乙女ゲー世界はヒロインと悪役令嬢が相容れない世界です   作:氷破 熾央漓(ひば しおり)

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【4】お茶会への招待

 お茶会当日。オリヴィアはリオンにエスコートされティールームの前に来てた。

 同じように招待された貴族女生徒たちはオリヴィアを睨み付ける。【平民風情が出しゃばるな】と言わんばかりに。

 だが睨み付けるだけで口に出さないのはリオンが彼女を護るように側にいたから。

 やがて扉が開き招待主であるブラッドが姿を現す。

 

 

「じゃあオリヴィアさん、俺はもう行くから頑張ってね」

 

 

 ブラッドの姿を確認したリオンはオリヴィアに囁くとその場を去って行ったのだ。

 

 

 豪華で華やかなティールームでのお茶会。部屋の内装、調度品なども一級品の拵え。

 出された茶も菓子もとても上質なものだった。それこそ以前にリオンに振舞われたものよりも。

 だがオリヴィアにはとても味気なく感じられ、リオンと共に食べたお茶とお菓子の方が美味しかったようにすら感じられた。

 折角取り持ってくれたリオンには申し訳ないと思いつつ、オリヴィアはお茶会を楽しむ気持ちではなかった。

 気持ちここにあらずと黙って時間が過ぎ去るのに身を委ねるばかり。

 そうしてどれくらい時間が経っただろう。

 

 

「ブラッド様! あんな女のことなんか早く忘れてしまった方が良いですよ」

 

 

 それは招待された他の女生徒の一人が発した声。あの女とはもちろんマリエの事。

 ブラッドたちの恋人で――いや学園を去った今となっては元恋人と言うべきだろうか。

 諦めることも忘れることも出来ず彼女の行方を捜し続けるブラッドたちだったが、周りの反応はさっさと諦めろ忘れろというものばかり。

 彼らもそんな声に耳を貸すつもりはないが、だが決闘の件でそうもいかない。

 

 婚約婚姻は貴族にとって重要な政略の一環であるにも関わらずそれを一方的に破棄し、更には決闘騒ぎまで。

 しかも有力貴族の子弟として勝って当たり前とまで言われてたのに実質引き分け――いや敗北同然の無効試合。

 そんな醜態をさらした彼らに反論は許されてなかった。

 元の婚約者と復縁するか、さもなければ新たな縁を探すか。

 かく言うこのお茶会も新たな縁を探そうとしてると言う体裁を繕うためのものでもあったのだった。

 そうした背景の上でのお茶会なのでブラッドは招待主であるにもかかわらず気が乗らず身が入らなかった。

 先程の女子の様な発言もそうした気乗りしないブラッドの気持ちに付け込んでモノだろうか。

 

 

「そうですよ。あんな女の事さっさと忘れるに限りますよ。大体ブラッド様ほどの方に釣り合ってなかったんですよ」

 

 

 一人が言い始めるとそれを皮切りにと言わんばかりに他の女子達も声を上げ始める。

 女生徒達が上げた声はブラッドにとって耐えがたいものであった。だが彼は堪えた。

 腹ただしく歯がゆくとも先の決闘で大きく立場を落としてしまった今その用に物申せる立場で無いのを理解してたから。

 

 

「私はそうは思いません。ブラッドさんがその方を今も忘れられず想い続けているのって、とっても一途で素敵だと思います」

 

 

 突如場の流れを断ち切るような声に一同の目が集まる。視線の先声を上げたのはオリヴィアだった。

 余計な事など言わずにこの場は乗り切るつもりだったのにどうしても我慢出来ずに言ってしまったのだった。

 そんなオリヴィアに敵意の込めれた視線が集まる。

 

 

「平民風情が嘴挟んでるんじゃないわよ!」

 

「貴族の何たるかも知らないくせに!」

 

 

 オリヴィアは貴族女子達に睨まれ怯え身を竦ませる。やっぱり言うべきではなかったのかもと思い恐怖で目を固く閉じてしまう。

 その時【バン!】と何か叩くような音が響いた。

 音がした方を見ればテーブルに手の平を叩きつけたブラッドの姿が。

 

 

「淑女たるものその様に大きな声で荒らげるものではないよ? それより場が白けてしまったね。どうやらこのままお茶会と言う雰囲気ではなくなってしまったようだ。残念だが今日はこの辺でお開きにしようか」

 

 

 丁寧な口調ではあるが最後の方に向かって声が低くなっていった為、女子達は黙り込む。

 オリヴィアに対しては兎も角、ブラッドに対しては流石に言い過ぎたと思ったのだろうか。

 女生徒たちは席を立ち頭を下げながら部屋を後にして行った。

 オリヴィアも席を立とうとするが肩に手を置かれ、振り返ろうとすると囁きかけられた。

 

 

「君は帰らずに残って」

 

 

 それはブラッドだった。

 オリヴィアはその声に従うように上げかけた腰を下ろす。

 平民の自分が出しゃばって機嫌を損なってしまったのだろうか。怒られるのだろうか。そう思い固く目を瞑る。

 だがそんなオリヴィアの耳に予想とは違った優しく柔らかな声が届く。

 

 

「オリヴィアさん、だったね君の名前。ありがとう、さっきの言葉とても嬉しかったよ」

 

 

 オリヴィアは驚きで目を見開き顔を上げた。彼女の目に映ったもの。それはとても優しく穏やかな微笑みを浮かべたブラッドの顔だった。

 

 

「あ、ハイ。オリヴィアと申します。いえ、そんなお礼を言われる程の事では。思ったことをつい口走ってしまっただけで」

 

 

 オリヴィアが恐縮しながら言葉を紡ぐと、ブラッドは優しい微笑みをたたえたまま静かに首を振る。

 

 

「そんなことないよ。あの決闘、そしてマリエが行方をくらましてしまって以来、僕に話しかけてくる声はマリエの事を忘れろというものばかりなんだ。君だけだよ。僕の彼女への想いを否定しないでくれたの……」

 

「ブラッドさん、本当にその人の事が、マリエさんの事が大事なんですね。愛してらっしゃるんですね。さっきも言いましたが私はその気持ちとっても素敵だと思います。人が人を愛する気持ちってとっても尊いと思います……」

 

 

ブラッドはオリヴィアの言葉を噛みしめるように目を閉じると「ありがとう」と礼を述べる。そして何かに気づいたような表情を見せる。

 

 

「君にもそんな人が居るのかい? もしかして此処までエスコ-トしてくれた彼かい?」

 

「え? いえリオンさんとはその……」

 

 

 オリヴィアは恥じらいと戸惑いが混在したような表情を見せながらもやがて「……ハイ」と照れながらはにかみ答えた。

 

 

「リオン……。バルトファルト家の三男だね。入学前に冒険で大層な功を成したと言う」

 

「ハイ! リオンさんはとっても凄い方なんです! それにとっても優しくって」

 

 

 満面の笑みで答えるオリヴィアにブラッドは目を細める。

 

 

「そうかそんなに凄いのなら僕も一度バルトファルトとはじっくり話してみたいな。先日はお茶会の招待状のことだけで殆ど話さなかったから」

 

「ハイ! ブラッドさんも今度是非リオンさんと……あっ」

 

 

 顔を綻ばせながら答えたオリヴィアだったが直後口元に手を当てる。

 その仕草にブラッドが首を傾げるとオリヴィアは気まずそうに申し訳なさそうに口を開く。

 

 

「あの……今更ですが申し訳ありません。ブラッドさんではなくフィールド様とお呼びすべきだったのに……」

 

 

 それはブラッドがリオンのことを名ではなく家名であるバルトファルトと呼んだのを聞いて思い出したのだった。

 平民であるオリヴィアには家名苗字がない為馴染みが無かったが、貴族の間では親しくない間柄では名ではなく家名で呼ぶのが慣習。

 実はお茶会の前にリオンにも念を押されてたのだが緊張のあまり失念してたのだった。加えて一緒に招待された女子達が皆ブラッドを名前で呼んでたのに引っ張られてと言うのもあった。今更ながらも失態に気づきオリヴィアは頭を下げる。

 

 

「何だそんな事、気にしなくていいよ。僕はそういう家名で呼ばれるような堅苦しいのは好きじゃないから皆にも名前で呼んでって言ってるんだし。他の女生徒達も僕のこと名前で呼んでたの聞いてただろ?」

 

「でも、私平民ですし……」

 

「オリヴィアさん。貴族だからとか、平民だからとか、そこに人としての違いなんてものはないと思うんだ。むしろ貴族の女子なんてその大半は碌な者じゃないよ。さっきの女生徒たち見たろ?」

 

 

 言われて思い出されるのは先ほど迄同席していた女生徒たちの言動。ブラッドがマリエを想い続ける気持ちを否定し、それを擁護したオリヴィアの言葉を罵った女生徒達の言葉。

 

 

「そんな女生徒達よりもオリヴィアさん、むしろ君のような人にこそ名前で呼んで欲しいんだ。僕のマリエへの気持ちを素敵だと言ってくれた君にこそ。そしてそんな君に友達になって欲しんだ」

 

 

 ブラッドが握手を求め手を差し出すとオリヴィアは一瞬考え込むも求めに応じその手を握る。

 

 

「ありがとうございます。わたしもブラッドさんのような素敵な方に友達になって欲しいと仰っていただけて嬉しいです。応援しますブラッドさんとマリエさんの恋」

 

「ありがとう。僕もオリヴィアさんのこと応援するよ。バルトファルトと上手く行くと良いね」

 

 

 そうして二人は友情を誓い握手を交わすのだった。




モブせか本編ともあのせかとも違ったブラッド君とリビアちゃんの出逢いと交流書けて楽しかったです
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