願いという名の呪い 作:炙られた足
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「……」
[おやおや、そんなに情熱的に見つめられると照れるな]
「どの口でそんな事を……どうして貴女はここに?」
[思い出せないんだ。処刑された瞬間の記憶はあるんだけど、そこからは抜け落ちていて]
「城ケ崎ノア氏を殺した事については、どう思いますか?」
[……彼女には本当に申し訳ない事をしてしまった。許しを得れる訳はないだろうけど、みんなにも謝っておきたいと心の底から思っているよ。自分のためにだけにこんな事をしてしまった事も後悔している。それは本当さ]
「発言に虚偽はないと判断致します。ならば、貴女が本当に蓮見レイアかどうか確認させてください」
まず私の前に現れたレイアの様な人物と椅子に座って対話を試みた。滞りなく返答は返ってきているが……絶対におかしい。第一、この現象を他の人物が見逃す訳がない。どういう理屈だ?
「いくつか質問をします。答えてください。名前は?」
[蓮見レイア]
「身長」
[172cmだね]
「誕生日」
[4月2日]
「体重」
[そこはちょっとデリケートかな]
「なら家族構成」
[父母に兄が一人]
「スリーサイズ」
[あはは、そこまで行くとセクハラだよ]
ふむ、基本的な情報は問題なさそうだ。ならばもう少し踏み込んで聞き込みを……
「あれ、もう起きてたの?」
医務室の扉から、ミリアが姿を覗かせた。その目は私に向けられている。しかし手前に座っているレイアには気付いていないようだ。……どういう事だろうか?
「はい。ご心配をおかけしました。後遺症の様なものもありませんし、至って健康です。ただ……」
「ただ?」
「蓮見レイアがそこに座っているのが見えますか?」
「えっ……だ、誰もいないじゃないか。冗談はよしてよ……」
「事実です。蓮見レイア、何か言ってください」
[やぁミリアくん!今日も綺麗だね!]
「……な、何も聞こえないんだけど……ヘルマンちゃん、ホントに大丈夫?」
「もうダメかもしれませんね。骨は海に撒いてくださると幸いです」
[今から死ぬ気なのは気が早すぎるんじゃないかい?]
「冗談でもよしてくれないかな……」
「そんな事よりあの後、何があったのです?黒部ナノカが銃を構えているのは確認したのですが」
「あっ、ええと、その……お、おじさんからは言いにくいかな〜」
[誤魔化したね]
(誤魔化されましたね)
ミリアにはレイアが見えないし声も聞こえない様だ。つまり、霊的な存在がこのレイアの正体だと?それに何やらミリアは事情がある様だ。ここで深入りしても良い事はないだろう。なら一旦シェリー達と合流した方が……そういえば連絡先を交換するのを忘れていた。それに自由時間ももう終わる。ここに暫く留まっておくのが良さそうだ。
「……はぁ」
[おや、まだ眠いのかい?折角だし添い寝でも──]
「佐伯ミリア、何か面白い事をして下さりませんか?」
「え!?ええっと……」
「冗談です。唐突に申し訳ありませんでした」
[ちょっと、私を無視しないでくれたまえ!]
(なんかうるさいなこの人)
[……聞こえているんだけど]
(思考を読まないでください)
レイアは元からこんな人だったのだろうか?考えれば考える程、訳が分からなくなりそうだった。だが今はどうにもできないのも明白だったから、私はベッドに寝転んで天井を眺めていた。その後メルルとアンアンが医務室に来たが、私は天井を眺めるのみで何もしなかった。メルルから簡単なメディカルチェックを受けた後は、特に時間を潰せる物もなさそうなので夕食の時間まで寝ることにした。胸の内にはまだ不安が燻っていたが、火種を消す方法はなかった。
暫くして医務室から出ると、シェリー達と鉢合わせた。どうやらメルルから連絡があったようで、迎えに来てくれたらしい。そして事情を聞いてみるとどうにも拗れていた。ナノカの離反、ミリアの入れ替わり。黒幕の存在。そしてどうやらエマを中心として脱獄計画が立てられているようだ。しかし、まだ具体的な方法は決まっていないとのことだ。
「計画に協力するのは構いませんが……しかし、黒幕が私達の中にいると仮定すると怖く感じます」
「極論、生きてる人達全員に可能性がありますからねぇ」
「そんな事言わないでよ……」
「ですが、黒部ナノカが言った事をそのまま受け取るのもまた悪手だと考えます。彼女が虚偽を述べている可能性もまた存在しているのですから」
[確かに、ミリアくんが黒幕だとは思えないね。彼女の立ち振る舞いには変な所は無かった]
(それはそうでしょうね。ただ、今は脱獄計画について考えるのが最優先です。黒幕どうこうの話は後に回しましょう)
「一体、誰が本当の事を言っているんですの……?」
「まぁまぁ、そこは気にしても仕方ありません!」
「シェリーちゃんの言う通りだよ。今は誰かを疑ってる場合じゃない。一旦、マーゴちゃんに話を聞きに行こう」
そのまま食事を済ませて、私達はマーゴの房に向かった。彼女の事は苦手だが、今ここで協力を私情で渋っていい訳がない。向かうと房にはカーテンがかかっていたが、変に鍵がかかっている訳ではなさそうだ。
「というか、どうしてマーゴちゃんの部屋なんだろう?」
「マーゴさんはナノカさんと同室ですし、それが関係しているのかもしれないですね」
「この目隠しも何かいかがわしいことでもしているのではないかと思えてしまいますわ……」
「そこまで警戒せずとも、態々この人数を呼びつけたのですから宝生マーゴも変な気は起こさないと考えます」
[そういえば、どうして目隠しをしたんだろう?]
(彼女にも、彼女なりに目的があるのでしょう。それが何であるかは分かりかねますが)
中の様子は伺えない。彼女は、一体どんな事をその内に秘めているのか。何か、とんでもないものを持っていたらどうすればいいのだろうか。……それは考え過ぎか。疑心を抱くにも信頼するにも、まだ私はマーゴの事を殆ど分かっていなかった。
「あの、マーゴちゃん?今大丈夫?」
「いらっしゃい。開いているから入って来ていいわ」
そんな私とは裏腹に、エマは躊躇なくマーゴを呼んだ。エマの人の良さにはつくづく感服させられる。私は不服さを顔に出ないようにしながら、少々手狭な房に入った。
マーゴの房の内部は、まるで占い師の館の様に改装されていた。私達は彼女の房に立ち寄る事はなかったので、気づく事はなかった。マーゴは部屋に置いてある椅子に腰掛け、こちらを見据えている。私はエマ達より一歩離れた位置で話を聞く事にした。
「ど、どういう仕組みでやがりますの……?」
「これはマーゴさんの魔法でしょうか?」
「いいえ、ここにある物を持って来てリノベーションしたの。実は私、占いとか得意なの。ちょっと手狭だけどそこは見逃してちょうだい」
彼女は微笑みを崩さない。何処かじっとりとした視線が、品定めをするかの様に向けられる。
「一応聞きますけど、この部屋を見せるために私たちを呼んだ訳じゃないですよね?」
「それもあるけれど、監視についての報告も兼ねてここに呼んだの。ナノカちゃんと協力して調べてみたのだけど、この屋敷には監視カメラは設置されていない。ただ、囚人としてここに入れられたのだから、何処か見張られているという自覚は持った方がいいわ」
「おそらく、看守と監視フクロウの目を掻い潜れるならば、かなり自由に動けるでしょう」
[だけど、そう単純に行くものかな?管理者側がまだ何か用意している可能性だって……]
(この老朽化した屋敷を改造するのは難しいでしょうし、向こうに隠し球がある可能性は低いのでは?)
目を伏せて、今までの事象について考える。監視についてはマーゴが確認した通りだろう。この状況でウソを吐く理由がない。残りは看守と監視フクロウだが、どちらも活動範囲が制限されている。
「それと、見ての通りこの部屋は目隠しされてるから、秘密にしたいことがあれば使っても大丈夫よ」
「そのためにここに呼んだんだ……」
エマが小さくそう呟いた。看守やゴクチョーに見られたくない時は起こるだろうから、この場は厚意に預かっておくべきだろう。彼女も、この場所から出たいのだろうか?
「それはそれとして……私の占い、すごーく当たるって評判なのよ。よければあなたたちも占ってあげるわ。勿論、有料だけれどね」
マーゴは笑みを崩さず続ける。何処か含みのあるそれは、明らかに腹の内に企みがあると言葉がなくとも分かった。それを含めて私達を呼びつけたのか。
「えっ……いや、今は遠慮しとくよ。自由時間も終わっちゃうし……」
「あらそう?気が変わったなら、また声をかけてちょうだい。待ってるわよ」
[流れが急に変わってしまったね!]
(ここで口車に乗ってもいい事はありませんね、撤収しますよ)
私達はエマの言葉に同調する様にマーゴの房から出た。彼女を信頼する為には、もう少し時間がかかりそうだった。嘘は苦手だ。どうにもそれは気に食わないし、好きになれない。
「しかし、どうしますか?まだ肝心の計画は練れていません」
「マーゴさんも監視カメラの情報以外に何かを知っていたわけでもなさそうです」
「もう自由時間も終わりですし……はぁ、いい事がねぇですわ」
「また明日ゆっくり練ろう。まだ時間は残ってるよ」
私達はそのまま通路を歩く。さて、本当にここから脱出できるのだろうか。外に出られるなら、私の記憶も取り戻せるのだろうか。そもそも、私は誰なのだろうか。そこは考えても仕方ないのだろうか。謎は深まるばかりで、晴れる気配は見えなかった。
「でも、マーゴさんのあり方が一番楽なのかも知れませんね」
「……何の話でしょうか?」
シェリーが唐突に口を開いた。
「いえ、ストレスが溜まって魔女化するなら、マーゴさんみたいに自由に過ごしていた方がそうならないんじゃないかと思いまして」
「自由、ですか。ですが彼女は────」
「マーゴさんがどうかしたんですか?」
「いえ、何でもありません。口を動かすのに使ったエネルギーが無駄に感じるほどにどうでもいい所感です」
彼女、マーゴはどこかで線引きを敷いている。何か思惑があるのには変わらない。だが、何となく根っこの部分で誰かを拒絶しているとも感じた。
(自由か。今一度、考え直す必要があるかも知れない)
そんな事を考えながら、私はエマ達の後ろをついて行った。
まのむらにもヒロちゃんが参戦しましたね。一体なんなんだあの人……
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