「接敵。敵MS、G兵器。
これより、戦闘行動に入る!」
通信を終えたガラディーンはPS装甲持ちのG兵器達へ、
ロケット弾を発射する。
無論、避けられるのは承知の上である。
〘ヴェサリウスに!?〙
〘ディアッカ!〙
〘くっそ……〙
ミサイルはG兵器を狙ったのではなく、
始からロックオン射程外のヴェサリウスを狙っていた。
推進剤がきれようと、空気抵抗も重力もない宇宙空間では、
なにかに命中するまで質量物は飛んでいく。
それを応用した遠距離狙撃だ。
「ミサイルだけだと思うなよ」
〘ちぃ…〙
射撃戦が得意なG兵器X103バスターを撃つ。
ミサイルを瞬間的に狙撃する必要がある状態で、
リニアカノンを発射する。
〘ディアッカ、無事ですか!〙
〘あぁ、でも射線がズレた!
バスターじゃこれ以上は難しいぞ!〙
バスターじゃこれ以上難しい。
止まった状態で狙撃するなら簡単だろう。
だが、位置がバレている状態で射撃支援機を
狙わない馬鹿は居ない。
〘俺が下がる!イザークとニコルはディアッカの援護を〙
〘了解です!ヴェサリウスを頼みます!〙
〘アスラン貴様!指図をするな!!〙
「……だろうな、MA形態になれるイージスが下がる。
ならば……」
正直、ガラディーンにPS装甲へ有効打を与える攻撃は
不可能である。実弾兵装しか積んでいないだけでなく、
そもそもPS装甲はモルゲンレーテの開発陣も一部しか、
知らされていないほどのトップシークレット。
射程が明確にあるビーム兵器が必要になるなど、
想定外だからだ。
「くっ……そ……」
母艦たるアークエンジェルを狙わせないため、
対艦攻撃能力の高いバスターを優先的に邪魔をしながらも、
他のG兵器への嫌がらせも忘れない。
鳴り止まぬロックオンアラートに激しいノイローゼに
なりそうだと思いながらも、
じっと操縦桿を握りしめ、スロットルを踏み締める。
〘さっさと落ちろよ!』〙
痺れを切らしたバスターのミサイルがガラディーンに迫る。
6連装ミサイルポッドから全弾放たれたのは、
とてもありがたい事だ。
〘ええぃ!五月蝿い蝿め!!!〙
〘イザーク!今です!〙
背後だけでなく、
下部からもロックオンアラートが鳴り響く。
この程度で終わる訳には行かない。
死ぬ訳にはいけない。
『あのパイロット……なんて腕を』
ハイGターンをしながら、
ガンでミサイルを破壊しながら旋回。
ガラディーンの性能があってのものだが、
激しいGがかかってくる。
[オーバーG][オーバーG]
危険信号が鳴り響くが、
戦闘中に意識を失って居られない。
視界がぼやけるのを、根性で耐えながら自分を撃とうとした
G兵器X-102デュエルのメインカメラを狙う。
装甲はPS装甲だが、駆動系やカメラはPS装甲ではない。
無論、当たるとは思っていないが、
それでもレンは撃った。
〘くっ……〙
シールドに防がれる。
小さい的を撃つなど、レンには難しい芸当。
奇跡など、そう簡単には起こらない。
『兄さん!ごめん!!』
『生きてるか!レン!!』
「…吐きそうだが、生きてるさ」
何度も生死の境を彷徨っている。
これがメビウスやミストラルだったらと思うと絶望しかない。
ガラディーンで良かったと思う反面、
G兵器つまりMSに乗れたらと思えてしまう。
「無い物ねだりはしてられん」
MSを一機でも突破させてはいけない。
幸い、3-4であり、乱戦に持ち込めればアークエンジェルの
離脱までの時間を稼げるはず。
ストライクが囮で、メビウス・ゼロとガラディーンが
場を掻き乱す役だが、ここでガラディーン。
いや、レンのミスが発生する。
〘やっぱりだ……イザーク!このMA〙
〘…そうか!〙
何が起こったのか理解できなかった。
バスターとデュエルが何故か急に
ガラディーンから離れだしたのだ。
ストライクを狙っているわけでもない、それは
「不味い!!」
〘アンタは一撃離脱だけだもんな!〙
アークエンジェルを直接狙われること。
ガラディーンの推力を生かした一撃離脱戦法だが、
結局は狙撃されては意味がない。
だからこそ、バスターを優先的に狙っていたのだが
〘舐めるなよ!ナチュラル!!〙
〘頼むぜッイザークッ!!〙
バスターの砲門が連結され、散弾が放出される。
デュエルとの戦闘中にされたそれは回避が間に合わない。
〘貴様の機体にはPS装甲はないだろう!〙
「がぁぁっ…」
腹部からガラディーンを貫くように散弾が命中する。
翼が折れ、機体のスパークが激しい。
だが、まだ火は灯っている。
『兄さん!!』
「騒ぐな……生きてるよ」
コックピットや動力部への被弾はギリギリ防げたが、
レッド・アラートが鳴り響いている。
だが、ここで帰還などできるはずがない。
「なぁ…ムウ、キラ、俺死ぬかも知れんけど……
仕事をしてくる」
『何言ってる馬鹿!帰還しろ!!』
『兄さん…何を!』
「……死に場所は選べるが、安心しろ。
ここじゃない」
バスターとデュエルはガラディーンを無視し、
生存しているメビウス・ゼロとストライクとの
戦闘に入る。
なら、やるべきことは一つ。
ガラディーンのレッド・アラートを理解しながらも、
フル・スロットルで宇宙空間を進む。
翼が壊れていようと、機銃は撃てる。
リニアカノンの砲身も一つはお釈迦だが、
もう一本は生きている。
「見つけたぜ……敵母艦!!」
〘敵MAが接近!〙
〘撃ち落とせ!!〙
「知ってんだよ……真下に撃てねぇのはな!!」
正面からでは撃たれるが、ZAFTの戦艦は何故か
真下に対しての攻撃能力が著しく低い最低な設計ミスがある。
撃破することは考えない、あくまでも動力部を破壊して
追撃に時間を作らせる。
「喰らえぇぇぇぇ!!!!」
残ったリニアカノンと機銃による攻撃が、
ZAFT艦を襲う。それはまさに執念の一撃だ。
「……くっそ……」
離脱するにあたり、
ミサイルの追撃が入るがマニューバで避けれるほど、
機体の耐久性はもうない。
一か八かのフレアを焚き、戦闘中域へと戻る。
「アークエンジェル、敵艦の動力部を落とした!
さっさと脱出を何!?」
『レン曹長!おい…生きているのか!』
「生きてるが…エンジンがオーバーフローだ!
とてもじゃないが、戦闘行動には参加できん!」
『アークエンジェルに緊急着艦して!
消火班と医療班の用意もあるわ!』
「感謝する…ラミアス艦長」
そして、アークエンジェルへ緊急着艦しようとした瞬間。
最悪なものが見えてしまった。
イージスに捕まったストライク、
PS装甲がダウンしているのか灰色となっている。
「…キラ…!キラァァァァ!!!」
『兄さん…兄さん駄目だ!』
〘兄さん…キラ、まさかあのMAには…〙
「持ってくれよ!この
『おい、レン!なにするつもりだ!!』
「知れたこと!ストライクを救出するのよ!!」
『俺に任せろ!お前の機体じゃ無理だ!!』
「黙って見ていろぉ!」
この時のレンは所謂、ゾーンと呼ばれる物に入っていた。
宇宙空間がまるで一つの写真が動くようにスローに見えていた。
〘此奴…ビームを!!〙
「当たれぇぇぇぇ」
魂の叫びとしか言えない言葉。
レンの、ガラディーンの機銃がイージスの脚部関節部を
執拗に射撃する。
〘なん…だと……キラ!〙
『兄さん……兄さん?!』
キラのストライクはイージスから脱出し、
メビウス・ゼロからの援護射撃を受け離脱も出来た。
だが、見たのはガラディーンからの小規模爆発。
片方のエンジンが完全に死に、その状態でデュエルから
銃口を向けられていたのだ。
『やめろぉぉぉ!!』
キラのエネルギーはもうない、
だがイーゲルシュテルンは関係なく撃てる。
〘ちぃ………ナチュラル一匹落とせんとは!〙
『坊主!』
『フラガ大尉?!』
『聞け!アークエンジェルがランチャーを射出する!
後にもまだデカいのがいる!レンを見ろ、まだ生きてる!
アークエンジェルには緊急着艦の用意もある!』
レンはそんな通信を聞きながら、
何とか左舷カタパルトに着艦する。
一瞬で消火されながら、アークエンジェルに居る兵士達の
手によってコックピットから引きずり出される。
「レン曹長!」
「……酷い…生きてるか!助けてやるからな!」
エンジンの爆発時に、装甲が機体内部を貫通し
よりにもよってパイロットを傷つけたのだ。
パイロットスーツが止血をし、
破片との隙間を密閉してくれていた為に、
レンは助かったと言わざる得ない。
「……ここは」
「アークエンジェルの医務室さ。
良かったな、幸い縫うだけで済んだ。
臓器までは行ってない」
「……ガラディーンは……おれの」
「止めろ、曹長。ここはもう、アルテミスだ」
「なっ……」
レンは絶望したような顔でじっと医者の顔を見ていた。