夢限∞三剣士 ~more than a goal~ 作:夜光電卓
基本としては原作は映画作品準拠で設定してます。
初投稿なので、誤字脱字、感想評価等あれば是非お聞かせください。
更新はちょっとゆっくりペースかもしれません。
最初はとっかりということで、プロローグ的な章と、第一話前半を同時に出します>>
長い長い旅だった。
“彼”が彷徨っていたのは、この広大な宇宙の中でも特に特別な場所だった。
ブラックホール。
極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができないそんな迷宮。
“彼”はその迷宮の中で、永遠に近い時間を漂っていた。
元々無形の液状の肉体を持っていた“彼”だったが、ブラックホールの中に飛び交う特殊な電波や光線、磁場などの極限の環境の中で、その形を必要以上に変えていった。
そのうち持っていた筈の高等な知能は、記憶と共に擦れていき、己の存在さえ解らなくなった。
自分が何者なのか、そして何故このような場所にいるのか……。
“彼”がそんな永久の旅から遂に抜け出したのは、いつの事だったのか。
その頃には“彼”は既に原初生物に近い形になっていた。
知能もない、魂もない。
在るのは生存本能と、少しの特殊な力だけ。
その姿で、彼はホワイトホールから外へと吐き出された。
迷宮からの脱出。最悪の監獄からの解放は、本来“彼”が一番望んでいたものだったかもしれない。
しかし今の“彼”にはそんな感慨は浮かばない。
脱出した先は、やはり宇宙空間らしかった。
其処は勿論、彼の知る場所では無かった。いや時間も彼の記憶にある時間ではないのかもしれない。
遠い未来かもしれないし、果てない過去かもしれない。
そもそも次元さえ異なっている可能性がある。
まったく別の異世界という可能性も。
ただ、目の前に赤い星があった。
不気味な星だった。赤く、朱く、紅い――。
薄暗く怪しい光を放った星。
山脈のような筋が地表を走っており、形も球体でなく歪だ。
そして、定期的に地震えを起こしている。
その所為か星は膨張と縮小を繰り返している。
いや、アレは地震えなのか、というより鼓動?
そうだ、これはまるで星というよりも“心――”
その時、何かの衝撃が彼を貫いた。
不思議な力だった。
“彼”は動きを止め、そして動かなくなった。
「ほぉ、生きているのか……こんなモノが」
声が聞こえた。とても偉そうで傲慢そうな声である。
「我が心臓の近くに、突然現れるとは何者かと思ったが……もしや」
“彼”はその時、宇宙空間に浮くその声の主を見た。
暗い影で詳細は見えないが、頭部に二本の角。マントを被ったその姿はまさに威風堂々。
畏れさえ抱くその姿――。
「ふんッ、面白い――。貴様を我が“使い魔”としてやろう」
声の主はにやりと嗤うと、片手から不思議な光を放った。光を受けた“彼”に再び衝撃が走る。そして“彼”の流動する躰は、不気味な光を放ちながら、静かに震えながら収縮を始めた。
「喜ぶがいい、この“大魔王”の“使い魔”となれることを――」
そう言うと、自らを“大魔王”と名乗ったその人物は高らかな嘲笑を響かせた、
そして“彼”は自分の姿が変わっていくのを感じた。小さく小さく――。
光が収まるとともに、彼の姿は小さい猿のような姿になっていた。
そして“彼”は目の前の“大魔王”のように牙を見せながらニヤリと笑った。
『ウキッ――、』