願いという名の呪い   作:炙られた足

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くっそ遅いけどはのうら仕様のヒロちゃんバカ可愛いよね


正義の花が散る時

☠️止めた

傍観していた<

 

私はヒロを見守る事にした。しかし、一体何のつもりだ?

声色からは滲み出る嫌悪と憎しみしか感じ取れない。

彼女はまるで迷う事なく歩みを進める。

 

「この世界を正せるのは…私だけだ…私は、この世の悪を排除する。先ずは……」

 

ヒロは、暖炉の脇に立て掛けてあった火かき棒を手に取り…

そのまま、看守に猛然と突撃した。

 

「悪は死ねぇっ!死ね!死ねぇぇっ!!!」

 

彼女は火かき棒で看守を滅多打ちにし始めた。返り血が跳ね、彼女の恍惚とした顔に飛び散る。

……この状況に頭をやられたのか?正気とは思えない彼女の行動を、この場の全員が見ていた。

そして、あれだけ滅多打ちにされても、看守は死んでいない。

看守は反撃に鎌を振り、凄まじい力で振られたそれは咄嗟に回避行動を取ったヒロを捉え…

ヒロの首が、刎ね飛んだ。

 

「キャアアアアアッ!!」

 

状況に耐えかねた誰かが叫んだ。この場の誰もが、驚いている様に思えた。

首が切断された体はふらふらとよろめき、その場に倒れる。

………飛ばされた首は、エマの元へと落ちてきた。

この光景はあまり、気分が良いものではない。私は目を閉じた。

深く息を吸い、大きく吐き出す。………そうすると幾らか気分がマシになった。

今度は目を開けて、口元を締め直す。

 

「うわー…死んじゃいましたか………掃除しないと……

ああでも、魔女はこんな事じゃ死なないので……彼女は魔女じゃないと証明されましたね。

良かったですね」

 

ゴクチョーがとぼけたように言った。……正直、この状況を始めたのはヒロだ。

何のつもりだったかは分からないが、彼女にも考えがあったと信じよう。

心の内でしばし祈りを捧げたのち、私は状況に向き直る。

看守はいつの間にか立ち上がっていた。凄まじい再生力だ。

 

「あっ、そうそう。何度も申し訳ないんですが…これが1番大切なので。

魔女になりつつある者は抑えきれない殺意や妄想につかれてしまいます。

なので…起こってしまうんですよ、囚人の間で殺人事件が」

「殺人事件!?」

 

シェリーが目を輝かせながらそう叫ぶ。

……やはり私も同じ様になるべきだろうか。…やめよう。

流石に助手もこんなになったらいよいよ歯止めが効かなくなりそうだ。

 

「そうなんですよ…そんな危険人物とは流石に生活できませんから……

なので、殺人事件が起こり次第…【魔女裁判】を開廷します。

魔女になってしまった囚人は……あのー…処刑しますので…

詳しくは【魔女図鑑】をご覧ください……それと、銀輪ヘルマンさん?」

「はい、何か御用でしょうか?」

 

唐突に名前を呼ばれ、返事をする。

何か用事があるようだ。危険な事では無ければいいのだが。

 

「実はあなたの分のスマホだけ、用意するのを忘れてまして………今ここで、受け取って貰えますか?」

「承知致しました」

 

私はゴクチョーがいる方に向かう。一歩一歩が、少し重く感じられた。

見ると看守が腕にスマホを持ち、こちらへと差し出している。

……これを看守が持っていたなら、さっき壊れていてもおかしくないのでは?

そんな野暮な考えが頭をよぎったが、流石に質問する勇気は私になかった。

私はそれを取り、ズボンのポケットに入れて戻る事にした。

 

「では、私はこれで………」

 

そう言うと、ゴクチョーは再び通気口へと飛び去って行く。

そして、誰も喋らない静寂が久しぶりに訪れていた。

その室内を、看守だけが動き回っている。どうやらヒロの死体を掃除しているようだ。

 

「くっ………」

 

恐怖に耐えかねたのか、アリサが出口へと駆け出したのが見えた。

それを見逃す訳がなく、看守はアリサへと追いつき…その凶刃を振り下ろそうとする。

再びの惨劇の予兆。少女達は短く悲鳴をあげて、目を瞑る者もいた。

だが、そんな予想とは裏腹に凶刃はアリサへと届く事はなかった。

 

「待ちたまえ!彼女に手を出すな!これ以上の悲劇は…起こさせない!!」

 

レイアが刺剣を抜剣し、アリサと看守の前に立っていた。

またか。率直に感想を述べてしまうなら、また犠牲者が出るかなとぼんやり考えた。

けれど、レイアは振り下ろされた鎌を躱し…再び状況は膠着状態へと戻る。

 

「おめぇ…」

「彼女はルールを破っていない……切る理由はないはずだ!」

そして、私はキミたちを守りたい…そのために互いに冷静になるべきだ。違うかい?」

 

そして逃げようとしていたアリサが動きを止めたからか、レイアの言葉に納得したのか…

看守は追撃を行わずに元の作業に戻る。

そのまま看守はヒロの遺体を持って、何処かに立ち去っていった。

一番の危険が消えたからか、場の空気が緩む。妙な息苦しさを感じ、

私は首元まで締めていたシャツのボタンを一つ外した。

そう言えば、ここは先ほどの事故もあるが血の匂いが充満している。

窓が無いのが残念だな、などと呑気な事を考えていると…

 

「うっ………おぇぇぇぇっ…」

 

緊張が解けたからか、それとも何か別の何かがあったのか。

ココが吐瀉物を吐き出した。大丈夫だろうか?

そんな彼女に構わず、レイアが話を切り出した。

 

「私たちは此処で共同生活を強いられるようだ。それがいつまで続くかは分からないが、

今は従う他ないだろう……知り合ったばかりではあるが、私はキミたちをできる限りは守りたい。

先ほどのヒロくんの様な行動、またあの状況におけるアリサくんの様な逃走は

全員に危険が及ぶ可能性がある事は分かってもらいたい…

今後、勝手な行動は控えてもらいたい」

「チッ………」

 

流石に言い返せなかったのか、アリサは黙った。

レイアは再び話を続ける。

 

「先ずは、各自ポケットを確認して欲しい。先程ヘルマンくんが受け取った様に、

スマホが用意されているはずだ。

しかし、外と連絡は取れない様だから留意しておいてくれ」

 

確か、受け取っただけで中を確認してはいなかったか。

私はスマホを取り出して電源をつけた。レイアが言った通り、圏外だ。

この外へと連絡は出来ないだろう。

1番目に付くのは【魔女図鑑】のアプリ。先程ゴクチョーが言っていたものだろうか。

私の事も書いてあるのが確認出来る。

 

「魔女図鑑のアプリは、ここにおけるルールブックの様なものらしい。全員、

ここに書いてあるルールを遵守して生活していこう。目を通しておいてくれ」

「…ざけんなよ、ウチはこっから絶対出てってやる……!」

 

そう言うと、アリサは何処かへ去って行く。

私には彼女を止める理由も、権利もなかった。

 

「やれやれ、反抗的な態度を取ればまた看守に何をされるか分からないというのに…

他のみんなは協力してくれるだろうね?」

 

レイア私たちを見てそう言った。どうにも、彼女はまとめ役になりたがっている様に思えてしまう。

とはいえ、こんな状況において仮でもまとめ役がいてくれた方がいいのは変わらないか。

 

「ボクは…ボクは、いやだ!!ヒロちゃんを殺したアイツらなんかに、従いたくない!!」

 

エマが一歩前に踏み出して言った。その目にはうっすら涙が浮かんでいる。

感情的だが、意見としては尤もだ。この場所に、私たちより前に収監された者は恐らくいない。

つまりは、ルールに従うなら………いや、よしておこう。

その結論を出すのは、まだ早い気がする。

 

「なるほど、エマくんとヒロくんは顔見知りの様だったしね……しかし、仲がいい様には思えなかったけれど?」

「それでもっ、ヒロちゃんは正しい子だったから…」

「……勿論、無理に従わせる気はないよ。しかし、危険因子と行動を共にはしたくない」

「なら私はエマさんの方につきましょう!そっちの方が面白そうですしね!!構いませんよね、助手さん?」

「貴女がそうするというなら、私はそれに従うのみです」

「私もあなたたちに付きますわ。偉そうにしてる奴に従うのは御免ですの」

「エマさん…」

 

いつのまにかシェリーとハンナ、そしてメルルがエマの方に付いていた。

これで、私達はおおよそ2分されたか。特にメルルはエマにピッタリくっついている。

 

「……みんなで協力するに越したことはないけど、意見が合わないなら仕方ないか。

私たちは地下に戻るよ。ルールによるなら、一旦戻らなければいけない時間だ」

 

レイアは彼女に付く事を決めた少女と共に地下へと戻って行った。

ラウンジには、私達だけが残された。

 

「で、どうします?私たち、協力して看守をぶっ殺しちゃいますか!?」

「いや、ボク達も地下に戻ろう。規則には目を通しておかなきゃだし…でも、

ボクは絶対、あいつらを許さないから…」

 

そうして、私達は地下に戻った。

エマの目からは、もう涙は消えていた。

 

薄暗い牢屋の中、私は天井を眺めていた。特にする事もないこの空間は、退屈だった。

しかし、この空間は妙に居心地が良かった。

此処で目覚めた時から、胸の内に妙な感覚がこびりついていた。

そうだ、一つ彼女に聞きたい事があった。

 

「探偵さん、少しよろしいでしょうか」

「んー?どうかしましたか、助手さん?」

「何故貴女は、桜羽エマの側についたのですか?貴女は蓮見レイアに付いても良かったでしょう」

「あれ、さっき言いませんでしたっけ?面白そうだから、ですよー!それが私の信条ですから!」

 

面白そうだから。シンプルな答えだ。利益、損得ではなく、自身の愉悦の為に動く。

ごちゃごちゃしていない、いい答えだ。

 

「そうですか。ありがとうございます……ああ、それと。少し仮眠を取りたく思います。構いませんか?」

「大丈夫ですよー!」

「感謝いたします。30分程眠りますので、非常事態などあれば叩き起こして頂けると」

 

それだけ言って、私は硬いベッドに身を投げた。どちらかと言うと、心が疲れていた。

目を閉じて、意識を閉じる。

随分と暗い場所に来てしまった。無くなった記憶に、ヒントがあればいいのだが。

私の意識は、やがて睡魔へと連れて行かれた。

もう、目覚めたくはない。




バッドエンドも書く予定ではあります。また引き続き、誤字脱字などありましたらご手数ですが報告をお願い致します。
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