C.E.71年―資源衛星ヘリオポリス
内部に存在するオーブ軍駐留基地の格納庫。
その中で旧世代のF-14に似たMAが鎮座していた。
そして、その正面では男女が言い争っている。
「だから…貴方の機体のマルチロール機です!
その実証実験が今日なんですよ!」
赤毛でソバカスのある少女が叫ぶ。
「いや……それは判りますが、アルマ二尉。
俺、そもそもそちらの開発部門から外れてますし、
それに自分は今日休日の申請を」
アルマ二尉と呼ばれた少女は自分よりも30cmは大きい
男を一睨みする。
「私が遠路遥々、
本国からヘリオポリスまで来たのは何のためだと?
貴方以外にこの機体を扱える人間がいないからなんですよ!
ほら!ほら!パイロットスーツを着る!
この子が日の目を見るかはあなた次第ですよ!」
「なんでこうなるかなぁ…」
男は顔に手を当てながら今日の予定をキャンセルする為、
電話をかける。
男の名前は『レン・ヤマト』
身長184cm、年齢22歳の〘ナチュラル〙の男性。
オーブ国軍所属の曹長である。
年若いながら、オーブ国軍から国策軍事企業モルゲンレーテへ
テスト・パイロットとして出向している身である。
容姿は父親似の黒髪に整った顔付きをしている。
現在はヘリオポリスにて開発中の『新型兵器』の
テスト・パイロットとして赴任していた。
そして、赤毛ソバカスの少女の名前はアルマ・テールナー。
年齢16歳の〘コーディネイター〙の少女である。
所属はモルゲンレーテでありながら技術士官として、
オーブ国軍で二尉の階級を持っている。
眼鏡をかけており、身長は153cm。
可愛いよりの顔つきである。
「宇宙で可変翼、意味あります?」
「大気圏内での飛行には使えますし、
そもそも宇宙だけでなく大気圏内での
運用も視野に入れていますので」
「………弟とランチの約束でしたのに」
「……ごめんなさい。
でも貴方が居なければ意味がないんです!
YF/A-19いえガラディーンが」
「……まぁ、良いですよ。
飛行許可取ってるんでしょ、じゃあ飛ばすしか」
「飛行…許可?」
「…この世間知らず娘め」
レンは先程とは別の意味で手で顔を隠した
結局、試作機の飛行許可は降りることがなく、
その日の予定をキャンセルする必要はなくなった。
「ヘリオポリスのカレッジですか。
私は初めて来ましたが…警備が厳重ですね」
「当たり前でしょう、何れはオーブの未来を担う技術者。
それだけではなく、国内有数のカレッジ。
外国からも入学者が居る。そんな中で事件が起きたら、
我が国の威信に関わります」
「へぇ…結局、政治ですか。
まぁ、私はガラディーンの開発ができれば
何処でも良いですけど」
「無理ですね、連合の大半は反コーディネイター。
ザフトに至ってはMAを意識していない。
ジャンク屋はそもそも予算がない、傭兵も然り。
結局、アルマ二尉は中立国に行くしかない。
それで、軍事物資も多く今のところ連合からの影響もなく、
国営の軍事開発会社がある。
オーブでやるしかないんですよ」
「……本当にナチュラルですか?
色々と、勘繰ってしまいますね」
「ナチュラルですよ。勉強じゃ弟にも勝てないし、
アルマ二尉にも。身体能力はそれなりにありますよ。
軍人なんでね。結局、コーディネイターも人間です。
鍛えてなければできないし、興味なければしない。
っと、彼が弟です。お~い、キラー!」
レンはオーブ国軍の制服を着た状態で手を振る。
すると、何処か幼さを残した少年とその友達が走ってきた。
「レン兄さん!」
「レンさん、こんにちは!」
「お疲れ様です!レンさん!!」
「トールにミリアリア?
キラ、二人も誘うのか?」
「え?誘うって……あ」
キラはあちゃーという顔をしながらレンに頭を下げる。
「ごめんなさい!ランチの約束忘れてた!!」
「……俺久し振りの休暇なんだけどね。
家族で過ごそうって話をしたよね?
キラ・ヤマト君、君はお兄さんの事嫌い?」
「え…違うよ!レン兄さんは頼りになるし!
何時も部屋の掃除とかしてくれるし」
「それは自分でやろうな、キラ」
「ブラコンですか?」
「アルマ二尉、冗談はよしてくださいよ」
端から見ればブラコンの兄に見えるだろうが、
本質を知っているトールとミリアリアから見れば、
弟を甲斐甲斐しく世話する大変なお兄さんだ。
「夕食はわかってるな?
父さんと母さんに一度叱ってもらう。」
「ごめんなさい」
「じゃあな、夕食。家でだぞ?
カレッジで食べてくるとかするなよ」
レンはキラに念を押すとそのままカレッジを離れる。
「えっと……曹長?」
「じゃあ、アルマ二尉。予約した店行きますか」
「へ?」
「キラにプレゼントあげる予定だったんですよ。
カレッジで頑張ってるらしくて、少しお高めの店をね。
予約したんですよ。キャンセル料金払いたくないんで、
ほら行きますよ」
「待ってください!貴方、キラ君が忘れてなければ」
「二尉を士官様官舎に送った足で行くつもりでした」
連れて行く予定はなかった。
と言い切る態度に清々しさを感じるアルマ。
しかし、急に来たのは自分なのだと言い聞かせる。
結局、16歳の少女が行くには度胸のいる程の
レストランに通される。
「自分の奢りです。
食べ放題、飲み放題ですよ」
「……注文して良いんですよね?」
「まぁ…前金は払ってますから」
レンは軍人らしくガッツリとしたステーキだ。
ウェルダンでしっかり焼かれたサーロインステーキ。
その隣には普通、理由で食べるレベルのサラダに
ライスとオレンジジュース。
アルマは見ているだけで胸焼けしてくる。
「よく食べれますね」
「パイロットなうえ、鍛えてますから。
それに、このご時世ですよ。何時食べれるか……
軍人は食べれる内に食べておかないと」
そう言いながら黙々と食事を続ける。
量は多いのだが、食べる仕草等は決して汚くない。
食べている量を気にしなければ、マナーは一流とは
行かないが、それでも謙遜ない程に良いものだ。
「美味しいです、このお店」
「でしょう?だからよく利用するんです。
格式高いお店なんですが、
完全な上流階級の来る場所ではない。
そこが」
食べ終えたレンが口を拭きながらそんな事を言う。
「アルマ二尉が食べ終わるのを待ちますよ」
「見られるのは嫌なのですが……」
「我慢してください。速食なのも軍人故です」
「……本職の人に言われたら何も言えませんよ」
合計で1時間程度で2人は店を出た。
と言っても行く場所はない為、そのまま基地に出戻りだ。
「なんか…騒がしくないですか?」
「…警備が居ない?」
基地に入ろうとすると若いオーブ軍兵士が声を聞けてきた。
「民間人の方ですか!基地ではなく、他の場所へ」
「曹長、レン・ヤマトだ。
二士、何があったんだ」
「曹長?!失礼しました!
現在、ヘリオポリス外で駐留軍のミストラル
とジンが交戦中で」
その時、ヘリオポリスに爆煙が上がる。
「ひっ……これって」
「クソが……だからヘリオポリスじゃなくて
別の場所にしろって進言したのに……」
「ひっ…レンさん!!」
「お前達伏せろ!」
レンはアルマと二士の軍人の頭を下げさせる。
ジンから放たれたミサイルの1発が付近に着弾し、
爆発が起きる。
「え……あ……」
「おい、おい!意識をしっかり保て!」
「え……あっ」
「二士、お前の名前は!」
「コーネル…コーネル・リンザーです。ヤマト曹長」
「なら、リンザーだ。
お前は今から俺の指揮下に置く」
「え…でも」
「見ろ、警衛の詰所は今のでぶっ壊れた!
何人生きてるかもわからん、俺はパイロットだ。
スクランブルなら出るしかない!」
「わかりました……ヤマト曹長」
「よし……アルマ二尉、アレはパイロットスーツ無しでも」
「でも、宇宙空間では」
「やるしかないでしょ!」
レン、アルマは走る。
ザフトのジンは既に基地をあらかた制圧し終わり、
見覚えのない新型のMS3機を護るように撤退を始めている。
「あの機体…ザフトのものでは」
「アルマ二尉はよくおわかりで、
アレは連合のG兵器、新型のMSですよ。
俺はそのうちの一つのテスターとしてヘリオポリスに
召集されたんです!」
「曹長…じゃあここがザフトに襲撃されたのは」
「アレが漏れたからだろうよ!
くそ……だからヘリオポリスじゃなくて本国とかで
作れとアレほど……」
「やった…無事だな」
滑走路は駄目だが、格納庫は見る限り無事そうだった。
「うそ……なんで?!」
格納庫に到着したが、
そこにあるはずのガラディーンが無いことにアルマが叫ぶ。
「騒ぐな!ガラディーンは此方にある!」
格納庫には地下があり、
そこにはガラディーンが鎮座している。
「なんで……」
「リボルバーってわかります?
拳銃ですよ、撃鉄を起こしてシリンダーが回る奴。
これはシリンダーです、発進したら次の機体ってふうにね」
慣れた手付きで動かすとガラディーンが日の目を浴びる。
「此奴は垂直離陸出来る。
弾薬は?入ってましたよね!」
「えぇ、でも……」
「残ってるジンを潰すだけなら…Gは無理でもね!
リンザー二士!」
「はい!」
「格納庫の下だ!ソイツは非常用のシェルターでもある!
俺が戻るまで、アルマ二尉と共にいろ!」
「はっ…はっ!」
敬礼するリンザーと心配そうに見つめるアルマ。
対照的な2人にコックピットからグッドマークを送ると、
格納庫から出る。
(頼む…バレないてくれ)
離陸時が一番危険だ。
いくら見えにくいところにあると言っても、
バレたら終わる。
「飛べた……良し!」
コロニー内での飛行は初めてだ。
基本的に宇宙空間での物が多かった。
「なっ…新型のMAに……クソぉ!」
「…コックピットをぶち抜けば!」
ガラディーンの装備は
上部二連装対装甲リニアカノン2門
機首40mm機関砲1門
オプション兵装下部対戦艦用ロケット弾2発
とメビウスよりも大きい事を理由に搭載火器を
多くしてある機体である。
レンはジンのコックピットへと背後からリニアカノンを
命中させる。
「先ずは1機……だが……」
弾薬は正直心持たない。
だが残っているジンは今のを撃破し残り3機。
「……俺の家族がいるんだ!
テメェら!!絶対に許さねぇ!!!」
「MA如きが!」
「くっ……」
加速力とスピード自体はジンよりも数段上のガラディーン。
しかし、事旋回において全く勝てない。
それが人型と戦闘機の差なのだ。
一撃離脱戦法しか取れない戦闘機にとって、
背後を取られるのは避けたい事である。
「ロックオン…取った!」
「馬鹿…取られたんだよ!」
ガラディーンの中ではけたたましくロックオンアラートが
鳴り響いている。一発でも受ければ終わりだろう。
その極限状態だからこそ、レンの直感が囀る。
「なっ!」
「終わりだぁ!」
レンはVtol用の下部スラスターで
空中で無理矢理制動を行う。
通常こんな事をすれば失速し落下を待つだけだが、
ここはコロニーであった。
急制動からの背部に回り込む。
「そんな…母さ」
ジンのバックパックに40mm機関砲が火を吹いた。
撃たれれば終わっていた。
ジンのパイロットが土壇場に弱いおかげで助かった。
あのまま上に向けて乱射し、一発でもかすめた瞬間。
そのマニューバは使えなくなり、ヘリオポリスの市街地に
墜落していた事だろう。
「はぁ……はぁ…………くそ」
ジンとの戦闘が終了し、辺りを見渡す。
既にG兵器は持ち去られた後のようで一つ安心できる。
と思えた瞬間だった。
Gが全て奪われていたなら、
ヘリオポリスが襲われる事はこれ以上ないだろう。
余程の虐殺者でなければ目標のなくなった場所に
拘る理由がないはずだからだ。
だが、Gが1機残っていた。
それどころか、周りには人影も見える。
1度格納庫に戻ると、急いで機から降りる。
「曹長、ご無事で」
「G兵器が1機残ってやがった!
ソイツを外に出さない限り危険だ!
タラップをつけろ!コックピットの後方に空きがある!
本来なら非常用物資を入れておくところだが、
人も入れる!アルマ二尉、リンザー!乗れ!」
「そんな!ベルトとかは無いのに」
「アルマ二尉、安全運転しますよ!
G兵器の周りの人影と合流する!
アルマ二尉、ここでは貴方が最上級士官です!」
囮にするために。とは言わない。
ただでさえ、両親と弟の安否が不明なのだ。
だがそれを表に出す程、子供ではない。
「……わかりました。
ヤマト曹長の指示に従います」
「了解、では直ぐに乗り込んでください!」
2人を後方に寿司詰めにした後、
ゆっくりとガラディーンは浮き上がる。
何時再び戦闘が始まるか判らない。
その恐怖を隠し、レンは飛ぶ。
そして、さらなる悪魔に見舞われる事になるのだった。
主人公
耐G性能が高く、中々気絶しない。
(中身は傷付く)
家族に優しいけど、他人には結構辛辣。
金の為、仕事の為に軍人してます。
MS?ナチュラル用OSが無いと乗れません。