赤き大地の夢は遠く AnotherMars2207   作:くコ:彡の本棚

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激突の足音

 

『聞こえるかい、艦長』

 

 誰?暗闇の中で、シャルマはその声に応えた。

 

 上下の別もない、暗闇の中。自分が立っているか、伏せているかも分からない。

 ただただ、身体が重い。鉛でできた外套を纏っている気分だ。

 

『我々は危地にある。このままでは冷たい真空の中で、息絶えるまでの短い時を過ごすことになるだろう』

 

 実感は湧かなかったが、それを聞いて少しずつ思い出してくる。常軌を逸した何かが迫り来る中、攻撃から必死に逃れていると、味方の残骸がすぐ目の前に。

 

 このままでは、生きて帰ることはできない。それを容易く受け入れてしまえる程、シャルマは諦念に支配されていなかった。

 

「助けてくれるの?」

『君だ。君が私を、皆を助けるんだ。方法は知っているだろう』

 

 目の前に現れた。操縦桿。本来、操舵席と連動して艦を制御する筈のそれが、単体で宙に浮いているように見える。

 握った。触れた気がしない。だが、確かに握っているのだ。

 

 ゆっくりと動き始めた。何が?場そのもの、としか言いようがない。涯てが無いように思える闇には確かな輪郭があって、それが一つの方角を向いている。

 

『心を研ぎ澄ませ。自分自身に従って、進め』

 

 それを続けた。ほんの少しか、相応に長い間かは分からない。自分の中に刷り込まれている目的地に向かって、シャルマは進み続けた。

 

 目を開けた。

 

「ここは……」

 

 答えを求めるように呟く。自分を包んでいた暗闇は気配もない。白い病室に、軍医と、それからシュミッツの顔があるだけだ。

 ベッドの上に仰臥する自分を、シャルマは初めて認識した。

 

「気がついて良かった。乗艦が大破して、我々は漂流していたのです」

 

 軍医が病室を辞してから、シュミッツが経緯を教えてくれた。

 

 あの時遭遇したのは、ガトランティスの巨大ステルス戦艦だった。その攻撃で爆沈した僚艦の残骸が"グァン・ドゥ"に直撃。艦橋要員は皆、衝撃で意識を失ったのである。

 自動航法システムも機能停止し、あと少しで帰還不可能になるところだったという。

 

「じゃあ、どうやって基地まで帰還を?」

「貴方ですよ。気絶しながら、手動操艦で艦を導いたのです。そんな芸当ができる人間は、ガミラスでも数人しか見たことがありません」

 

 熱っぽく語るシュミッツの顔をぼんやりと見つめる。到底、信じられないことだった。

 

 操艦ログには、確かに自分が舵を取った記録が残っているらしい。だが、それは客観的な事実であっても、シャルマ自身の真実ではない気がする。

 

 声がした。そう思った、否、思い出した。暗闇に放り出された自分に光を指し示すような声。そのおかげで、生還を果たせたのではないか。

 明確に残っているデータより、妄想じみた主観を信じている自分を、シャルマは不思議に思った。

 

 ただ、切迫する事態はそれを確かめる暇を与えてくれない。

 

「とはいえ、状況はきわめて深刻です。敵の巨大艦、とてもこれまでの尺度で測れるものではなく」

 

 如何に巨大とはいえ、一隻の艦が波動砲の直撃を耐え抜いたのだ。波紋のヴェールを纏って余剰次元の爆縮を受け流す敵の記録映像を見ながら、思わず唾を呑み下す。

 

 その記録映像を撮影した"ダカール"は沈んでいた。最大の切札を封じられながら、後の戦いのために、少しでも多くのデータを得ようと留まり続ける姿が目に浮かぶ。

 

 シャルマは黙祷し、艦と命運を共にした偉大な老雄の冥福を祈った。

 

「生還したのは何よりですが、危急の秋に何もできないというのでは」

 

 現在"グァン・ドゥ"とそのクルーは、小惑星改造型の分基地の一つに在る。惑星の基地機能が麻痺する事態に備え、整備と補給の機能を分散させているのだ。

 

 乗員が定員割れしていることが幸いして、クルーは全員無事だった(有人の僚艦も同様である)ものの、大破した"グァン・ドゥ"は未だ修理の最中だった。

 損傷は船体前部が大半で、機関にはさしたる被害もないのが、不幸中の幸いではあったが。

 

「敵の状況は?」

「機雷で受けたダメージからの復旧と、増援との合流を期して停泊していますが、動き出すまで一週間もないかと」

「間に合いそうもありませんね」

 

 シャルマはベッドの上で小さく項垂れた。どうしても焦りが募る。如何ともし難いことで気を揉んだとて、心が消耗するだけだと分かってはいても、やはり不安が湧き上がってくる。

 

「これで終わりはしませんよ」

 

 シュミッツの声は、聞いていてはっとする程に切迫した響きを帯びていた。

 

「ブリーフィングに顔を出されていたならお分かりでしょうが、敵の真なる狙いはアケーリアスの遺産。それを阻止するまで、司令は決して諦めない。いや、遺跡に敵が差し迫った時こそ、真の勝負だ」

 

 話を聞く中で何故か想起したのは、暗闇に響いたあの声だった。

 

「艦長、貴方に頼みがある」

 

 ────────

 

 バクストの戦死から三日、アナザーマーズは弔意一色に覆われていた。

 

 内惑星戦争、ガミラス戦争、ガトランティス戦役。三つの大乱を生き抜いた老雄の死は、残された皆の心を大いに揺さぶった。

 士気は天を衝かんばかりである。この星に迫る巨大な脅威を撃ち破ることで、その死と積年の恩に報いんとばかりに。

 

 悲嘆の淵に沈んで初めて、モロトフには分かった。自分が、何も分かっていなかったことをだ。

 

 かつての勢いが嘘であったかのように、火星独立再興運動は一気に下火となった。

 当然とも言える。旗印たるバクストと扇動役の欧陽が一時に斃れ、跡を継ぐ者も現れず、空中分解の感があった。

 

 さらに、欧陽が戦闘中に使おうとした、ガトランティス艦の強制制御プログラム。一度使ったが最後、基地のメインフレームがクラッキングを受け、無人機や基地の防衛設備のコントロールを奪われる危険な代物であると、調査で判明した。

 バクストは艦長権限でその発動を妨げ続け、艦と最期を共にしたのである。

 

 全てが腑に落ちた。秩序を軽んじ、分離主義者の支持を集めるように振舞いながら、バクストが秘めていた覚悟。あまりにも遅く気が付いたことこそ、モロトフの悲嘆に他ならない。

 多忙と重圧に目がくらみ、バクストの使命と苦しみを、理解しようともしなかったのだ。あれだけの恩を受けながら、報いることもできず。多くを背負い過ぎた背中を、ただ見送って。

 

 その痛みを忘れようと、モロトフは任務に没頭した。緒戦の記録を基に敵の行動予測を算出し、艦隊の適切な配置を考案する。基地が直撃される危険を鑑み、各種物資に弾薬、防空機を分基地ごとに配した。

 敵巨大艦の監視も怠ってはいない。三日が経過しているが、停泊を続けていた。機雷のダメージから立ち直っていないように見えるが、"ダカール"を沈めたのは機雷が起爆した後である。楽観はできなかった。

 

 それから、敵増援への対処である。アナザーマーズを包囲する形で遊弋する敵艦隊が観測されており、巨大艦の進撃に呼応して、飽和攻撃をかけてくるものと思われた。

 

 掃討は、地球からの援軍として派遣されてきた"ヒュウガ"を中心に行われた。イスカンダルへの航海を成し遂げた者達が主要クルーを務めているだけあり、行動は迅速にして的確である。

 それぞれ十隻前後の敵を連携する暇も与えず撃破したことが功を奏し、惑星周辺から敵影は消えた。

 

 その"ヒュウガ"の面々も交えたブリーフィングが、始まろうとしている。薄暗い会議室に、司令以下の主要指揮官が集う様は一見、一週間前をそのまま再現しているようにも見えた。

 しかし、代え難い重みを失ってしまった寂寥は、とても隠しおおせるものではない。

 

 サエキの言葉でブリーフィングは始まった。

 

「分かりきったことを言わせてもらうが、未曾有の危機が迫っている。敵がさらに勢いを増し、太陽系に牙を剥いてくれば、どのような惨状となるかは想像に難くない。我らが、ここで止めるしかないのだ」

 

 司令であるサエキのことが、モロトフにはますます分からなくなった。

 バクストの死を経てもなお、その顔には表情というものがない。いや、努めて感情を内に押し留めようとしているかのようだ。

 

 どこまで知っていたのか。あるいはバクストと共に、何かを期していたのか。いずれにせよ、自分には何も打ち明けられてはいない。恃むに足らず……と思われているのだろうか。

 心の内に芽生え始めている猜疑を、モロトフは必死に忘れようとした。

 

「まずは敵戦力の分析から始めるものとする。敵の巨大艦について"ダカール"が得たデータの解析は──」

 

 目配せを受けた"ヒュウガ"の篠原艦長が頷く。"ヤマト"艦隊の航空隊員として、多くの武勲を樹ててきた男だ。"ダカール"の生存者と観測データを拾い上げ、この星まで帰還を果たしている。

 生前のバクストと、最後に話した人物でもあった。

 

 篠原がPDAを操作することでスピーカーが作動し、壮年の男の声が響いてくる。現在の地球における科学技術、その柱石とも言うべき人間のものだ。

 

『真田二佐であります。守秘回線を使用しているため、音声のみでの参加となることをご容赦願いたい』

 

 真田志郎といえば、地球の頭脳中枢と称されるに足る存在だった。イスカンダル技術の解析から生み出した波動エンジン、関連技術である波動砲や波動防壁といった発明は、地球の存続に欠かせないものとなっている。

 この男がいなければ、地球の歴史はとうに終わっていた。

 

『これは、敵巨大艦に波動砲が着弾した際の、装甲表面を拡大したものです。そしてこちらは、イスカンダル事変における記録ですが』

 

 足下のモニター。二つに分割された映像に、それぞれ広がる波紋。

"ダカール"の記録映像と並んでいるのは、2205年、イスカンダル近傍での戦闘において第65護衛隊が会敵した、敵の要塞を観測したものである。波動砲と同じ原理のガミラス製決戦兵器、デスラー砲の直撃を受けながら、巨大艦と同じ要領で受け流している。

 

『装甲表面に逆相波を発生させ、着弾時のエネルギーを打ち消してしまう防御システム。同じ技術体系と見て、まず間違いはありません。我らが遭遇した未知の敵』

 

 デザリアム。ガミラス星を破壊し、イスカンダルを何処かへと運び去ろうとした、謎に満ちた黒影の群れ。

 他文明の技術を盗掘することに長けるガトランティスの残党は、確認されたばかりのデザリアムすらその標的にしたというのか。

 

 巨大艦はデザリアム式機関を補機として搭載し、ガトランティス式の主機が生み出す、莫大な出力を制御しているらしい。あの特殊な装甲は陽電子ビームのみならず、各種電磁波や可視光までも遮断することで、完全なステルス化を実現しているというのだ。

 

 散布された特殊反応材は、主機が発するエネルギーを捉えていたらしい。恐らくはワープ航法において主機を全力稼働させるのだろうが、補機のみで戦闘が継続できることは、実例が既に示されている。波動共鳴機雷の有効性に、然程期待ができなくなった訳だ。

 

「今の我々に、波動砲を超える火力は無い」

 

 覆しようのない事実を、モロトフは口にする。言いたくはなかったが、言わねばならないことだ。数少ない波動砲搭載艦は一隻が早くも失われたし、火力部隊に配備されている金剛改型は、波動砲未搭載の前期建造版である。

 

 仇討に猛っていた皆も、流石に色を失っている。あの特殊な装甲を破る手立てはあるのか。破ったとして、あの巨艦を如何に沈めるというのか。

 

 おまけに、敵は巨大艦一隻のみではない。百隻前後の機動部隊と、1,200mクラスの大型空母も確認されていた。幸いにして、波動防壁中和型の自爆艦は積んでいないようだが、巨大艦の脅威が迫る中、対応の余裕はあるのか。

 

 重い沈黙がのしかかる会議室の時を再び動かしたのは、サエキの一言だった。

 

「打開の術は、ある」

『まさしく。特殊な装甲の性質と、巨大艦が抱える脆弱性。二つの観点から説明させていただきたい』

 

 筋道立てた対応策を、おそらく真田はより以前から構想していたのだろう。イスカンダル事変以来、こんなこともあろうかと研究を重ねていたに違いない。

 映像が切り替わった。敵要塞へのデスラー砲直撃の様が映し出されているが、先程のものは一度目、これは二度目となる砲撃である。

 

『一度目と同様、敵の装甲によりデスラー砲が無力化されていると分かります。しかし──』

 

 要塞に向かっていったのはデスラー砲の光条だけではなかった。砲撃の主である、デスラー総統の座乗艦"デウスーラⅢ"が突貫したのだ。船足を上げて衝突した"デウスーラⅢ"は要塞の幾重もの外殻をぶち抜き、艦首が内部まで達している。

 

「衝撃と運動エネルギーが相殺されていない?」

『その通りです。デスラー砲の着弾によって、装甲表面の位相が均衡している。事実上、装甲が無力化されたことにより、船体の突入が可能となっていた』

 

 真田が唱えているのは、干渉波攻撃だった。波動砲に匹敵するエネルギーを一点に集中させ、装甲が無効化された機を見計らって火力を叩きつける。

 妙案と思われた。現在の戦況、戦力と照らし合わせれば、最も現実的な戦術と言える。過去の戦例の裏付けもあった。

 

 しかし、装甲表面の均衡状態が続く、決して長くない時間で、あの巨体に深刻なダメージを与えるだけの火力を、ぶつけられるものなのか。

 こちらの数倍のスケールを誇る巨大さといえ、艦艇なのだ。無抵抗の演習標的ではない。動き回る。回避されるだけならまだしも、逆撃をかけてくることも考えられる。波動砲は発射前後の隙が大きく、機を逸する恐れがあった。

 

 それに対する答えも、真田は用意していた。敵の巨大艦が四面図で表されている。ガトランティスらしい上下構造、翼のような両舷区画は、大量の砲熕兵器を搭載して剣呑な気を纏っていた。

 魁偉な船体に、幾つかの赤い円が重なる。

 

『波動砲の着弾直後、"ダカール"は一瞬だけ巨大艦のスキャンに成功していた。この赤く塗られたポイントは、エネルギー伝導における不自然な滞留を示しています』

 

 伝導系を大動脈とすれば、それに生じた血栓のようなもの、と表現できる。最適化されていない船体に、未知の技術を内包する補機を強引に積載した、ツケと言うべきものだった。

 ここを叩けば、敵の内部でエネルギーの逆流現象を引き起こせる。敵は装甲を展開する力を失い、船体そのものの瓦解さえ望めるかもしれない。

 

『ただし、最小限の攻撃で成果を上げられるポイントは、未だ特定できていません。より至近距離で観測できれば、あるいは』

 

 やるべきことが、少しずつ明瞭になってきた。どれ程の困難であろうと、打つ手が無いより遥かにいい。

 一つは、巨大艦に可能な限り接近し、弱点を炙り出すためのデータを確保すること。もう一つは、装甲の無力化と弱点への精密砲撃を行うため、巨大艦を一定時間拘束する手段を講じること。

 

「意見具申をお許しあれ」

 

 手を挙げたのは、まさかと思えるような人物だった。決して好意的でないものも混じっている数多の視線を受けながら、間は不敵な笑みを崩さない。

 

(やっこ)さんに近づいて弱点を暴くのに、ちょっとした考えがありましてね。我々(バラガキ)が動く許可を頂けませんか」

 

 間率いる特務強襲隊の異名、それがバラガキだった。単なる賞賛に由来するものではない。しかし、それが殊更気に入っている間は、しばしば名乗りに用いていた。

 

「艦隊戦の最中に空間騎兵隊を?」

「接近に必要な移動陣地を、押さえてしまおうという訳ですよ、モロトフ三佐。つまりは──」

 

 驚きの漣が満座に広がるのを見て、間は苦笑ぎみに黒と白の髪を揺らした。

 

「常識外れだな。敵の動きに左右される作戦でもある」

「確かに。ですが、総力戦において遊んでいるだけとは、どうにも居心地が悪い。あるかは分かりませんが、機会が来れば私はやりますよ」

「よかろう。やってみろ」

 

 サエキの一言があって、モロトフもそれを支持することにした。司令が決めた以上、否やを挟むべきではない。

 疑義を呈したところで、さしたる意味も無いだろうという、諦めに似たものも確かにある。

 

「翌、〇八:〇〇に出撃。第七惑星軌道に進出して前線を構築し、遠方より敵を捕捉する。そして長距離砲戦をもって敵を釘付けにし、機を窺う」

 

 会議室を見渡すサエキの目は、相変わらず情動に欠けているように見えたが、鋭気の片鱗らしき光が浮かんでいるとも思えた。

 

「そして、皆に銘記してもらいたいことがある。次の戦闘の目的は、巨大艦の詳細調査及び、大型空母の撃沈だ。本命の撃滅計画は、調査を完遂して後、改めて立案しなければならない」

 

 分かるな、とサエキは念を押す。全てを望んだ挙句に全てを失う愚を犯すべからず、そう戒めているように聞こえる。

 しかしモロトフには、その裏にもっと別の何かを秘めていると思えてならない。自分の心が後ろ向きになっているための、邪推かもしれないが。

 

「アナザーマーズにおける、最大の艦隊戦となるだろう。各員の健闘に期待する」

 

 居並ぶ皆が一斉に威儀をただし、敬礼する。闘志が会議室に横溢している。

 モロトフはそれに和しながらも、心の隅に寒々しいものが棲み着いているのを自覚していた。

 

 ───────

 

 艦橋直下の管制塔から見る景色は、慌ただしさに満ちていた。

 

 アナザーマーズの衛星軌道に留まった"ヒュウガ"は、最終整備と移送作業の真っ最中である。メカニカルな黄色いシルエットが、手足をばたつかせて現場を監督している。

 四十体が「搭乗」しているAU-19型自律サブフレームは、航空管制、火器運用、整備補給支援という各々の役割に応じて色分けがなされ、ブルー、ピンク、イエローと通称されていた。

 

「これで定数が揃いますね」

「だな。パイソン以外にも対艦戦力は欲しかったし」

 

 火星に配備されていたコスモタイガーⅡが三十二機、"ヒュウガ"に積み込まれてゆくのを、篠原と田熊は見物している。それも、ガトランティス戦役末期に実戦投入された雷撃型だった。機首の陽電子機関砲、両翼の大型魚雷など、豊富な対艦武装を有する機体である。

 

 軽空母としての"ヒュウガ"は二個飛行隊、六十四機の運用能力を有するが、これまでは半数の一個飛行隊で任務に従事してきた。それが今回、進宙以来初めて、格納庫を最大搭載機数で埋めたこととなる。

 

「ここにはタイガーⅠも二機配備されてるそうだぞ」

「そいつは楽しみです。あれは見てるだけでぎょっとするような機でしたから」

 

 田熊は篠原にとって、イスカンダルへの航海以来、任地を同じくする戦友の一人だった。二年前には"ヒュウガ"航空隊の隊長、副隊長という上官と部下の関係となり、篠原が艦長に就任した今も続いている。

 

 クマさん、シノと軽口を叩き合う仲だった。今は、プライベートの場でもない限り、田熊の口調は一貫して上役に対するそれである。面映ゆくはあるが、それに応えるのも艦長の責務だろう。

 

「しかしまあ、変わった雰囲気の星に来ちまったなあ」

 

 パイロットとして培った感覚でもって、篠原は基地を満たす異様な雰囲気に気づいていた。敵の大攻勢を前に張り詰めている、というのとは違う。

"ヤマト"に乗っていた頃、似たような経験があった気がして思い返してみると、それはイズモ計画派の反乱が失敗に終わった直後だった。

 

 水面下で何かが起きているのだ。マーズノイドの集められた辺境の基地、その特色に由来するのかは分からない。だが、抜き差しならぬ裏の事情は確かに存在する。

 

 ブリーフィングが終わった後、守秘回線を使い、思い切って真田に聞いてみた。何か知っているのではないか、と。

 真田は答えなかった。申し訳なさそうに目を伏せ、首を振っただけだ。軽々しく触れるべきでない事案だということは、よく分かった。

 

「坂本が、戻りました」

 

 思考が取り留めのないものとなってきたので、田熊が話題を変えてくれたのは有難かった。航空隊員・坂本茂の駆るタイガーⅡが哨戒飛行から戻り、飛行甲板に滑り込んでいる。二年前に初陣を終えたばかりと思えないそつの無さだった。

 

 アナザーマーズ周辺の敵を掃討するのにあたり、坂本の活躍は目覚ましかった。十三機撃墜に、二隻撃沈。荒削りな勢いのままに敵を引き摺り回し、叩きのめしている印象である。

 その坂本を、次の戦いでは最終盤まで温存するつもりでいる。他の隊員とのバランスを考慮してもいるが、何より作戦における重要な役割を任せるためだ。

 

「坂本を後詰に回したのは、良いご判断です」

「そう思ってくれるか、クマ?」

「あいつも忍耐を覚え始めました。実戦で試す機会となるでしょうから」

 

 坂本には、揚羽武という同期のパイロットがいる。総合的な技量と冷静な判断力では、坂本すら上回る秀才だった。

 だからこそ、坂本は爆発力を武器にすべきだった。耐えに耐え抜いて、機を見出せば一気に力を解き放つ。そうした呼吸を学んでほしい。

 

 田熊と別れ、篠原は格納庫に下りた。坂本が乗機の整備をしている。機体直下にある高機動ユニットの調整だ。

 パイロットの癖や特性に合わせ、機体の細かい動きを最適化する装備である。調整のないままに機体を渡せば、次のパイロットも整備士も少なくない手間を強いられるのだ。

 

 その辺りのことを、指導役だった玲はきっちり叩き込んでいるらしい。作業の手際も良かった。声をかけるのを控え、暫くその様子を見守る。全ての工程を終え、篠原の姿を認めた坂本が駆け寄ってくる。

 

「お疲れさん。今回は大活躍だな」

「そりゃあもう。じゃんじゃん艦長のお役に立ってみせますって」

 

 航空隊の先達ではなく、母艦の艦長として接することを心掛けている。坂本も、その辺りを汲んでくれているようだ。

 

「火星軍人てな、中々侮れませんね。さっき空間騎兵隊の訓練を見ましたけど、死ぬのが怖くねえのかって。俺が言えたことじゃないっすが」

 

 それは、篠原も見ていた。第十三特務強襲隊、バラガキの異名を取る(つわもの)達。真紅の機動甲冑の群れが、隕石さながらの速度で飛ぶ岩塊での降着と離陸を繰り返す光景は、死すれすれの訓練を日常としていることを声高に示していた。

 

「山本隊長に言われましたよ。競いたくなるぐらい、すげえ奴に会えるのはこれ以上ない幸運なんだって。確かに、分からんでもないかな」

 

 坂本と話していて思い出したのは、先の戦いで篠原に生存者と言伝を託し、最後まで戦場に留まった老艦長である。

 頼む、と言って通信を切ったその顔には、幾つもの感情がない混ぜになった色が浮かんでいた。その中で最も濃いと思えたのは、後に続く若者達の武運を願う心ではなかったか。

 

「なあ、気分転換に肝の冷える話を聞かないか」

 

 怪訝とする坂本を展望室へと誘い、腰を下ろして飲み物を渡す。

 

「んで、お話ってのは?怪談みたいなもんすかね」

「そんなところだ。"ヤマト"の初航海、俺と山本隊長が航空隊の同僚だったのは知ってるよな」

「パイロットやってる奴が知らない訳ないですって!」

 

 山本玲。名前を口にするだけで、緋眼から溢れる鋭い光が思い浮かぶ。マーズノイドである彼女がこの基地に来たとしたら、どのような感慨を抱くのだろう。

 思ったとして、それを軽はずみに外へ出すような女ではないのだ。だから、眩しかった。

 

「地球に帰還してから一年間、あいつと付き合ってたんだ」

 

 固まった坂本が、飲み物を取り落としそうになった。

 

「…………」

「言葉も出ないぐらい驚くか?まあ、おくびにも出さない奴だろうけど」

 

 人並みに、軽薄な遊びをしている手合いだったと自分でも思う。その反動と言うべきか、首ったけになって一人に心を捧げることが、人生観を一変させかねない刺激になった。

 十歳は退行したかのように、はしゃぎ回ったものである。

 

「帰還して与えられた特別休暇を全部使って、一晩中遊びに行ったりしてな。二日に一回は一緒に風呂入ってたりしたっけ」

「どんだけ羽目外してるんすか」

「それから、喫茶店に行った時か。二人で一つのストロー使って飲むやつがあるだろう」

「ハート型のですよね?」

「あれもやった」

 

 絶対に失いたくない。一生守り抜いてやる。心の底からそう思ったものだ。

 しかし、半年になるかならないかで、すれ違いを覚え始めた。会話に微かな食い違いが現れて、日に日にそれは大きくなってゆく。原因を探ろうにも、その糸口すら掴めない。

 

「それで一年しか保たずに……」

「いや、見栄を張ったな。七ヶ月、と少しぐらいだ」

 

 そしてあの日、ちょっとした口論の流れで、篠原は最も愚劣と言うべき一言を溢してしまう。お前は俺が守るのだから、遠からず前線から退いてほしい……。

 玲の怒りは凄まじかった。眉を吊り上げ、罵声を吐き出し、手当たり次第に物を投げ飛ばす。恋人が台風と化した瞬間である。

 

 こうして二人は破局を迎えた訳だが、それは決して断絶を意味しなかった。航空隊長だった加藤三郎が息子の発病を期に現場を離脱し、篠原と玲は大きな穴を埋める使命を与えられたのだ。

 多忙な日々は、気まずさを感じさせる暇すら与えなかった。恋仲という関係が白紙となった一方、航空隊の仲間としての繋がりは、却って深まったのである。

 

 今にしてようやく、篠原は自分が失敗した理由を、朧げながら見出していた。恋人として、玲を守ってやるという気持ちばかりが、先走ってはいなかったか。

 航空隊の切札として戦い抜いた玲の自立心を軽視し、矜持を傷つけてはいなかったか。

 

「知らず知らずのうちに出てた、上から目線の態度。それが隊長の癇に障ったって訳っすね」

「本気で相手を思い、心配したからこその言葉や行動が、相手の心を傷つけてしまうことがある。自分や仲間に、そんな心当たりはないか?」

 

 坂本は少し考え込む表情をした。確かめるように小声で呟いている。揚羽、土門、と名前が出たように聞こえた。

 それを終えると、坂本は再び疑念を露わにした。

 

「大変ためにはなったんすけど、肝が冷えるってのはどういう」

 

 神妙な顔を綻ばせた篠原は、わざとらしく唇を歪めて偽悪的な笑いを坂本に投げる。

 

「俺達二人、今ここであいつの赤裸々な過去を共有したよな。ばれたら、どうなると思う。まず、話した俺は絶対にただでは済まされない。聞いた方もお咎めなしで済むかどうか……」

 

 篠原の真意を悟った坂本は、みるみるうちに顔を青くした。

 

「汚ったね!艦長、俺を道連れにしたんすか」

 

 抗議する坂本の肩を宥めるように叩き、篠原は艦橋に戻ろうと腰を上げる。

 

「もし戦死なんかして、その後にこのことがあいつに伝わってみろ。おちおち成仏もしていられないぞ」

 

 生き残る理由など、幾らあっても損はない筈だった。

 

 ───────

 

 進発。エルダインは高らかに前進を命じた。

 

 コンマ一ヘブロンあまりの時を、無為に過ごしてはいない。敵の機雷で主機が沈黙したのを契機として、バルムークに機関の改修を命じた。

 その甲斐あって、"イシュタルム"は補機だけで戦闘と航行が可能となっている。主機の稼働が必要なのは、空間跳躍と不可視化くらいのものだ。

 

"インフィナイト=カノーネ"を発動した直後に主機を稼働させ、跳躍して離脱する。そのような戦法を夢想した。新大帝エルダイン率いるガトランティス軍は、そうした搦手も操る次世代の武士(もののふ)なのだ。

 

 改修と並行して行われた機動部隊の再編も、そのことを念頭に置いている。

 手柄首を認めて殺到する荒武者どもは最早不要。総旗艦の脇を固め、その破壊力を十分に発揮できる場を整える部隊。必要なのはただ、指揮官の指示にどこまでも服従する統制だった。

 

 反抗する者は容赦なく処断した。調練の中で勝手な振舞いを改めない者も、指揮権を奪って首を刎ねた。

 そうした積み重ねが実を結び、エルダインの理想にきわめて近い艦隊に仕上がっている。

 

 周囲を行き交う麾下の艦艇を眺め、エルダインは満足げに話しかけた。

 

「やはり数でも勢いでもなく、秩序と節度をこそ恃むべきであるな。貴様は率いる兵に恵まれなんだだけよ」

 

 調練の指揮を取ったバルムークは、気のない返事をするのみである。

 緒戦以来、塞ぎ込んでいるのは知っていた。半数の敵を相手に敗北を喫し、雪辱も果たせなくなったことで、武人の面目が深く傷ついていることは想像に難くない。

 

「無念は分かるが、勝敗は兵家の常だぞ。それに、貴様の尽力で完成した艦が敵を斃したのだから、これは貴様の勝利に等しい。グレイム辺りが何を言おうが、気にするな」

 

 つくづく不思議な男だった。うねる波のように激しい情動を、胸の奥底に飼っている。辺境の三級品に貶められたり、第八機動艦隊のように粛清されかねないそれを、ひた隠しにする要領も知っている。

 己を偽り続ける違和感と息苦しさが、ガトランティスらしからぬ思慮深さをはぐくんでいるとも思える。

 

 斥候に出ていた部隊が、敵の布陣に関する情報を持ち帰ってきた。

 

「ここまで思い切るか」

 

 ひと目見て思わず、感嘆の溜息が漏れた。敵の総数は、こちらと大差ない百隻程度。基地がある星への航路を塞ぐ壁に擬しているのか、左右に広く展開している。

 

 そして、数隻の小型艦を引き連れた一隻の戦艦。敵の司令部だと直感した。

"イシュタルム"を中核として押し出すこちらと同じ陣立てで、真っ向勝負を挑まんとしているかに見える。その意気は、買ってやろう。

 

「敵の張る前線から惑星まで、空間的な幅が相当にあります。つまり、退がるだけの余地を十分に残しているということです」

「我らを引き込む算段かな?」

「有り得ることだとしか、今は申せません」

 

 元々、後から参集してきた友軍を星の四方に配し、こちらの前進を合図として、一斉に攻め込ませるつもりだった。

 だが敵もさる者で、"イシュタルム"の復旧と改修が終わる頃には、その目論見も破られていた。健在だった友軍はこちらに合流させ、機動部隊に組み込んでいる。

 つまるところ、後顧の憂いが無いからこそ、敵はここまで出てくることが可能なのだ。

 

「伏兵には気をつけよう。敵の本丸であることだしな」

 

 バルムークが不安を抱く程には、懸念していなかった。退がりに退がったところで、行き着く先は基地のあるほししかあるまい。

 星に逃げ込むつもりであれば、その時こそ"インフィナイト=カノーネ"で星を滅却し、選択を後悔させてくれよう。

 

「……ああ、暫し待て」

 

 乗艦に引き揚げようとするバルムークを、エルダインは呼び止めた。

 

「かねてより考えていたことを伝えておく。此度の戦に勝利し、アケーリアス・コードを手中とした暁には、あの女を貴様にくれてやろう」

 

 バルムークの目の色が変わった。持ち掛けたエルダインの方が驚いた程だ。

 

「……何故?」

「働きには必ず報いると、我は示してきたつもりだ。貴様は、それを最も欲していると思ったのでな」

 

 あまりに露骨なやり方は、本意ではなかった。それを曲げても、この男を繋ぎ止めておきたい。

 何かを押し殺すように胸に拳を当て、最敬礼を施したバルムークは、今度こそ退出していった。

 

 やはり、分からない。己が野望以外の何かを理由として戦に臨む心境が、エルダインには理解できない。

 とにかく、戦だ。どのような感慨を抱くかに関わらず、待ち望んだ戦が目前に迫っている。

 

 ────────

 

 赤き星を背に、艦は征く。過酷な戦場に向かっているとは思えない程、荘厳な静けさに艦隊は包まれていた。

 

 艦隊旗艦"だざいふ"を先頭に、連なる艦列が堂々と星の海に漕ぎ出す。基地が築かれて以来、初めてのことだった。

 そして、最後となるだろう。

 

 役目は果たした。遺言とも言うべきバクストの言葉を、"ヒュウガ"艦長の篠原が持ち帰ってきていた。

 

 役目。本来ならばバクストこそ、艦隊を率いて強敵に立ち向かうに相応しい人物だった。

 

 しかし、彼でなければ駄目だったのだ。火星軍人から限りない尊崇を集める老将だからこそ、分離主義者を結集し、その内情を探る任を果たすことができた。その死によって、独立再興を頓挫させることもだ。

 

 その結果、バクストは己を信じた者達を裏切って戦死し、自分は旗艦にあって艦隊を引き連れ、戦場に向かっている。

 汚れ役を押し付けた挙句、他者に帰するべき栄誉を盗んだ。そのように意識すること自体、傲慢であると分かっているのだが。

 

「司令、マスドライバー制御班から定時連絡です。弾体の配備及び射出準備が完了したと」

 

 自治政府時代の火星に存在したマスドライバーは、惑星の表面から宇宙空間まで貨物を射出するシステムであり、アナザーマーズでも建造されている。

 

 先の戦役時、ガトランティス小艦隊の襲撃が頻発していたため、艦艇が大気圏を往還して補給を行うのは危険にして効率的ではなく、マスドライバーは有用な補給手段として評価された。

 

 今回は作戦を構成する一要素として、マスドライバーのもう一つの側面を利用するつもりである。

 

「了解した。モロトフ三佐、そちらの監督は貴官に一任する」

「は……」

 

 バクストの教え子の一人だったモロトフは、何が起こっているか薄々勘付いているのだろう。

 自分の預かり知らぬところで事が動いていたことを、不快にすら思っている筈だ。無理からぬことである。

 

 パシフィックを六隻、左右に随従させた"だざいふ"が前に出た。

 

 気まずさも後ろめたさも、見えざる波を切り裂いて進む艦隊を見ていると、少しは和らいだ。指示あり次第、前に出られる態勢が整っている。

 経緯はどうあれ、自分はこれ程の艦隊の先陣を切っているのだ。進むも退くも、攻めるも守るも自分の下命次第。武者震いで、視界が微かにぶれた。

 

 亡きバクストの分まで、などと気負うつもりはなかった。自分は、自分の戦いをやるしかない。

 その結果が、共に戦う皆の容れるところではないとしても、最後までやり抜くだけだ。

 

 傍らのパシフィックから、矢継ぎ早に情報が齎されてくる。パトロール艦の通称は情報収集のみならず、それを統合、評価する速度と精度あればこそだった。

 

 船体上下の電探装置が瞬き、未だ遠方にいる敵の情報を拾い上げている。肉眼では星の光に紛れてしまう光点としか見えない敵艦隊の位置が、はっきりと分かる。

 

 予想通り、あの巨大艦は中央の先頭だ。挑むように"だざいふ"を最前に押し出したのは、間違いではなかった。

 旗艦と旗艦で対峙しているように思っているのは、きっと敵も同じだろう。それが、戦闘民族の本能を刺激する。注意をこちらに向けられるのだ。

 

「大主砲、ショックカノン発射準備」

 

 巨竜の唸りめいた駆動音が響き渡り、一対の砲門が虚空の彼方にいる敵を睨め付けた。

 51センチ連装陽電子衝撃砲。波動砲を除けば、この"だざいふ"の、否、地球艦の艦載兵器として最大口径を誇る代物である。今後量産されることは、おそらく無いだろうが。

 

 試製連装砲、狙撃型ショックカノンなど、異名は多岐に渡るが、少なくともアナザーマーズでは大主砲で伝わる。砲塔そのものがかなり大きいのだ。口径の拡大に伴って砲身は長く厳(いかめ)しくなり、測距儀は甲板の左右に迫り出していた。

 

 エネルギー伝導が始まった。高まりを伝える振動が爪先から脳天まで達し、発射までの時を刻んでいる。

 その間にも、パシフィック級から齎された情報により砲撃諸元は随時修正され、砲身は細かく上下していた。火を噴く瞬間を、砲塔そのものが待ちかねるように。

 

「大主砲、エネルギー伝導終わる。コンデンサ、正常作動中」

「冷却装置の最終チェック完了。稼働効率きわめて良し」

 

 遮光フィルター越しの宇宙、群れをなしている複眼の群れを射竦めるように、サエキは目を見開いた。

 

「撃ち方、始め」

 

 視界を白く染め上げる強烈な閃光。渦巻く熱気は陽炎と化し、甲板を揺らめかせる。

 反動で仰反る船体を、艦尾のスラスターが支えていた。

 

 暁闇に差し込む陽光、そう呼ぶには烈しすぎる蒼光が槍となって奔る。

 二つの光条は捻れて一つとなって、螺旋を描きながら敵味方の距離を一息に征服し、その果てにある魁偉な影を直撃した。

 

 号砲は轟いた。

 

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