キラに頼れる兄(ナチュラル)がいる世界線   作:影後

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レンの声優のイメージ。
CV:堀 秀行


PHASE3 崩壊の大地

「なんだ?!」

 

戦闘中に意識を背けることが何れ程迄に危険な行為か理解していた。

しかし、それでもレンは爆発の方向を見てしまった。

ヘリオポリスの隔壁を破壊しながら未知の戦艦が姿を見せる。

 

「何なんだ...あれは」

 

MSの事ならば知っていたが、戦艦まで開発されていたのかという疑問。

ヘリオポリスの障壁を破壊し出てきたのを見るに、

同じ様な秘密工廠があったのだろう。

 

『おい!余所見するな!!』

 

「くっ」

 

シグーに狙われていたが、ムウの叫び声で意識を戻す。

片腕と盾を破壊したとはいえ、重斬刀が残っている。

 

「さっさと」

 

帰れ、そう叫ぼうとした瞬間シグーとガラディーンに対してミサイルが戦艦から放たれる。

 

「くっそ、あの戦艦手当たり次第かよ!」

 

『俺が話す!少しの間クルーゼの奴を頼むぞ!!』

 

「嘘だろ!?ラウ・ル・クルーゼかっ」

 

レンもその名前は知っている。ザフトのトップエースの名前だ。

今のところは何とか出来ていたが、エレメントは解消され単独で戦うのは怖い。

レンも今日が初実戦、しかし泣き言を許してくれるほど甘くない。

 

「なんで重斬刀だけだろうが」

 

〘良い動きをする...がしかし〙

 

「ええい...奴は化け物か!」

 

ロックオンが出来た瞬間に発射しても当たらない。

シグーとガラディーンはコロニーの中を縦横無尽に飛び続ける。

レンはコロニー内で無駄玉は撃てない、クルーゼは重斬刀での一撃を狙うしか無い。

其々に科せられた中での戦闘は急な終りを迎える。

 

『兄さん、避けてっ!!』

 

オープンチャンネルで聞こえてくるキラの声にレンは慌てる。

戦うなと伝えてくれ、そう話したのにと。

 

「ロックオン!?クソ…」

 

シグーから離れた瞬間、赤色のビームがガラディーンの横を通り過ぎる。

ソレが何か理解しているレンはコックピットに拳を叩きつけた。

 

「俺のせいだ...俺が...倒せないから」

 

コロニーの障壁が完全に破壊される。シグーはその穴から離脱していく。

 

「何人...死ぬんだ」

 

どうしようもないことが、唯ひたすらに腹立たしい。

 

『話が付いた。お前もあの戦艦に降りろ』

 

「...了解」

 

今はまだ終わっていない、悲観にくれる余裕は何処にもないのだ。

レンのガラディーンとムウのメビウス・ゼロは甲板の上へ、

しかし民間人たちを腕に乗せたストライクは戦艦の中に入っていく。

 

 

「ラミアス大尉!」

 

「バジルール少尉」

 

「ご無事で何よりでありました」

 

「貴方達こそよく、アークエンジェルを。お陰で助かったわ」

 

再会を喜ぶ連合軍人たちだったが、

ストライクのコックピットハッチが開いた瞬間に変わる。

キラが降りてくると、整備兵と思われる男が話す。

 

「おいおい何だってんだ。子供じゃねえか。

あの坊主がアレに乗ってたってのか」

 

「ラミアス大尉これは...」

 

「えっと...」

 

そこにパイロットスーツを着た偉丈夫とオーブ軍の制服を着た偉丈夫が

姿を見する。

 

「へぇ、こいつは驚いたな。地球軍第七機動艦隊所属。

ムウ・ラ・フラガ大尉。こっちは」

 

「オーブ軍ヘリオポリス駐留部隊所属レン・ヤマト曹長です」

 

「よろしく」

 

ムウとレンが敬礼をすると、連合の兵士たちも敬礼を返す。

 

「第二中域第五特務師団所属マリュー・ラミアス大尉です」

 

「同じく。ナタル・バジルール少尉であります」

 

ムウが敬礼を終えるとそれにナタルが敬礼を終えたところでレンも敬礼を終える。

 

「乗艦許可を貰いたいんだがね。この艦の責任者は?」

 

話が付いたとは何だったのかと言いたくなったが、

下手なことを話して時間を割くのはまずい。

 

「艦長以下、艦の主だった士官は皆戦死されました。

よって、現状ラミアス大尉がその任にあると思います」

 

「え」

 

「無事だったのは艦内に居た下士官十数名だけです。

私はシャフトの中でなんとか...」

 

「艦長が...そんな」

 

「やれやれ、とにかく許可をくれよラミアス大尉。

俺の乗ってきた艦も落とされたし、ヤマト曹長に至ってはこの戦艦に間違えて撃たれてる。

機体の整備ぐらいは手伝おうぜ」

 

「えぇ、フラガ大尉とヤマト曹長の乗艦を許可します」

 

「それで...彼らは?」

 

「見ての通り、民間人と」

 

「オーブ軍の兵士と技術士官のアルマ二尉です。

フラガ大尉、自分はアルマ二尉の指揮下にあります」

 

「えぇ、民間人の子供達はなぜか工場区にいてわたしがGに乗せました。

キラ・ヤマトといいます。ヤマト曹長の弟さんらしく、彼のお陰でG一機を

守り抜く事ができました。さらにその際、ジン一機を撃退しています」

 

「ジン一機を撃退した!?あの子供がですか」

 

「なにがジン一機よ、それより私のガラディーンの方が優秀だわ。

初戦闘でジン二機を」

 

「アルマ二尉、現状その様なお巫山戯をしている余裕はありません。

リンザー、時と場合によってはアルマ二尉を黙らせろ」

 

「えっ...」

 

「全く、お前さんも苦労人か。...俺はあの機体のパイロットに成るヒヨッコ共の

護衛で来たんだけどね。アイツ等は」

 

「ちょうど司令ブースで着任の挨拶をして居るときに爆発が...

それで共に」

 

「そうか」

 

顔見知り程度ではあったのだろう、ムウは若干顔を暗くする。

だが、何かを理解したのか何故かキラの方に向かっていく。

 

「なんですか」

 

「君、コーディネイターだろ」

 

ムウの言葉に若干場が凍る。

 

「はい」

 

キラがそう返事すると控えていた兵士が持っていたライフルに手をかける。

 

「動くな、俺の弟に銃口を向けるなら俺が先にお前達を撃つぞ」

 

だが、レンはそれを許容できない。

弟を守るためならば、ここで死ぬことも辞さない。

対人格闘術CQCからライフルを奪い、一人を人質にしながら銃口を兵士に向ける。

 

「キラは敵じゃねえよ!さっきの見てなかったのかよ。

どういう頭してるんだよ!レンさんも落ち着いてよ!」

 

トールがそう言うが、レンは人質にした兵士をよりきつく苦しめる。

 

「銃を下ろしなさい、レン曹長も。我軍が失礼を」

 

「今は納得しましょう」

 

レンは人質にしていた兵士を解放しつつも、ライフルは持ち続ける。

 

「ラミアス大尉、これは一体」

 

「そうおかしな事でもないわ。ここは中のコロニーだもの。

戦火を逃れて移住したコーディネイターが居ても不思議じゃないわ。

それにレン曹長はナチュラル、彼は第一世代のコーディネイターよ。

両親はナチュラルだわ」

 

「兄貴はナチュラルで弟はコーディネイター。

でも兄弟仲は見るからに良好、いやぁ悪かったね。

疑問に思っちまっただけなんだ、ここに来るまでの間。

アイツラのシミュレーターを見る機会も多くてな。

歩くどころか動かすのも四苦八苦してたからな。

悪かったな、少年。それにレンも」

 

「謝罪は受け取りました。じゃあ俺達は行きますか?」

 

「おっ、以外に好印象かな」

 

「フラガ大尉、ヤマト曹長と共に何処へ」

 

「どこへって、俺は被弾して下りたんだよ。

レンも似たようなものさ。外にいるのはクルーゼ隊だぜ。

彼奴はシツコイぞ。こんなところでのんびりしてる余裕は無いと

思うがね」

 

そして、運命は動き出した。

ザフトの再度の攻撃に備え、オーブ軍、地球連合軍、民間人

関わらず協力し、モルゲンレーテやオーブ軍倉庫から

使える物資を持ち込んでいる。

 

「はぁ?!ガラディーンの予備パーツがほぼ無い?!」

 

「試作機だもの……

オーブ国軍のほうからもトラックを使って持ってきたけれど、

ガラディーンの予備パーツなんて……」

 

「くっそ……」

 

「何とかなるだろ?お前、ジン二機も撃破してるんだし」

 

「不意打ちと身体へのダメージと引き換えにね。

まったく、パイロットスーツは」

 

「オーブ軍のが余ってたわ。貴方の方は」

 

「武器弾薬はほぼ無し、

規格は共通してるから連合のメビウスの弾薬が使える。

あと、ストライクのサブウェポンとしてシグーの突撃銃を。

年の為に回収を、今キラが使えるようにしてるところだ。

ビームライフルだけじゃ、勝手がな。

それに、ガラディーンの整備をできるのは俺とアルマ二尉。

貴方だけでしょうが。マニュアルも無いんだ」

 

「えぇ…それでリンザー二士は」

 

「あっちで民間人とトラックを。

ストライクが優先されています、MSは貴重な戦力。

まぁ、乗ってるのが弟となれば、良い気はしませんがね」

 

レンとしても不都合でしかない。

生き残る為とはいえ、オーブ軍が地球連合軍に手を貸している。

ハッキリ言ってかなりまずい。

 

「水がないんだ!モルゲンレーテから持ってくる他」

 

「おいそこの!

水が必要ならモルゲンレーテの第二区画からだ」

 

「え?」

 

「どうせ民間人は避難済みだろう、さっさと運んでこい」

 

「え、その」

 

「何かあればオーブ軍で責任を取る!

水が必要なんだろ!速く動け!!」

 

正直、自分も今の状況を火事場泥棒としか思えない。

だが、それでもやるしかないのだ。

 

「ガラディーンの推進剤と弾薬は問題ない、

パイロットも問題ない。くっそ……」

 

「アンタも……その」

 

「俺の弟が乗ってる、そして我が国の民間人が乗ってる。

戦うしかないんだよ」

 

整備兵が話しかけてくるが、素っ気なく返す。

下手に情を持つのは、別れが面倒になる為禁止だ。

 

「おい!ヤマト曹長、通信だ!」

 

「判った。此方レン・ヤマト」

 

『レンか、ジャミングだ!ザフトが攻めてくるぞ!

俺のメビウス・ゼロは……格納庫に居るなら判るな?』

 

「了解だ、俺がやる。

アルマ二尉はリンザーと共に民間人の所へ」

 

「判ったわ、貴方も……生きて帰ってね」

 

アルマはそれだけ告げると離れる。

パイロットスーツに着替え、直ぐ様ガラディーンへ向かう。

 

「……キラ」

 

「兄さん……僕も戦うよ。守る為に」

 

「……辛くなったら、俺を頼れよ。

俺も実戦なんて今日が初だ。でも、軍人としての

心構えならできてるさ」

 

キラの頭を優しく撫で、

そのままガラディーンのコックピットに入る。

 

『ハッチ開け!レン行けるな!』

 

「ガラディーン、出る」

 

淡々とそう話すレンは

もう初めての実戦を終えた曹長ではない。

殺す為に戦う、一人の兵士だ。

ヘリオポリス内に再びガラディーンが飛び立つ。

見えるのはジンが六機にG兵器が一機。

中でもそれはレンがよく知っている機体だった。

 

「イージス」

 

神の盾を冠する機体であり、

MA形態とMS形態の2つを持つ可変型MSである。

レンはイージスのテストパイロットでもある。

だからこそ、一番弱点を熟知しているのだ。

 

「だが、お前よりも先に……」

 

見えるのはジンだが、対艦兵装を装備した五機。

一機はバルルスというビーム砲を装備していた。

 

「先ずは一つ、」

 

ヘリオポリスという箱庭はMAで飛ぶにも十分な広さがある。

そして、今回は生身ではない。

パイロットスーツを着ているため、

無理な動きでもレンは耐えられる。

 

《なんだ?!突っ込んで》

 

スロットルを踏み締め編隊を組むジンの間を突っ切る。

直線加速性能ではMAに勝てるMSはそうは居ない。

特に、対艦兵装になり重量が増しているなら尚更だ。

 

「ぐっ……」

 

ジン達の背後を捉えたガラディーンはリニアカノンを

その背中に叩き込む。

MSは人型で振り向くという事ができるが、

編隊を組んで作戦指示でも受けていたのだろう。

ガラディーンに慌ててしまい、隙を晒す。

 

《マシューっ?!この…ナチュラルが!》

 

ジンが爆発し、

ガラディーンを狙うように他の機体からミサイルが

飛んでくる。

ロックオンアラートが激しい鳴り響くが、

ミサイルの避け方は理解している。

コブラマニューバを行い、ロックオンしていたミサイルが

ガラディーンの腹部をすり抜けながら飛んでいく。

 

《なんだと?!》

 

そのままハイGターンから40mm機関砲を放つ。

大型ミサイルを装備していたジンは弾頭の爆発に巻き込まれ、

ヘリオポリスの空に散る。

 

「……此奴ら、素人か」

 

レンの感じていた違和感だ。何故自分が戦えているのか。

確かに、MA乗りとして訓練され常日頃から数多の機体の

テストパイロットや数多のスクランブルを経験してきた。

だが、対MS戦闘は初めてなのだ。なのに、戦えている。

操縦桿を握る手に不思議と力が入るのが理解できる。

生き残る、その希望が見いだせて来たのだ。

 

「護衛機が護衛していないと、こんなものか」

 

全てのコーディネイターがそうではないだろう。

だが、少なくとも今目の前にいる者たちは馬鹿だ。

機動性が劣悪になる装備を両手に抱えているせいで、

機体が重いのだ。

それだけではない、あの戦艦アークエンジェルが優秀なのだ。

ガラディーンがミサイルを破壊しても撃破できなかったジンは

アークエンジェルのビーム砲に焼かれて消える。

 

「なっ」

 

そして、アークエンジェルの撃破した一機が最悪な置土産を

遺して消えていった。

大型ミサイルの引き金が引かれていたのだろう。

ジンを撃破したにも関わらず、ミサイルがヘリオポリスの

骨を完全に破壊する。

コロニーの中心から激しい爆発が起こり、

それが連鎖していく。

 

「くそっ…くそっ!くそっ!ザフトどもがぁぁぁ!!!」

 

《ひっ…止め》《イヤぁぁぁぁぁ》

 

レンは怒りのままに撤退しようとしたジンを背後から撃つ。

ヘリオポリスのポリスの障壁がパージされていき、

空気が漏れ出していく。

 

「……残りは貴様ァ!」

 

『待って、兄さん!』

 

《兄さん…まさか……》

 

「コロニーを……ヘリオポリスを!!!良くも!!!」

 

《くっ……まさか……》

 

イージスとの性能差など感じさせない動きで

ガラディーンは只管に弾薬を撃つ。

フェイズシフト装甲といえど、

撃ち続ければいつかはダウンする。

それだけではない、フェイズシフト装甲は衝撃までは

緩和できないのだ。

 

「死ね!死ね…ザフト野郎!!!」

 

だが、レンの復讐は出来なかった。

流れ出る空気による乱気流、それに巻き込まれる形で

操縦が不可能になっていく。

 

「くそ……ガラディーン?!!!」

 

操縦桿が重い、そして動けもしない。

ガラディーンは無重力空間、無限に広がる宇宙へと

弾き出された。

 

 

 

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