俺達に何か用か?」

 

 八尋に声をかけられ、三者三様に反応を示す若い男達。

 

「彼女、どう見ても嫌がってますよ。嫌がる女性を無理やり誘うのはよくないと思います。それに、複数で脅すかのように──」

「んだテメェ! 関係ねぇ奴は引っ込んでろ!」

「おいおい、にーちゃん。なーに俺達に説教垂れてんだよ」

「生意気だぜ、ぎひひ」

 

 どうやら八尋の介入に気分を害したらしく、三人は標的を女の子から八尋へと切り替えるや、八尋に対して高圧的な態度と共に脅しともとれる言葉を述べ始める。

 

「女の前だからって調子乗ってんじゃねぇぞゴラァ!」

「まー落ち着けよ、ブラザー。にーちゃん、あの子にいい所でも見せたいのか? だったら、俺達に払うもん払ってくれるんなら、素直に引いてやってもいーんだぜ?」

「そりゃいいな、ぎひひ」

「悪いけど、そんな提案には乗りません!」

 

 八尋の毅然とした態度に、三人の中で一番高圧的で尚且つ体格の良い男が手を出しそうになる。

 しかし、そんな男の行動を、リーダー格と思しき妙なアクセントをつけて話す男が制止する。

 

「だから落ち着けって、ブラザー」

「……チッ!」

「にーちゃん、あんた勇ましいねぇ。だからさ、俺達もそんなにーちゃんの勇ましさに敬意を表さねぇとな」

「それは、どういう事ですか?」

「つまりよ。俺達だってにーちゃんに手ぇあげて、ポリスメーンのご厄介になるのは御免だ。そこで……こーいつで勝負しようぜ!」

 

 そう言いながら、リーダー格の男は手にしたあるものを八尋に見せつける。

 彼の手のひらに乗せられたそれは、紛れもなくTBFであった。

 

「にーちゃんだって持ってるんだろTBF? だったら、バトルで白黒ハッキリさせようぜ! 当然、にーちゃんが負けたら、出すもん出してもらうぜ」

 

 まさか不良がTBFバトルを仕掛けてくるとはと意外に思った者も多いかもしれないが、TBFブームが世界中を席巻している昨今、その影響は不良たちにも及んでいた。

 最も、その影響はよいもの等ではない。具体的には、金銭を巻き上げる行為を正当化する為に用いられていた。

 暴力を振るって金銭を巻き上げれば、当然ながら警察沙汰になる。だがTBFのバトルとなれば、被害者側に暴行を働いている訳ではないので、警察も介入が難しくなる。

 

 勿論、業界を始め警察等もこの問題を解決する為に動いてはいるものの、具体的な解決に至っていないのが現状であった。

 

「返事はどうしたんだよにーちゃん。まさか、怖気づいた訳じゃねーよな?」

「……そのバトル、本当に俺が勝ったら潔く引いてくれるんですね?」

「勿論。俺達だって男だ、二言はねーよ」

「ではそのバトル、お受けします!」

「ヒューッ! そうこなくっちゃな!」

「いいねぇ、面白くなってきたねぇ、ぎひひ」

「テメェのTBFをぶっ潰して、吠え面をかかせてやる!」

 

 刹那、下卑た笑みを浮かべる男がハンディ・バトルセウムを取り出すと、スイッチを押し投げる。

 するとハンディ・バトルセウムが展開し、あっという間にバトルの準備が整う。

 因みに今回のジオラマは、土地の凹凸がほぼない、一面に緑の絨毯が広がる大草原のジオラマである。

 

「さぁにーちゃん、準備はいいかぁ?」

「その前に、今回のバトルのレギュレーションは?」

「当然、リミットレスに決まーてるだろうが!」

「分かりました」

 

 レギュレーションの確認を終えた所で、八尋はスイープ・アンフをハンディ・バトルセウム内に投入する。

 すると同時に、リーダー格の男も自身のTBFを投入し、更には残りの二人も自身のTBFを投入した。

 

「お、おい! これじゃ三対一じゃないか!」

「そうだそうだ、ソロバトルじゃなかったのかよ!?」

「卑怯だぞ! 正々堂々バトルしろ!」

 

 刹那、一連の流れを見ていた通行人達が口々に、三対一の変則バトルは卑怯ではないかとの意見を述べ始める。

 

「あーぁ? 俺達は、ソロバトルをするなんて一言も言ってねーよ? 俺達は、単にバトルで白黒ハッキリさせると言って、にーちゃんもそれに同意したんだ。だから、三対一でも問題ねぇんだよ! って訳で、関係ない外野はだーってろ!!」

 

 すると、リーダー格の男はそれらの意見に対して一喝。周囲に静寂が訪れた所で、いよいよ、バトルの幕が上がる。

 

 

 

 

「さぁ、いーくぜ!」

「ぶっ潰す!!」

「ぎひひっ!!」

 

 がっちりとした体格に、兜のような頭部、更には全身を覆う鎧を連想させる堅牢な装甲パーツ。その姿はまさに、中世ヨーロッパの重装歩兵を彷彿とさせる。

 不良三人組が使用するのはSzUが製造・販売している重装歩兵型TBF、その名を"ヘビーナイト"。

 その外観から剣や盾等の装備が映えるが、不良三人組が使用するヘビーナイトは両手用武装のアサルトマシンライフル、バズーカ系のアサルトバズーカと言った重火器を装備していた。

 

「見た事ねーぇ機体だが、関係ねぇ、ぶっ壊してやるよ!」

「惨めに吹き飛べぇっ!!」

「蜂の巣、蜂の巣ぅ!」

 

 身を隠す為の遮蔽物が全くないジオラマ、それはまさに、装備した火力を遺憾なく発揮できる場所と言えた。

 それを証明するかのように、三機のヘビーナイトから次々と、弾丸の雨やバズーカの弾頭の数々がスイープ・アンフ目掛けて飛来する。

 

 そんな火力の嵐を、スイープ・アンフは俊敏な動きで躱しつつ、両手に装備したスタンダードハンドガン、そして今回はサブアームに装備したシャープマシンガン。合計四挺によるクアドラプルトリガーで応戦する。

 

「な、何だよアイツ!? 腕が四本もあるのか!?」

「き、聞いてねぇよそんなの!」

「お、臆するんじゃーねぇ! 腕が四本あろうが八本あろうが、本体は一つだけーだ! 数の有利は俺達にある、構わず畳み掛けろ!」

 

 初めて目にするスイープ・アンフの姿に浮足立つ不良二人。しかしリーダー格の男の言葉で落ち着きを取り戻し、自らが操作するヘビーナイトの火器を一心不乱に発射し続ける。

 大草原のジオラマに木霊する銃声と爆発音、そして幾多も立ち上る黒煙。

 まさに戦場と呼ぶに相応しい中を、スイープ・アンフは巧みに掻い潜りながら応戦し、三機のヘビーナイトに着々とダメージを与えていく。

 

「この野郎、ちょこまか動きやがって。早く蜂の巣になれぇ!」

 

 撃てども撃てども躱され、徐々に余裕がなくなってきたのか、下卑た笑みを浮かべる事も忘れ眉間にしわを寄せる男。

 刹那、そんな彼のヘビーナイトに狙いを定めたのか、スイープ・アンフがアサルトマシンライフルの弾幕を掻い潜りながら接近していく。

 

「ひ! く、くるなぁ!」

 

 臆することなく弾幕の中を掻い潜りながら接近するスイープ・アンフ。その姿に男は戦慄を覚え、アサルトマシンライフルを乱射する。

 すると、意外にもそれが功を奏し、スイープ・アンフは彼のヘビーナイトの目と鼻の先で急停止すると、スラスターを噴かせて後退した。

 助かった……と、男が安堵した次の瞬間。彼のヘビーナイト目掛け、横合いからバズーカの弾頭が飛来し、直撃。爆発音と共に彼のヘビーナイトは爆炎の中へと姿を消した。

 

「あ……」

「あ、なぁっ! 何しやがる!!」

 

 アサルトバズーカを装備したヘビーナイトは一機のみ。

 故に、誤射をした犯人を即座に特定した男は、まさかの幕切れとなった怒りを、体格の良い男に対してぶつけた。

 

「あ、あの野郎がちょこまかと動き回るから、仕方ねぇだろ」

「だからって誤射するかよ!」

「んな事言ってもよぉ……」

「この──」

「テメェら、まだバトルの最中だぞ! 喧嘩するなら後にしろ!」

 

 一触即発かと思われたが、リーダー格の男の一喝で二人は言い争いを止める。

 一方、不良三人組がその様なやり取りを行っている間にも、スイープ・アンフは次の行動に移っていた。

 

 両手に装備したスタンダードハンドガンを放り投げ、先ほど味方の誤射で破壊されたヘビーナイトが装備していたアサルトマシンライフルを回収するスイープ・アンフ。

 刹那、新たな得物を手にしたスイープ・アンフは、アサルトバズーカ装備のヘビーナイトへと迫る。

 

「な!?」

 

 そして、あっという間に懐に飛び込むと、アサルトマシンライフルと二挺のシャープマシンガンが火を噴く。

 如何に堅牢な装甲パーツを擁するヘビーナイトと言えど、零距離からの射撃を受けては耐えきれる筈もなく。程なく、上半身が穴だらけになった無残な姿を、大草原に横たえさせるのであった。

 

「馬鹿な。あっと言う間に二機も……」

 

 三対一という数の有利、更には自分達の火力を十二分に生かせるジオラマ。このバトル、負ける可能性は限りなく低いとリーダー格の男は思っていた。

 だが実際は、あっという間に味方の二機が倒され、戦況は五分……。否、スイープ・アンフの性能と八尋の操作技術の高さから、リーダー格の男の方が分が悪いのは本人も薄々感づいていた。

 

 しかし、ここで弱音を吐いてしまっては自身の沽券に関わる。

 故にリーダー格の男は弱音を隠すように吠えると、装備していたアサルトマシンライフルを再び撃ち始める。

 

 一方スイープ・アンフは、回収したアサルトマシンライフルを捨てると、両肩部に装備されたビームセイバーを抜刀する。

 所が、今回は光の刃が形成される事はなく、柄の部分が伸張を始める。程なく、伸張が止まった所で、先端に三つ又の光の刃が形成される。

 これは、ビームトライデントと呼ばれる武装だ。

 

「な、何をする気だ……」

 

 アサルトマシンライフルを捨ててビームトライデントを選択する。八尋の真意を測れず困惑するリーダー格の男。

 刹那、ビームトライデントの先端にエネルギーが集中する様を目にし、彼はようやく気が付く。

 

「まさか……!」

 

 だが、既に手遅れであった。

 

〈インテンスストライク、ブリッツランス〉

 

 八尋のスマートフォンから発せられた機械音声と共に、ヘビーナイト目掛けて集中したエネルギーが放たれる。

 刹那、放たれたエネルギーは黒く輝く光のランスを形成し、まさに稲妻の如く、ヘビーナイトに迫る。

 次の瞬間、回避する間もなく光のランスが直撃したヘビーナイトは爆散し、最後を迎えるのであった。

 

「ス、スゲー。あれがインテンスストライクか」

「まさに必殺技だな!」

 

 観戦していた通行人達が感嘆の言葉を零す程の強力な一撃、それがインテンスストライク。一発逆転も狙える、所謂必殺技だ。

 勿論、発動にはバッテリーを消費する他、使用後は隙が生まれる事もある等、使いどころを見極める必要がある。

 また、装備している武装ごとに異なるインテンスストライクを使用する事が可能となっている。

 閑話休題。

 

「勝負あり、ですね」

 

 三対一の変則バトルを見事勝利した八尋。そんな彼を称賛するかのように、観戦していた通行人達から歓喜の声が上がる。

 だがその直後、歓喜の声はリーダー格の男の声にかき消された。

 

「ふっざけるなぁっ!! こんな結果、認められっかーぁっ!!」

 

 負け惜しみとばかりに声を張ったリーダー格の男。だが次の瞬間、観戦していた通行人達から放たれる視線を感じ取り、徐々に威勢のよさが消えていく。

 

「く、くそっ! 覚えてろよーっ!!」

 

 刹那、捨て台詞を吐き逃げるようにその場を後にするリーダー格の男。

 それに続くように、残りの二人も自分達の荷物を持つと、逃げるようにその場を後にするのであった。

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