夢限∞三剣士 ~more than a goal~ 作:夜光電卓
誤字脱字、評価、感想いただけましたら幸いです。
やっと本筋です。
「それで、兄貴! 『ゴールデンキッド物語』はどうだった?」
真っ白な猫を抱えた眼鏡の少年。弟の寅雄ことトラのその質問に僕、樋野伸太は朝食のパンを齧りながらウーンと唸ってから、ボーっと昨晩の夢の事を思い出していた。
正確にはあれを夢と言っていいのかわからない。
睡眠もしていたのだし夢と言ってもいいのかもしれないが、あの夢はある程度、他人に加工された『夢』だ。
「そうだなぁ、ヒーローものとしては良い感じだったし。夢の中なのに違和感無いし。凄かったな」
「でしょでしょ! いやぁ、β版でも充分っぽいね!」
トラは愛猫のシャルルを抱えながら、満足そうにシャルルを撫でている。
「あぁ、でもシナリオはいまいちかな。あとあんまり僕の意識に影響されるのは……微妙かもしれない」
「どうしてさ?」
「だって、俺の考えたことの所為でご都合主義的にシナリオ変わっていくし、夢の中なのにこれが夢だってなんかわかってるし……それにお前に……」
「オイラに? あぁ、夢の中のオイラねAIの白虎。あれ、このシャルルがモデルなんだよ……で、それが?」
「お姫様がのっぺらぼうで、痛いとこついてきた」
「のっぺらぼう? あぁイメージできなかったって事か……ウ~ン、キャラクターをイメージできるってのはいいアイディアだったと思うんだけど。ある程度はデザインしなきゃダメなのかな……」
トラはそういうとウーンと唸りながら悩み始めた。これは今夜も弟は徹夜かな? と僕は溜息を一つ吐く。
僕はこの弟に複雑な思いを持っている。
トラは『本当にこれが自分と血がつながっているのだろうか?』と考えてしまうほどの天才だ。
小学校三年生の時点で、およそ高校生ぐらいまでのカリキュラムをこなし、父と渡米。その後アメリカに留学して既に四つもの特許を取得したという逸材だ。
というか、IQが180とかマンガの中の世界でしょう? とツッコミたくなる現在11歳のその弟は、何故か昨年末に帰国してから、絶賛引きこもり中という状態で。天才少年によくありがちな、人見知り、コミュ障、根暗を常時発動している為、いろんな意味で中学二年生の僕が空いている時間に相手をしているのが現状だ。
対照的に僕はまったくもって普通以下。勉強も、運動もダメ。とりあえず小学校から悪友達の影響(強制)で、剣道部に入ったものの。万年補欠どころか、ほとんどマネージャー扱い(と言う名の雑用係)である。
ついで僕は一般的に言われるオタクの部類に入る。
自分が昔から人並み以下であることから、逆にヒーローや主人公に憧れ、アニメやヒーローものを小さい頃から見つづけた結果だと自覚はしている。今時超合金合体メカを買っている中学二年は少なくとも僕の学校では僕だけだろう。
その所為か、学校では女子にモテたこともなく。男子の間でもどこかいじられ役になっている。
ただそんなダメダメな兄なのに、トラはやけに懐いていた。留学する際も僕と離ればなれになるのが嫌だと泣き叫び。日本に戻ってからも遊ぶ相手は僕しかいない。(どうやらネットでは顔も知らぬ友人が多くいることを、僕は知ってはいるが)
そして僕はトラが天才である事に、劣等感を……本来ならば覚えるのがセオリーなのだろうな。
しかし、トラに抱いているのは劣等感ではなく、罪悪感だった。
それは明らかにオタクである自分の影響を大きく受けていることを知っているからで、そんな弟が、なまじ天才なものだから趣味や嗜好、揚句に研究テーマなどがオタ好きする方へと傾いてしまうというのは――人類の宝をダメにしている気がしているのではないか?
と、妙な罪悪感が常に付きまとってしまう。
「う~ん、シナリオばっかりはオイラもあれだし……まぁ、他にもソフトはいくつか妖異してあるし、今夜は別のやつで」
「えっ、他にもあるのか? あんなの!」
トラの言葉に僕は驚くように尋ねた。
「もっちろん。感覚的にはゲームのソフトみたいに世界観を作れるからね。一番面倒だったのはハード機であるDC³の方だったからね。β版ができる前から何人かの知人にソフト制作は頼んでたんだ」
トラの言葉に僕は頭痛を覚える。シャルルはニァと素っ頓狂な声をあげるだけだ。
知ってるか、シャルル。お前のご主人様はやっぱり天才で、どこかおかしいんだ。
天才だ天才だとは思っていたけど……。僕はそう思いながら昨日の先週の出来事を思い出していた。
次回は 20日を予定してます