キラに頼れる兄(ナチュラル)がいる世界線   作:影後

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PHASE6 消えるガンダム

 

「曹長、君が目覚めるまでに起きたことを話そう,

アークエンジェルは既にアルテミス駐留軍に制圧されている。

君が危惧していた通りだよ。

ここの司令官はストライクのデータが欲しいらしい。

皆、パイロットのキラくんだったな。

彼を護ろうとしていたが……あろうことか、

民間人によって…ね」

 

その言葉を聞いた瞬間、明確な殺意が湧く。

いや、元々キラではなく艦橋ではオーブ軍人として

の立場で言っていたのだ。

他人を責めるのはお門違いとなるだろう。

 

「此処にもアルテミスの警備兵が居てね。

私は君という患者が居るから助かった」

 

「話していては……その、危険なのでは?」

 

「大丈夫さ、外の兵士、彼女の事は気にしなくていい。

ユーラシアにも、まともな兵士が居るという事だよ」

 

「……」

 

軍人としてよりも、人としての選択をしたと言えばよいのか、

命令不服従で厳罰など可哀想と、他人事だがあまり動けない

自分からしたらそう思うしかない。

 

「……それで、その俺の部下と上官は」

 

「君の部下だが、そのな。

ミリアリア・ハウだったか、その少女が捕まりかけた瞬間、

殴り飛ばしてな、今は隣のベットだ」

 

「…嘘だろ、リンザー…お前何で」

 

リンザーは激しく暴行を受けたのだろう。

顔面には湿布、上半身は脱がされ腹部と脚部には

骨折でもしたかのような処置が施されている。

 

「意識は…あります……もう、

こんな思いはしたくないですけど」

 

「馬鹿な、おとなしくしていれば」

 

「曹長なら、民間人が捕まったり、

不当な扱いをされたら、きっとキレるでしょ?

護る為、軍人の責務って奴です。

俺、MAも操縦できないし、アークエンジェルでも

MPの皆さんに協力してる立場ですけど、

曹長の力になりたいって…だから……だから……

なのに……なのに俺…逆に護られて……」

 

「護られて…誰にだ!?」

 

「キラくんと、アルマ二尉です。

しかも…あのフレイとか言う馬鹿が

2人はコーディネイターなんて言って……

すみません……俺…護衛なのに…曹長の部下で」

 

「いや…良くやった。良くやったよ。

お前は…お前は本当に良くやった」

 

レンは泣いているリンザーの頭を優しく撫でる。

リンザーは二士であり、新兵だ。

そんな新兵が、勇気を振り絞って護ろうとしたんだ。

それを誰が責められようか。

特に、レンはその間意識すら無かったのだ。

責める事など、そもそも出来やしない。

 

「兎に角、二人とも安静にしているんだ。

今は待つの……も?!」

 

「…ハサミ、メス、そうだなメスで良いか。

外の兵士を…」 

 

「待て待て!何考えて」

 

「殺すだけだ、俺の部下を傷つけ、

上官と弟を利用するクズを、このメスでな」

 

レンの瞳は復讐の焔に燃えている。

自分が怪我人という事も忘れるほどに怒り、

アドレナリンがドバドバと出ているのだろう。

 

「落ち着け!今は耐え」

 

「先生、何が」

 

女兵士が入ってくる。

階級は三等軍曹、だが衛生兵を示す赤十字が肩にある。

 

「がぁ…」

 

「馬鹿…協力者だぞ?!」

 

「ユーラシアの兵士だ、信じられる保証もない。

お前、ハンドガンくらいあるだろ。死にたくなければ、

俺によこせ」

 

「医者の前で殺人予告するな!」

 

「先生、大丈夫です。

…レン・ヤマト曹長ですね。

私の名前はレン・クルーガーと言います。

私は貴方方に敵対するつもりはありません!

どうか落ち着いてください!」

 

「同じ名前か?知ったことか。俺は救う。

キラを……うちの上官を。

その為なら、俺はいの……ごぶ……」

 

内蔵に傷がないはずのに、血を吹いてしまう。

それを手で抑えて、相手にかからない様にしているのは

最後の理性なのだろうか。

 

「傷が開いたんだ!馬鹿!

縫合したばかりなんだぞ!!

鎮静剤もないのに……まったく…

くそ、こりゃあ内蔵に行っちまったか?」

 

「ベットに運びます!暴れないでくださいよ!!」

 

「なぜ……お前」

 

「衛生兵も医者ですから…それに、治る傷も治りませんよ?」

 

「……だが、やるべきことがある。

それを成さない限り、俺は上官にも、部下にも向き合えん」

 

その言葉に軍医は呆れ果てると、

一本の注射をレンの首元に撃ち込んだ。

 

「鎮痛剤だ、しかも麻薬入り。

最悪ドラッグ中毒だが、曹長。判ってるな」

 

「……あぁ、ありがとう先生。三等軍曹、

君の同僚は」

 

「…言いますが、私はこの要塞のメンツを同僚とは

思っていません。私は誇りあるユーラシア軍人です。

あのセクハラ野郎とその配下の屑と一緒にされるのは

正直、最悪です」

 

「なんでこんな所で軍人してるんだ」

 

「巫山戯た事を抜かした高官の秘部を蹴り潰したら、

左遷されました」

 

怒りも完全に落ち着いたレンはふと、

目の前のまともなユーラシア軍人を疑問に思い問い掛けると、

あまりにもあんまりな答えが帰ってき。

普通なら不名誉除隊、だがそれ以上に軍閥状態の今では

秘密裏に軍政抹消されてもおかしくない。

 

「それに、

多分このままアークエンジェルは脱出しますよね?

ならちょうど良く司令官の汚職の証拠もありますし、

乗って総司令部まで行った後に色々とリークして、

軍高官をすげ替えようかと」

 

その場にいた軍医、レン、リンザーも言葉が出ない。

だが少なくとも本心だろう、本気で軍改革を望んでいる

目をしているのだから。

 

「……判った。君の責任は私が取ろう。

レン……クルーガー三等軍曹。よろしく頼むよ」

 

「はい、ドクター!」

 

「よし、そしてレン曹長。君は」

 

「脱出まで、大人しくしておく。

だが、俺のハンドガンは」

 

「ここだ、ちゃんと隠してある」

 

「……」

 

レンはハンドガンを受け取るとチャンバーと、

弾倉の確認をした。

きちんと装填されている事を確認すると、

静かに懐のホルスターへと収める。

 

「残弾は7発、敵は大勢。メスはここにある」

 

「……大人しくするんじゃないのか」

 

「大人しくするさ、殺したあとでな」

 

レンにとって敵は敵。殺すべき者だ。

生かす価値など有りはしないのだ。

 

「……必ず救う。そして、俺の部下を傷つけた報いを受けろ」

 

「ねぇ、オーブ軍ってこんなに血の気が多いの?」

 

「曹長だけ……だと思いたいです」

 

「クルーガー三等軍曹、ここは任せた」

 

「汚さない様に、血の掃除は大変よ」

 

「なら、首を折る」

 

レンはそう言うとアークエンジェルの通路を進む。

警備兵も居るが、基本となるツーマンセルは行わず

単独行動が見受けられる。

これは、要塞内部である事と船内に敵がいると思っていない。

その為であろう。

 

「……素人め」

 

「ん!!!!んんゔん……」

 

後ろから組み付き、首にメスを突き立てた。

首を折るよりもこっちの方が楽に殺せる。

 

「……ライフルか」

 

予備は無いが、最低限の火力は保証された。

軍で鍛えられた、フルオートでの乱射など絶対にしない。

 

「…」

 

「おい、貴様!何して…貴様、何を考えて」

 

声を掛けていた兵士が武器を持っていたのと、

此方に向けてきた為、そくざに発砲してしまった。

銃声が響いたかと思ったが、同時期に爆発が起こった。

 

「このまま奪うか」

 

ライフルを奪い、

事前にドクターやリンザーから聞いていた食堂に向かう。

ライフルを構えた兵士が二人、爆発に慌てふためいている。

 

「……!」

 

「(コクリ)」

 

操舵手のはずのノイマン曹長だった。

アイコンタクトが通じたのだろう、

動くなと指示を出しライフルを向けた瞬間、

ノイマン曹長は出口へと飛び出した。

 

「なんで来る?!」

 

「何でいる?!」

 

アイコンタクトは失敗したようだったが、

冷静に二人のユーラシア兵士を殺害する。

 

「何で飛び出した?動くなってやったろ!」

 

「いや、あの状態なら動けだろ!って、

こんな場合じゃない!アークエンジェルを!!」

 

「弾を回収したら、俺は格納庫の制圧に移る。

何人いた、ユーラシア兵は何人だ!」

 

「俺が見た時は10人ほど」 

 

「お前誰だ?」

 

「え?ダリダ・ローラハ・チャンドラII世ですけど」

 

「アークエンジェルで名前が長い奴か、思い出した。

伍長だったな、感謝する」

 

「え?待ってください、曹長?!」

 

レンはチャンドラの言葉を聞くため、いったん止まる。

 

「どうした、何が言いたいんだ」

 

「えっと、

アークエンジェルの制圧は最小限で行われたと思います。

格納庫の事も考えると、せいぜい5人かと」

 

「感謝するぞ、チャンドラⅡ世伍長」

 

「え、あのチャンドラでお願いします」

 

「ブリッジクルーはそのまま行け!

民間人は死体を見るな!他にユーラシア兵士は居ないな」

 

「はい、此処にいるのはアークエンジェルクルーです!」

 

「死体の処理を頼むぞ」

 

レンは再び格納庫へと走り出す。

殺す事に躊躇いのない兵士は上官と弟を救うために、

血に塗れる事を良しとした。

 

「貴様!」

 

到着すると、ストライクが出撃準備に取り掛かっていた。

無論、それを見て殺さない程レンは優しくはない。

 

『攻撃されてるんでしょ!こんな事してる場合で』

 

「あぁ、場合じゃない。だが、俺の怒りを受けろ」

 

それはライフルの乱射だった。

いや、狙いは定まっていた。

格納庫は重力が作動していない為、

フックで肉体を固定しての射撃。

フルオートでも指を切り撃ち尽くしはしない。

死体となった士官二人と赤い粒が空中を舞っているが、

レンは気にせず周囲を確認した。

 

「…アルマニ尉、何処です!」

 

格納庫に送られたと聞いていたが、声がしない。

 

「レン!」

 

「アルマニ尉?!」

 

声がする方向に銃口を向けると、

ユーラシア兵士がハンドガンをアルマの額に向け、

人質にしていた。

 

「貴様………」

 

「巫山戯るな!仲間を…仲間を殺しやがって!

お前もコーディネーターだな!コイツラの仲間だな!」

 

「……ナチュラルだ。

だが俺にはナチュラルもコーディネーターも関係ない。

銃を下ろせ、お前がアルマニ尉を殺した瞬間俺が貴様を殺す」

 

「お前、イカれてんのか!此方には人質が」

 

「それがどうした」

 

レンは狙いをつけるのを止めない、殺意だけがこもった目。

確実に殺すという意思がそこにはある。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

アルマを撃てば必ず殺される、

逆に言えばアルマを殺さなければ殺されない。

 

「死ねよ!死ねよ!!!」

 

レンに向けて撃つ。

そう、殺されない為には殺すしか無い。

だがレンに向けてハンドガンを構えた瞬間、

アルマが腕に齧り付いた。

 

「この…アマァ!」

 

服の上からと言えど、本気で噛まれれば痛む。

人間は人間の肉に歯を食い込ませる事ができる程度には高い。

その中でもコーディネーターは基本的に身体能力は

優れており、アルマもある程度の強化を施されている。

 

「離しやがれ!」

 

「貴様がな!」

 

格納庫の壁を蹴り、アルマと兵士に向かってレンは飛ぶ。

アルマ越しとなるが、体勢を崩した兵士から即座にアルマを

奪い返すとレンは銃口を向ける。

 

「あ……」

 

「残りは持ってけ」

 

マズルフラッシュがまるでスローモーションの様に

再生される。

兵士は己の胴体に何発もの弾丸を撃ち込まれ、

絶望しながら死んで行った。

 

「…レン!」

 

「アルマニ尉、ガラディーンは出せますか?」

 

「…完全に修復が終わってないわ。

性能面で見たら50%も出てない」

 

「無いよりマシだ、キラの援護を」

 

「駄目よ、貴方……」

 

「何が…」

 

レンは気がついていなかったが、

脇腹に赤いシミができていた。

傷口が開いたのかと思ったが、どうやら撃たれていたようだ。

 

「今はアドレナリンが出てるから大丈夫。

でも、此処でまともな整備も出来てない機体で出撃して、

死にに行くつもりなの?私はもう助かった。

幸い、囮なら沢山いる!今は休みない……」

 

「……了解」

 

その後、アルテミスから脱出したマリュー・ラミアス、

ナタル・バジルール、ムウ・ラ・フラガが合流。

アルテミス要塞から脱出。

しかし、アークエンジェルはまともな補給もなく

再び放浪する事となったのだった。

 

 

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