キラに頼れる兄(ナチュラル)がいる世界線   作:影後

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PHASE4 サイレントライン

「くそ…ッくそォォォ」

 

崩壊したヘリオポリスを見ながら、

レンは怒りに任せて叫んだ。

レンも軍人だ、軍人としてのプライドもある。

そして、ヘリオポリスと言えば少なくない日々を過ごした。

同じ釜の飯を食う仲間、一番は両親が住んでいるのだ。

それが、それが一瞬にして消え去った。

 

『YF/A-19ガラディーン!生きてるわよね!

レン曹長!答えなさい!!』

 

通信から聞こえてくるのはアルマの声だ。

 

「生きてるよ……

守るべきコロニーを……

ヘリオポリスを破壊されちまったがね」

 

『X-105だっけ?ストライクも帰還の途中なの!

この艦の座標は…』

 

「大丈夫だ……デブリの中を抜ける。

少し、時間がかかる。通信終了」

 

レンは頭を冷静にし、アークエンジェルの格納庫へ

と入っていく。

 

「なぁ、アンタ。気にしちゃ」

 

「両親もいた、仲間もだ……守れなかったんだ。

俺は……軍人なのにな」

 

レンが帰ってくるなり、マードック曹長と呼ばれていた

整備兵が声をかけた。

目尻に涙を浮かべ、護れなかった事を只管に悔やんでいる。

自分でも理解しているだろう、守備隊は既にレンを残し

全滅していた。

今のオーブ国軍はリンザーとレンが正規軍人としているが、

まともなのはレンのみ。リンザーは新兵であり、

本来なら教育も足りていない。

 

「……ブリッジの方に来いって。行けるか?」

 

「了解した」

 

レンはそのままブリッジに向かう。

護れなかった悔しさも忘れないが、

今あるのはザフトに対する憎悪だけだった。

 

「よぉ!来たか、レン!!」

 

「フラガ大尉も、CICお疲れ様でした。

所で、何でアルマ二尉が此方に?」

 

「しかたないの、だってオーブ軍の回線だもの。

私が開けたからね。本来ならマードックのオジサマ方と

整備員してる所よ」

 

「いえ……ですから、貴女オーブ軍の」

 

「ラミアス大尉にも話したけど、

少なくともこのアークエンジェルが

第八艦隊と合流するまでは一蓮托生になるのよ。

だったら、地球軍、オーブ軍の垣根を越えて協力するしか

ないじゃないの!」

 

「…えっと……ラミアス大尉はよろしいので?」

 

「はい、本艦は人材が不足しております。

ヤマト曹長のパイロットとしての腕だけでなく、

士官学校を卒業しているという立場も必要なのです」

 

「聞いたろ?この艦、士官がほぼ戦死してるんだ。

レン、俺からも頼む。戦友として、手伝って欲しい!」

 

「いや、俺はそもそもキラ達を護る為に戦っているんだ。

その結果、アークエンジェルを護る。違うな、

協力しましょう。生き残る為に」

 

それはレンが地球軍いや、

アークエンジェルに乗っている人間を外様から仲間と

認識するに十分なものだった。

 

「なんだと!ちょっと待て!誰がそんな事を許可した!!」

 

バジルールの叫ぶ声、通信相手は恐らくはストライクだろう。

レン、マリュー、フラガ、アルマの4人が顔を見合わせる。

 

「バジルール少尉、何か?」

 

「ストライク、帰投しました。

しかし、救命ポッドを一隻保持しています」

 

「「えぇっ」」

 

レンの方を見るマリューだが、レンは自らの立場を理解している。

ヘリオポリスが崩壊し、現在は地球軍に協力しようとしている所だ。

民間人の保護を依頼したいが、そんな余裕が無いことは知っている。

 

「バジルール少尉、通信を変わってほしい」

 

たとえ憎まれ役でも、他人より身内のほうが伝わるはずだとレンは

言葉を続ける。

 

「認められない?認められないってどういう...

推進部が壊れて漂流してたんだ、兄さんっ!」

 

「ヘリオポリスの崩壊は既に広まっている筈だ。

ジャンク屋だけじゃない、救出艇も出るだろう。

アークエンジェルは現在、戦闘中だ。

それにキラ、お前はトール君達と同じ立場の人を作るんだぞ!

わかって...」

 

「良いわ、許可します」

 

「ラミアス大尉、それは」

 

「今はこんなことで言い争っている場合じゃないわ」

 

「バジルール少尉、収容急がせて」

 

「わかりました、艦長」

 

バジルールもその言葉を受け入れ、敬礼で返す。

 

「嫌な役をやらせたな、曹長」

 

「……赤の他人より、身内の方が文句も言いやすい。

精神的な負担と言うものは減る。

それに、アンタらは最低でも第八艦隊と。

最高で、地球軍本部まで行かなきゃならない。

キラがストライクから降りる為にも、

不仲が理由で背中から撃つなんて嫌だろ」

 

「だな、昔の世界大戦なんて上官を後から撃つなんて」

 

「フラガ大尉、レン曹長、そのような話は止して。

こんな状態で話す事ではないわ」

 

「アルマ二尉、なんで下手な士官より士官出来てんだ?

技術士官だろ、教育なんて」

 

「教育は受けてないけど、TPOは判るわよ!」

 

ブリッジでは何処か気の抜けた会話が行われているが、

皆それが一時的な物だと知っている。

 

「艦長、私はアルテミスへの入港を具申致します」

 

「アルテミス…ユーラシアの軍事要塞でしょ?」

 

「アルテミス……要塞か」

 

「「傘のアルテミス(か)(ね)」」

 

「現在、本艦の位置から最も取りやすいコースにある

軍事要塞です」

 

「でも、Gも本艦も友軍の認識コードすら持っていない状態よ。

それをユーラシアの」

 

「アークエンジェルとストライクが我が大西洋連邦の

重要機密である事は無論、私とて承知しています。

しかし、このまま月へ進路を取ったとてこのまま無事に

進むことが出来るとはお思いではないでしょう」

 

「アークエンジェルとそのクルーは良いだろうが、

俺、ガラディーン、リンザー、アルマ二尉は

オーブ国軍所属である上、

ガラディーンは一応機密にもなります」

 

「だが物資の事もある」

 

「ですから、一つお願いがあります。

ガラディーンは座席さえ取り付ければ、

複座機としても運用が可能です。

リンザーはナチュラルですが、

アルマ二尉はコーディネイターです。

アルマ二尉には酷な事と思いますが、

ガラディーンにて補給終了まで待機してもらおうかと」

 

「は?!何言ってるわけこの人?!

私、ほぼほぼ民間人なんですけど?!」

 

「まて、曹長。何故そんな」

 

「一重に、バジルール少尉は人と言うものを理解して

おられないからです。任務や軍務に従うのは、

軍人の責務でありますが、それを行える軍人は一握り。

ましてや、ジェラード・ガルシア司令は

元々人望はあまりなく、アルテミスの宙域を通る

民間船から通行料を巻き上げるという軍人に

あるまじき恐喝行為を行っているという報告が来ています。

更に、出世欲と顕示欲の塊がこのアークエンジェル。

そして、ストライクをどうするか…考えるまでもない」

 

「だがそれは曹長の主観的」

 

「客観的に見て、どうしようもない男という事です。

私は弟と国民が貴方方にとって人質にもなる。

そうならないため、素早くこの新造艦から降ろしたい」

 

「わかりました。

先ほども言いましたがここで言い争いをしている余裕は、

我々にはありません。アルマ二尉は納得して」

 

「納得させる必要はありません。

戦場となれば、アルマ二尉よりも

自分のほうが理解しています。

それに、新任の士官を教育する下士官は珍しくありません。

故に、大変申し訳ないが、アルマ二尉は共にアルテミス外で」

 

「……この事、覚えてなさい。

何時か必ず、仕返ししてやるから」

 

「そうですか、でしたら自分はガラディーン及び

後継機開発から手を引くのみです。

従ってもらいますよ、今だけは」

 

「……アンタ、

子供達の前でもそれぐらい怖い顔してれば…

もう、わかったわよ。ただし、守ってよね!」

 

「もとより。では……マリュー艦長。

そして、バジルール副長。自分はこれより、

ガラディーンの整備に入ります」

 

「私も行くわよ!」

 

レンは2人に敬礼すると、艦橋を出ていった。

 

「…バジルール副長だってよ。

彼奴、少尉に反発しながらも認めてるじゃん」

 

「……私は別に何も感じてなどおりません。

大尉」

 

 

 

 

 

アークエンジェルの格納庫にて、

ガラディーンはペインティング作業が行われていた。

 

「塗料は使い切って良いからな!」

 

「ガラディーンだから太陽っ!いつ!!」

 

「なんでオーブに近しくする!

……そうだな、不死鳥にでもするか」

 

「ガラディーンにフェニックス?えーー」

 

「一発撃たれても致命傷だ、

なら不死鳥に頼むしかないだろ。願掛けだ。

幸い、武器弾薬の方は何とかなっているし……

ガラディーンの予備パーツだな。問題は」

 

「あぁ……レン曹長だったな。

メビウス・ゼロの予備パーツもすくねぇ。

俺等が置いてたのは基本的にGシリーズだ」

 

マードック曹長の言葉に頭をかく。

MA組のレンとムウは被弾するだろう。

予備パーツが少ないとなれば、どうしようもない。

被弾しない戦闘をできればよいが、

相手も殺しに来ているんだ。

その時だ、接敵を知らせるアラートが鳴り響く。

 

「ガラディーンを先に上げるぞ!

レン、いけるな!」

 

「……あぁ」

(ぶっ殺してやるよ、ザフト野郎)

 

パイロットスーツで作業していた為、

そのままガラディーンのコックピットに入り、

カタパルトへと上げられる。

 

『レン曹長、切り込み役となってしまいますが』

 

「艦長、そのまま敵情報の取得に入ります。

YF/A-19ガラディーン。出るぞ」

 

バーニアから激しい光が燃え上がり、

一瞬にして音速を越える。

鳥籠ではなく、広々とした世界で飛ぶガラディーン。

一瞬にして8Gの衝撃が来るが、レンは慣れたものであった。

 

「皆殺しにしてやる、それが………」

 

――死んでいった市民達への手向けになる

 

レンは既に軍人と言うだけでは無い。

激しい憎悪に身を包んだ、復讐者でもあった。

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