限界少女とハイスペックダメ人間   作:スティック/糊

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感想評価誤字報告ありがとうございます。

11月22日とか言ういくらイチャラブ書いても許されるし、未来IFを書いても許されそうな日を翌日に気が着くと言う体たらく……おいは恥ずかしか、失踪するばい()


妹ディスタンス

 

 衝撃の遭遇から一日はさんで月曜日。

 

 

 昨日、周から真護に次の土曜日に話ができないか、との連絡が来た。

 

 こ、行動が早い。

 

 むしろ遭遇した翌日が日曜日で即突撃がなかっただけ冷静に考える時間が増えたと思うべきだろう。

 

 おおよそ人付き合いと呼ばれる類いの物全般が得意ではない部類に入る夕月はほんの少し憂鬱な気分であった。

 

 奇しくも夕月は自覚してないだけで年頃の妹と小さい喧嘩をして顔を合わせるのを躊躇う姉の様であった。

 

 

 

「憂鬱な表情でどうしましたの」

 

 

 梅雨ど真ん中で、現在進行形で雨が降っていると言うのに相変わらず平常運転なメアリは少し皴っとした表情の皐月に首を傾げた。

 

 本日の昼食は外が雨なので室内。

 

 ……と言うかだんだんと夏に向っているので秋まではおそらく室内だろう。

 

 例によって3人は例のサロンにて昼食をとっていた。

 

 

「……うちの姉さんが結婚することになって本家で親戚どもと顔を合わせてきて疲れてるだけよ」

 

「あらめでたい」

 

「幸い今月式を挙げる訳じゃなくて11月らしいんだけど……我が家の女は全員着物で参列することになって、私のも新調するって言うからひたすら着せ替え人形よ……」

 

 

 ほとんど気にしない野郎どもが羨ましい、と言うか姉は私の着物より自分のウェディングドレスを考えなさいよと皐月は深く、それは深くため息をついた。

 

 

「着物の着付けかぁ……初詣に振袖着て懲りたなぁ。それは疲れるよ」

 

 

 それをおそらく何着も着ては脱がされてを繰り返したのだろうから皐月の苦労はなんとなく夕月にも伝わった。

 

 

「―――ちょっと待って夕月。振袖とか私聞いてない」

 

「……言わなかったっけ」

 

「聞いてない写真、写真見せて。それを見れば今の疲れが吹き飛ぶと思うわ」

 

「旦那のスマホで取ったから私のスマホには神社の写真しかないよ?」

 

「くっ、この憂鬱とした梅雨空に清涼な風が吹いたと思ったのに」

 

 

 バッ、とでも言わんばかりの勢いでこちらを向いた皐月の長い黒髪は剣道少女に良く似合ったポニーテールであり、ふり向いたその勢いで尾っぽの先が激しく揺れた。

 

 円形のテーブルに三方向から座っているからよかったが、隣に誰かが居ればムチの様にぶつかっていたことが容易に想像できた。

 

 

「ワタクシも聞いてませんわよ」

 

「冬休みの最終日に着せ替え人形になった時に着物の着付けきつくて暫く着たくない、みたいな話しなかったっけ」

 

「してませんわ」

 

「ごめんね」

 

「可愛いから許しますわ」

 

 

 メアリの方もゆるく髪がまとめられており、涼し気な雰囲気をだしながら聞いていないとぷんすこしていた。

 

 それはそれとして夕月を着せ替えるチャンスがやってきたら絶対着せようと固く決意した。

 

 

「あ、そうだ。それで思い出した。姉さんから夕月に」

 

「……?」

 

 

 そんな話をしたからか、皐月は懐から一枚の封筒を取り出した。

 

 

「姉さんの結婚式の招待状。夕月に、って」

 

「……私呼ばれる理由あったっけ?」

 

 

 純白の封筒には『狐英夕月様へ』の文字。

 

 狐英(こばな)と言う苗字は、シスターが日本に帰化する時に元々の英名を二転三転させたものでまずみることのない帰化人らしい自由過ぎる苗字で、シスターが亡き今ではこの名字を指すのは私だけだろう。

 

 ……まぁ、結婚してこの姓は旧姓になったのだけど。

 

 

「姉さんが恋人つくらず、独身決め込んでたの……私との蟠りもあったみたい。その主因をどうにかしてくれた夕月にはぜひって」

 

「………私、アレちょっとした黒歴史なんだけど」

 

「むしろ私たち家族にとってはちょっとした転換期だったのよ?」

 

「む……」

 

 

 と言うか姉よりうちの家族の方が転機をもたらした夕月に祝いに来てほしいとのことだ。

 

 ……何か胃が痛い。

 

 

「本当に純粋な気持ちなだけよ。衣類は学生なのだから制服が礼服な訳で、うちの学校の制服とてもしっかりしているし……もしかしてその日何か用事あった?」

 

「いえ、11月は特に何か予定はなかったはずだからその日は空けておく。ぜひ出席させて頂くってお伝えしておいて」

 

「ありがとう」

 

「……それに結婚式ってどんな感じなのか興味もあるし」

 

「その時は呼んでね」

 

「ワタクシも呼んでくださいな」

 

「呼ばせてもらうね。……二人を呼ばなかったら新婦側の参列者がスカスカよ」

 

 

 事実、本当に夕月の交友関係は狭いのでただでさえ家族席が空に等しいのだから。

 

 

「……地雷を踏んだわ、ごめんなさい」

 

「気にしないで」

 

 

 こればっかりは今まで交友関係を築いてこなかった夕月の落ち度みたいなところも大きいのだ。

 

 ……数年後までに式に呼ぶほど親しい人が増える気もしないが。

 

 

「まぁ、実妹は呼べそうだから」

 

 

 夕月はぼそりとつぶやき残りの一口になった弁当を食べ終えると、揃って二人は口を開けて箸を落としていた。

 

 

「……どうしたの?」

 

「実妹!?今実妹と言いました!?」

 

「言った。ほら、春先に二人が見た私のそっくりさんが生き別れの双子の妹みたいで」

 

「生き別れ!?」

 

「それも双子?!」

 

 

 二人は弁当そっちのけで身を乗り出して夕月の続きの言葉を要求した。

 

 あまりの衝撃に弁当食ってる場合じゃねぇとなったのだ。

 

 

「それで―――――――あ、予鈴なったわ。授業行きましょう」

 

「ここで切りますの!?」

 

「生殺し!」

 

「え、私の家族関係より授業でないと」

 

「学生として極めて正しい発言すぎますわ」

 

 

 話を続けようとしたが無情にも午後の授業を告げる予鈴がなったので夕月はいそいそと弁当を片付け始めた。

 

 一応特待生と言う身分なのだ、授業に遅刻などできない。

 

 

 正しい、おそらく正しいのだけれど圧倒的消化不良を残されながらも二人も弁当を片付け始めた。

 

 

 午後の授業中悶々としていた二人は放課後になった瞬間夕月を再び拉致した。 

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 結局、本心で向き合うのが大事だよね。

 

 多少猫を被ったところで、と言う話だ。

 

 猫を被ろうとした結果、義両親には速攻剥がされたし。

 

 

 土曜日に義弟と妹がこちらの方に来ると言う方向性でまとまった。

 

 真護と話し合った辺りでは学生である二人に来てもらうよりも夕月が真護に送ってもらう方がいいのではないかと思ったのだが、この前の土曜日は重い荷物を持たせてこちらに来てもらったし、話をしたいのはこちらなのだから、とそれが譲られることはなかった。

 

 ……この兄弟一度決めると結構頑固な性質はそっくりなのだろうか。

 

 

 夕月も良好な関係を築きたいのは確かだが、変に肩肘張るのもまた別の意味で失礼かと極めて自然体で迎えることにしたが、あまりにも素であると口の悪いめんどくさい女が爆誕するので最低限の体裁は保つつもりだ。

 

 真護的には素な夕月もまた好きだと言うが、あまりにも幼稚な部分があるので気を抜くのは二人の時だけにさせてほしいものだ。

 

 敬う相手はしっかり敬い、親しい関係では少し砕けた口調で話す。

 

 夕月は誰しもに敬語と言うのは疲れてしまう質であった。

 

 やろうと思えばできない訳ではないが。

 

 

 

 そう意気込んで、義両親がやって来た時の様に再び茶菓子を検討したりしているとあっという間に土曜日がやって来た。

 

 ……6月は祝日がないから5日間平日があったはずなんだけど。

 

 

 

 15時少し前、二人はやって来た。

 

 先日は暴走してすみませんでしたと菓子折りを持って。

 

 

「2つほど先に言わせて頂きましょうか」

 

「は、はい」

 

 

 やって来た周と真昼をリビングに案内し、席に着いたのを確認すると、自身のスタンスについて夕月は切り出した。

 

 ここを曖昧のままに話を進めるとグダグダになるし、気を使わせるし気を遣うことになるだろうから。

 

 

「一つ、私は私で貴方は貴方。今までの育ちについて深堀と言うか、言及はしません」

 

 

 先日と違って幾ばくか冷静な様子の真昼を見ながら夕月は一つ目のことを伝える。

 

 こればっかりは今までの育った環境が違うし、色々と比較するところが出来ればおそらく彼女は気にする質ではないかと思う。

 

 捨てられた子と捨てられなかった子。

 

 そこはどうしても心に引っ掛かる所は発生するだろう。

 

 そう告げれば真昼は小さく頷いた。

 

 

 ……これは報告がてら志保子に連絡させてもらった時に聞いた真昼の大まかな事情を考えてのことだ。

 

 勢いで動いて後で反省してしまうあたりは私たちの血筋なのだろうか。 

 

 

「二つ、私はあなたほど血縁者に関しての執着と言う物がありません。双子の姉妹……と言われても正直ピンと来ていないです」

 

「……」

 

 

 真昼にはあなたに対して興味がない、とそう聞こえたのか品の良いワンピースの裾をぎゅっと握った様に見えた。

 

 その様子にかつての自分の拗ねた時の様子を思い出して苦笑いしてしまう。

 

 シスターが突き放すようなことを言う度に修道服の裾をそうやって握りしめていた。

 

 

 まぁ、その手を包んでくれる人が彼女のすぐ隣にいるようなのだが。

 

 

「貴方に興味がない、と言う訳ではないんです。私は人付き合いと言う物が苦手で、兄弟や姉妹と言った距離感が分かりません」

 

 

 なので、貴方との距離が分かるまで親戚のお姉さんくらいの距離感で居られれば。

 

 夕月はそこまで言うと、真護がいつの間にか用意してくれていたらしい紅茶を口にした。

 

 自分の距離感の問題なのだと夕月はそう告げた。

 

 

「どうでしょうか」

 

「はい」

 

 

 ほんの少し寂しそうな顔を浮かべてながら真昼は首を縦に振った。

 

 

「ちなみに、このスタンスが気に入らないと言われた場合喧嘩になります」

 

「……え?」

 

「あくまで今の言い分は私のものですから」

 

 

 姉妹や家族で納得がいかないことは喧嘩をするものなのでしょう?

 

 夕月はちょっとイタズラが成功したかのような表情を浮かべ、ポカンとした表情を浮かべた彼女を見つつきっちりと整えていた姿勢を崩した。

 

 

「堅苦しいの終了。お茶菓子持ってきますね」

 

 

 ぱんっ、と一つ手を鳴らしポカンとした表情の真昼と何が起きたと言わんばかりの表情の周を置いて夕月は腰を上げた。

 

 

「俺が取ってこよう」

 

「そうですか、お任せします」

 

「任された」

 

 

 手持無沙汰になったので夕月は再び椅子に腰を下ろし、気楽にティーカップを手に取った。

 

 

「ああ、外暑かったですよね。麦茶の方が良かったですか?」

 

「あ、あのいえ、紅茶で」

 

 

 そこまで気が回らなかった。

 

 そう思い声をかけてみれば手振りで大丈夫ですと言う表情を浮かべる真昼と、一瞬にして遠い目をした周の姿が見えた。

 

 

『あ、この人は兄貴の奥さんで真昼とは違うタイプの人間だ』

 

 周はその時ひどく納得した。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

「さて、お話でしたね」

 

 

 真護が気合を入れてか、なぜか藤宮宅に存在していたアフタヌーンティースタンドに軽食からお菓子までが積まれていた。

 

 いや、本当に何であるの?

 

 

「あ、えっとあの」

 

 

 夕月が改めて彼らがやって来た話ができないかと言っていた件について触れた。

 

 だが、真昼の懸念していた彼女の関係についてはおおむね先に彼女が宣言してしまった。

 

 

「わ、私はあなたとお出かけしたり、料理作ったり……色々としたいんです!」

 

 

 宣言したが、彼女から喧嘩しましょうと言ったのだからと困惑する自身の頬を叩いて真昼は己を鼓舞した。

 

 

「え、はい。いいですよ?」

 

 

 気合を入れてそう告げたのだが、あまりにも軽い返事で受け止められた。

 

 な、なんか色々と想定していたのと違うんですけど!

 

 真昼はあっさりとした回答に再びポカンとしてしまう。

 

 

「あの、あー横から口をはさんで悪いんだけど夕月さんとしては真昼に何か悪感情とか、邪険に扱いたいって訳ではないと言う認識でいいのか」

 

「はい。今までの育ちとか触れるとめんどくさいでしょうからそこらへんに触れなければ……?良好な関係でありたいとは思ってますよ」

 

 

 ちょっと言いづらそうに周が口を開いたので、夕月は至って素直に返事をする。

 

 そう言った意味合いで2つ先に言わせてもらったのだが……あれ、分かりづらかっただろうか。

 

 真護さんの物言いが映ってしまったのかとちらりと真護の顔を見る。

 

 ……うん、いつも通り。

 

 

「何故、俺をみた」

 

「真護さんの物言いが移ったのかと」

 

「……複雑な気分だ」

 

「悪いこととは言ってないでしょう」

 

 

 真護は真護で、そこまで彼女の中に入り込めていたのかと感じる反面、厄介扱いされているようでとても複雑な心境になった。

 

 夕月からすれば少し厄介ではあるが彼らしく可愛い所だと感じている。

 

 

 夕月は彼女の行いたいらしいことに特に異論はない。

 

 時間が許すならそれもいいだろう。

 

 

「お出かけとか、となるとどこか纏まった時間があった方がいいでしょうし、生活圏内だと面倒もあるでしょうから……」

 

「車なら出そう」

 

「まぁ、もうすぐ夏休みですしその時考えましょうか」

 

 

 あくまで夕月の想像の範疇となってしまうが、生活圏内でお出かけとなると同じ学校の学友に見られたりした時説明などが面倒なのではないだろうか。

 

 それに彼女が邪険にする椎名家との接触があるかどうかも分からないのだ。

 

 帰省が彼らと被ればおそらく志保子が色々なところに連れて行きたいと張り切るだろうし、そこはあまり心配しなくていいかもしれない。

 

 

「あ、あのいいんですか」

 

「?」

 

「私が一方的に、その希望を言っているだけなので」

 

 

 真昼が少し遠慮がちにそう告げる。

 

 夕月は首を傾げるが、彼女からしたら一方的に自分の要望を言っているだけの様に感じているらしい。

 

 

「特に異論はありませんし、私がどうこうしたいと言うのもあまり。学校転校してください、とか真護さんを下さい、なんて言われない限りは特にどうこうは無いんですよね」

 

「一緒に学校行ってみたいとかはなかった訳ではありませんけど、そ、そんな非常識なことは言いません!」

 

 

 基本的に生命活動に関わること以外で夕月が強くこだわりを持つようなものがまずないのだ。

 

 

「と言うか私には周くんが居ますので!」

 

「それならいいんですけど」

 

 

 シレっと夕月に私のもの宣言をされた真護は顔を覆い、流れ弾を食らった周もまた顔を覆った。

 

 双子は無意識に自分のパートナーのハートを殴打した。

 

 

「とりあえず何かしたい、と言うのがあれば提案してもらえればできるかどうかは判断しますし、イヤなことはイヤと言う質なのであまり気にしないでください」

 

「はい………あ、連絡先!連絡先を教えてください」

 

「どうぞ」

 

 

 真昼が思い出したように懐からスマホを取り出したので夕月もスマホを取り出し、最近慣れてきた操作で連絡先の画面を開いた。

 

 

「失礼します」

 

 

 端末のOSが同じであればワン切りを入れることなく簡単に連絡先を交換できるのだと夕月より手早い操作で真昼はスマホを操作し、あっという間に連絡先と、メッセージアプリの交換を済ませてしまった。

 

 て、手慣れている。

 

 登録者がとても少ない夕月の電話帳にはしっかりと椎名真昼の文字が付いた。

 

 

 これで、何か計画を詰めるようなことがあれば連絡をしようと言う話になった。

 

 

「……あなたからは何かないのですか」

 

「冒頭の2つを言いましたが」

 

「あってないようなものです」

 

 

 姉の名前が入った電話帳を見て真昼は頬が緩みかけるが己を律し、夕月に問いかける。

 

 すこし冷静になった真昼は、彼女の行ったことは概ね理解できた。

 

 姉妹として仲良くなって行ける道は出来た。

 

 

 だから、ほんの少し欲張って自分から彼女にしてあげられることはないのかと問いかけた。

 

 

 眉を寄せるほどでは無いが夕月は迷った。

 

 本当に特に何もないのだ。

 

 主に平凡以上の日常を提供しようと日夜頑張ってくれている旦那のお陰で願いらしい願いもない。

 

 やはり夕月の根底にあるのは『暖かな場所』であり、基盤の整った今更に伸ばしたいものがない。

 

 

「なら、一ついいか」

 

 

 そんな困った夕月の横から今度は真護のインターセプトが入る。

 

 ちょっとした横やりの様な形だが、何だろうと真昼も何を言われるのだろうと少し身構えた。

 

 

「……失礼だが君の家庭の事情をざっくりとうちの両親が知っている範囲で聞いた。いざという時に君がご両親と戦うにも、夕月を守る時のための手札の一つとして法的根拠の一つとしてDNA鑑定を行っておきたい。良いだろうか」

 

「はい、それに関してはいずれこちらからもお願いできればと思いましたので問題ありません」

 

 

 DNA検査。

 

 真護は明確な根拠としての手札を要求した。

 

 現時点で椎名の家が夕月に何か手を出せる法的な理由などないのだが、万が一と言うこともある。

 

 手札は多く、そしてより早く動くことに越したことはない。

 

 

 それに関しては真昼も同じであり、自身の生活を脅かすのであればかつて通っていた学校の先生や、ハウスキーパーからの証言と長年付けてきた日記を持って児相に駆け込み一矢報いるつもりであった。

 

 仮に法的に何かが発生しなくても監査が入ると言うことは彼らにとっての大きな痛手になるはずだからだ。

 

 それに一つの説得力を増す要素と、姉を守る剣になると言うのなら真昼に否の意思はない。

 

 

「感謝する。検査の費用等はこちらで持つ、日程が決まったら夕月経由で確認する」

 

「はい。こちらこそありがとうございます」

 

 

 深々と頭を下げる真護に真昼も深く頭を下げた。

 

 

 

 それから、互いの好みだのを話していればあっという間に時間は過ぎ、暗くなる前には送ろうと言う真護の提案でこの場はお開きとなった。

 

 

 彼らを送る道すがら、彼らのマンションとは少し違う方へ真護はショッピングモールに将来の義妹と周を連れまわした。

 

 奇縁ではあるが邂逅した双子に何かおそろいのものを贈りたいから選んでくれ、と。

 

 周は俺も出す、なんて言ったが『納税してから言え』と大人げなくその会計は真護に奪われていった。

 

 

 その日の夜、夕月の勉強机横に飾られた婚約指輪の横に小振りの花柄のアクセサリーが並ぶことになった。

 

 




・夕月の旧姓:狐英

 形式上夕月を養子にしたシスターが帰化する際に、助けを借りた人物がそれっぽいものをと付けた姓。

 シスターはアマリリスと言う姓を持っていたことから彼岸花を連想し、そのままつけるにはあまりよろしくないとなり、彼岸花の品種の一つとされるキツネノカミソリ、別名キツネバナを選択。

 狐花、と言うのもアレだし色々な読みを探して英語圏の人間であったことや、シスターがイギリス系アメリカ人っであるから、と花を(はなぶさ)と言う文字に置き換え上記の姓になった。

 決してその苗字を決めたシスターの友人が帰化した際に家裁で認められる範囲で自由に決められるからと出来るだけかわいい雰囲気にしてやろうと目論んだ訳ではない。

 元軍人のシスターが『帰化する。面倒見てくれ、ついでに修道女になる』悪びれもなく言い放ち、宗教関係で帰化の話を進めるのはめんどくさいのだとブちぎれてぶつけたパッションでもない……ハズ。


 狐は哺乳綱ネコ目イヌ科だとか。


・実家に辛辣真昼さん

 参考:8.5巻


・その内書きたい双子ネタ

 がっつり変装した双子を藤宮兄弟は見分けることができるのか

 あまりにも無頓着なことが露見した夕月に真昼がとにかく世話をやく

 互いの友人に紹介する回

 (義)娘にニッコリ志保子さん
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