限界少女とハイスペックダメ人間   作:スティック/糊

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誕生日とデート

 妹との邂逅(?)が過ぎ7月を向かえる。

 

 7月を迎えると言えば学生的には学期末考査が挙げられるだろう。

 

 安定した生活のお陰で今回も一位を獲得した。

 

 勉強できる時間が安定確保できるってありがたい。

 

 同率一位相手はまたしても全免さん。

 

 

 友人であるメアリと皐月も脳筋ではあるがしっかりとお嬢様であり、テストが苦手と言う話も聞かなかった。

 

 学期末考査が終わったのだから何かパーッとやりましょうとのことで例のごとく近藤邸。

 

 いつものように運動、風呂、飯と言ういっそ何かの合宿なのではなかろうかと感じてしまうような流れにすっかりと慣れてしまった。

 

 

「旦那様の誕生日プレゼントを悩んでいる…?」

 

「そう。あの人物欲ないし、必要なものは自分で揃えちゃうから……悩んでる」

 

 

 風呂から上がり、夏らしくアイスを食べながらふとした悩みを夕月はこぼした。

 

 来る7月9日、次の土曜日が夕月の旦那たる真護の誕生日でありその誕生日プレゼントを夕月は悩んでいた。

 

 

「夕月、そう言う時はリボン一つ買ってプレゼントはワ・タ・シ♡で解決よ」

 

「え、私既にあの人のものだから差し出しなおすのは違くない?」

 

「さらっと行われる惚気と、人妻であると言う事実に脳が、脳がァ!」

 

「落ち着きなさい駄犬。それはアイスクリーム症候群でしてよ」

 

 

 皐月は割と煩悩にまみれたそれらしいことを口にするが、堂々たる発言に思わずアイスを口にかき込んでしまう。

 

 その様子にアイスクリームを一気に食べた時に発生する上あごの冷えに血管が収縮し、脳が誤認を起こし頭痛を発生させる様ではないかとメアリは呆れた。

 

 

「サラリーマンでしたら無難にベルトなりネクタイなり考えられるのでしょうけど……」

 

「趣味とかは?」

 

「読書、なんだけど普通に気軽に買えるの」

 

「……そうなるとしおりとか、押し花、とかかしら……?」

 

「読書に関するアイテム、と言うのも一つの手ですわね」

 

 

 それも一つの案だろう。

 

 夕月としてはこう、しっかりとした感じのものを送りたい。

 

 漠然とした感じではあるが今まで過ごしてきた半年と少しの間で彼の人柄はそれなりに理解している。

 

 おそらく、彼も彼の両親と同じように相手が自分を想って贈ってくれたものなら何でも喜ぶタイプの人間だ。

 

 だからこそ、なんというか……しっかりと祝いたいのだ。

 

 

「後はそうですわね、ドスケベドッグの発言も一理あると思うんですわよ。ものだけじゃなくて体験、と言うのも立派に記憶に残るものですから」

 

「なる程……?」

 

「ですので――――」

 

 

 メアリはほんの少し考えるように、セクハラではないが夕月の旦那を喜ばせたいと言う一心を考え、普段とは違うことを一つ提案した。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 簡潔に言ってしまえば旦那の誕生日は真護が一切の自重をしない夕月を甘やかす時間となった。

 

 ……こちらからもそれなりに反撃をさせて貰ったのだが、なんというか翌日が日曜日で良かった……としか言えない。

 

 

「……あの、真護さん」

 

「どうした」

 

 

 夏らしく適度に冷房の掛かった寝室ではこの日ばかりは真護の方が早く目を覚ました。

 

 夕月は……普段使わない筋肉を酷使し、ベッドの中でうつぶせていた。

 

 

「私、近々友人らと水着を買いに行かせて頂くと話をさせて貰ったと思うんです」

 

「過激なのは家だけにしてくれ」

 

「……そうじゃなくて、コレ!」

 

「あー」

 

 

 昨晩真護に大変愛された結果、夕月の体は無数の虫刺されにあったかの様な姿になっていた。

 

 例によって真護の独占欲の度合いの表れである。 

 

 

「せめて夏休み始まってからにしてください!」

 

 

 起き上がることさえ、昨晩の余韻に負けている夕月には難しいもので、ベッドで真護の作った朝食を食べるほどだ。

 

 年頃の男性に我慢をさせ過ぎるとこうなるのか……?

 

 この半年でそれなりの回数は熟していたはずだ。

 

 なのに未知の快楽と言わんばかりに徹底的に彼に攻められた。

 

 ……最初の方こそ夕月は優勢を取れていたはず、ハズなのだ。

 

 いや、彼がニコニコと受け身に甘んじていただけかもしれないが。

 

 

「あまりにも夕月がいじらしい事を言うからつい」

 

「ついで済ませていい量じゃないんですよ。こう、肌をあまり出さなくていい時期にしてください」

 

「自重はする。たまに、だ」

 

 

 猫かわいがりされて警戒する猫の様にシャーと夕月は威嚇しながら彼に反省を促すが、暖簾に腕押しで糠に釘である。

 

 

「頻度が足りないなら足りないでちゃんと言ってくださいね」

 

「足りてる。夕月に無理をさせていないのか心配になるくらいだ」

 

「左様で」

 

「元々自分のそう言った欲は薄い方だと思っていたんだがな」

 

 

 元々三大欲求は睡眠以外は結構薄い方だと彼は言う。

 

 されど彼は彼なりに知らなかった自分を知ったと笑っていた。

 

 

「欲望の限りを尽くさせてもらったさ」

 

 

 いい誕生日だった。

 

 彼はそう続けた。

 

 雛の様に彼の手ずから小さくされたおにぎりや切り分けられた卵焼きを食べさせられながら、やはりこの人は人の反応を見るのを楽しんでいるんだと照れる視線を隠すように目を伏せ、次を求めて口をあけた。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 真護の誕生日が過ぎ、だんだんと迫る夏休みを前に夕月は真昼とデートをしていた。

 

 先日の彼女の要望のとおり思いのほか早く予定は組まれ、都内をぶらりと歩き回るようなデートが企画された。

 

 

 姉妹なのにデートとは。

 

 そんなことを言いたいが真昼は大変気合を入れてやってきていた。

 

 先日から思っていたのだが、彼女はあまり肌を出すようなファッションをせず清楚なお嬢様と言ったような品のいい恰好をしていた。

 

 

「お待たせしました」

 

「いえ、全然待ってません」

 

 

 真護の運転でその場所までやって来た夕月は真昼に声をかけると、一瞬花の咲いたような笑顔を浮かべてからハっとして、キリリとした表情でそう告げた。

 

 表情が豊かだ。

 

 

「可愛らしい服装ですね」

 

「ありがとうございます……ゆ、夕月はボーイッシュな感じなんですね」

 

「そう、かも?」

 

 

 夏らしいワンピース姿の彼女に比べ、夕月はカジュアルなパンツルックである。

 

 メッセージアプリからどうやって夕月を呼んでいいのか困っていた真昼に「あなたが私に呼ばせたように?」とちょいと意地悪くいってみればたどたどしいながらに呼び捨てで呼ぶようになっていた。

 

 

「以前お会いした時も思ったのですがボーイッシュな感じの服装が好きなのですか?」

 

「特に服にこだわりはないです」

 

 

 夕月は凡そ服に頓着すると言うことがない。

 

 究極まで行けばその場の空気を壊さなければ何でもいいと言うタイプの人間だ。

 

 

「大体真護さんに選んで頂いてますね。後は友人に連れまわされて選んでいるような感じです」

 

 

 今日のファッションは真護さんチョイスです。

 

 そう言いながら脳裏に自分の私服の分布を浮かべてみる。

 

 夕月の私服は7割真護に選んで貰ったもので、2割は友人のチョイスであったりおさがり。

 

 残りの1割は志保子チョイスである。

 

 大体真護のチョイスとなると彼がふらっと出かけた際に似合いそうだったからと買ってくる場合もあり、成人男性が年頃の女の子の服を一人で買うのは些か気まずいらしく、スカート率は少ない。

 

 

「なるほど……」

 

 

 真昼はその言葉で今日の彼女のファッションについておおよそを察した。

 

 シンプルなカジュアル系で、明らかに特定の異性が居ますと言わんばかりのメンズ服が交ざっていることの理由を察した。

 

 真昼も何時ぞや周の洗濯物を取り込んだ際に彼のパーカーを勝手に着た結果、彼に部屋着にしてヨシと言われて自室でたまに着ているのだが、こう言うのもありかと一つの知見をえた。

 

 

「それでまずは喫茶店でしたか」

 

「え、はい」

 

  

 ん?服にこだわりがないのであれば私が選んでもいいのでは……?と真昼の脳裏に一つの案が浮かぶが、当初の目的であるちょっとした食べ歩きの様なデートであることを思い出し、事前に色々とリサーチしておいた喫茶店へ足を運ぶことにした。

 

 

 

 真昼がチョイスした喫茶店は少しお高めの落ち着いた雰囲気の半個室の座席があり、午前中からやっている喫茶店。

 

 姉妹のデートに下手な横やりは入れさせないと言う気持ちがありありと含んでいた。

 

 自分ひとりでもそれなりに声を掛けられるのだ、もう一人同じような女の子が居れば声を掛けられる確率は増えるだろう。

 

 ナンパは要らない。そう言うチョイスである。

 

 

 席に案内され、対面に座るのかと思えば真昼は躊躇いなく横に座ったきた。

 

 『え、対面じゃないの?』とばかりに視線を寄越せば『ダメですか?』と小動物の様な視線を向けられたので深く気にしないことにした。

 

 まぁ、Uの字を書いているようなタイプの席であったため、座りづらくなったら移動すればいいか。

 

 

「こちらフワフワのパンケーキが有名だそうです」

 

「なるほど……?」

 

 

 とりあえずそれと、何か珈琲かな。

 

 夕月はそう思いながらメニュー表を見るのだが、そこそこいいお値段の金額にかつての食費換算をしてしまう癖が抜けない。

 

 それなりに贅沢のできる収入のある旦那であるし、適度に使ってくれと言われるほどだ。

 

 されど、まだ生活基準を露骨に上げると言うことに夕月は慣れていなかった。

 

 

「アイスコーヒーとパンケーキ、かな」

 

「では私もそれで」

 

 

 色々なメニューがある中で、一番シンプルなものを選ぶと真昼はノータイムでそれに追従した。

 

 

「他にもいろいろとあるみたいだけど」

 

「あなたと同じものが食べたいんです」

 

 

 何とも可愛らしい事を言う妹だ。

 

 いつも真護が夕月を撫でるように、夕月も真昼の頭に手が伸びるが、しっかりとしたセットに触れるのを躊躇い、その手は止まった。

 

 

「どうされました?」

 

「撫でたくなったけど、可愛くした髪型に触れるのを躊躇いました」

 

「……どうぞ」

 

 

 ピタッと止まった夕月の手に真昼は首を傾げるが、そう言うことであれば好きなだけどうぞと自身の頭を彼女の方に傾けた。

 

 いいと言うなら……?

 

 夕月は恐る恐ると言ったような手つきで真昼の頭に手を置く。

 

 やはり普段から触っている自分の髪よりもしっかりと手入れがされているのかサラサラとして柔らかい。

 

 色合いもおそらく今までで一度も染めてこなかったのだろうと分かるような色合いだ。

 

 ……数年すれば自分もこんな髪色になるのだろうか。

 

 

「やめてしまうのですか?」

 

「注文をしましょうか」

 

 

 長い事撫でてしまえば、ふとまだ注文をしていなかったことを思い出してその手は止まる。

 

 もっと撫でてと言わんばかりの目線を向ける真昼の視線を避けて、卓上ベルを鳴らした。

 

 真昼は周に撫でられるのとは少し違うほんの少し小さい手に不思議な温かさを感じながらも、スッと離されたことに少し寂しさを覚えた。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 フワフワの名に恥じない中々の厚みがあり、バターとハチミツで頂くパンケーキは大変美味しかった。

 

 今度真護の暇がある時に来よう。

 

 そう思いながら、アイスコーヒーをストローで飲む。

 

 

「珈琲は砂糖とかを入れないタイプなのですか?」

 

「ものによりけりですが、基本的にストレートで飲むのが好きですね」

 

 

 すこし汗ばむ季節に美味しいアイスコーヒーを飲みながら、真昼に好みを聞かれたので答える。

 

 珈琲と紅茶をうまく入れられることに於いて損することはないとシスターに教え込まれていたため、飲み物を入れることにはほんのちょっぴりこだわりを持つ夕月は基本的に自由が許すのであればストレートで飲む派である。

 

 ドリップ珈琲の類いはストレート、エスプレッソやカプチーノなどはほんの少し砂糖を入れる。

 

 こと甘いものを食べるとなれば、飲み物まで甘くあってほしいとは思わないのもあるかもしれない。

 

 

「甘いものはお嫌い、でしたか」

 

「割と好きですよ……?基本的に好き嫌いはありませんし」

 

 

 ここ半年ほどは真護に甘味漬けにされていたので、過度にどうこうという訳ではない。

 

 

「極端にこれが好き、これが嫌い、と言う物がないだけですよ。しいて言えば過度に匂いのキツイものは好んで食べようとは思いませんが」

 

「そうですか」

 

 

 真昼は自身のチョイスを誤ってしまったのではないかと思えば、彼女の味覚はそれなりに真昼と一致しているらしい。

 

 真昼も過度な刺激物以外、基本的には何でもおいしく食べられるタイプだ。

 

 そんな所に一つ共通点を見出し、ほんの少し笑みがこぼれてしまった。

 

 

 

「ああ、こちらに届きました。先日行った検査結果です」

 

 

 飲み物があと少しで飲み終わると言った所で、夕月は思い出したように鞄から一つの封筒を取り出した。

 

 彼らがやって来た翌週には真護が日取りを決めて、しっかりとした機関で行った法的根拠を持ったDNA鑑定結果である。

 

 

「け、結果は」

 

「限りなくDNAのゲノム配列は同じ様です」

 

 

 端的に言えば科学的に一卵性双生児と判定されました。

 

 

 夕月がそう言えば真昼は抱き着き、静かに涙をこぼした。

 

 

「うれしくて」

 

 

 ただそれだけの言葉を零し、真昼は夕月の胸を借りて自身の根拠のないそれが誰しもが認めるものになったのだと、只々それだけがうれしかった。

 

 

「泣き虫ですね」

 

「そ、そんなことは」

 

「私の胸で良ければいくらでも」

 

 

 彼女に会うたびに泣かれているような気がしないでもない。

 

 夕月は彼女を胸元に寄せ、泣く赤子を落ち着かせるように暫らく抱きしめた。

 

 小さく『おねえちゃん』とこぼす彼女をただゆっくりと。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 ほんの少し目元が赤くなった彼女を落ち着かせる頃にはすっかりとお昼は過ぎてしまっていた。

 

 

「真昼、暑い」

 

 

 しっかりと姉妹であると分かってからは、真昼は何かと夕月にくっ付きたがった。

 

 いくら何でもこの夏場だ。

 

 暑い。

 

 

「ダメ、ですか」

 

「汗だくになるからダメ」

 

「……むぅ」

 

 

 ゆるりと夕月の腕に自身の腕を絡ませてくるので、小さくデコを突いてそれをやめさせた。

 

 

「もう少し涼しくなってからにしてください」

 

「っ、はい!」

 

 

 行為自体が嫌な訳ではなく、只暑いと言う事象が嫌なのだと伝えれば真昼は華やいだ笑みを浮かべた。

 

 

「えっと、あの、双子であることもわかりましたから、その、同じ服を買いたいのですが」

 

 

 おずおずと真昼は夕月の上着の裾を掴みながら、一つの提案をした。

 

 同じものを食べるのもそうなのだが、同じ服、同じ格好と言うのは真昼の双子像の一つの憧れであった。

 

 

「良いですけど……どうせなら一つ提案が」

 

「……はい?」

 

「同じ服を選ぶ初めては志保子さんに選んで貰いませんか」

 

「……?」

 

 

 真昼の提案に夕月は拒否する訳でもなく受け入れるが、一つのことを思い浮かべたため夕月からも提案をした。

 

 それは志保子に選んで貰わないか、と言う物だ。

 

 

「子の服は親が最初に選んでくれるものでしょう?」

 

 

 何故、志保子さんがと真昼は首を傾げたのだがその後続けられた言葉に縦に首を振る。

 

 義理の娘、と言う分類だが、志保子さんは断らないだろうとそう遠くない内に彼女も藤宮になるのであればそこは志保子さんに選んで貰おうと言う夕月の提案であった。

 

 夕月は真昼が実家と何か遺恨があるのであれば将来の嫁ぎ先の義母にそれを選んで貰えれば、一つの区切りにすることができるのではないかと考えた。

 

 夕月は“椎名”の家で真昼と姉妹になることは出来ないが“藤宮”の家では姉妹になれるのだから、と。

 

 真昼としても、その提案には一切の拒否はなかった。

 

 むしろうれしいくらいで、更に続けられた彼女の提案に更に胸が躍った。

 

 

「なので今日は真昼が一着私に着せたい服を選んでください。私も真昼に着せたい服を一着選ぶので」

 

 

 それでいいですか?

 

 夕月がそう続けると真昼は首が取れそうな勢いで縦に首を振った。

 

 

「まぁ、私は服にまったく詳しくないのでお店選びはお願いしますね」

 

「はい!」

 

 

 夕月が真昼に手を伸ばせば真昼はその手をしっかりと握りしめた。

 

 




え、真護の誕生日描写が短い?

……ちゃうねん、ちょっとティーンズラブなコミック的表現になってR-18タグくんに「出番かな」されたから退場して頂いただけやねん(震え声)
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